龍宮 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167631048

感想・レビュー・書評

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  • 人ではないものの短編集。物の怪?忌憚とでもいうのか。
    動物以上人間未満という表現が相応しいかはわからないが、それらを通すことでふんわりしんみりと、人間の不思議さや不便さとやらを感じることができる。
    現実世界に溶け込む感じの話なので、却って完全なファンタジーよりも世界観が緩い。私個人はこの世界観に入り込むことができなかったので★2つとしたが、ワクワクドキドキな起伏は無いけれど不思議をしんみり読みたい人にはいいのかもしれない。

  •  読んでいて感情が高ぶったり、あるいは落ち込んだりしない。
     どこまで読み進めても感情はずっと平坦なまま。
     そんな感じ。
     そしてそんな平坦さが意外と心地よい。
     何食わぬ顔付きでそれとなく読み手を自分の世界に誘う。
     ただ、最後の「海馬」は非常に切なく、心が強く揺さぶられた。

  • この不思議な世界にどっぷりと浸かりました。 ほとんど訳がわからないのですが、訳がわからないところが好きです。 人間ではないものがたくさん出てきますが、夢のような、でもどこか現実のような気もします。このような世界が現実のどこかにあるような。
    昼も夜も尽きるところ、を目指します。

  • 怪しくて、妖しくて、不気味。
    湿り気を帯びていそうな舞台であったり、一見ヒエッと残酷に思えたり。
    けれどどこかどこかあっけらかんとしていてドライなのがおもしろい。

    「ヒト」と「ヒトでないもの」が混じり合った世界。
    この「残酷」、なんていうのも「ヒト」としての感覚、価値観なだけかと納得してみると、なんとなく落ち着かないようなものがあった話にも、親しみが湧いてくる。

    最初の1,2編で苦手に思われた方、『島崎』はいかがでしょう。
    くすんだちょっとダークな色合いの大人の童話という印象。

  • 川上さんを読むたびに思うのです。私はこんな作品は嫌いなはずだと。
    不思議な幻想譚です。ファンタジー。登場するのは人間になった蛸、膝ほどの大きさの14歳の姿の曾祖母、ケーンと鳴く老人、台所に出没する小さな荒神。。いずれも人にあらざるもの。私はこうした幻想作品にはあまり手を出さないはずなのです。
    それでも川上さんの世界に入り込めます。それは、そうした不思議な世界がおどろおどろしくでもなく、少女趣味的なファンタジックでもなく、ごくありふれた事象の様に描かれているせいかも知れません。フワフワと心地よく川上ワールドを漂えば、それはそれで心地よいのです。

  • 感情的な湿っぽさではなく、ただ全体に70%~100%の湿度がある感じ。

  • 川上さんの短編集。
    人と人でない物との交流。
    最後の海馬が面白かった。
    多分これを読んだ人は人魚の話だと思うはず。
    なかなか読みすすめられなくて時間がかかってしまった。

  • 川上弘美さんの「龍宮」、2002.6発行です。不思議な奇妙な男と女の物語・・・、狐塚、荒神、轟など短編8話が収録されています。女性の優しさと気まぐれ、そして母性本能が混然一体となった世界でしょうか・・・?!

  • 短編。

    酒を飲みながら話しだす、昔は蛸だったという男。
    14歳の姿であらわれた神々しい存在となった曾祖母。
    時々ケーンと鳴く老人と、ヘルパーの関係。

    台所の神様と欲求不満主婦。
    人間を拾って歩くモグラ。
    姉たちとの各々の生活、妻との日々。

    先祖に恋をした200歳の子孫。
    海に住んでいた頃の記憶、人間との生活。

    2008年に一度読んでいるので再読。
    お話の最後の終わり方がどれもいい。

    「島崎」
    愛してるの。何回もわたしはつぶやいた。先祖の膝の上で、島崎の夕日をじっと眺めた。

    「海馬」
    私は海馬に戻って、海を泳いだ。~昼も夜も尽きるところをめざして、どこまでも、走りつづけた。

    不思議な、川上ワールド。)^o^(

  • 人間でない者たちも多く出てきてどの話も独特な不思議な世界感だった。

  • 『神様』のあの感じ。

    川上弘美の、好きだなあと感じた成分がぎゅっと詰まっておりたいへん楽しく読めました。

    曾祖母のオトさま、が好き。

  • ふぅ。なんだかあっちの世界に引きずり込まれそうな本だった。

    人の話じゃないんだけど、なんかその感覚知ってるような気がするんだよな〜。
    自分の中にもあるような…
    あんまり考えると自分まで海に帰ってしまいそうだからこの辺で…

    島崎が好き センセイの鞄思い出す。

  • 幻想小編集

  • 【本の内容】
    女にはもてるのに人間界にはなじめなかった蛸、七世代前の先祖にひとめぼれする二百歳の女、曽孫の前に突如現れ、放浪の果てに自然神となった曽祖母、男の家から海へと帰る海馬―。

    人と、人にあらざる聖なる異類との交情を、説話的な要素と日常のリアリティを融合させて描いた玉手箱のごとき8つの幻想譚。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    うつし世の小路と地続きに異界の小路が網の目のようにはしっている。

    そんな感じ。

    ふたつの世界は「越境」するまでもなくすでに混ざりあっていて・・・電車のドア付近に立っている彼、狐かもしれない。

    斜め向かいの席の彼女、鼬かもしれない・・・

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 川上弘美は、こういう幻想的というよりはいっそ不条理な短編がいちばん面白いなと個人的に思います。

    「北斎」「龍宮」「狐塚」「荒神」「鼬鼠」「轟」「島崎」「海馬」

  • どのような考察や分析を並べてみても、
    ただの戯れ言にしかならないでしょう。

    心して読むように。

  • なんだか気色悪い、気味が悪い。しかし、続きが気になって、ぺらりぺらりとページをめくってしまう。
    ヒトも、もとをただせば海から来たんだよなぁ。

  • 幻想的であるのに妙に生々しく現実的。

  • 人と人じゃないからこそ深いところで繋がっていける。
    言葉にすることには何の意味もなく、
    言葉にできない思いこそが重要。
    関係性が深くなればなるほど
    バランスは不安定かつ揺るがないものになっていく。

  • 男と女でいることが億劫に感じられました。ああ生きているって疲れる。男がいるからなんだか嫌だ。女であるのが悲しいけどそうあるべきだ。
    睦み合うことのしんどさ、みたいなものを感じました。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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