輪違屋糸里 上 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167646066

感想・レビュー・書評

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  • 何を守ろうとしているのか分からない時代があったのだな。

    土方は捉えようもない男。
    非情でもあり、情け深くもあり、鳥瞰的に物事を考えて最善の道をとる者でもあり…。

    土方は「侍」になりきれなかった「百姓」だったのかな。
    いや、「百姓」になりきれなかった「侍」だったのかも。

    一方で
    世の中という化け物に向かっていく男を、戒め慰め包む女たちが仏のよう。

    糸里天神が小浜という海の町から買われた芸妓であることが象徴的。
    海は母性そして波は運命に流される当時の女性の象徴。

    京都弁のしとやかできっぱりした口調を楽しめた。
    文字が芸妓の奏でる琵琶や三味線に成り代わり響く。

  • 鬼の副長だは...下巻を読んで感想。

  • とにかく新しい。
    私は今までの自分の新撰組観が180度引っくり返る程の衝撃を受けた。

    何が新しいかって、新撰組の歴史に、多分、初めて女性の視点を持ち込んだこと。

    女性の視点から語られることで、冷酷無比ではあるがひたすら己の信じた道を突き進む男たちのカッコ良さは、あっという間にどこかへ行ってしまった。

    私は今まで読んだ新撰組関連の書物(小説・漫画)、今までに見た新撰組の物語(ドラマ・映画)の中で、あそこまで沖田総司が格好良くないものは知らない。

    女の目にかかれば、美青年剣士・沖田総司も、粗野で野蛮で、剣にしか生きる意味を見出せない下らない男。
    土方歳三は、自分の目的を果たすためなら、惚れた女さえも人身御供に差し出し、利用し、あまつさえ殺そうとまでするのに、それでも彼女を好きだとのたまう、矛盾する心を抱えた卑怯な男。

    しかし女の目にかかると、乱暴者で傍若無人で酒豪の芹沢鴨は、純粋すぎるほどに純粋で、真っ直ぐで、生きるために嘘がつけない、不器用なだけに切なすぎる男に変わる。

    この小説の中で最も女心をくすぐる男は、なんと言っても芹沢鴨なのである!
    これを衝撃と言わずしてなんと言う!?


    男とはかくも愚かしく、それ故にこそ、かくも可愛い生き物なのか……。

    というのが、この小説に登場する女たちに共通する真髄か。

    そしてこの小説に登場する5人の主要な女たち、糸里、吉栄、おまさ、お勝、お梅は、男の身勝手に翻弄され、振り回されながらも、自らを縛っていた「男と女」の鎖を解き、自らの意志と力で運命を掴み取っていくのである。

    例えそこに待つものが、死であろうとも……。

  • 芹沢鴨がメインのお話。
    寂しく切ない、男女の物語。

    今の世の中普通に恋ができて生きていけるというのを改めて感じさせられた。

    リアルですね・・・。

    命の大切さを改めて感じさせられた。

  • 非常に面白かった。てっきり史実に基づいた話かと思ってしまったが、基本的に虚構のようらしい。浅田次郎の幕末ものは、思った以上に生き生きと登場人物が描かれており、面白く読める。早く先を読みたいと思う。

  • 歴史とは物理や数学等の様な純粋科学ではなく、歴然たる過去の事実にも拘わらず、数十年も過ぐれば何が真実なのか分らなくなる非常に厄介な代物。芹沢鴨と言えば新撰組に関する話を少しでも齧ったことのある者なら誰もが稀代の悪漢として知る人物である。本作は正史の視点を横にずらして見た時、そこに何が見えて来るかの実験と言える。前作『壬生義士伝』では新撰組の陰の象徴である斎藤一の昔語りに圧倒されたが、ここでは陽の化身たる永倉新八の現在進行形の今語りが目を引く。読みながら青春期の偏愛作家・澁澤龍彦の『サド侯爵の生涯』を想う。

  • 女性視点から見る新撰組。

    新撰組だけではなく、戦う・働く男性たちにとって、女と酒がいかに重要なのか思い知らされますね。

  • 2012.7.12.thu

    【経路】
    akanehigeの一等のお気に入りと聞いて。

    【感想】
    新撰組の内部抗争を、各々の心理に迫って描写した話。
    芹沢派について特筆されている。
    当時の身分の考え方、在り方をどう考えているのかを、ジレンマやコンプレックスなど細かくリアルに書かれてあるのが興味深い。
    土方や沖田を主とした作品はいくつか見てきたけれど、芹沢をここまで深く考察している作品に出会ったのは始めてで新鮮。
    akanehigeには登場する女たちがそれぞれ身震いするほどカッコいい!と聞かされていたのだけれど、まさにその通りで、浅田次郎やるなぁと思った。



    ※下記後日編集予定

    【かっこいいポイント〜男】
    ●芹沢
    ●平山
    ●平間

    【かっこいいポイント〜女】
    ●糸里
    ●音羽
    ●吉栄
    ●お梅

  • 久しぶりに浅田次郎の本を読破。
    やっぱり読みやすいね。

    壬生義士伝は最後もらい泣きしましたが
    今回はどうか!!

  • 久々の浅田次郎の小説。

    内容は、新選組の話。映画にもなった壬生義士伝の続編ともいうべき作品。解説に頼ると、壬生義士伝が
    男性から新選組を描いていて、今回は、女性から新選組を描いている。

    新選組というと、どこか艶やかな印象だけど、この小説を読むとその奥にある、武士と農民に象徴的な身分による差別がえぐりだされる。さらには、華やかさの裏にあるお金の工面という問題。やはり江戸末期になると、お金は商人がもっているのであった。

    お金、身分差別・・・そして貧困の中で身を立てるために、必死になって芸をみにつける女性。いわゆる教科書の歴史の中では学べない世界がそこにあった。壬生義士伝は涙がでたが、糸里は、胸に響いてくる小説で考えさせられた。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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