壬生義士伝 下 (文春文庫 あ 39-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167646035

作品紹介・あらすじ

五稜郭に霧がたちこめる晩、若侍は参陣した。あってはならない"まさか"が起こった-義士・吉村の一生と、命に替えても守りたかった子供たちの物語が、関係者の"語り"で紡ぎだされる。吉村の真摯な一生に関わった人々の人生が見事に結実する壮大なクライマックス。第13回柴田錬三郎賞受賞の傑作長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    自分が想定していた感動のレベルを、大幅に超えてきた。物語の後半からは、感動する感情が十重二十重と幾重にも重なり、身動きが出来ず苦しくなるほど感動した。本気で家族を愛することを、体感を持って教えてくれる本当に素晴らしい本だった。実は小説を読んでも、ほぼ涙をこぼさないこの僕が、かなり珍しく涙をこぼしてしまった。涙を止めようとしても、直に心に訴えかけてくる。感情を抑えようとしても、抗えず感情がとめど無く溢れてくる。この「壬生義士伝」は、人間の奥底にある感情を、揺り動かし続ける傑作だと感じた。

    ネタバレになってしまうので、内容は書けないが、下巻の264ページを読んで、感情を揺り動かされない日本人は、果たしているのだろうか?そう感じてしまうほど、心が激しく揺り動かされるシーンだ。またこの264ページ以降は、エンディングに至るまで、ほぼノンストップで新たな真相が明らかにされ、新鮮な感動が途切れることなく続く。最後の約200ページは、涙もろい人であれば、恐らく最後までずっと泣き続けるほどの感動の波が、途切れることなく押し寄せてくる。

    あらすじは以下となる。

    小雪舞う一月夜更け、大坂・南部藩蔵屋敷に、満身創痍の侍がたどり着いた。貧しさから南部藩を脱藩し、壬生浪(みぶろ)と呼ばれた新選組に入隊した吉村貫一郎であった。“人斬り貫一“と恐れられ、妻子への仕送りのため守銭奴と蔑まれても、飢えたものには握り飯を施す男。元新選組隊士や教え子が語る非業の隊士の生涯を描く。

    浅田次郎氏は、物語の構成が巧みだなぁと心の底から感じた。基本的な物語の構成は、記者が吉村貫一郎の人物像を知るべく、昔新選組隊士だった人物をインタビューして訪ねていく構成だ。色々な人物に話を聞くが、実は最初の頃は、あまり良い話は出てこない。それどころか、出稼ぎ浪人や守銭奴と罵られ、最低な人物像からスタートする。そう、最初が最低のラインからスタートするのが巧いなぁと感じた。なぜなら後は、評価が上昇することしか出来ないのだから。二人、三人と元新選組隊士から話を聞けば聞くほど、良い話が徐々に浮かび上がってくる。そして、なぜ脱藩までしないといなかったのかの真相に辿り着いたときには、感動と共に深く納得も出来た。

    浅田次郎氏は、あくまでも徐々に主人公の評価を上げていくのが、とても自然でわざとらしくなく、そこが非常に技巧派のテクニックを感じさせてくれた。おそらく、今村翔吾氏が教科書と表現し、手本にすべきと思ったのも、物語の構成の部分なんじゃないかなと、僕は勝手に感じた。

    人を心から愛するとは、まさしくこの吉村貫一郎の生き様のことをことを言うんだろうと思った。今回浅田次郎氏から色々と学ばせて貰ったのと同時に、愛について少し思考してみたくなった。今ある積読本をある程度消化出来れば、エーリッヒ・フロムの「愛するということ」を、思考しながら読んでみたくなった。

    本当の小説の名作って、読了した際に感動するだけではなく、そのあと時間が経っても、そのテーマについて深く思考できる小説が、本当の名作だよなぁと思う。そういう意味でいうと、その小説をトリガーにして、哲学本を読もうと思わせてくれる小説は、僕はかなり貴重だと思うし、名作だと思う。

