敵対水域: ソ連原潜浮上せず (文春文庫 ハ 18-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167651039

感想・レビュー・書評

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  •  パラノイアというTRPGがある。いわゆる狂ったコンピュータに支配されるディストピアな世界で遊ぶブラックユーモアが過剰なゲームなんだけど。「幸福は義務です」とか「失敗するものは反逆者だ」とか、いわゆる共産主義的な社会をDisってる。
     リアルタイムで、共産主義の台頭を見ていないので、そういうのは世の中の定番ネタというか、誇張した風刺なのかなと思っていた。

     1986年。ソビエトの原子力潜水艦の事故を起こし沈没した。
     艦長をはじめとする乗組員の仕事は、速やかに復旧して、ソビエトまで潜水艦を戻すことである。なお、原子炉の制御棒は機械的に動作せず、人が動かさなければならないのに、保護服は足りて居らず、原子力潜水艦の中では爆発による火災が発生し、有毒ガスが充満している。
     その中でのソビエト側のやりとりは、フィクションであって欲しいと思う位のシュールな笑いに満ちている。ほんとうに、読んでいて変な薄い笑いが出てきた。笑うしか無い。

     国家とは何のために存在するんだろうか。平時に有利にことをすすめるため? 有事には頼りにしてはいけないものなのかもしれない、と思った。

     しかし、最終章まで読むと、人間の尊厳というか、個人の力というのは十と鋳物なのだなぁと感じる。
     ソ連の人々の名前に混乱はあるけれども、実に面白い。
     オススメ。

     末尾のインタビュー時期と場所、一次情報と二次情報のリストがノンフィクションとして実に潔い。いまどきここまで書いたものは見たことが無い。だからこそ生々しい。
     この作家さんの書くノンフィクションならまた読みたいと思ったら、ソ連の元軍人さん、アメリカの元軍人さん、作家さんの3名で構成で書かれた本なのね。確かにここまで手厚い本が書けたのか。知るけれども書けない話がたくさんあるんだろうなぁ。

  • まるで映画のような話だけど実話なのが恐ろしい。自艦は事故を起こして原子炉崩壊の危機。さらに敵から追われている上に、本国は味方をしてくれない。そんな状況で、それでも船員を守ろうと奮闘する船長に胸が熱くなる。

  • 冷戦末期、ゴルバチョフとレーガンが
    レイキャビクで戦略核削減の首脳会談を行う 1 週間前、
    ソ連戦略型原子力潜水艦が、
    アメリカ東海岸・大西洋バミューダ沖で
    火災沈没した事件を記したノンフィクション。
    まるで一流のエンターテインメント小説の様な素晴らしく読ませる作品。
    恐ろしいまでの緊迫感と、胸に沁みるドラマを味わえる。
    トム・クランシーが序文を寄せている。

  • 自己犠牲の物語。

  • いつもフィクションを読んでいて、ノンフィクションは久しぶりだったのですが。。。

    真実は小説より面白いのかもしれません。

    事実に基づいてはいるものの、亡くなった方の心理描写の部分は脚色されているはずなので、そういうところに、小説家の腕が生かされているのでしょうか。

    とにかく、夢中になった読んでいて、電車を乗り過ごすこと数回。。。単に私の不注意ですが。

    潜水艦乗りの独特の世界も味わえ、また、追い詰められた人間の行動もよくわかり、さらに、政治に翻弄され、、、波乱万丈です。

  • 「潜水艦乗りは任務ではなく信仰である」<BR>
    かっこいい。男の言葉だという感じがする。「冷静に考えればそんなわけないじゃんね」という私の思考は紛れもなく女だ。<BR>
    そしてこの本は男たちの物語だ。任務と生命、命令と感情が海の底で息苦しくせめぎあう。<BR>
    もちろん、かわぐちかいじの漫画ばりの潜水艦によるデッドヒートもあり。<BR>読み終わると、血中男濃度が一時的に上昇し、何かをなしとげてみたくもなる。しかしそれが何かは不明。

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