月のしずく (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.45
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  • (5)
本棚登録 : 1504
レビュー : 191
  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167646011

感想・レビュー・書評

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  • 浅田次郎さんの小説を読むのは三冊目くらいだけど、女の人より男の人の支持者が多いような気がしている。少なくとも私の周りで浅田次郎さんが好きだと言っているのは全員男の人。
    というのも、この短編集を読んで少し解った気がする。
    あらゆる意味での“男のロマン”が詰まっているように思えたから。

    表題作はまさに“男のロマン”。
    コンビナートの荷役を30年近くしている冴えない40代の独身男の元に、ある十五夜の晩、ひょんなことから美しい20代の女が転がり込んでくる。
    というプロローグからロマンが溢れているように思えるし、主人公の男はこれでもかというほど純朴で、美しい女は気が強い、というところもまさに。

    その他も、不倫の関係を精算したあと相手の女に少しの執着心を見せる中年男が主人公の「琉璃想」は、切なくて物語自体は好きなのだけど、主人公の行動は女としては理解しきれない部分もあったりする。
    任侠の世界やバイオレンス的な世界に対する憧れが見え隠れする物語もある。
    女性が主人公の物語であっても、どこか思考が男性的であるような気がした。言ってしまえば「女はたぶん、もっとずる賢く立ち振る舞うよ」と思ってしまう感じ。笑
    それだけ美しい結末のお話が多かった。

    映画化に向きそうな物語ばかり、と思っていたら、実際の「銀色の雨」は映画化されているみたい。
    ヤクザに匿われている殺し屋と情婦とその情婦を愛する少年のお話。

    女よりもきっと男のほうが理解して感動もするだろう。と感じた作品群でした。

  • 愛した人が例え自分には決して振り向かず、
    他の人を想い続けているとしても、 愛してきた自分がいるからいい
    という台詞があって、泣きそうになった。
    自分はそこまで好きになれる人に出会えるだろうか。

  • 浅田次郎の本がとにかく好きだ。
    これも、なぜ見落していたのかと思った一作。
    人間の儚さと強さが静かなトーンで書き綴られている。
    そして、いつものように歴史モノや海外モノは「どこでこの人はこんなに知識を拡げたのか」と唸らせられる。
    面白かったです。

  • 短編集。『銀色の雨』『月のしずく』がよかったです。久しぶりに大人の男と女の物語を読んだような気がします。どれも終わり方に余韻が残って、この後二人はどうなったのか?たぶん幸せになったのだろうと思う。そんな風に思わせる読後感の良い全7編でした。

  • 久しぶりに浅田次郎さんの作品を読んだけれど、時々涙が出そうになり、さすがに上手だな、と。
    特に独白部分がよかったし、ラストが読者がこうなってほしいと思うような展開になり、読後感もよかった。

  • あまりこういった恋愛小説の類は読まないのですが。。。
    浅田次郎さんという作家はとてもエモーショナルで、私の中では「泣かせの次郎」。これでもかと泣かせを迫るのですが、どういうものかそれが余りいやらしくない。そのあたりの上手さがこの作家の特徴のように思います。
    一方、冷静になって考えると、しばしば「何でそうなるの?」と思われるストーリーの必然性の無さが気になるところも有ります。特に長編ではそのあたりが気になってました。
    短編は今回が初めてです。やはり「何故」は感じるところが無いとはいえません。しかし短い場面を切り取るという短編の特性ゆえでしょうか、長編よりもその傷が浅くて済むようです。長編よりも寄り爽やかで、一気に読み上げました。

  • 酒好きの中年おっさん向け良質短篇集。
    どの話を気に入るか、人によって好みが分かれそうですね。
    個人的には「瑠璃想」がお気に入り。

    ★4
    月のしずく、聖夜の肖像、銀色の雨、瑠璃想

    ★3
    花や今宵、ふくちゃんのジャック・ナイフ、ピエタ

  • 【月のしずくのひかる場所】

    父が浅田次郎を読んでいたと聞いて僕も読んでみようと思った。子どもの頃、流行本ばかり追いかけていた僕に父はこういった事があった。

    読んでそれなりに感動して、それで終わりみたいな本は読むな。十年考えられるような本を読め。

    今、思うとなかなかいいことを言っているように思う。宇宙学から哲学、詩と歌、子どもの頃の僕が言うに面白くない本ばかり読んでいた父が浅田次郎を読んでいるイメージはなかった。つまり僕の中での浅田次郎のイメージは、それなりに感動してそれで終わりみたいな本を書いている作家だったので、父が嫌いな分野だろうと思っていたのだ。まぁ、こうやって書けば大体読了後の感想は絞られると思うが。結果は打ち破られる事になる。

