月島慕情 (文春文庫)

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  • 文藝春秋 (2009年11月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784167646080

感想・レビュー・書評

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  • 涙が落ちてしまう瞬間、私ってちょろい人間だなと思ってしまう。時代遅れと感じながらも浪花節に弱い。
    浅田次郎さんが、短編集に収められている七編を創られるきっかけになったお話が解説としてある。面白い試みだなとも思う。

  • 浅田次郎は人情ものがいい。
    「蒼穹の昴」は傑作だし、「壬生義士伝」も何度読んだか。しかしやっぱり浅田次郎は人情ものがいい。

    浅田次郎の人情ものは「悲しくて、温かい」。
    近年よくある何気ない日常でのほんわかストーリーではなく、ちょっと特殊な舞台設定だ。主人公は大正時代の太夫だったり太平洋戦争のソロモンで戦う将校だったり網膜色素変性症の女性だったり。いずれも辛く悲しい経験をするが、己の幸福のみを追い求めることなく、他人の幸せを願うのだ。何故この人たちはこんなに悲しい体験をしたのに他人に優しくできるのだろう、と思わずにいられない。
    だから「悲しくて、温かい」。
    本作で私が特に好きなのは「シューシャインボーイ」だ。最後の遺書は、電車の中で読んでいるにも関わらず涙があふれ出て仕方なかった(...恥ずかし)。

    ところで、浅田次郎の人情ものを読むと「人情噺」を想像する。落語の「文七元結」や「芝浜」などが有名な人情噺だ。本作の短編を談志や圓楽が人情噺として演ったら絶対にグッとくると思いませんか?もう二人とも鬼籍に入っているので、今なら誰が上手いんだろうか...などと想像するのも楽しかったりする。

  • 山岡荘八の「小説太平洋戦争」を読んでる最中だからだろうか、太平洋戦争時、激戦地ソロモンでのエピソードを自衛隊の労陸将が語る「雪鰻」が良かった。

  • また、いい作品に出会えた。
    浅田次郎作品には
    驚かされるものが多いが
    この短編集もやっぱりいい。
    男女の機微とか
    男の矜恃とか
    生き様、
    死に様…
    何かと、沁みてしまうのだ。

  • さすがの浅田短編集
    あとがきに作品が生まれたきっかけエピソードがあって
    興味深く拝読
    日常にある足元の小さな石を懐に入れて温めると
    このような世界が出来上がるのかと
    感心

  • 「泣かせ」に鼻白んで遠のいていた浅田次郎氏の小説を久しぶりに読んだ。やっぱりうまい!本書は、短編集。「鉄道員」は素晴らしかったが、本書もなかなか良かった。
    浅田氏のすごいところは、全く自分に重ならない設定の人物にまでどっぷりと入り込んでしまえるところ。どの短編も気恥ずかしくて切なく、読みながらしくしくと胸が痛む。そしてまんまと作者の手の内に引き込まれ、こんちくしょーと思いながらも、気が付くと涙を流しているのだ。
    最初の2本が特に良かった。登場人物がそれぞれに悲しいのは、連城三紀彦の小説にも似ている。昔の東京の風景もノスタルジックで、おススメ。

  • 泣かせようと見え見えの短編集。最後の『シューシャインボーイ』、馬名10文字はナンセンス。短編集は苦手。最初の二編と最後のはまあまあ。ゴキブリの話はイミフ。

  • 見受けが決まった吉原遊女。なんとなくの好奇心から相手の素性を知り自ら幸せを手放すことに。

    浅田さんらしい、優しく哀しい短編。

    かっこいい女主人公。

  • 浅田次郎、安定の短編集

    短編書かせたら浅田次郎が日本最強であると思う。

    おすすめ
    月島慕情
    めぐりあい
    シューシャインボーイ

  • う〜ん、悪くはないけど、地味な印象の短編集。菊治さんは何処へ行ってしまったのかねぇ。
    「月島慕情」★★★
    「供物」★★★★
    「雪鰻」★★
    「インセクト」★★★
    「冬の星座」★★
    「めぐりあい」★★
    「シューシャインボーイ」★★★★
    「自作解説」★★★

  • 浅田次郎の短編集。短編だが、それぞれの話にしっかり物語がある。シューシャインボーイが良かった。作者自身による解説付き。

  • 短編が7話あって読みやすい!
    思わず泣いてしまう位1つの話に入り込んでしまいました。
    個人的には供物とシューシャインボーイが良かった。

  • 「天国までの百マイル」も良かったけど、、、この短編集最高!

