キャパ その青春 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2004年3月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784167651398

みんなの感想まとめ

テーマは、戦争写真家として知られるキャパの複雑な人生とその背景に迫ることです。彼の青春時代や家庭環境、恋愛の葛藤が描かれ、外面的な冒険家としての魅力とは裏腹に、内面的な孤独や失望感が浮き彫りになります...

感想・レビュー・書評

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  • ▼「キャパ その青春」リチャード・ウィーラン、初出どうやら1986(アメリカ)。沢木耕太郎訳、文春文庫。

    ▼ロバート・キャパについての、今でも恐らくいちばん定番の評伝でしょう。文庫化にあたって全三冊になったその1冊目。
     これを翻訳している沢木耕太郎さんが書いた「キャパの十字架」(2013)を読んでみよう、とふと思い、それをより楽しむために歩んで来た道のりの、恐らくこれが最後でしょう。

    ・図説 ハンガリーの歴史
    ・誰がために鐘は鳴る(上下)
    ・ロバートキャパ写真集(岩波文庫)
    ・物語スペインの歴史人物編
    ・物語スペインの歴史
    ・ちょっとピンぼけ・ロバートキャパ自伝
    ・評伝&写真「ロバート・キャパ」

    と、読んできました。このウィーランさんの評伝が済んだら「十字架」に上陸です。

    ▼この評伝…面白すぎます…。
     (ただ、上記のように読んできたからこそ面白く感じるのかも知れませんが)
     というか、ロバート・キャパが面白すぎます。単純なレベルで。悲惨と栄光が入り乱れまくりです。

    ▼1913年にブタペストのブルジョワ階級に生まれたユダヤ人のキャパ。多少恵まれて育ちますが、第二次大戦前夜、世界恐慌(1929~)のあおりでキャパ家も困窮します。
    (それからどうやら両親が不和だったようですが)
     さてその時代は欧州では、なんといっても恐慌と共産主義、そしてアンチ共産主義(ナチズム含む)なんです。ロシア革命1917ですから。没落インテリのお坊ちゃまキャパは10代から立派な左翼運動家としてブタペストをブイブイ言わせて、結局逮捕されて釈放されますけど18歳で「国外追放」に。ベルリンへ。ドイツ語もままならず、仕送りに甘えながら写真の道を探ります。

    ▼やがてドイツのユダヤ人排斥が強くなり、つまりヒトラーに追われるが如く、パリへ。無職、実家の困窮、当然ながら貧乏。そもそもフランス語が…。
     しかし朝ドラのヒロインも真っ青な、人なつっこさと愛嬌で。生きて生きて生き抜いて仕事に恋に。…だけれども、まだ何者でもありません。不安もあればしょげるときもあります。本当に懐に一銭もなく腹が減っており、なんのあてもなく将来の希望も無い。そんな夜がそんな朝が繰り返すパリの暮らし、パリの痛みが行間から染み出でる青春です。そしてゲルダ・タローと運命の恋に落ちます。

    ▼我々だけが知っています。ここから青年はナチズムと戦う人々を撮りつづけ、「反ナチズムの英雄、ロバート・キャパ」になっていく。スペインで、アフリカで、イタリアで、そしてノルマンディーで。パリの解放のその日まで。

     あまりにドラマチックで、あまりに出来過ぎな青年の物語は、20世紀前半のいくつもの時代の要素が詰まっています。

    「軽量カメラの時代=写真雑誌の時代」
    「共産主義とナチズムの時代」
    「ハリウッドとアメリカの時代」
    「西側と東側の時代」
    そして「悲惨な戦争の時代」

     存在そのものが時代であり、物語であり、エンタメです。

    ▼どうしてか?それはきっとキャパが

     「教養と人格を備えた良い育ちの陽気な性格である一方で、10代で予め全ての財産と地位と、おまけに国籍も住所も家族も、とにかく居場所を全てを無くしてしまった」

     からなんだと思います。
     彼は時代と社会と戦争の中にしか、居場所が無かった。
     改めて青春篇をじっくり読むことでそんなことを感じました。

  • キャパ個人のことだけでなく、東欧、欧州の歴史も丁寧に描かれていてとても面白かった。調査も詳細で文章も感傷的なものも無駄もなくいい感じ。翻訳者としての沢木耕太郎さんの独自の視点から書かれた長~いあとがき風の文章も、あるいは書くことへの誠実な姿勢にも感激。ウィーラン氏、沢木氏によって描かれたキャパの歴史、思いもよらず価値ある名作と出会え得した気分。「ちょっとピンぼけ」を次回読むのが楽しみです。

