蛇を踏む (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 3090
レビュー : 387
  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167631017

作品紹介・あらすじ

藪で、蛇を踏んだ。「踏まれたので仕方ありません」と声がして、蛇は女になった。「あなたのお母さんよ」と、部屋で料理を作って待っていた…。若い女性の自立と孤独を描いた芥川賞受賞作「蛇を踏む」。"消える家族"と"縮む家族"の縁組を通して、現代の家庭を寓意的に描く「消える」。ほか「惜夜記」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 芥川賞受賞である表題作を含め、短編が三本収録されてたけれど、全部気持ち悪かった。これは誉め言葉。
    とくに二本目の「消える」は、地方の少し怖い民話を読んでいるような感覚だった。独特すぎる“和”の世界観。

    見方によってはファンタジーなのかな。
    人間とそれ以外の有機的な生き物と無機物の境目がなくて、それらの間を行ったり来たり、どろどろに溶け合っているような。
    唐突な一行目があって、その後ろに世界が広がっている。

    なんか、こういう曖昧な説明しかできない。笑
    でもひとつ前に読んだ「センセイの鞄」とはまったく印象が違った。
    個人的には安部公房を少し思い出した。

  • 川上さん自身が「うその国に入り込んでしまって書いたうそばなしなので、うその好きな方、私の作ったうその中で遊んで行ってくださいな」と言っています(笑)
    このメッセージ、最初に読んでいたら、割り切ってもっと楽しめたかな~とも思いました。 大好きになった『センセイの鞄』の著者の別の作品にも触れてみたいと思い、今作が芥川賞受賞ということで、期待大でしたから、読めば読むほどにこの不思議な世界観は???でした。一言で言うなら、境のない世界。人間と蛇の境がないし、生物と無生物の境もあいまい、形あるものは個体から液状になり、さらに気体へと…そして気持ちだって何が何だか、だあれも分かっていない。うその世界はうそだってわかっていたらそれなりに楽しい。でも境目を区切りをつけたがる人間はある意味、つらいかな、こんな世界に居続けるには。蛇母さんがしきりに「ひわ子ちゃん、ひわ子ちゃん…」と呼ぶ声だけが生々しく現実的に思えました。著者もこの作品に関しては意図などきっとなかったのではないでしょうか?そこが魅力なのかもしれません。自分で書いててレビュー自体もちょっと?になってしまい、すみません(苦笑)

  • なるほどです。夢の中にいるかのような。最後が『惜夜記』で、夜の話というか、夢の中にいるような感じが漂っていたのでよりそのイメージが強いのかもしれません。

    ちっちゃいときに思ってた小説ってこんなんだったな、と思い出します。なんか脈絡がなくて、ストーリーがなくて、とつぜん意味不明なふわふわした世界が始まっていつの間にやら終わっている。あとたまに読めない漢字とか知らない単語とか、名詞が出でくる。本を読んでいて調べるという経験そのものが、なんか懐かしかった。

    意味のわからない話って子どもの頃は好きじゃなくて、今でもエンタメとか、輪郭がはっきりした小説の方が読みやすいなあと思うけど、たまにこの世界に戻ってくるのもいいなあと思う。

    特に、川上弘美はユーモアというか、なんかわからないけどこうなっちゃうのよね、なんかわからないけど。みたいなのが、とらえどころのないところが面白くて、読んでてつい笑っちゃう。

    こういう、小説の世界に閉じこめられて出てこれない人もいるんだろうなあと思う。うその世界、と川上さんは言ってるけど、うそじゃない世界を書く必要はないものね、真実味があるかどうかは置いておいて、みんな心地よいうそをもとめて本を開くから。

    『蛇を踏む』は、世界観が蛇のようにひんやりとして、気持ちよかったなあ。あやかしの方が、主人公のなかで存在感が強く感じられるのがいい。川上さんの物語ってそういうところがあるのかもしれない。うその方が、リアリティーがある。本人も書いてるように、うその方にリアルを感じてしまう人なんだと思う。