    僕が生涯でもっとも感銘を受けた小説は、間違いなくドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」だ。それは今でも変わらない。だが、現役の日本人作家で、最も感銘を受けた小説は本書である。それほど本書は、僕にとって素晴らしい作品であった。今村翔吾氏が、小説を書く際の教科書にしているというエピソードは、誇張ではなく本当なんだというのが、本書を読んで肌感覚として納得できた。

    【雑感】
    次は同じ新選組繋がりで、司馬遼太郎氏の「燃えよ剣」を読みます。この本もなんだかんだで、半年ほど積読本になっていた本です。読むタイミングとしては、「壬生義士伝」を読み終わった、このタイミング以外に良いタイミングもないだろうと思ったので、ここで一気に読んでしまいます。まぁ、読む前から名作であることは知っているのですが、なぜか積読本になってました。

  • 南部之桜ハ巌スラ扌崔(くだ)キ咲クコト

    うわ〜結局聞き手は分からずじまいだった〜
    恥ずかし〜w
    でもぐわわわわ〜んってなりました
    なるよそりゃ

    すごい面白かった!
    みんみん勧めてくれてありがとう!

    それにしても構成が神です
    めちゃくちゃ考えられてる
    小説ってこういうことだよな〜って思いました

    そして浅田次郎さんは吉村貫一郎の背中に何を背負わせたかったんでしょうかね?
    捉え方は自由です
    でも自分はこう考えました
    男の生き方ではないでしょうか
    今の時代にはちょっとそぐわないかもしれません
    男子たるものかく生きるべし
    自らの主君は妻であり子であると

    ふふふふ、それなら大丈夫だ
    うちのは絶対君主だもん

    • ひまわりめろんさん
      ちなみに聞き手は北海道出身の記者という設定とのこと
      あれ?ま、いっかw
      ちなみに聞き手は北海道出身の記者という設定とのこと
      あれ?ま、いっかw
      2022/09/13
    • みんみんさん
      子母沢寛?って人らしいよ_φ(・_・
      子母沢寛?って人らしいよ_φ(・_・
      2022/09/13
    • ひまわりめろんさん
      オーイェー
      オーイェー
      2022/09/13
  • 親子2代、南部魂の話しだった。吉村貫一郎と親友・大野次郎右衛門の熱き友情、貫一郎の最期の場面はあっぱれな朽ち果て姿に感動しかない。また、貫一郎の息子・吉村嘉一郎が箱館戦争で父親譲りの南部魂を見せつけた。父に捨てられ、母、妹、弟を捨てても、父親の弔い合戦に参加し、見事に箱館で散った勇敢な姿に何度涙したことか。上下巻を通じて、「義」とは何か?家族を助けるために家族を捨てることがあること、「義」は親子同士、親友同士で深め合うことができることを理解した。飢饉による貧しさ故の悲しさだけではなく強さが見てとれた。

  • 上巻はさほど涙は出なかったが下巻に入ってからは涙なくては読めなかった。
    半分を越えたあたりからは泣きすぎて全然ページをめくれない。
    涙腺の緩めな私は小説を読んで泣く事が多い。
    しかし今回は涙腺が緩いとかそんなレベルではない。
    電車の中で涙が出ちゃうけど誤魔化しながら読むとか。
    それすらも無理。
    しゃくり上げてしまうほどに大泣きしちゃうから自宅以外では読む事が出来なかった。
    嘉一郎の本音のくだりは今思い出しても泣ける。

    そして圧巻はラスト数ページに及ぶ漢文の手紙。
    漢文が苦手な方も必ず読んで欲しい。

    心に残る素晴らしい作品がまた増えました。

    • ひとしさん
      びびさんこんばんは!
      びびさんのレビューを読ませていただき、途中で断念していたこちら、最後までちゃんと読みたくなりました( ^ω^ )
      ...
      びびさんこんばんは!
      びびさんのレビューを読ませていただき、途中で断念していたこちら、最後までちゃんと読みたくなりました( ^ω^ )
      こっちでもよろしくです(^_−)−☆
      2019/10/24
    • びびこさん
      ひとさん⁽⁽ ◟(∗ ˊωˋ ∗)◞ ⁾⁾

