月のしずく (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1504
レビュー : 191
  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167646011

感想・レビュー・書評

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  • 心が洗われる作品ばかりの短編集。1996~1997年の作品で、この頃の浅田さんの作品が私は一番好き。神様のように善良で惚れた女の為なら何でもする男。その人間性に惹かれていく女。こんな感じの設定が多いですが著者の引き出しの多さで、どれも新鮮で哀愁があり余韻が残る。コンビナートの荷役をしているさえない男と美しい女との話の「月のしずく」やパリで別れた恋人を忘れられないままの妻とそんな妻を一途に愛する「聖夜の肖像」。若い愛人との別れと不幸な自分の生い立ちに思いを馳せながら故郷中国を歩く「琉璃想」が良かった

  • 短編小説。どの話も、男女のいろんな愛のカタチが切なく、そしてとても優しく描かれていた。

    読み終わった後、じわーっと胸に暖かさが残る。それはどことなく月明かりのようなぼんやりとした暖かさにも似ていて、「月のしずく」っていうタイトルがとてもよく似合う本だと思った。

    通勤中に電車で読んでいたのだけれど、どうしても涙をこらえられなくて、目に涙をいっぱいためながら本を読んでる変なひとになっちゃった。

    失敗したっていい、どんな間違いをしたっていい、ちゃんと自分に見合う素晴らしいひとが身近にきっといて、その素晴らしさを拾い上げられるひとにならねば、と思わせられました。

    全部好きだったけど、特に好きだったのはパリで出逢った画家の恋人が忘れられない女性のはなし。
    「オルヴォワール」
    美しい響き。フランス語の美しさを知っているからこそ、最後に交わすフランス語の別れの挨拶がとても切なく、潔く、美しく心に響きました。

  • 2008年1月27日読了。

    全七篇の短編集。相変わらずの味わいがとても心地良いです。
    そしてなにげに、こんな人でコミック化してくれたらなぁと読み進めておりました。
    単なる私の希望だけど、もし出来たら描いてもらいたい作家さんを()内に挙げておきます。ていうか脳内でこの人たちの絵で話が動いてましたが(*^_^*)


    「月のしずく」(本宮ひろ志)
    コンビナートの荷役をして三十年余り、四十過ぎの独身男の元にある日降って湧いたような美しい女。不器用な男と、身勝手な男に疲れたやはり不器用な女の話。

    「聖夜の肖像」(柴門ふみ)
    愛し合った男と別れた後、ふと知り合った男性と結婚。その夫との長い暮らしは平凡だけど決して不幸ではないけれど。妻の過去への思いと、ある聖夜の奇跡。

    「銀色の雨」(六田登)
    新聞奨学生の真面目だった生活から逃れた先に、慰めてくれた知り合いの女。その間にある事情で入りこんできた、ヤクザの匿う殺し屋との奇妙な三角関係。

    「琉璃想(リウリイシアン)」(弘兼憲史)
    社内報のグラビアに「帰郷」という企画を出し、カメラマンだけを同行し中国に帰郷した経営者。幼い頃に住んでいた土地へ。出発前、彼の秘書である愛人とカメラマンとの関係を知るが。

    「花や今宵」(安野モヨコ)
    愛人は今年もやはり誕生日を祝ってくれなかった。友人たちと飲んで帰る道すがら、電車に乗り過ごし、気が付くと知らない男と見知らぬ無人駅に。何かを抱えてそうな(最近婚約者から結婚の解消をされた)彼と一夜を共にすることに。

    「ふくちゃんのジャック・ナイフ」(土田世紀)
    うちの店に長く勤めていた「ふくちゃん」は、店の次男坊の僕とよく遊んでくれた。子どもだった僕には、ひとつひとつが新しかった。裕次郎に憧れていたふくちゃんは、ある日僕と出かけて、ジャックナイフを買った。それはとてもふくちゃんに似合っている気がした。

    「ピエタ」(吉野朔実)
    幼い頃別れた母を探し、ローマに婚約者と旅した。母も波乱万丈だったかもしれない。だけど母のいなかった私の今までの暮らしは。謝って欲しいわけじゃない。優柔不断な婚約者とも右往左往しながら、母や自分の想いを知る。


    私の知識はちょっと偏ってるかもしれないけど、これだけ広いイメージの話が書ける浅田さんはやっぱりすごいよなぁ。
    「コミック化するとしたら?」またこのお題でやってみようっと。