    作者も戦争を知らないのに、これだけのことが良く書けるものだと、思う。

    7話が、皆物悲しく、又人の心の底に思いを潜ませながら、相手のことを思いやる姿に心打つ作品ばかりである。
    「月島慕情」、苦界に居るミノが、やっとはい出ることが出来るかもしれないのに、芥川竜之介の「蜘蛛の糸」ではないが、、、そのきらきらと輝く糸を自分から断ち切ってしまうのである。

    「供物」別れた夫が亡くなった初枝は、今幸せに第二の人生を歩んでいるが、、、
    離婚の原因は、夫の酒乱であったが、霊前のお供え物へワインを求め、昔の家を辿っていく。
    押し付けるようにして、供え物を置いていくのだが、、、、最後の軽トラックから、降りてきた男は、、、離婚の時において行った息子であった。
    面影橋という最後の言葉が、余計に涙を誘う。

    「雪鰻」戦争で、ソロモン諸島で、飢餓じょうたいで、マラリアと熱帯性潰瘍に身体をむしばまれていても、人間生きなければならない。
    人間の矜持とは、、、、
    人肉を食うとは、、、生きようと強い意志さえあれば、死神はよけて通る。
    師団長からの言葉を受けて、北海道の地へ生きて帰還した三田村は、好きな鰻を、生涯食べないと肝に銘じていた。
    その訳は、人生において、戦争というものがまいた出来事であった。

    「インセクト」学園紛争真っ只中の話である。
    大学に行っても封鎖されており、アルバイトに精を出す悟。
    世の中では融通の利かない悟は、隣に住む女の子を可愛がるが、、、
    事情のある母子の子供に、クリスマスのプレゼントも相手には重いものとなる。
    ゴキブリを知らないで育てる悟を気味悪がられる。
    ある程度、人の事情に介入してはいけない部分もあると、、、、

    「冬の星座」解剖室にいた雅子は、祖母の訃報を聞き、葬式へと向かう。
    そこには、自分の知らない祖母が居た。
    生前に、祖母がどれだけの人たちへ『親切と思いやり』を与えていたのか?
    そして、疎遠になっていたのに、自分のことをいつも気遣ってくれて、、最後に、自分の身体を、献体すると、、、、
    最後の最後まで、クリスマスプレゼントを用意していたのだと、雅子は思うのであった。

    「めぐりあい」視力の衰えで、全盲になってしまうという時恵は、結婚で、相手の親から反対されて、身を引いてしまい今は、温泉街で、マッサージをしている。
    たまたま仕事に呼ばれた時恵は、昔の相手の事を思っしまう。
    全然違う人であったが、昔の事を回顧する。

    「シューシャインボーイ」靴磨きしてくれる人の事である。
    昔は、靴のおしゃれが、一流の男の見本であった。
    戦後のガード下には、孤児などが、靴磨きで、少ないお金で、磨いていたのだろう。
    そんな時代を過ごした社長の運転手になった元銀行マンの塚田は、社長の持ち馬の「シューシャインボーイ」の馬券が、当たる。
    社長が、未だ靴磨きに靴を磨かせているのか?そして馬の名前を付けた理由は、、、、

    過去の時代の人たちが居て、今の自分が居ることに、そして、幸福に生きていることに、常に確認をしないといけないと、、、、作者は物語っている。

    当たり前のことが、地震や津波で、どれだけ恵まれて生活しているのかと、認識せざるを得ない人も沢山いたが、、、被災していない自分たちは、なんと幸福な生活を送っているのだろうと、再認識してしまった。

  • 久しぶりの浅田次郎。4冊目……くらいかな。

    【月島慕情】
    表題作。切ない……切な過ぎる。
    冒頭から、きっと分かりやすいハッピーエンドは無いだろうと分かりきった一編。
    太夫の心が浮き立つ程に、時兄のいなせが際立つほどに、悲恋の予感が膨らみまくり……一度はもう、見ていられなくって本を閉じてしまったくらい。

    半年ばかり寝かせて再び挑んだこの一編。
    なんと切ない物語か!!

