- 文藝春秋 (2001年6月8日発売)
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感想 : 131件
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784167647025
みんなの感想まとめ
多様な人間関係や歴史的背景の中で、主人公の転落劇が描かれています。ウィーン貴族の放蕩息子が、砂漠での出来事を通じて自らの運命に翻弄される様子は、痛快さと共に深い人間ドラマを生み出しています。物語には男...
感想・レビュー・書評
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何が?と言われてもよくわからないが
とにかく引き込まれて、おもしろかった
歴史上の流れのなかで
かつての一族の成れの果てを見た
あるいは男女のもつれ
あるいは裏切り
あらゆるものがわかりやすく語られる
砂漠での出来事
そしてバルタザールとメルヒオールの関係
を考えたら
あのドラマ VIVANT を思い出した
確か砂漠の真ん中で取り残されて
何やら2つの人格が言い争っていたっけ
これがデビュー作なんて
すごすぎる!
佐藤亜紀さんの作品もっと読みたい
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ウィーン貴族の放蕩息子が転落していく物語。スケールの大きい転落ぶりが見事だ。
育ちがいいからか、身を持ち崩すといっても分かりやすく路頭に迷ったり悪に染まったりするでもなく、悲壮感もなく、転げ落ちる様がとても痛快。
ひとつの肉体にふたつの魂で好き勝手するのも面白いけど、そればかりが際立っているのではなく、自らを語る文章そのものが面白かった。 -
正直言い回しが難しくて、最初読みづらく感じましたが、慣れてくるとそこが逆に良く感じられるようになりました✨最大の謎が残っていますが、話自体とても面白かったです。いつの時代も人の心を支配するのは、「金と色」ですね…全くそのとおりです✨
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や ば い や ら れ た
知人にいただいた本だが、正直こんなにやられるとは露ほど思っていなかった。奇天烈な教養恋愛小説風のストーリー仕立てに、ちょっと舌を巻くほどの文体模写術(西欧古典小説の翻訳文体の模写)および設定・人物造形模写術(左に同じ)、さらには西欧歴史ファンタジーの翻訳だと言われても三分の一程度までは騙されて読み進んでしまいそうなほど緻密にして自然な20世紀前半ドイツ・フランス・オーストリアの歴史・風俗描写。文体もストーリーも「文学」のものと言われてべつに不思議は無いのに、あえて娯楽の域にとどまり、娯楽としてのファンタジーとして自らを描ききり、けっして「純文」であろうとしなかった。その冷静な判断(あるいは感性)の成功を見よ。ハラショー!
なんというか、「これは娯楽小説です」と開き直ることって、物語を浅薄にすることとイコールではなかったんだなあ、とあらためて実感した。だってでも、世の中には「娯楽だから陳腐でいいんです」みたいな小説が山とあふれてるんだもの。読み終わったときに、「あーやっぱ所詮エンターテイメントか」って思うような。でも違うんだ、本当のエンターテイメントというのは「所詮エンターテイメント」なんて言わせるようなものじゃないんだ。あえて純文をめざさなかったことに、すがすがしさを感じるような、そういうものなんだ。「読みやすいけど時間の無駄だった」とか、そういうふうに思わせるものは、本当のエンタテイメントじゃないんだなあ。
まあなんというか、第一部と第二部になんとなくテーマ上の断絶があるとか、第二部も娯楽としてはおもろいんだけど第一部の色気がなくなっているとか、第二部の大団円の伏線を第一部で貼らなすぎとか、設定が第二部でだんだんご都合主義になってきたわりにそれを古典風の「神秘性」「寓話性」でごまかすほどの筆致には至らなかったとか、まあ色々あるんだけど、そういう欠点がどうでもよくなるくらい <b>ツボに来た</b>。いやーこれはよかったわ。主人公のダメダメな二枚目っぷりがなんとも言えずグッドだったし、アリストクラート(貴族人)のサーカスティック(皮相的)な政治態度およびアリストクラシー(貴族主義)に対する皮肉の案配も程よくベスト。きっぷのいい従妹のマグダとの関係とかムチャクチャ良かった。なんというか、萌え的に来た。私にとっての関係性萌えとか雰囲気萌えってこういうのがツボだったんだ。そうだったんだ。(発見!)