  • 時代背景は今より少し前、私たちの両親や祖父母の頃だろうか。それでも感情面でとても共感出来る。工場でパッキンを積むのが仕事のタツの想いを描く表題作「月のしずく」、故郷の中国を訪れるワンマン社長の想いを描く「琉璃想」が私のお気に入りです。

    辛い時代を忘れる事で自分を保つ生き方、惨めな気持ちも淡々と受け入れる生き方、どの話も登場人物は地に足をつき一生懸命に生きています。彼らを抱きしめたくなる。

    この本、読み終えたら図書館に寄付しようと思っていたけれど、しばらく手元に置いておく事にしました。自分が年齢を重ねたからこそ味わいを感じられる本だと思う。

  • 泣けた。心をつかまれた。

  • 浅田次郎の短編集。
    あまり短編集は好きではなく、読まないのだが、この本の話はどれも引き込まれ、あっという間に読んでしまった。

    話に深みがあって、大人の小説だと感じた。

    お目当ては、表題作の「月のしずく」だったが、どの話も個性的で面白い。

    「瑠璃想」では、戦争孤児として中国から帰還する姿と現在の恋愛の姿をシンクロさせたお話。
    描写もきれいで、心があらわれた。

  • 再読だが、あらためて感動。特に表題作は秀逸。

  • この短編集の最後の作品「ピエタ」を読んでもう号泣しまくりました。桐野先生の『OUT』の様に暗唱できるまで100回以上は読み返しています。暗唱しながら泣いてましたねぇ。

  • 表題作「月のしずく」は、荷役作業30年の男と美女との出会い、その後の行きがかり上の協同生活を通して、互いの心が変わっていく模様を描いている。
    主人公 佐藤辰夫の心には、神が宿ってする気がします。
    リエという女は、不倫相手の社長とケンカして、辰夫のおんぼろ屋に転がり込むことになった。
    この生活の中で、リエは、辰夫のことを利用しようとする。
    その為なら、”抱かれてもいい”という。でも辰夫は、”抱かない”。「こんなことは、よくない」といって。こんな奇特な男がいるなんてと思ってしまうのは、あまりにも自分が俗っぽい考えしか持たないからかな。
    辰夫は、リエという女性に魅かれていく。彼女が妊娠していることも含めて引き受けようとする。その心情は、神が授けたものではないだろうか?30年荷役作業を続けたことで、修練された心のせいなのか? 彼はリエの美しさだけに魅かれたわけてではないと思いたい。彼女の中にある”哀しさ”を感じたせいだと思う。
    この世には、時々、神が遣わしたと思える心を持った人間が、ひっそりと暮らしているのだと思う。彼ら自身は、そのことに気付かないまま。それに気が付けるのは、その傍を通りかかった、傷ついた人だということだろう。

    「聖夜の肖像」は、切なさと共に、心の中に人の愛を感じることの喜び
    夫と二人の子供を持ち20年という歳月を過ごしながら、
    夫に対し「愛してないのよ。こんな贅沢させてもらって、かわいい子供を二人も生ませてもらって、おかあさんの面倒までみてもらって、それでもあなたのこと、愛してないのよ。今でもあの人のこと、大好きなのよ」という妻。妻は夫と出会う前の恋人への気持ちを終わらすことができないまま、暮らしてきた。


    「聖夜の肖像」「花や今宵」は、自分の生き方に納得しきれないまま来た女性の気持ちが変わっていくシーンが、心を少々揺さぶる。

  • 7篇からなる恋愛をベースにした掌篇小説。
    最初の1篇が月のしずくで30年近く千葉のコンビナートで荷役として働いて男のところに、銀座の美人ホステスが転がり込む。最初はどう扱っていいか分からない状態であったが2,3日するうちに彼女の今の状態を聞き情が写っていく。純朴な男に癒される。
    重松清のとんびで出てくるやっさんに似ている。

  • 月のしずく 聖夜の肖像 琉瑠想 花や今宵

  • 号泣した^q^全部名作
    中でもお気に入りはピエタ
    自分を捨てて男とイタリアに逃げた母親に憎しみと愛情を抱く主人公と主人公に軽視され利用されていると知りながら彼女を愛している言葉の通じない中国人男性の関係に感動。