    でも、切ないながらも美しい、そんな大正下町のセピア色が心に残るお話だったな。


    【供物】
    ……切ないけれど、いい話。きっと、誰もが報われた一瞬が、やはりセピア色に描かれていた。

    ※時代設定は明らかに平成の世であるのに、なぜか昭和を感じてしまうのは…?



    【雪鰻】
    ……こういう話は、一人でも多くの日本人が知るべきだ。いや、それよりも多くの地球人が知るべきだ。

    ……いち作家が出した短編集の中のただの一編にしておくのは、勿体なさ過ぎる。

    ・・・たぶん誰もが、これにまさる戦況報告はあるまいと考えたのだろう・・・


    【インセクト】
    ・・・時代の匂いは感じるが、「だから?」と問いたくなるようなお話だと思うのは……自分が未だコドモだから?



    【冬の星座】
    ……泣かされた。ばあちゃんモノには、てんで弱いなと、改めて・・・。
    若干頼りなかった医学生の、たった一夜の間に見せた大きな成長の兆しが、読後の心に清々しく沁み渡った。


    【めぐりあい】
    ……切ない。どうしようもなく切ない話。途中から想像し始めていた(願っていた)幸福な結末にはならなかったけれど、決してハッピーエンドではないけれど、心温まるラストに涙。

    ・・・医者ならばときちゃんと心中なんぞせんと、ときちゃんの病気と心中せなならん思い直した・・・



    【シューシャインボーイ】
    ……泣いた(笑)。
    全般にハッピーエンドではない結末ばかりのこの短編集で唯一、(主人公にとっては)ハッピーエンドなお話かな。

    ……(原作は未読だが)映画「地下鉄に乗って」を思わせる“戦後のニッポン”を描くのが、筆者のライフワークの一つなのかも・・・と思えた。“ボス”の格好良さに、座布団一枚。


    トータル
    ★4つ、9ポイント。
    2016.08.09.古。

  • シューシャインボーイが好きすぎて、元々は母親の本だったのを自分のものにした(笑)
    菊治が戦争孤児だった一郎に対して「頼みの綱はお前だけなんだ」と言った本当の意味が分かった時、号泣しました。

  • 浅田次郎による短編集。
    いつもながら、ナチュラルに感慨深い作品ばかりで、その才能に感激する。
    著者は、長編を書けば強い訴求力のものが多いが、短編は、いくらでも読みたくなる読みやすさとバリエーションがある。すごいことだと思う。
    「シューシャインボーイ」は、いかにも著者らしく、著者にしか書けない逸品。
    4-

  • 花魁のミノに身請けの話がやってくる。相手はミノが惚れ抜いたヤクザの時次郎。
    身請けが決まったミノは、自分が住むことになる月島を見に行こうと思い立った・・・・表題作を含む短編集。


    タイトルに惹かれて買ってみた。浅田次郎だからハズレはあまりないけど、この短編集に関しては当たりでもないなぁ。表題作みたいなのがいっぱい入ってるとよかったかも。

  • 感動しました。
    ロマンチスト浅田次郎の珠玉の作品です。

  • 供物と雪鰻とシューシャインボーイが、心に残った。
    自分とは全く関係ない(わけでもない)台詞が、妙に突き刺さったり身につまされたりして、短い物語から読み解くものが多くておもしろい。

    供物は、クソみたいな男のせいでしなくていい思いを死んでまでさせる酒乱クソ亭主。置いていかれた息子目線の物語を想像するとこれまた居た堪れない。

    雪鰻の一文、赤紙一枚で引っ張られた、親も子も妻も恋人もいる、百姓やサラリーマンや、豆腐屋の店員や銀行員や、魚河岸の若い衆や市電の運転士や、大工や左官やカメラマンや学生だった。彼らはみな、それは悩み苦しみ、憎悪し懐疑もしただろうが、しまいにはささやかな納得をして、潔く死んでいった。
    現実にそういう先人たちが居たことを絶対に忘れてはいけない。

    シューシャインボーイで心に残った台詞、だったら二度忘れりゃいい。
    逃げないでよ。

  • 初 浅田次郎 作品

    人には人生がある、それが気持ち、思い、生、過去と情に満ちた作品で、人の尊さ、人生の疎ましさがとても心に沁みた

    なんて素晴らしい作品なんだろうと

    我が弟から頂いた本、ありがとう!

    ありがとう、浅田次郎さん!

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

浅田次郎の作品

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