溺レる (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 304
  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167631024

感想・レビュー・書評

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  • とても官能的。
    男女間の張りつめた緊張感、距離感に読んでいてゾクゾクする短編集。
    大人の男女の、時にしっとりと、時にねっとりとした色気に私まで溺レそうだ。
    特に『さやさや』『溺レる』『百年』が良く、読了後も余韻がずっと残る。

    男と女が静かに淡々と情を交わす。
    アイシテルのに、二人でいるのに、何故だかさびしい。
    思いきってアイヨクにオボレてみると、いいのかもしれない。
    こういう川上さんも好き。

  • ちょうどいい、は難しい。ちょうどいい具合に、ちょうどいい加減で、ちょうどいい頃合に。でも、いつも、少し多かったり、少し少なかったり、気を抜いていると、多過ぎたり少な過ぎたりして、行き着くところまで行ってしまう。あるいは、いつまでもたどり着けなくなってしまう。
    愛しているからおよんでみたけれど、およべばもっと繋がれるはずだったけれど、むしろもっと寂しくなる。およべばおよぶほど、一人になる気がする。それなのに、ちょうどいい、は難しい。
    そんな物語が螺旋のように繰り返されていた。

  •  高橋源一郎と柴田元幸の対談の中で「川上弘美の作品は英語に翻訳出来ない」といった発言が出てくる。
     なるほど、確かに彼女の作品の中には、日本語でのみ表現出来るテクニックというか、表現が多いように思う。
     ひらがなやカタカナの使い分け、漢字の開き方、読点のつけ方、一風変わったオノマトペ、そして「日本語としてはそれは正しくないんじゃないかな」と思えるような言い回し。
     それらが物語の内容と微妙に相乗効果を上げて読者の中に浸透してくるように思える。
     当作品には割と性的描写が多い。
     自慰を強制させられるわ、SMプレイを行うわ、あげくのはてにはレイプされてしまうわ(蹂躙されたと表現されている)etcetc。
     ただしあまりエロティックな印象も目を背けたくなるような印象も受けることはない。
     不思議な出来事が起こっているのに、それらが全く当たり前のこととして、日常に溶け込んでいるのと同じように、エロスも当たり前のことのように溶け込んでいるかのようだ。
     彼女の作品としては、当作品は今一つググっとくるものが少なかった。
     それでも、彼女は魅力的で妙に気持ちを惹かれる作家のひとりであることに変わりはない。

  • 暗くてさびしい。でも後味悪くないのが不思議。
    どうしようもない人たちが登場する。男も女も。
    此処はいったい何処なのだろう?
    同じような場所に、同じような男女が生息しているような。
    百年とか、五百年後とか、お伽話みたいでおもしろい。

    「亀が鳴く」が印象的だった。

  • これは官能小説。
    性描写もいやらしくなくて、どこか芸術的なモノに感じる。

    川上氏は、擬態語大好きだね。
    擬態語を芸術的に表現していると思う。

    でもこの官能小説・・・
    卑猥ととるか、芸術的とるかは、
    読者次第かな。
    私は「作品」として、とっても完成度高いと思いますが。

  • 「この小説の空気に、たゆたう」という経験は、唯一無二のもの。
    主人公たちは、いわゆる、「社会のなかで生きてく!」って感じじゃなくて、
    よくわかんないとこに、あっけらかんと、住んでいる。暗いとこに住む湿った動物みたいに。
    そこは、ユーモラスで、エロティックで、童話みたいに怖くて、キラキラしてて、ダサくて、哀しくて、いろんなものが未分化で、生とか死とかも、境界もなくて、暗くて明るくて、ドライでウェットで、ぐちゃぐちゃで、混沌としてて、真実なんだとおもう。
    そして、静かなので、すき。からだの深いところが、ぞっとしたり、よろこんだりするのを体験できる、いい小説だと思います。

  • う~ん、退廃と現実逃避の世界だなぁ~。
    でも面白い...。この世界観はなかなか味わえないので、定期的に触れてみたくなるだろうな...。好き嫌いが分かれる作品だと思う。私はOKにしたい。

  • 読んでみよう読んでみようと思いながらなかなか機会が無かった川上作品。まずはこの短編集から。
    この本に関しては、詩集のようなイメージを持った。恋する女と男の痛みがひりひりするようなストーリーなのに、文体が幻想的でどっちかというとほのほへの寄りに思えて、ギャップが何とも不思議な感じ……というか。

    ・さやさや
    ダメな叔父と、今横にいる男性とを、代わる代わる思い浮かべている女性。
    叔父はいなくなった。隣にいる男性のことを考えているのに、寂しくなる。

    ・溺レる
    逐電する男女。
    リフジンなものから逃げながら、時々アイヨクにオボレる。未来は見えない。寄り添う。

    ・亀が鳴く
    多分、楽な方へと流されやすい主人公。
    同棲相手に別れを告げられる。
    だけど飼っていたカメは手放したくなかった。

    ・可哀相
    乱暴な行為をする恋人。更に恋人は主人公を「可哀相」だという。
    それでも離れられない。

    ・七面鳥が
    七面鳥に乗っかられた経験があると話すハシバさんに想いを寄せる主人公。しかし強姦されてしまう。
    ハシバさんは主人公を見守ってくれているようだが、これから二人はどうなるのか不明。

    ・百年
    主人公とその恋人の男性は不倫関係。恋人は主人公を『坊ちゃん』に出てきた女中の『清』のようだという。
    心中しようとしたが、主人公だけが死に、恋人の男は生き残った。恋人は奥さんの元へ帰っていく。
    そのまま往生した恋人と、主人公はあの世でも会えなかった。100年、魂は漂っている。

    ・神虫
    主人公の恋人ウチダさんが、この本の中で一番、女性に対して熱い男だなと思った。結構嫉妬心まる出しな感じで。
    この一遍はカッと熱い。

    ・無明
    不死身で、500年一緒に生きている男女。
    500年一緒にいて、はじめてのことを試す。
    一緒に沿って、はじめてのことを体験して。そういう生き方を今後も繰り返すのだろうなぁ。

  • 「センセイの鞄」は好きだったのですが、こちらは苦手でした。登場人物がみんなダメな女性で、共感ができず…。この独特な雰囲気自体は好きです。

  • 川上弘美の怖さを見た。

    言葉の重ね方、
    会話の重ね方、
    酒と食事の重ね方が、
    川上弘美の魅力と思っていたのは、
    まだまだ少ない経験で得た、
    彼女のいち断面であったか。

    男と女の情念の、
    強く、淡く、もろく、
    果てしない粘りつき方が、
    とても恐ろしい。
    川上弘美が粘りつくと言うと、
    ひどく粘りついて見える。

    そこにある情念が、
    とてもとても粘っこい。
    あわあわとしているのに、
    さらさらとしているのに、
    やたらと絡みついて、怖い。

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著者プロフィール

川上 弘美(かわかみ・ひろみ)
1958年生まれ。96年「蛇を踏む」で芥川賞、99年『神様』でドゥマゴ文学賞と紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞と女流文学賞、01年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、07年『真鶴』で芸術選奨、15年『水声』で読売文学賞を受賞。ほかの作品に『風花』『どこから行っても遠い町』『神様2011』『七夜物語』『なめらかで熱くて甘苦しくて』『水声』などがある。2016年本作で第44回泉鏡花文学賞を受賞した。


「2019年 『大きな鳥にさらわれないよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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