    月が好きな理由はなにかと聞かれたら、未完成のところ、自分だけじゃ光れないところ、そして一日中会えるところ。私達にとても近い、そんなふうに感じるからだ。月のしずくがひかる場所。それは、わざわざ台座があるような王族お誂え向きな場所じゃない。もっと汚くて普通で平凡でそして人の目の中の端でしか光らないような場所だってそう思う。

    美しさって完成してたり、整っていたり、綺麗だったりすることだけじゃないと思う。夕暮れあの一瞬だけ光った砂浜のガラスだって、立派な宝物だから。この本の物語は人の情と愛、そして業を兼ね合わせた、人間浪漫。

    父が浅田次郎作品になにを思ったのかもう分からないけれど、でもなんとなく父の心の奥のやわらかいところが乾かずにいたのは月のしずくで濡れていたからかもしれないって思った。

  • こんなに一途な男が(=いちぶ女性も出てくるが)ホントにいるのかよ!? という短編集ですが,それはそれとして,ストーリーにはきちんと惹かれます!
    1.月のしずく:蟻んこ(=コンビナートでパレットに品物を積み込む現場作業員)と銀座の女性の話
    2.聖夜の肖像:3人出てくる.パリに絵の修業に行った男性,その人のかつての恋人だった女性,あとはその女性のいまの夫.
    3.銀色の雨:これも3人出てくる.逃亡中の暴力団の鉄砲玉と,その相手をさせられる女性,その女性が面倒をみている高校生(=やくざの事務所にいながら,ちゃんと勉強してる).この話がいちばん面白かったかな.
    4.瑠璃想:敗戦時の中国から,極限状態で引き揚げてきた当時6歳だった男の話.(ちょっと印象うすい)
    5.花や今宵:男女ふたりの話.似た者同士といっては単純すぎる?→それぞれ傷心で飲みすぎて,中央線を乗り過ごしてとんでもない田舎の駅に着いてしまった,という話.
    6.ふくちゃんのジャック・ナイフ:柳ジョージの「アフリカの夢」(だっけ?)という曲を思い出しました.
    7.ピエタ:イタリアが舞台.母に捨てられた女性と,その母が再会.娘には中国人の(いちおう)恋人が付いてきた.この男性が泣かせる.中国でも一般のひとはピュアなのかね? でもこれはフィクションですからな.

  • どの話も、主人公が作品の中で本当の自分の気持ちに向き合っている。
    自分の心に向き合うというのは難しいものだ。
    人は、知らず知らずのうちに、いろんな気持ちをなかったことにしてしまっている気がする。
    けれども、それは本当になくなったわけでなく、心の奥底の一番柔らかいところに残っていて、時々ちくりと針を刺す。
    自分の心にしっかり向き合うことなしに自分の道を歩き続けることは難しい気がする。
    だからなおさら、自分の心に向き合える機会に恵まれるのは幸せなことだと思う。

  • 多分ああいう感じなんだろうなと、わかってないようでわかったような雰囲気のある浅田次郎。そういうわけでしばらく避けてきたんだけど、短編集だから良いかなと思ったのが間違い。

    工場のパッキンの仕分けと品出しをしている、男やもめの40過ぎ。夜にフラフラとしていたら、やくざ者と見られる男が、銀座あたりのホステスを車から蹴り飛ばし、喧嘩の上さるところを見かける。行き先のないホステスを一晩泊めることになったが…。

    全体に、純文学になりきらないし、人間ドラマというほどでもないフワフワとした感覚の小説が続く。全体に漂う厭世観や投げやりな雰囲気が書きたいというところはわかるのだが、なんというか、のめり込んだりするほどのものでもない。

    最後の過去に捨てられた、実の母親に、好きでもない男と結婚すると言いにローマまで旅立つという話は、女性作家かな?と錯覚させるものがあり、それはそれで秀でたテクニックなのだろうが、それで何か?と思ってしまうのだ。

