龍宮 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 141
  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167631048

感想・レビュー・書評

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  • 人と、人にあらざる聖なる異類。
    読む前は梨木香歩の「家守綺譚」を思い浮かべたのだけど、読んでいるとちょっと違う。
    「家守綺譚」は人と人にあらざるものは、互いにあまり違いを感じていないように思う。
    ちょっとした個性程度の差。

    この短編集に収録されている作品の中で、人と人にあらざる者は融け合い混ざり合っても、決して同化はしない。
    けれども、人が確固とした人であるのかというと、それもまた違う。
    本人が人と言っているだけで、それは私たちが通常知っている人とは明らかに違う。
    限りなく狐に近い人。生きる気力を取り戻すためにモグラのコートのポケットに入り込む人。壁の漆喰を食べる人。
    それでも、人と人にあらざるものは違うものとして書かれる。

    海から上がり、人の男とまじわり何人も子どもを産んだ海馬は最後海へ帰り、蛸は人間になって二百年経っても、やっぱりぐにゃぐにゃと揺らぐのだ。

    人間の会社に勤め、仕事帰りにアレを拾って帰るうごろもち(モグラのこと)。

    “アレも、生きる精というもののなくなってしまった人間たちなのかもしれなかった。アレは、ほうっておくと、虚になってしまうのだ。アレ自身も、アレのいる場所も、そのうちにはアレのいる場所の周辺をも、虚にしてしまう。実でないものにしてしまう。”

    そのアレを家に持ち帰り、人間の社会に戻っていけるまで家で放っておくモグラ。
    声を掛け合わず、視線を合わさず、触れあわない人間を、寒いと思う。暖かいのが好きなモグラは、それでもアレを拾って人間に返す。
    そんな「うごろもち」が好きだな。

    読んでいて内田百閒を感じたのだけど、作者は百閒先生を敬愛しているらしいので、あながち間違った読み方をしていない、と安心。
    全ては勘違いだ!となると、やっぱりへこむものね。

  • エロティックで幻想的な大人のための神話。お伽噺。

    川上弘美の魅力が全開。

    不思議な話なのに、違和感がない。
    現実と非現実の境目が曖昧になる。

    哀しみと暖かさ、愛しさと厭わしさ、
    相反する感情を内包した小説。

    年齢を重ねるごとに読まなくなる作家さんも多い中で
    川上弘美の作品は、どんどん好きになる。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「相反する感情を内包した小説。」
      川上弘美って、ドロっとしていたり、夢の中みたいだったり、ほんのり温かだったりして、掴みどころが無いように思...
      「相反する感情を内包した小説。」
      川上弘美って、ドロっとしていたり、夢の中みたいだったり、ほんのり温かだったりして、掴みどころが無いように思えるのが好きと言うか魅力的です。。。
      つまり何か良く判らないけど惹かれるんです、、、スミマセン莫迦で。。。
      2013/03/19
  • 「うごろもち」と、「島崎」が好きでした。
    特に、うごろもちの最後が。

  • 人ではないものの短編集。物の怪?忌憚とでもいうのか。
    動物以上人間未満という表現が相応しいかはわからないが、それらを通すことでふんわりしんみりと、人間の不思議さや不便さとやらを感じることができる。
    現実世界に溶け込む感じの話なので、却って完全なファンタジーよりも世界観が緩い。私個人はこの世界観に入り込むことができなかったので★2つとしたが、ワクワクドキドキな起伏は無いけれど不思議をしんみり読みたい人にはいいのかもしれない。

  •  読んでいて感情が高ぶったり、あるいは落ち込んだりしない。
     どこまで読み進めても感情はずっと平坦なまま。
     そんな感じ。
     そしてそんな平坦さが意外と心地よい。
     何食わぬ顔付きでそれとなく読み手を自分の世界に誘う。
     ただ、最後の「海馬」は非常に切なく、心が強く揺さぶられた。

  • この不思議な世界にどっぷりと浸かりました。 ほとんど訳がわからないのですが、訳がわからないところが好きです。 人間ではないものがたくさん出てきますが、夢のような、でもどこか現実のような気もします。このような世界が現実のどこかにあるような。
    昼も夜も尽きるところ、を目指します。

  • 怪しくて、妖しくて、不気味。
    湿り気を帯びていそうな舞台であったり、一見ヒエッと残酷に思えたり。
    けれどどこかどこかあっけらかんとしていてドライなのがおもしろい。

    「ヒト」と「ヒトでないもの」が混じり合った世界。
    この「残酷」、なんていうのも「ヒト」としての感覚、価値観なだけかと納得してみると、なんとなく落ち着かないようなものがあった話にも、親しみが湧いてくる。

    最初の1,2編で苦手に思われた方、『島崎』はいかがでしょう。
    くすんだちょっとダークな色合いの大人の童話という印象。

  • 川上弘美さんのパスタマシーンの幽霊を探しにいって この本を見つけました
    不思議な人間でわないものの話
    島崎が好きです。

  • 最初の夫は、ひどく人間くさかった。
    どうあっても、人間以外の、何にも変化しなかった。79頁


    夜寝る前の、ほんの少しの時間、一話の半分ずつ読んで、ふわわぁぁーとなって、眠る。
    ぐにゃぐにゃと、眠る。

    熱く湿っぽい感じを皮膚に残したまま、眠る。

    けして良い気持ちではない、夏の夜の思い出。

  • 川上さんを読むたびに思うのです。私はこんな作品は嫌いなはずだと。
    不思議な幻想譚です。ファンタジー。登場するのは人間になった蛸、膝ほどの大きさの14歳の姿の曾祖母、ケーンと鳴く老人、台所に出没する小さな荒神。。いずれも人にあらざるもの。私はこうした幻想作品にはあまり手を出さないはずなのです。
    それでも川上さんの世界に入り込めます。それは、そうした不思議な世界がおどろおどろしくでもなく、少女趣味的なファンタジックでもなく、ごくありふれた事象の様に描かれているせいかも知れません。フワフワと心地よく川上ワールドを漂えば、それはそれで心地よいのです。

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著者プロフィール

1958年東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。著書に『蛇を踏む』(芥川賞)、『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)、『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)、『水声』(読売文学賞)等。

「2018年 『話しベタですが… 暮らしの文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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