とかいうと作者にはものごっつ嫌がられるんだろうなあ、この佐藤亜紀という人、萌え文化が嘔吐するほど嫌いらしいから。でもこれは、いやなんつーかヨーロッパ古典文学好きの女に受ける娯楽であり、萌え空気だと思うよ。作者さんには申し訳ないんだけど。
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めちゃめちゃ面白かった。一気読みしてしまった。
戦間期からWW2途中までを舞台に、没落青年貴族の転落を手記の形で描く。主人公であり、手記の書き手は、一つの体に二つの魂が宿っているところが本書のミソであり、面白いところだ。
二重人格というわけでなく、本来の意味で二人が一つの体に宿り、多くのことを体験し、それを書き留めていく。当然、意見の相違も見られるし、議論のあるところについては端折りながら物語は進んでいく。なぜならペンは一人しか握れないからだ。
恋愛の話あり、冒険譚的なところもあり、エンタメとして非常に楽しめる。また本書は文学としても面白い仕掛けのように感じられる。
耽美的な文章、美術史学の修士卒ということもあり見慣れない知識に裏打ちされた表現は、少し読みにくさもあるが、直ぐに慣れて楽しむことができると思われる。
どうも筆者は本書がデビュー作のようであるが、別の作品も読んでみたいところである。 -
この人の小説は、文章を読む快感みたいなのを満たしてくれるので、なんだか癖になる。ちゃんちゃらおかしいストーリーなのに、こうどっぷりはまって、一緒に転落してしまう感じ、それを楽しんでしまう感じはなんだろう。面白かった。
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作品として参照されたのは萩尾望都の短編で、ひとつの肉体にバルタザールとメルヒオールの二人の兄弟の魂が宿り、その二人の転落の人生を辿っていく小説。
ユルスナール作品も似たような作風なので『黒の過程』が読んでみると参考になるし、ナボコフ、エーコなども読みたくなってくる作品。 -
第三回 日本ファンタジーノベル大賞受賞
CDではないが、この本はジャケ買いである。表紙が素敵なので手にしてみた。もちろん裏表紙の解説も読んでみてのことである。豊富な知識量、詳細な描写と登場人物の感情の変化などなど、実に上手いと関心する。この本がデビュー作とのこと、才能があるのは分かるが少々それが嫌味になっている気がする。情報が多すぎで主題が薄く、伝わりにくい。 -
ひとつの体を共有する双子、メルヒオールとバルタザール。二人が辿る、めくるめく享楽と退廃の行く先とは。
作家の処女作には全てが詰まっているというけれど・・・佐藤さんの初読にこの本を選んだならば、私はもっと佐藤さんの本を読んでみようという気にはならなかったと思う。
退廃、って何なのだろう?
