センセイの鞄 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.84
  • (1026)
  • (1031)
  • (1209)
  • (133)
  • (31)
本棚登録 : 7155
レビュー : 1105
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167631031

作品紹介・あらすじ

駅前の居酒屋で高校の恩師と十数年ぶりに再会したツキコさんは、以来、憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩や花見、あるいは島へと出かけた。歳の差を超え、せつない心をたがいにかかえつつ流れてゆく、センセイと私の、ゆったりとした日々。谷崎潤一郎賞を受賞した名作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 長らくブクログを休んでいたこともあり、
    今一度、自分の原点を探ろう企画の第1弾(笑)


    僕が川上弘美を知り、ハマっていくきっかけとなった
    今だに何度となく読み返してしまう小説です。
    (けれど、川上作品のマイベストはまた違う作品です笑)


    初読みは15年ほど前だったかな。
    しかし、読み返しても読み返しても
    終わってしまうのが惜しくて、
    一字一句を味わうようにお酒とアテを食べながら
    少しずつ少しずつ読んでいました(笑) 


    強烈にあとを引く余韻と、
    それでいて
    不思議とあたたかな読後感。

    亀のように遅々として進む、
    こういう恋もあるのだと改めて勉強になったし、
    大人だからこそできる
    新しい恋の魅力に
    当時まだ若かった僕は気づかされました。
    (川上作品を何度も読み返したくなるのは、馴染みの店にまた呑みに行きたくなるのと同じ感覚の気がします)



    37歳独身のOL、
    大町月子。

    月子とは30と少し歳が離れた、
    高校で国語を教わった
    松本春綱先生。


    ふたりは駅前の一杯飲み屋で
    隣りあわせて以来
    20年ぶりに言葉を交わし
    飲み友達となり、

    やがて月子は
    先生をセンセイと呼び慕い、
    センセイへの
    ほのかな想いに気付き始めます。



    まぁ簡単に言えば、
    70に近い老人と
    30代後半の大人の女性の恋物語です。


    文章で書いてしまえば、
    なんだか陳腐な設定だなぁ〜って
    思う人もいるかもだけど(笑)


    決していやらしい話ではなく
    中学生の淡い初恋を読んでるかのような
    微笑ましさと、

    毎回酒を交わしながら
    二人がどう惹かれ合っていくかが
    本当に絶妙な塩梅で
    丁寧に丁寧に描かれていて
    妙に心地良い小説なのです。


    月子は、いつからか
    恋人とぬきさしならぬ関係になることを、
    いつも怖れていました。 

    林檎を剥きながら
    終わった恋に思いを馳せ、
    ふいに涙を流すシーンは
    なんとも切なく胸を焦がしたし、

    夜のバス停で
    帰り道が分からなくて途方に暮れている月子と、
    センセイがばったり出くわすシーンは 
    センセイが無性にカッコ良く見えてならなかった(笑) 


    川上さんの独壇場と呼べる、
    文章の端々から漂う
    濃密な夜の匂い。

    いつも酔っ払った
    月子とセンセイを見守る
    月の存在。

    月を見上げることや
    夜風が酔った頬を刺す感覚が好きな僕は
    夜の匂いのする川上さんの文体、
    それだけで、強く惹かれてしまいます。


    それにしても
    なんて抑制のきいた、
    それでいて官能的な文体なのだろう。 

    夜の花見の後
    幼なじみの小島孝と月子の大人なキスには
    本当にドキドキさせてもらったし、 

    センセイとの初めての
    島への旅行の話は
    月子さんが可愛いくて
    本当に微笑ましかったなぁ~♪


    川上さんの小説は官能的だと書いたけれど、
    そこには粋という言葉が似合う
    『品』があるんですよね。

    和服の女性の素足や手首が
    何かの瞬間に時折ちらっと見えるみたいに。

    肌を直接見せなくとも、
    性行為を描写せずとも、
    そこはかと漂う色気や官能。


    だから読むたびに
    胸がときめくのだけれど、

    川上さんが紡ぐ文章は、
    しとやかで
    でしゃばり過ぎない、
    引き際を解った大人な女性って感じなのです。


    また粋な大人の物語だけに、
    たくさんのお酒と
    お酒に合う季節ごとのおつまみやアテが
    これでもかと出てきます(嬉)