      途中で断念してたの?!
      ちゃんとしっかり読むと大号泣だと思うw
      好き嫌いはあると思うけど(Фω...
      ひとさん⁽⁽ ◟(∗ ˊωˋ ∗)◞ ⁾⁾

      途中で断念してたの?!
      ちゃんとしっかり読むと大号泣だと思うw
      好き嫌いはあると思うけど(ФωФ)

      私は今まで読んだ中でのベスト3に入る!
      2019/10/24
  • 下巻はずーーと涙。周囲をはばからず、電車の中で涙流しながら読んでいました。良い本だった。
    なんで泣けるんだろう?切ないというか、ひたむきさ,まっすぐさに心打たれるというか、誰もが一生懸命に生きている、自己のためではなく、家族のため、友のために、義のために。そして周囲もそのように生きてきた人をちゃんと見ていて、思い出してくれて。
    吉村貫一郎を嫌っていた斉藤一が、実は唯一分かち合えたのがその吉村だったり。あらゆることを考えて、敢えて辛いことを言わなければならなかった大野次郎衛門。吉村嘉一郎と大野千秋のやり取りにみつの存在。すべてをずっと見てきた佐助。もうそれぞれの語りが涙・涙。
    嘉一郎の話が一番泣けたかなあ。親のことを思い、妹・弟のことを思い、友のことを思い、藩のことを思い、ただ義のために。貫一郎の生き写しのように。

    子供のいる男親がこの本を読むと感じ方が格別なんだろうな。ウチは嫁さんだけですが、やはり家族を守るために生きるんだと改めて思わせる本だった。

    武士道というモノは本当は何なのか。正しい(?)武士道とは何なのか。悩んでしまった。巷で言う「武士道」とは、何かどこかで履き違えているような気がする。
    やっぱり、「切腹」の思想が刷り込まれた人生観ってどこかがおかしい気がする。要は自殺でしょ?生きてこそ、のはず。だから、吉村貫一郎も宮部久蔵も死なないために生きてきたはず。

    ここまで熱く篤く厚く生きられたらと思う。他人の記憶に残る生き方をしたいね。男として、まっとうな生き方をしないとな。
    フィクションなんだけど、じぶんの中では、もはや史実であり、ノンフィクションのように感じられた。

    結局、聞き手は誰だったのだろう?読んでいるあなたですってこと??
    盛岡を訪れてみたい。

    永遠の0は、万人受けというか、若い人にも読んでもらいたい、と思いましたが、こちらは読み手を限定するかな?男、しかも既婚男性が読むべきというか、感じ入ると思う。作中の人物がほとんど男であるため、女の人には感情移入しがたいのでは、と思ったり。男でも独身では吉村貫一郎の想いがなかなか伝わらんような気がします。

    いや、ほんと読んで良かったと思う。混沌とした今の時代、他人から何と言われようとも、自分の中で一本筋を通して生きていきたい、生きていかねば、と思わせる本でした。男としての生き方の見本・お手本を見た気がします。マネはできそうにないですが・・・