    『消える』家族の話。なんとも日本人らしいテーマで、陰湿で、闇をきれいにとられているなあと思う。でも嫌味がない。素直に書いているのが読みやすい。教訓もない。ただ物語がある。簡単なようでいて、ただ物語であることの、その、難しさよ、と思う。

    『惜夜記』書いたように、夜の話。眠いんだけど、夢にとらわれるのも惜しい、というような。夢に惑わされて、思うように足が進まない、またあの世界に来てしまったと思いながらその理不尽さ不条理さ不自由さに、蹂躙されるような快さ。
    いちばん好きだったのは『もぐら』。たまらない。たまらないなあ。笑った。

  • 「ミトリ公園に行く途中の藪で、蛇を踏んでしまった。…このごろずいぶんよく消える。…背中が痒いと思ったら、夜が少しばかり食い込んでいるのだった。」

    3つの短編からなる本作は、どれも魅力的な一文から始まる。著者曰く、うそばなし、のためファンタジー作品の1つなのだろうが、一般に想像するそれとは異なるように思う。詳しい分類の仕方はわからないが、とにかく著者の世界環に追いついていくのに必死で、掴んだと思ったら唐突に終わる。
    踏まれた蛇が女となって一緒にビール飲んだり、消える家族がいれば縮む家族もいて、そのあるがままに息している。理解しようとするのではなく、空を掴むように翻弄されるのが、この作品の醍醐味なのかもしれない、

  • 川上弘美さんから生まれた文字。
    文字とは一般的に相手に理解させるためにある道具のような気がします。
    しかし、川上弘美さんから生まれた文字は蛇のように生きて動いています。
    時には泥鰌のように。
    抽象絵画ではなく抽象物語。
    私のリアルな今が写る鏡の前で立ち尽くしているようでした。

  • 文章によってしか起こされない脳内の解放があって、それを体験する。
    意識が空間に溶け出して、失くなってしまうみたいだ。

  • この世界にうまく馴染めない人間の、世界に対する違和感。自分と他人が違う人間で、違う考え方を持っていて、そうであることが当たり前だ、ということとは違った次元での、もっと本質的な、違和感。極端なことを言えば、あれ、私はみんなと同じ種類の「人間」だっただろうか、という疑いにもたどり着くような。そんな圧倒的な差異に押しつぶされそうにもなる。そこで、『蛇を踏む』、なのだ。ああ、ここに私と同じ感覚を持った人がいる。そう思うと泣けてくる。何だろうこの違和感、の「違和感」を確かな言葉にするということ。言葉にするということは一つの救いになり得るのだ。

  • ぬらぬらしている

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ぬらぬらしている」
      蛇ですから。。。
      「ぬらぬらしている」
      蛇ですから。。。
      2012/10/09
  • 変な短編小説3編を所収。(笑)個人的には「消える」が面白かった。3編とも寓意に富んだ作品でその意は少し難解だが、状況変化がぽんぽんあるのと面白い文体なので、読むだけなら読みやすい。(笑)まあ、不条理小説ですね。
    「惜夜記」は心の冒険譚で少し理解は難しいが、状況に比して優しい言葉に包まれており、ほのぼの感がある。「蛇を踏む」と「消える」は家庭内心情を面白おかしく童話化していて、不条理さにもかかわらず、なんとなく余韻が残る作品である。

  • 「蛇を踏む」は好き。
    「惜夜記」は未熟者の私には難しい。

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著者プロフィール

川上 弘美(かわかみ・ひろみ)
1958年生まれ。96年「蛇を踏む」で芥川賞、99年『神様』でドゥマゴ文学賞と紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞と女流文学賞、01年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、07年『真鶴』で芸術選奨、15年『水声』で読売文学賞を受賞。ほかの作品に『風花』『どこから行っても遠い町』『神様2011』『七夜物語』『なめらかで熱くて甘苦しくて』『水声』などがある。2016年本作で第44回泉鏡花文学賞を受賞した。


「2019年 『大きな鳥にさらわれないよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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