    まぐろ納豆、 蓮根のきんぴら、湯豆腐、焼き茄子、たこわさ、おでんなどなど。

    読んでいる僕らも登場人物たちと
    一緒に呑み屋に居合わせたような、
    心地いい錯覚に浸れる点も
    僕がこの作品に惹かれる理由です(笑)


    酌を受けることを好まない
    センセイ。 

    次に会う約束も交わさず、
    通いつけの飲み屋で会える日を
    ひたすら待つ二人の距離感。 

    誰も縛らず、
    一人で立ち、一人で自足する
    二人の生き方。 


    こんな、プラトニックで、
    修行僧のような恋は(笑)
    誰でもができることではないけれど、
    できないからこそ、憧れるし、

    もしかすると、
    こういう恋をしているからこそ、
    二人でいる時は
    誰よりも相手を尊重し、
    いたわれるのかなってちょっと思ったりなんかして。



    食べ物が好きで、
    お酒が好きで、
    一人が好きで、

    でも心から分かり合える誰かが欲しくて、 

    おじさま好きで(笑)、 

    身体だけの関係には
    もう飽きたという人に

    オススメします。


    もしかすると、人生観変わるかもしれませんよ♪

    • yamatamiさん
      円軌道の外さん

      わー!お久しぶりです!
      コメントいただけて嬉しいです。たくさんのいいねもありがとうございます!
      「文房具56話」、...
      円軌道の外さん

      わー!お久しぶりです!
      コメントいただけて嬉しいです。たくさんのいいねもありがとうございます!
      「文房具56話」、古い本のようで偶然に古本屋で見つけたのですが、円軌道の外さんの手元にも現れますようで・・・!文房具ってほんとにわくわくします。付箋とか、どこに貼るんや!っていうくらい買ってしまいます(笑)

      お忙しい日々をお過ごしだったんですね。
      ボクシングを教える側・・・!きっと、する側とはまた違った大変さがあるのでしょうね。でもお元気そうでなによりです(^^)

      私のほうも仕事が目まぐるしく、ブクログをお休みしていました(>_<)

      自分の原点を探ろう!企画、よいですね(^^)
      「センセイの鞄」、懐かしいです。
      高校の現代文の問題集で読んでから、勉強をほったらかして、図書室で借りて読んだ思い出があります。笑
      円軌道の外さんのレビューを読んでまた読みたくなりました(^^♪
      以前のように小説、漫画、それにジャンルを問わずにたくさん読まれているようで、なんだか読書欲が湧いてきましたよ・・・!

      円軌道の外さんのレビュー、これからも楽しみにしています♪

      読書スイッチを押していただき、ありがとうございます(*^^*)

      これからもよろしくお願いしますね!
      2018/03/06
  • 単調な日常の中で、徐々に距離を縮めていく男女間の穏やかな親密さと、反して高まっていく緊張感の矛盾を絶妙に書き表した作品。

    年齢だけなら親子以上孫未満ぐらいに離れている、高校の国語教師だった「センセイ」と、その生徒だった「ツキコさん」は、二十余りを経て、ばったりと居酒屋で再会する。
    特に約束もせずに、それでも出会えば、それぞれのペースで酒を呑んで、それぞれ好きなアテを食べながら会話をする。そのうちに四季はめぐって、キノコ狩りやらお花見やら、店の外でもなんだか会うようになってくる。

    共に重ねる時間の中で、時々些細な喧嘩をしながらも、互いの気質と程よい距離感に馴染み、確実に恋慕の対象として意識し合うようになっているのに、それに相反するかのように、それぞれが抱える過去と孤独のためか、予想外に近づいていく関係に戸惑う二人の間の緊張感は高まり続け、やがてぬきさしならないものとなっていく…。

    不器用な男女の、端から見たら凡庸な日常でしかないのに、実は激しさ吹き荒れる歪な関係を、川上さんらしい、静かな語り口で、淡々と、けれど、とことん濃密に描いた秀作です。

    川上さんの独特の擬態語を用いて語られる二人の関係の終わりは、逃れられない哀しい真理であると同時に、寂しい優しさに溢れていて、余韻を残します。

  • だいぶ前に他の本を読んでいたら盛大にネタバレが書かれていて結末を知ってしまった。そのせいで楽しみが半減になってしまいこの本を読むことを後回しにしていました。ネタバレを読んでから、もう2年も経ったけど知ってしまった結末は忘れることもなく私の中に残っている。