  • ふとしたことから会社の同僚に勧められた本。幕末好き、更に新選組好きの私にとっては興味をそそられる内容で、勧められてすぐに読んでみた。
    結論、素晴らしい本でした。今年100冊近く読んだ本の中でも、少なくとも5本の指には入る作品。
    特に私のように幕末という時代が好きな方、特に基礎知識として新選組に関する知識があれば尚の事、読むことを強くお勧めします。
    この時代の作品というと、大河でもあるように坂本龍馬や西郷隆盛、新選組で言うと近藤勇や土方歳三等がポピュラーと言えるが、この作品はそうした有名所ではなく、新選組の一隊士・吉村貫一郎が主人公。
    生き様ではなく、”死に様”がクローズアップされるこの時代において、無様でも格好悪くても家族のために生きることを第一に考え行動した男。本物の「義」とは何か、本物の侍、武士道とは何であるかということを深く考えさせられる作品だった。
    上巻の冒頭から既に涙腺が崩壊しそうになる程、泣ける部分が多すぎて…お勧めするとは言いましたが、あまり電車等公共の場で読むことはお勧めしません。。
    幕末と言ってもたかが150年程前のこと。長い歴史からすればつい最近まで武士の時代だったということはにわかに信じ難いが、改めて今の時代は恵まれているなと感じる。白いご飯が食べられること、寝ることができることを当たり前と思わず、日々の生活において感謝の気持ちを忘れずにいたいものである。
    こちらも映像化されている作品ということで早速見てみようと思う。

  • 武士道っていったいなんなのだろう。
    なぜ、こうまで馬鹿らしいと思いながらも、惹かれてしまうのだろう。
    殿様ではない、家族という真の主のために義を通した、
    吉村貫一郎という本当の武士の生き様に触れ、胸を打たれました。


    武士として、大切な家族のために、貧乏に抗い、懸命に生き抜いた吉村貫一郎。
    憎い憎いと言いながら、「死ぬな、吉村」と死地に飛び出そうとした斎藤一。
    自分たちが憧れた眩い姿を見せる吉村に羨望の眼差しを向け、なんとか生き延びさせようと奮闘した新撰組の面々。
    身分の違いというどうしようもない壁がありながら、それでも友情のために尽力した大野次郎右衛門。
    花嫁入りの際、足元を提灯で照らす貫一郎が見えたとこぼしたみつ。
    脱藩者の家族と百姓の身分という苦しみに悩みながらも、それでも大好きな父のために戦った嘉一郎。

    各キャラクターの心情に触れながら物語を追い、
    吉村貫一郎という男を知るたびに涙涙だったのですが、特にラスト、
    盛岡の地に次男が帰った時のあの風景、言葉を見たとき、もうダメです。
    感情がぐちゃぐちゃになって大号泣しながら読了しました。

    こんなに面白い小説に出会えて幸せです。
    浅田次郎さん、ありがとうございました。

  •  魂をゆさぶられ☆五つ・・。
     いや、何からどう気持ちを整理したらいいのかわからなくて、レビューをまとめるのに、だいぶ時間がかかりました。
     上巻からつながってきた流れにあっぷあっぷしながら読み進めてたら
    どうにもすごいことになり、涙、ナミダ、なみだ・・。

     吉村の語りはもちろん、斉藤一が、大野次郎右衛門が、その息子千秋が・・それぞれの貫一郎への思いが心に響いてきて・・・。吉村嘉一郎の母上への手紙には涙が止まらず、末っ子貫一郎の語りにそしてそして、最後の候文。ホント、人がいるところでは読めません。

     それにしても。
     響いたところに付箋を貼ってたら、付箋だらけ!!

     全部ここに列挙してたら、どれだけ長いレビューになるのよ・・ってな具合で、でも、しいて言うなら、今の私の心に響いたのは佐助の言葉かな~。

     「武士道なんざくそくらえだ。男が男の道を貫いて生きれァ、ああいう見事な死に方ができるんだって。
     男なら男らしく生きなせえよ。潔く死ぬんじゃねえ、潔く生きるんだ。潔く生きるてえのは、てめえの分を全うするってこってす。てめえが今やらにゃならねえこと、てめえがやらにゃ誰もやらねえ、てめえにしかできねえことを、きっちりとやりとげなせえ。」

     自分にしかできないことを、義を貫いて潔く生きた人々がしっかりといたんだ。その貫き方がすごすぎる・・。
     なんか、私の毎日、言い訳ばっかりしているような気がして、なんともやりきれなくなりました。