    ヤクザの鉄砲玉に男として惚れてしまう話が、まあまあ読める程度。

    なお、微細な部分だが、背中側から抱きしめて寝るというシチュエーションがやたら出てくるのだけど、そういう性癖なのかしらん。

    ま、長編を一本くらい読んでから判断。


  • 男女の愛情であったり、親子の愛情であったり、色んな“情”に溢れた、なんかいい話ばかりの短編集。
    熟練の大将が、素材も調理方法も全て異なる料理を次々と出してくれるのを、美味い美味いと言いながら食べているかのように読み進めていきました。
    中でもグッときたのは
    『聖夜の肖像』
    『銀色の雨』
    『流璃想」
    『ピエタ』
    でした。って全7篇のうち4篇も選んでちゃ世話ないですね。
    どれも面白かったです。

  • 恋愛短編集。どんでん返しはなく、素直で美しい恋愛短編集。

  • 幸せな結末ではないけど、読んでホッとするようないい感じの短編集。
    さすがに文章がうまいので、サラサラ読める。

  • 一筋縄でいかない恋愛短編集。
    月のしずく:不器用な仕事人の主人公が報われる話は、読んでてうれしいし、この作者に書かせると上手い。
    聖夜の肖像:チャコさんはしあわせな女だと思うし、周りの人が素晴らしい。
    銀色の雨:恋した女性を追ったばかりに、別の世界に踏み込みかけたカタギの少年の話。
    瑠璃想:中国に故郷を持ち、過去に家族をそこに置いてきた社長の話。
    花や今宵:出てくる男女が意地っ張り。最後数行のスピード感が笑える。
    ふくちゃんのジャックナイフ:最後の映画のワンシーンのような描写のために、書かれたような話。
    ピエタ:大人の女とその母の話。「聖夜の肖像」「瑠璃想」とこの話は過去と折り合いをつける話。

  • 心が洗われる作品ばかりの短編集。1996~1997年の作品で、この頃の浅田さんの作品が私は一番好き。神様のように善良で惚れた女の為なら何でもする男。その人間性に惹かれていく女。こんな感じの設定が多いですが著者の引き出しの多さで、どれも新鮮で哀愁があり余韻が残る。コンビナートの荷役をしているさえない男と美しい女との話の「月のしずく」やパリで別れた恋人を忘れられないままの妻とそんな妻を一途に愛する「聖夜の肖像」。若い愛人との別れと不幸な自分の生い立ちに思いを馳せながら故郷中国を歩く「琉璃想」が良かった

  • P352

  • 2016_08_18-0085

  •  妻子持ちだった恋人とひどい別れ方をしたリエはたまたま居合わせた辰夫の家に厄介になることに。
    「お腹の元恋人の子供がいるの、お願いちょっと|中絶《おろ》すの手伝ってよ」
     しかし純粋な打算で近づいた男は何を勘違いしたのかその子を二人で育てようなどと言ってくる。はあ、とんでもないお馬鹿な奴もいたもんだ。こんないまだに汲み取り便所を採用しているようなアパートに住む男がこの私と釣り合うとでも思っているのかしら。学もなさそうだし、たぶん身の程知らずという言葉も知らないんじゃないかしら。でもいいわ、私は優しい女だからあなたが安物の時計をプレゼントしてくれたって窓に叩きつけて壊すぐらいで許してげる。
     まったく男ってのは女の人格なんてどうだっていいんだわ。下半身で物事を考えるっていうのは、あながち間違っていないのかもしれないわね。馬鹿みたい。行きずりの男に堕胎の手伝いを申し出るような女のどこが良いて言うの? 仕方ないから一発やらせてあげる、それでおしまいにしましょう。そしたらこの子を堕ろすのを手伝ってね。
     次回『社会の底辺が安物の腕時計をプレゼントする前の「ただいま」が死ぬほど気に障った』――これがブスなら話にもならない

  • 少し話が大げさな感じ

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著者プロフィール

浅田 次郎(あさだ じろう)
1951年、東京都出身。
1995年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、1997年『鉄道員』で直木三十五賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、2006年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で吉川英治文学賞を、2010年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞、2016年『帰郷』で第43回大佛次郎賞それぞれ受賞。2015年には紫綬褒章も授与されている。
2018年現在、日本ペンクラブ会長、直木賞、柴田錬三郎賞、山本周五郎賞の選考委員を務める。2018年12月15日、『輪違屋糸里』が藤野涼子、溝端淳平、松井玲奈らの出演で映画化。

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