  • 高校生のときに1回読んだ気がしたのだが、もう1度読んでみた。昔読んだときの感想というのは、キャパは魅力的で冒険家で女たらしで自由人というものだった。しかし今読んでみると、幼いころから家庭というものに失望し、恋愛を含める愛というものから背をむけてきた男の人生が見えた。政治に関してや戦場のロケや様々な人との出会いの記述が多いが、彼自身の生き方や考え方もちらほらと母親への手紙などから知ることができる。ロバートキャパは…悲しい男だった。傍観者でいることに苛立ち、戦争写真家としての失業を望みながら個人的な名声を与えてくれたのは戦争だった。その戦争がファシストの勝利や愛するゲルダの死をもたらした。戦場にいて誰かが犠牲者のことを忘れていないということを示すことはできるし、飴やタバコを与えることくらいはできるが、それ以上のことを写真を通して望むことはばかげていると思っていた。しかしその写真に命をかけた彼の考えは矛盾しているようでむなしさと寂しさををともなった彼自身の理想を感じられずにはいられない。考えてみれば彼の魅力的で知性的な人格というのは、彼が生きていくのに必要だったものなのだ。20世紀最大の戦争写真家は経済的にも、家庭環境にも恋愛や幸せな結婚にも恵まれず、政治的な理想は打ち砕かれ、それでもたくましく生きようとする普通の男だった。彼はまったく違う人生を希望していたかのようにも思えるし、様々な自分の人生の出来事をのろいながらも自ら失わないように生きていた気もする。彼自身というより運命が彼を戦争写真家にさせたのかもしれない。

  • まだキャパではなかった名も無き若者の青春の日々。「一枚の写真」が世界に与えた影響は、彼の人生を変えることになる。

  • 伝記作家「リチャード・ウィーラン」の著書で「沢木耕太郎」が翻訳した作品『キャパ その青春』を読みました。

    『キャパの十字架』を読んで、以前読んだ『ちょっとピンぼけ』だけでは知ることのできなかった「ロバート・キャパ」の素顔を、もっと知りたくなったんですよね。

    -----story-------------
    「崩れ落ちる兵士」 ―一枚の写真が“戦争の真実”を伝えた。
    報道写真家「ロバート・キャパ」は、このワン・ショットで世界にその名を知られ、伝説の人となった。
    1913年、ブダペストに生まれ、1954年、インドシナで短い命を閉じた偉大な写真家の生涯を描く傑作伝記の青春篇。
    冒険家であり、勇気の人であった報道写真家の伝説に満ちた生涯を丹念に辿り、ブダペストでの青春からスペイン戦争従軍までを描く。
    文庫化にあたり、訳文を見直し、訳注を大幅に加筆した決定版。
    -----------------------

    1988年に発行された単行本では二分冊だったものを文庫化に際して三分冊に見直したようですね。

    本書はその一冊目で、1913年の誕生から、「崩れ落ちる兵士」が撮影された1936年のスペイン内戦への従軍まで… 23歳の誕生日直前までを扱っており、以下の章構成で描かれています。

     ■ブダとペスト
     ■旅立ち
     ■そこに一台のカメラがあれば
     ■暗室助手
     ■ベルリンを逃れて
     ■左岸の日々
     ■最初のレッスン
     ■ゲルダ
     ■恋におちて
     ■映画への夢
     ■キャパ誕生
     ■奴らを通すな!
     ■崩れ落ちる兵士

    大好きな「ロバート・キャパ」の人生を描いた作品なので、意気込んで読み始めましたが、、、

    地名、人名、組織名、会社名、学校名、雑誌名、機関紙名… ありとあらゆる名前が読み難くて、覚え難くいので、ちょっと入り込み難かったですね。

    「キャパ」も、「キャパ」を名乗る前の「バンディ」という呼称で登場してくるので、なかなか違和感が抜けませんでした。

    それでも、一つひとつの事実を抑えながら、「キャパ」の生き様が丹念に辿られており、読む価値はあるなぁ… と思える作品でした。

    当時の「キャパ」は、貧しくて無名でしたが、将来への夢を持っていて、楽天的で世渡りが上手く、相手が喜ぶように話をことさら面白くする能力に秀でていたようです… でも、責任感があまりなく、お金のことに無頓着なところがあったようですね。

    それでも、その性質が魅力的に思えるので、なんだか不思議です。

    自分とは正反対なところ、自分は持っていない何かを持っているところが、魅力的に映るのかもしれませんね。

    身近にいると、困ったヤツなんだけど、憎めないし、放っておけない… そんなヤツなんだと思います。

    現代の日本に存在したなら、ただの異端児だったんじゃないかな… 激動の時代だったからこそ、その魅力が存分に発揮できたんだと思いますね。


    本編も、当然、興味深い内容だったのですが、文庫化にあたり大幅に加筆された「沢木耕太郎」による「原注、訳注、雑記」が面白い… 「沢木耕太郎」なりに良く調べていると思います。

    その中では、『キャパの十字架』で紹介されていた、「崩れ落ちる兵士」の前後に撮られたと思われる写真に関する「大岡昇平」の「演習をしているんだろ」というコメントも記載されており、「沢木耕太郎」が、少しずつ、そして確実に、事実に近づいて行っていたことがわかります。

