蛇を踏む (文春文庫 か 21-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167631017

作品紹介・あらすじ

藪で、蛇を踏んだ。「踏まれたので仕方ありません」と声がして、蛇は女になった。「あなたのお母さんよ」と、部屋で料理を作って待っていた…。若い女性の自立と孤独を描いた芥川賞受賞作「蛇を踏む」。"消える家族"と"縮む家族"の縁組を通して、現代の家庭を寓意的に描く「消える」。ほか「惜夜記」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 捉えどころが分からない世界観なのですが、読んでて自分でどう解釈するのか、考えさせられた作品でした。著者のあとがきに描いてあった「うそばなし」。自分の書く小説のことひそかにそう呼んでいることも少しユニークで、とても、著者の
    明るさが伝わってきました。「蛇を踏む」は、主人公が公園で蛇を踏んでしまい、家に謎の女が現れてしまい、その謎の女は、主人公の死んだ母だとう言うのだが、主人公の母は生きている。
    蛇が化けて現れてしまったのか、そう考えるなか
    二人の奇妙な生活が始まった。
    芥川賞を受賞した著者の代表作です。
    どこか民俗文学を思わせる、不思議なお話がとても、心地よかったです。

  • H29.6.28 読了。
    独特な世界観で好き嫌いが分かれる作品だった。

  • 数珠屋に勤める女性の、店主たちとの何気ない日々が描かれている。だが、私たちの世界とはちょっとだけ違う。この物語の世界では、蛇が人になるのだ。そして、そのことを誰も不思議がらない。読んでいて、とても不思議な気持ちになった。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    「影」としての心との出会い

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    ミドリ公園に行く途中の藪で、蛇を踏んでしまった。
    蛇は柔らかく、踏んでも踏んでもきりがない感じだった。「踏まれたので仕方ありません」人間のかたちが現れ、人間の声がして、蛇は女になった。
    部屋に戻ると、50歳くらいの見知らぬ女が座っている。「おかえり」と当たり前の声でいい、料理を作って待っていた。「あなた何ですか」という問いには、「あなたのお母さんよ」と言う……。
    母性の眠りに魅かれつつも抵抗する、若い女性の自立と孤独を描いた、第115回芥川賞受賞作「蛇を踏む」。


    ⚫︎感想
    ユングの「影」を想起した。積極的に生きてこなかった自分=影が蛇として表現されていると考えてみた。影としての心との出会い。蛇を踏んでしまった。その蛇が家に居着いて人間になったり蛇に戻ったりする。巻きつかれたり、職場までやってきたり、蛇の世界に誘われるが、拒んだり、心地よかったり、ザワザワしたり。影としての心が動き出して、蛇となっている…と捉えると、ヒワ子が違和感なく蛇を受け入れることも理解できる。無意識の自分なのだから。受け入れたり、争ったりするのは、自我と影だからであると考えられるのではないか。また、蛇が「あなたのお母さんよ」とヒワ子に言っていることも、ユングのグレートマザーを想起させる。

    河合隼雄氏は昔話や神話の中に無意識の世界の広がりを研究された方だが、川上弘美さんの「蛇を踏む」は、「影」としての心との出会いを昔話風に物語ってくれているのではないかと思った。

  • 変な短編小説3編を所収。(笑)個人的には「消える」が面白かった。3編とも寓意に富んだ作品でその意は少し難解だが、状況変化がぽんぽんあるのと面白い文体なので、読むだけなら読みやすい。(笑)まあ、不条理小説ですね。
    「惜夜記」は心の冒険譚で少し理解は難しいが、状況に比して優しい言葉に包まれており、ほのぼの感がある。「蛇を踏む」と「消える」は家庭内心情を面白おかしく童話化していて、不条理さにもかかわらず、なんとなく余韻が残る作品である。

  • 芥川賞受賞である表題作を含め、短編が三本収録されてたけれど、全部気持ち悪かった。これは誉め言葉。
    とくに二本目の「消える」は、地方の少し怖い民話を読んでいるような感覚だった。独特すぎる“和”の世界観。

    見方によってはファンタジーなのかな。
    人間とそれ以外の有機的な生き物と無機物の境目がなくて、それらの間を行ったり来たり、どろどろに溶け合っているような。
    唐突な一行目があって、その後ろに世界が広がっている。

    なんか、こういう曖昧な説明しかできない。笑
    でもひとつ前に読んだ「センセイの鞄」とはまったく印象が違った。
    個人的には安部公房を少し思い出した。

  • 独特の世界観。

  • 失業保険で食い繋いだあとカタカナ堂に雇われた、元女学校理科教師の主人公ヒワ子。藪で踏んでしまった蛇に取り憑かれてしまう。

    現実と夢を境界なく行き来するように進む物語、終盤はハラハラさせられる。

  • 川上さん自身が「うその国に入り込んでしまって書いたうそばなしなので、うその好きな方、私の作ったうその中で遊んで行ってくださいな」と言っています(笑)
    このメッセージ、最初に読んでいたら、割り切ってもっと楽しめたかな~とも思いました。 大好きになった『センセイの鞄』の著者の別の作品にも触れてみたいと思い、今作が芥川賞受賞ということで、期待大でしたから、読めば読むほどにこの不思議な世界観は???でした。一言で言うなら、境のない世界。人間と蛇の境がないし、生物と無生物の境もあいまい、形あるものは個体から液状になり、さらに気体へと…そして気持ちだって何が何だか、だあれも分かっていない。うその世界はうそだってわかっていたらそれなりに楽しい。でも境目を区切りをつけたがる人間はある意味、つらいかな、こんな世界に居続けるには。蛇母さんがしきりに「ひわ子ちゃん、ひわ子ちゃん…」と呼ぶ声だけが生々しく現実的に思えました。著者もこの作品に関しては意図などきっとなかったのではないでしょうか?そこが魅力なのかもしれません。自分で書いててレビュー自体もちょっと?になってしまい、すみません(苦笑)

  • なんのメタファーなんだろうとわざわざ考えるのは野暮なんだろうな。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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