  • 三十年近くコンビナートの荷役をし、酒を飲むだけが楽しみ。そんな男のもとに、十五夜の晩、偶然、転がり込んだ美しい女?出会うはずのない二人が出会ったとき、今にも壊れそうに軋みながらも、癒しのドラマが始まる。
    表題作ほか、子供のころ、男と逃げた母親との再会を描く「ピエタ」など全七篇の短篇集。

    ・・・表題作『月のしずく』かなり泣けます。
    描かれている作品の時代の背景が、今とは違う感じ。
    不器用でかっこ悪い男。は、ただそれだけで片付けられてしまいそうな現代を生きる私だけれど、この作品を読んで、何故か私の心は安らぎました。。
    不器用な男の中にある、切なくなる程の寛大な優しさ、愛を感じる。

  • 表題の「月のしずく」は、金はないけど真っすぐな心を持った中年男の話で、主人公のように運もなく先見の目もなくでも心は純粋で・・・という人は、きっとたくさんいるのではないだろうかと思わせる作品。「聖夜の肖像」は泣けた。他に愛する人がいたのに結婚してしまった妻が、夫から受ける大きな愛に呵責を感じる話。これも、ありそうな設定が何とも胸を打つ。

  • 全部で7編の短編小説集です。
    どれもすごく面白く、さくさく読み進められました。
    浅田さんの作品は情景が瞼の裏に浮かんでくるものばかり。
    すごく素敵な世界を見せて頂いた感覚です。

  • 浅田次郎の【月のしずく】を読んだ。

    表題作の【月のしずく】のほか、

    【聖夜の肖像】
    【銀色の雨】
    【琉璃想】
    【花や今宵】
    【ふくちゃんのジャック・ナイフ】
    【ピエタ】
    の7編の短編が納められた1冊だ。