    これだけでも読む価値がありますね。

  • 1913年、ブダペストに生まれ、1954年、インドシナで短い命を閉じた写真家の生涯を描く伝記の青春篇。

    ブダとペスト
    旅立ち
    そこに一台のカメラがあれば
    暗室助手
    ベルリンを逃れて
    左岸の日々
    最初のレッスン
    ゲルダ
    恋におちて
    映画への夢
    キャパ誕生
    奴らを通すな!
    崩れ落ちる兵士
    原注、訳注、雑記

  •  横浜美術館に行ったら休館日だった。せっかく予備知識をつけてから観ようと急いで読んだのに。
     というわけで『ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家』展はまだ観ていないが、この本の中には二人が恋人となった経緯や、ロバート・キャパという架空の写真家が誕生した経緯などが書かれている。
     キャパの本名はアンドレ・フリードマン。ゲルタ・タローの本名はゲルタ・ポホリレ。二人合わせてロバート・キャパ(何だそれ?) 出版社や新聞社に売り込むときにアメリカ人の写真家として売りこんだ方が良いだろうとの判断から、架空の人物を創った。ゲルタ・タローの「タロー」は岡本太郎から取られた。 生きている時は奇抜なおっさんだな、くらいにしか思っていなかったが、岡本太郎はすごい。ここ数年でやっと理解できてきた。
     本編ではキャパの青春時代の奔放なエピソードが盛りだくさん。詰め込み過ぎで、ちょっとうんざりする個所もあるが、全編を通してみれば、生い立ち、職歴、交友関係、女性遍歴などから、キャパの愛される人柄が形成された過程がよくわかる。まだ貧乏には苦しんでいるけれど、戦争写真を撮っているわけでもないので、悲壮感もないし、ほとんど暗い影もない。未来を信じる青年の姿がそこには見える。  巻末の沢木耕太郎の解説(びっくりするくらい長い)はとても面白いので、単行本を読んだ方も、この文庫の解説は読んだ方がいいと思う。
     
     

  • うーん。
    すごい時代に生まれたんだって言うのは分かるんだけれど、読むのがしんどかった。
    訳文ってちょっと苦手。

  • 貧乏で、でも自由で、やりたいことをやってて楽しそう。お金がないのはつらいかな。男の人なら、これくらいやりたいことを周りを気にせずやる人生がいい

  • 【4/120】沢木耕太郎氏訳ということで、期待して古本屋で購入したものだが、原作がたいしたことないのだろうか、ただただ事実の羅列で読みにくいったらありゃしない。
    最後は、超ナナメ読みで読了することにした。

  • 事実の羅列。眠くなってしまう。内容はキャパを見つめる上で大変興味深い。

  • 二十代後半にして戦場カメラマンとして頂点を極めたキャパだったが、じつのところ本人はそれほど自分の仕事に対して誇りを持っていたわけではなかった。

    「カメラをカシャカシャやるのは大人の仕事ではないな」

    パ-ティ-の席で冗談まじりにそんな台詞を呟くのが常であったが、まんざら嘘でもなかったようだ。

    「僕が本当にしたいのは、小説を書くことか、ちゃんとした野心的な事業に関わりたいんだ」

    当時つきあっていた恋人には、こう本音を漏らしている。
    写真で稼いだ膨大な金はすべてギャンブルやその他の娯楽に散財してしまい、いつも借金で首の回らない生活だったという。

    驚くのは彼が一台も自分のカメラを所有していなかったという事実である。
    もちろん仕事で必要に迫られ、新聞社から借りたり、自費で買ったりしたらしいのだが、すぐに売ってしまったりしていたようだ。
    カメラ好きなら考えられない行為に映るだろう。
    そもそも写真そのものに興味があったかも疑わしいところがある。
    現像はほとんど他人まかせで、晩年は仕事よりも酒と女に情熱を傾ける日々だったらしい。
    ベトナム戦争の取材も、借金返済の為しぶしぶライフの仕事を請け負ったというのが真実のようで、ジャ-ナリスティクな使命感とは無縁の人だったようである。
    結局、キャパは写真を撮るという行為よりも、人そのものが興味の対象だったのだろう。
    イデオロギ-ではなく、快楽主義的に生きた人でもあった。
    だからこそ、後世に残る優れた作品を残せたのだと思う。

    キャパは文章も相当に巧かったらしい。
    気に入った写真は自らがキャプションを書いていたという。
    一度拝読したいものである。

  • 僕は新しい名前を使って仕事をしています。ロバート・キャパ、というんです。僕は生まれ変わったのかもしれません。でも、今度の出産には誰の苦痛も必要としませんでした。

  • 沢木さんの「原注、訳注、雑記」がすばらしい。

  • 「キャパ その死」の方が華やかな時代の記述なので面白いと思うが、キャパの生い立ちや若い頃の生活を知るのにはこの本を読む以外にない。

  • \105

  • ロバート・キャパといえば戦場の写真家。そして魅力ある男。 しかも訳が沢木耕太郎。 昔図書館で読んでほしかった本が文庫に! 美しきゲルダ・タローとの恋もかっこいいな。

  • アメリカに来て、読んだ最初の1冊。ハンガリー人だったということも、結構で破天荒な性格だったということも、まったく知らなかった。ふーんな一冊。続きを買わなくては!

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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