    久しぶりに川上さんの作品が恋しくなり手にしてみました。
    作中でも内田百閒の話がチラッと出てくるけど、この作品自体が百閒の世界っぽいと思った。ツキコさんもセンセイもカタカナの時は人ではないもののようで危うい感じがする。時にツキコさんはフラフラしていて堺の方にどんどん行ってしまいそうで手を掴んでいないといけない人物のように思えた。
    ツキコが恋い焦がれるセンセイの存在は月のように離れていたり、スーパームーンみたいに大きかったり、またある時は優しくツキコを照らす月光のようだったりして、センセイがツキコを大切にしているのがひしひしと伝わってきました。

    センセイよりも若いツキコさんは怒ってみたり取り乱して叫んでしまったり…30歳も離れている二人の恋。たまにはガツガツしていない大人の恋模様を見守るのもいいものだなぁ…と、しみじみ思いました。

    登場するお酒や料理もおいしそうで、冷奴とか湯豆腐が食べたくなってしまった。花見のあとの「バーまえだ」のチーズのオムレツおいしそう…。途中から同級生も登場したりして、恋の行方がどうなるのか少しドキドキしながらページをめくった。

    自然の小鳥や木々の描写がアクセントになっていて、読んでいるとふと影が差して日蝕の時のようにすぅーっと薄暗くなり色が褪せ、世界や自分の輪郭が曖昧になってしまうような不安を感じました。こういう不穏さが好きだったりする。「干潟ー夢」の境(中間)のあの得も言われぬ世界は川上ワールドそのもので不思議ワールドは健在だなぁ…と思った。鞄の件はかなり不意打ちで涙が一粒ぽとりと落ちました。読んだ後の余韻がなんともいえず心地いい。

    2019年積読本消化21冊目。
    月子さんつながりで小池昌代さんの『厩橋』が読みたくなった。

    • まっきーさん
      史緒さん、こんばんは。お久しぶりです!
      ブログへの訪問ありがとうございました。
      おかげさまでサブイレウスの方はかなりよくなって、いまは普...
      史緒さん、こんばんは。お久しぶりです!
      ブログへの訪問ありがとうございました。
      おかげさまでサブイレウスの方はかなりよくなって、いまは普通にご飯を食べられるようになりました。(ホッ)
      暖かい冬だと思っていたら、急に冷え込んでそういうのも関係あるみたいです。用心しないといけないですね^_^;

      ところで川上さんですが作品がいっぱいあって、作風もいろいろなので楽しみがいっぱいある作家さんです。
      『風花』…タイトルは知ってますが未読なので、読みたいリストにメモしておきました。

      『センセイの鞄』歳の差の恋物語でしっとりしてました。お酒とつまみがおいしそうで、少し飯テロしてました。お腹が空いてる時はお腹が鳴ってしまうかもしれません゚(^^)

      ファンタジー色が強めの『七夜物語』とか、すごく面白かったです♪
      2019/04/11
    • 佐藤史緒さん
      ほんと、今年は雪解けこそ早かったものの、寒い日が続いていますもんね。自律神経のバランスが崩れやすいんでしょうね。お気をつけて!

      川上さ...
      ほんと、今年は雪解けこそ早かったものの、寒い日が続いていますもんね。自律神経のバランスが崩れやすいんでしょうね。お気をつけて!

      川上さんはほんとに「しっとり」という表現がぴったりな作家さんですね。七夜物語は読んだことありませんが、川上さんのファンタジーも興味あります。オススメありがとうございました(*^▽^*)
      2019/04/12
    • まっきーさん
      こちらこそ、ありがとうございました゚!(^^)!
      こちらこそ、ありがとうございました゚!(^^)!
      2019/04/12
  • ★3.5

    38歳のツキコさんと70代のセンセイは、近所の一杯飲み屋で
    居合わせて以来の中だ。
    お互い1人で酒をのみ、肴の好みがよく似ている。
    憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、
    キノコ狩りや花見、あるいは島へと出かけた…。

    最初この淡々と流れる二人の時間はなんなのだろう?って思いながら読んでた。
    二人の間に流れる空気感がとても心地いい。
    二人の関係が良いなぁって思ったり、
    でも、ツキコさんの想いが届かなくて、切なかったり…。
    ツキコさんのまっすぐな思いを受け止めてくれたセンセイ。
    二人のゆったりと進む時間に、もどかしかったりじれったかったり、
    微笑ましかったり、切なかったり…。
    やっぱり、最後は…泣けました。

