- Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167640118
感想・レビュー・書評
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相変わらず宇江佐真理は上手い。人物が眼前に浮かんでくる。主人公の料理屋の隠居の清兵衛の心理も手に取るように描かれている。清兵衛が死にかけていたとき、霊感を持つ親しい蝋燭屋の隠居の甚助が死神を追っ払って助けてくれる。その関りで、何人かが集まって、怪奇な話を聞く会に参加することになる。作り話ではなく、本当にあった話をするというのがみそなのだが、そのうちに話だけで終わらずに、会の人間関係がぎくしゃくしたり、実際の怪異に出会ったりすることになる。最初は、興味本位で面白いなと思っていたことが、だんだんとそうでなくなってくるのだ。その辺りが、結構怖い。最後も…。読む楽しさは堪能させてくれるが、ほんわかとは終わらない。苦みがある。それもまたよしか。
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料理茶屋「平野屋」の隠居・清兵衛は53歳。
家督を譲り暇をもてあました彼は、「話の会」と
いう集まりに顔を出し始め…。表題作他、世の
不思議を描いた7編を収録。江戸の四季折々に
語られる、人情あふれる宇江佐版・百物語。 -
本当にあった怖い話だけ披露しあう『話の会』。死の恐怖に怯える清兵衛は霊感を持つ友人・甚助に誘われ、奇妙な出来事に遭遇するようになる。宇江佐真理版『百物語』。
テレビもネットもない時代、当然情報は人伝になる。直接的な恐怖という好奇心は、自らの寿命と交換しているようだ。次々と魑魅魍魎の世界に足を入れていく会の参加者たち。じわりじわりと迫ってくる恐怖が何とも言えない怪奇連作集。 -
けっこう怖かったです。
八丁堀の旦那がおかしくなるあたり。
最後は寂しくなりましたが、こういうものなんでしょう。 -
じわりと怖くなる感じが面白かったです。読んでいる時はたいして怖いと思いませんがじっくり想像してみるとぞわっと… 宇江佐さんの文体はとても読みやすいです。
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百物語ものだけど、ほかとはちょっと違う。やっぱり本当に怖いのは現世の人の心。人は死ぬのが怖いんじゃないんですよね。やはり大好きな人たちと別れるのが怖いんです。怖いと寂しいは同じ。読後はなんだか寂しくてしょうがない私は人間としてまだまだみたいです。
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面白かった!
世の中で怖いものは狐狸の類ではない、人間の心に棲む深い闇だ。闇に打ち勝つには気心しれた友達と、心の底から笑い、語り合うことだけだ。それができれば怖いものなんかなくなるんだ。 -
"時代小説を書く現代作家"を挙げ始めると、遅からず名前が出てくるであろう作家が、宇江佐さんである。
そうと知っているくせに今まで読んだこともなかったので、この機会にと思い、本作を手に取ってみた。
話は、主人公の清兵衛が自身の死に対する恐怖を自覚するところから始まり、多くの奇妙な事件と関わり合いながら、その認識を改めていくというもの。
文章が非常に軽く、さくさくと読み進められる。
言葉による表現よりも登場人物の心理描写を優先して素直に書いているためだと思われるが、それ故に「物足りない」と感じる部分も多い。
ただ、その軽快なリズムのままに、あの最終話を書き切ってしまえる力は、さすが。
文章と内容における重さのズレのようなものが、本書そのものの「怪奇さ」を生み出しているのかもしれない。 -
隠居やお師匠や医者が集まって怪異を語る会。
次第に目の前で怪異が起こり、そして本人達が巻き込まれていく。
彼岸と此岸の境をうろうろすると、ロクな事にならない。
ゾクゾクするような怪奇、というのは無く、不思議な話という印象。
生者が怖いか、死者が怖いか。
結局参加者達は死に魅入られてしまっていたのかな。 -
宇江佐さんのいつものほのぼの節を期待して手に取っただけに、このうら寂しいエンディングが切なかった。
死を恐れる平野屋が、この世の怪異になれるためにと加わった、怪奇談の会。
職業も立場も年齢もそれぞれ、息の合うメンバーに巡り会えたと喜んだのつかの間‥
予想通りの結末、ではないけれど、十分に寂しく切ない話だった。
秋の夜にはよい話、でも、寂しすぎて年配の方には勧めません。