    30年近くコンビナートの荷役をし、酒を飲むだけが楽しみの冴えない独身男の辰夫。ひょんなことから

    出逢った美女のリエに次第に恋心を抱いていく。年齢も離れ、育ちの環境もまったく違う2人が出逢った

    とき、恋愛に不器用な独身男は、切なく軋みながらも「優しさ」だけを背負って一途に突き進む。辰夫が

    欠けた月を見上げて「欠けちまったお月さんってどこ行ったんだ。溶けちまったか」と呟くシーンから展

    開していくクライマックスは不器用な男の「誠実」と「愛情」が静かにでもしっかりと強く沁み込んでく

    る。【月のしずく】

    若かれし頃、パリで出会った絵描きの恋人への想いを断ち切ることができず、今の平凡な夫にどうしても

    心の底から愛情を注げない久子。遠い昔の恋の記憶は歳を追うごとに久子の中で美化され大きくなってい

    く。そして聖夜。奇跡的に再会した恋人は今尚、絵描きとして道行く人の肖像画を書いていた。知ってか

    知らずかその恋人に久子の肖像画を書くよう頼む夫。久子と恋人の流れるような心の会話。そして・・・

    その全てを長い年月承知で受け止めていた夫の心に久子が気付いたとき・・・。【聖夜の肖像】

    【銀色の雨】は主人公の少年、和也が幼馴染の菊枝との恋と広島ヤクザの岩井の男気に影響され大

    人の階段を昇っていく姿が思わず涙が出そうなほど切なくて優しい物語だ。

    抗争で5人殺してしまったヒットマンの岩井章次。ホステスという仕事柄、世話になっている組から岩井

    にあてがわれることになった菊枝。菊枝の弟と嘘をつき岩井の身の回りの世話をする事になった和也。3

    人がそれぞれの事情で関わっていく。

    「章次さん、俺に許してつかあさい言うて頭下げはりました。人のおなごに手ェつけてしもた言いはりま

    した。俺、ずっと考えてました。俺、おとうちゃんやおかあちゃんや、俺のこと心配してくれた中学の先

    生や、学校行かしてくれた新聞屋のおじちゃんやおばちゃんや、それと―――それと、菊ちゃんのことと

    かも、みんな忘れてました。俺、ひねくれやから、誰にも頭下げんと、勝手ばかり言うてました。自分勝

    手ばかり言うて、ごめんなさいもおおきにも言わんと、生きてきました。章次さんは、俺を大人にしてく

    れはりました」

    「なんや、こっちが説教されとるようじゃが・・・のう、カズ。こんな、大人になるのはええけど、極道

    にはなるなや」

    この会話からクライマックスにかけて岩井と菊枝の筋通し方を目の当たりにしていく和也は、更に大人に

    なっていき、成長していく。ぜひ一読してもらいたい1編である。

    他の作品にもすべてに、愛と切なさと優しさが所狭しと詰まっている。

    こういう切なくも愛しい物語を書かせたら浅田次郎は天下一品である。

    果てしない愛情と男気。やはり浅田次郎は男の愛のバイブル(聖書)だ。

  • 浅田次郎作品に初めて触れたのは、この小説からでした。
    短編集なのに、長編大作を読んでいるような重みと感動があります。
    特に「ピエタ」は、主人公ほどかっこよくないけど、
    ちょっと共感できる部分もあって、すんごく涙、涙。

  • ボロ泣きした。

    なんで、いい人が幸せになれないのだろう。

    切ない。

  • 泣ける。(読了'07/11)

  • 浅田次郎の短編集!
    特に表題、「月のしずく」の話は涙無しでは読むことは出来ないこと必死・・とまではいかないかもしれないけれども感動間違いなし!
    「お月様のかけらは、どこにいってしまったんだろう?」
    最後の終わり方もキレイで感動が後からじわっとやってくる作品です

  • お奨め

  • 7 篇の短編集。
    とても良かったです。

  • 短編集。
    それぞれ立場がまったく違う主人公の話がどうしてここまで奥深く書けるんだろうと尊敬してしまう。それぐらい主人公がどれもいいのです。

    私が一番好きだった話は
    『聖夜の肖像』です。
    愛してるっていう言葉がこんなにも暖かく響いてきたのは初めて。ほんのり涙が出そうになりました。

  • 哀愁漂う短編集。「聖夜の肖像」のラストは言葉にならないほどすばらしい。

  • これまた浅田ワールド120%の短編集。「聖夜の肖像」は椿姫の中の「オリンポスの聖女」とコンセプトは同じ。全体的にはこちらの短編集のほうが出来がいいかな。「月のしずく」「銀色の雨」「花や今宵」の3編は秀逸。

  • 2006/06/28 wed
    <br>浅田次郎の短編集。表題作をはじめ7編が収録されています。で、今回はどれも良かった。どの話もそれぞれに良くて、それぞれに感動しました。『月のしずく』は、荷役夫の不器用ながら切ない思いにやられました。『聖夜の肖像』は、偶然出逢った瞬間からがもう切なすぎです。『銀色の雨』は、広島のヤクザに惚れましたっ!!超カッコイイ。『琉璃想』は、そして最期の父との別れがグッときました。きっと全てを思い出して主人公が一皮も二皮も剥けたんだと思います。『花や今宵』は、あり得そうでなさそうな微妙な感じが好きです。人の気持ちが刻一刻と変わっていく様子が面白い。『ふくちゃんのジャックナイフ』は、ふくちゃんが格好いいです。実際のところ、ふくちゃんはどうしたのか分からないけど、きっと船には乗らなかったんだろうなぁ…。『ピエタ』も人の気持ちが刻一刻と変わっていく様子が面白いですし、泣けます。<br>全編ともそれぞれの面白さがあって、甲乙つけがたい作品ばかりです。すごく身近にありそうな心の動きが、浅田次郎は巧いですね。

  • 真面目にでも不器用にでも、生きていられてよかったな。

  • 短編集で読みやすい。
    「聖夜の肖像」には号泣させられました。

  • ロマンチックな話がたくさん。
    なかでも「聖夜の肖像」が大好きです。

  • 男は金じゃないっス。

著者プロフィール

浅田 次郎(あさだ じろう)
1951年、東京都出身。
1995年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、1997年『鉄道員』で直木三十五賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、2006年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で吉川英治文学賞を、2010年『終わらざる夏』で毎日出版文化賞、2016年『帰郷』で第43回大佛次郎賞それぞれ受賞。2015年には紫綬褒章も授与されている。
2018年現在、日本ペンクラブ会長、直木賞、柴田錬三郎賞、山本周五郎賞の選考委員を務める。2018年12月15日、『輪違屋糸里』が藤野涼子、溝端淳平、松井玲奈らの出演で映画化。

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