    初めて読んだ川上さんの作品。
    とても不思議な雰囲気で、情景が柔らかでその空間にいるみたいに感じさせられた。
    温かく、人を愛する事の切なさがじんわりと伝わってきました。

  • 言葉がほろほろと綺麗に流れていくようなお話でした。
    ツキコさんとセンセイの着かず離れずの心地いい距離感や想いが読み手にとっても心地の良い作品。
    ツキコさんの恋の駆け引きのお話のようにも感じました。
    恋の駆け引きといってもバチバチした激しいものでなく、それもまたほろほろとした美しい言葉で表現されていて、大人の渋くてほろ苦くて、それでいてチャーミングな恋愛を見ているようでした。
    結末がとても美しい終わり方で、じんわりと心に沁みて読み返したくなりました。

  • 川上弘美さんの描く恋愛は、ただ幸福というよりは、どうあがいても払拭しきれない寂しさ(それは、男女関係だったり、もっと大まかな関係性だったりするかもしれません)がいつも潜んでいるように感じます。
    たとえ燃えるような恋をしても、たとえ徐々に関係を深めて行くような静かな恋をしてたとしても、人生のどうしようもない寂しさはたとえそれが一瞬であったとしても消し去ることはできない、そんな人生の「どうしようもなさ」を川上弘美さんはいつも描いている気がします。
    知人の女性はこの作品を「色っぽいよね」と評していましたが、そんな人生の「どうしようもなさ」こそが、人生の色気や艶やかさなのでしょう。

  • 読んだ後、こんなに甘く切なく、そして暖かい気持ちになる恋愛小説は久しぶりでした。
    出会ったばかりの頃のセンセイはとても紳士的。それは二人の距離が近づいても変わらず・・・
    最初から最後までずっと紳士なのですが、逆に丁寧な言葉や行動だからこそ、ツキコさんに対する溢れんばかりの愛と優しさが感じられて・・・
    二人の距離が近くなりそうになると離れて、また近づいてを繰り返していくのですが、離れては近づく度に次離れる距離は前よりは近くなっているという感じで徐々に縮まっていくのが良いなと。
    激しい感情だけが恋じゃない。
    こんな風に穏やかに進む恋も素敵だなと思いました。

  • 一生涯、忘れ得ぬ本。
    棺桶にはこれを入れて!と声高に人様に告げるのだけど、良さを説明しようとすると、それはこの本の良さではなくて、自分の中の記憶のかけらにたどり着く。


    春の夜、つい上着を忘れて出てきた心細さ。
    昔好きだった人が結婚したことを人づてに聞いた薄ら寒さ。
    やけに美味しく感じた出し巻き卵の後味。
    上野公園の落ち葉、祖母のおにぎり。

    そんなかんじ。

  • 僕はセンセイをしているので。しかもまあまあ歳を食っているので…このような人生の終焉に共感した。

    愛されたいし愛したい。そんな純粋なことが、ほんの少しの時間のズレや、想いの強さのすれ違いでかなわないのが人の世だから、結ばれた二人を羨む気持ちは、強い。

    カウンターで呑む二人の繋がり具合が微妙でもどかしくて。だからこそ純粋だ。

  • ツキコは松本先生を、「先生」でもなく、「せんせい」でもなく「センセイ」と呼ぶ。


    「センセイ」
    どんな呼び方なんだろう。


    「先生」より堅苦しくなく、「せんせい」より親しげでもなく
    ある程度の距離感がある関係、それが「センセイ」なのだろうか。


    センセイには、忘れられない、忘れたくない過去がある。
    だから、ツキコが距離を縮めようとしても、センセイとツキコの間には見えない壁がある。隣りにいるのに二人の距離はなかなか縮まらない。


    手を伸ばせばすぐに届く距離にいるのに
    近いのに遠いな、、。


    不器用な二人のやりとりが微笑ましくて、いとおしく思った。


    センセイとツキコの再会から別れまでを書いた温かくて、切ない物語。

  • 静かだけれど、温かい時間が流れています。

    田舎の夜の様な、どこか懐かしい気持ちになりました。
    センセイのデートの申込み方、素敵だなぁ。。

    何より、季節の食べ物、お酒が物凄く美味しそうー。
    そら豆で一杯。

    たまりませんね!笑

    恋情は『育てるから、育つ』
    なるほど。素敵な言葉です。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「お酒が物凄く美味しそうー」
      飲まない私でも、良い雰囲気だなぁって思いましたよ。パッパと、アテを注文する様が粋です。
      「センセイのデートの申...
      「お酒が物凄く美味しそうー」
      飲まない私でも、良い雰囲気だなぁって思いましたよ。パッパと、アテを注文する様が粋です。
      「センセイのデートの申込み方」
      歳をとってからでも、お誘さそい出来たら素敵だろうなぁ~
      2012/09/05
  • 大好きな今野さんの去就を読んで、解説を読んだことで興味を持って書店で手に取った本。
    普段なかなか手を出さない系統のお話だけど、しっとりしみじみと読み進められた。
    ツキコさんとセンセイの距離感がとても良い。
    たまにところどころだけ読み返すのも良いかもしるない。