一つの体に二つの人格で生まれたメルヒオールとバルタザールが抱えるものが、世界からの圧倒的な無理解であることは、私にも想像がつく。
その無理解は、大きすぎて、あるいは『当然』すぎて、その大きさを測れないくらいのものかもしれない。
しかし、そのあまりの『当然』さ、その圧倒的な無力感というか虚無というか、が読んでいてイマイチ伝わってこない。
転落というには、二人の落ちぶれ具合はあまりに甘美過ぎるように思われてならなかった。
そりゃあ二人はひどい目に合っているし、自分からよりみじめな方へ、どうしようもない方へ転がっていっているといえばその通りだ。そして、そんな選択がどれだけ辛いものであるのかも、私はできるだけ理解したいと思っている。
だが、それだけなのだ。二人には守るものがない。守りたいものもない。あるのかもしれないが、それすらあっさり手放す。手放しすぎる。それが私には我慢ならないし、手放すことに痛みを覚えない(ように見える)彼らに、怒りを抱く。
お話自体は決して安易なものだとは思えない。けれど、私は読んでいて物語全体に優越感が漂っているように感じてしまって、ちょっと、むしゃくしゃした。
そして、そんなむしゃくしゃした自分を、泥臭い人間なんだな、と思った。 -
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2001年に発表されたばかりなのに、まるで往年の文学作品を読んでいるような気分にさせてくれる稀有な本。
耽美に、退廃的に、この上なくユーモラスに描かれる放蕩貴族の転落物語。
ひとつの肉体を共有する兄弟・メルヒオールとバルタザールは、世相としがらみから逃げるように第一次世界大戦前夜のウィーンを脱出して宛てのない旅に出る。
厭世的なメルヒオールと激情家のバルタザールは、二人揃って皮肉屋でナイーヴで、何かというと酒に逃げる駄目人間なのにどこか憎めない。
物語は主にメルヒオールの手記という形で進むけど、そこにバルタザールが時々割り込むという掛け合いがとても愉快。
そして、兄弟の出会う女性たちがみんな陰があるのに華やか。
父の後妻で魅惑的なベルタルダ。
従妹にして幼馴染で、兄弟の唯一の理解者のマグダレーナ。
居酒屋を切り盛りするやくざの情婦クレール。
メルヒオールに自分の息子を重ね、力を貸す領事代理夫人ヘルミーネ。
客船アルケスティス号で兄弟と戯れる、かつての大女優パオラ。
個人的には兄弟を誰よりも愛しているのに報われないマグダのために涙を流したい!
一字一句を大切に読みたいのに結末にどんどん近付いてしまうという幸せなジレンマを味わえました。
読書の喜びってこういう事を言うんだなー -
双子だけの話じゃなかったねえ! これ以上はネタバレになりそうなので読書会までがまん。
終わり方がよかった。あと老召使いが好き〜 -
一つの身体に二つの人格を分け合う男前な貴族が
没落しながらも逞しく生きていく様が描かれている。
結果を先延ばし、読者を引っぱる
少々まどろっこしい文章。
海外文学っぽさが非常にある。
遅々として進まない物語であるが、
終盤における疾走感というか、収束感はさすが。
主人公は気障で、理屈っぽく、怠惰で、
気高く、美しく、感傷的。
恐ろしく完成度の高い趣味の小説
という所だろうか。
目次があらすじ状態なので、
先を知りたくない人は
目次、章の細文には目を通さないほうが吉。 -
呑んだくれ貴族の怠惰な放蕩物語?みたいな感じ。
翻訳物のような雰囲気で設定も面白いし、メルヒオールとバルタザールが2人とも魅力的で楽しい。
でもこの話結局なんだったんだ…? -
超安っぽいチンピラのふざけた活劇を、最高級の文体でもって読者におもてなししてくれるロードムービー的な物語。
格好良い! -
中二心をくすぐるガジェット(一つの身体に宿る二つの魂、ウィーン、没落した貴族、年若い継母、植民地、SS、ドイツ軍服!)と、優雅で美麗ではあるものの多少アクの強い文章を併用していながら、過去を追想する形を取る語り口はあくまでも淡々として、軽やかに読み進められる。
なんていうか、「鏡の影」のときも思ったんだけど、伏線撒くのは下手なのに伏線回収する手際だけはやたらと鮮やかだよね。この人。 そういうとこが好きなんだけど。 -
良い意味で日本人の書くものぽくない印象。ヨーロッパの翻訳もののような味わいです。主人公が二つの人格を持っているという設定のせいか『悪童日記』とかに近いような。
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軽い酩酊感。こういう文章だからこそ楽しめる世界は好きだ。
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