     歴史の勉強をしている頃、幕末→明治維新って、ほんとにつまらなくて
    まるっきり知識が欠落してるんだけど、もっともっと知らねば・・日本人として知っておかねばならないですね。
     たとえば、会津藩の容保にしても、ご家訓に従ってのご決断。そのご家訓って、初代保科正之の遺訓ですよ。正之は二代将軍秀忠のお子。200年ものあいだ守られるって、どんな思いなんでしょう。

     そんなこんな日本人のDNAはどこへ行ったのか。それこそ、御一新とともに魂を奪われてしまったのか・・。
     いやいや・・きっと血となり肉となり、細胞のかたすみにでも受け継がれているのではないかしら・・そうあってほしいと、切に思いました。


     ・・・うーーん。本筋の大切なところの思いは、やっぱりなかなかうまく言葉にできません。が、これで精一杯ということで終わり!!

  • それぞれの視点から語られる吉村貫一郎の姿。
    上下巻とあり、ぶっちゃけ長かった。長かったけど、下巻は、貫一郎と、貫一郎により近しい人による語りとなり徐々に核心に近づいていく。後半は泣いてまうよこんなん。。

    しかしこの時代は本当に転換期だったんだね。
    切った張ったの命をかける侍から、市民としての生活を送るようになった人達。ひと人生のうちに、これだけの激動の時代があったと思うとただただすごい。過去の人たちの積み重ねで、今の日本がある、私達がいるんだなあ。
    (その時代の流れを生きて体感した人達が思い出す過去の記憶(思い出)というのは、あたしが「あー高校の頃はああだったなあー懐かしいー」とかいう濃さの比じゃないんだろうな。。)

    いまは平和で、命が脅かされることはない。食や住もそれなりで、良くも悪くも心を動されることは少なく、、ただ、なんだか難しい現代。
    心の豊かさを求めていきたい今日この頃。
     

  • 『男心に 男が惚れて〜♪』は、国定忠治だろうが、此処にも惚れてしまうほどの強さとどこまでも優しい男がいた。
    このような男でありたいと思うが、どう逆立ちしようが到底無理な話で、だからこそ、憧れもし感動もするのだろうと思う。

     上巻に引き続き、語り手が代わる代わる、吉村貫一郎の生涯とその子ども達らのその後を追っていく。

     下巻の最後に候文がある。吉村貫一郎に「腹を斬れ」と断裁した蔵屋敷差配役であり吉村の旧友 大野次郎右衛門が吉村の末息子を託する豪農 江藤彦左衛門にあてた手紙である。読み飛ばし終えようとの狡い気持ちをはらい辿々しくも読んだら、此処にこそ話の真骨頂が集約されていた。

    『本邦日本者 古来以義至上徳目ト為シ候也
     乍併 先人以意趣 義之一字ヲ剽盗変改セシメ 
     義道即忠義ト相定メ候
     愚也哉 如斯 詭弁天下之謬ニテ御座候
     義之本領ハ正義ノ他無之 人道正義之謂ニテ御座候
     義ノ一度喪失セバ 必至 人心荒穢シ 
     文化文明之興隆如何不拘 国危シト存ジ候
     人道正義之道扨置キ 何ノ繁栄欣喜有之候也
     日本男児 身命不惜妻子息女ニ給尽御事 
     断テ非賎卑 断テ義挙ト存ジ候』

     愚直なまでの吉村の生き方に触れ、錦の御旗に弓を引いた大野もまた、そのお役目に忠実であった。がしかし、政権交代の原因は自分の身を守ることのみに専念し、百姓、領民、足軽郎党の苦しみに添えなかったからだとの過ちに気づき,認めた大野次郎右衛門もまた男であった。

     Oh〜っと胸の震えを覚えた作品だった。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

浅田次郎の作品

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