  • 30代後半の女性とその高校時代の恩師との、付かず離れずのゆったりとした恋愛を描いた作品。
    谷崎潤一郎賞受賞。

    父娘ほど年の離れた男女の恋というと、ともすると不健康な生臭さがつきまといがちだが、近所の居酒屋で酌み交わす二人の姿は、何とも微笑ましい。若い男女のように一途に突っ走る訳でもなく、かといって達観し過ぎているわけでもない。うぶな恋心を織り混ぜても不自然にはならず、酒好きの二人の会話も愉快で、すべてにおいてさじ加減が絶妙だ。

    常に漂うふわりとした浮遊感が心地よく、終盤で一気にぶつかり合う激情で盛り上がり、切なく最後を締めくくる。
    大人のための一冊と言えるだろう。

  • 胸がキューンと締めつけられる、切ない恋愛物語。しかも年の差。
    綺麗な読後感。けっこう知人に薦めてる。

  • 主人公大町ツキコと、彼女が当時高校生だった頃の国語の”センセイ”の関係を綴った物語。30歳以上も歳が離れている2人の恋愛話は、他の小説にはない、ひっそりと静かに語られる感じ。大きなハプニングもなし、若者の恋愛と違い、特にドラマチックな展開や、ドロドロした勃発などもない。ただただ、2人の掛け合いがあっさりしていて、爽やか。でも、どこか高校生のような、初々しいやり取りも見れて、ほっこりしてしまう。お互いに依存もせず、干渉せず、だからと言って愛がないわけではない。むしろこれが真の愛情なのだと思う。

  • まるで月がゆっくりと夜空を巡るような恋愛小説。ツキコがだんだん「センセイ、すき」ってなっていく時間の流れが愛しい。

  • 恋愛小説なのだ
    飲み友達⇒好きな人へ
    40女と30歳離れた男とが、恋をする物語
    お互い 気合いながらも一緒にならないのは なぜ?世間体なのだろうか

    「こおろぎ」 が せつない

  • ツキコとセンセイとの間に流れる曖昧な時間、移り変わる旬の酒肴の数々。はかないが確たる生の営みが滋味深く綴られている。
    私見だが、センセイの振舞いには手練のずるさを感じてしまい、感情移入できなかった。

  • 最初はなんの話かわからんように進むけど、結局はアラフォー女性と高校の時の国語の先生のじいさんとの恋の話。
    いきつもどりつの本屋本屋した話で好き嫌いのわかれそうな文章。
    自分的には好きな文章だったので著者の他の作品も読んでみようかなと思った。こういう微妙な心理の機微を描いた作品は好きかも

  • 恋愛関係なんだけど、距離感がいいというのかな、ちょっと植物とまでいかなくて、虫がたわむれてるみたいな。最後のほうになってきて、ああ、もう終わっちゃうなとさびしくて惜しい気持ちになった本は本当に久しぶりでした。

全1105件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

川上 弘美(かわかみ・ひろみ)
1958年生まれ。96年「蛇を踏む」で芥川賞、99年『神様』でドゥマゴ文学賞と紫式部文学賞、2000年『溺レる』で伊藤整文学賞と女流文学賞、01年『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、07年『真鶴』で芸術選奨、15年『水声』で読売文学賞を受賞。ほかの作品に『風花』『どこから行っても遠い町』『神様2011』『七夜物語』『なめらかで熱くて甘苦しくて』『水声』などがある。2016年本作で第44回泉鏡花文学賞を受賞した。


「2019年 『大きな鳥にさらわれないよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

センセイの鞄 (文春文庫)のその他の作品

センセイの鞄 単行本 センセイの鞄 川上弘美

川上弘美の作品

センセイの鞄 (文春文庫)に関連する談話室の質問

センセイの鞄 (文春文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする