キャパ その戦い (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2004年4月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784167651404

感想・レビュー・書評

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  • ▼「キャパ その戦い」リチャード・ウィーラン、初出どうやら1986(アメリカ)。沢木耕太郎訳、文春文庫。ロバート・キャパについての、今でも恐らくいちばん定番の評伝でしょう。文庫化にあたって全3冊になったその2冊目。キャパはスペインの内戦を通して「命知らずな戦場カメラマン」という名声を手にし、世に躍り出ます。二人三脚だったゲルダ・タローの戦場での死を経て、そのまま第2次世界大戦へ。ユダヤ人であり、ナチスと結んだハンガリー国民であるキャパは、さまざまな生きづらさを抱えながらパリ、ロンドン、そしてニューヨークへと名声を転がしながら流転。そして何よりも戦場を求めて、そして戦場に疲れ戦争を嫌悪しつつ、より激しい戦場へと突き進んでいきます。
    全般、とにかく、おもしれぇ。

    ▼戦場の悲惨を伝え、戦争の悲劇を売ることで名声をなして。一方で「もう危険なことはやだから違う写真撮って生きていこうっと」とはならない。そうなるには、キャパはまだ若すぎたのか、それとも予め流浪の身に慣れすぎたのか。そんなキャパの心情を作者が考察するくだりが、これは戦争だけに限らず多くの「現場」というものにあてはまる真理だなと思いました。

    ▼(本分より)キャパとはガフサのプレス・キャンプで会っていたアーニー・パイルが書いている。<それは基本的なもののみによって成り立っている生活だった。食料、睡眠、移動。そして、各自の工夫によって手に入れられる暖かさや安全のどんなに少ないことか。…..しなくてはならない約束は存在せず、他人がどう見えるかなど気にしている者はいない。形式主義は最小にしか存在しないし、また軍は私たち特派員を家族の一員として受け入れてくれた。私たちは数百人の兵士を知り、友達になった>。

    ▼(本文より)…ふたりの司令官は、キャパが大好きな、あの率直さと人間味のある暖かさと上質のユーモアという特徴をもっていた。………派手で型にはまらない個性の持ち主であり、粗野で下品な言葉使い、………かなりの放任主義的態度と並んでつとに有名だった。さらに呑気なところがあった。部下たちはその勇敢さと、自尊心の強さと、下手なシャレと、詩を暗唱する能力とによって彼を愛していた。

    ▼軍隊は集団で生死を賭けるので集団主義なんですが、この時期のアメリカ軍はどうやら同時に生死を賭ける分だけ合理的で実質的でもあったということでしょう。この前提としてなにより物理的に補給が満ち足りていたということが見逃せませんけれど。(キャパの言及でもスペイン政府軍について同様のことはあまりないんですね。むしろ、その時のジャーナリスト仲間については同様の愛着があるようですが)

    ▼そういう意味では軍隊や戦場での仕事は、予めどの文化にも馴染んでいないストレンジャーであるキャパにとっては、居やすかったのかもしれません。彼はブタペストのプチブルジョア一家で18まで過ごしたあとは、ベルリン、パリと最底辺の暮らしをのたうちまわっただけですから。そしてその過程で何度も出てくるのは「同じハンガリー生まれの人の情けにすがってなんとか仕事を貰った」みたいな記述です。同じ才能を持っていても、パリやロンドンやニューヨークの中産階級以上に生まれていれば、戦場をさまようことに人生を賭けなかったのかもな、と思ったり。そんなこんなで、ノルマンディー上陸作戦が近づく中、「キャパ その戦場」読了。いよいよ最終巻へ。

  • 恐ろしいまでに世界が混沌としていた時代だったのだなとまず思う。前半のスペイン内戦を描く筆力には脱帽です。後半、キャパの残したものの矛盾や誇張が暴かれてますが、キャパを貶めることなく、むしろ「ちょっとピンぼけ」で本人が描いたもの以上に魅力的に思えたのは不思議ですが、解る気もする。
    訳者沢木さんの詳細なあとがきも健在で、さらにこの本に魅力を加えていました。

  • 伝記作家「リチャード・ウィーラン」の著書で「沢木耕太郎」が翻訳した作品『キャパ その戦い』を読みました。

    先日読んだ『キャパ その青春』の続篇です。

    -----story-------------
    戦場から戦場へ―戦争写真家「キャパ」は修羅の巷でシャッターを切り続ける。
    スペイン、中国、北アフリカ、シチリア島、イタリアの最前線で彼のレンズは“戦争”を捉え、伝える。
    だが、その戦場で、同僚であり最愛の女性だった「ゲルダ」を喪い、生涯の友人となった作家の「ヘミングウェイ」と出会う。
    戦場が日常と化した「キャパ」の奮闘は続く。
    -----------------------

    「キャパ」の人生を辿った三分冊の二冊目の作品… 「キャパ」23歳から30歳までを扱っており、以下の章構成で描かれています。

     ■磔にされた町
     ■戦場から戦場へ
     ■明日にはもっと
     ■長い葬列
     ■生み出される死
     ■四億の民
     ■別れの儀式
     ■ニューヨークへ
     ■偽装結婚
     ■亡命者たち
     ■打ち砕かれて
     ■ピンキー
     ■熱砂の戦場
     ■シチリア上陸
     ■岩と泥と雪と

    「キャパ」がスペイン内戦や日中戦争、さらには第二次世界大戦を通して、しだいに戦争写真家として有名になっていくプロセスが描かれています。

    巻末に掲載されている「沢木耕太郎」による「原注、訳注、雑記」が、本文を読むうえでのポイントや補足事項を抑えてあるので、とても便利で、先に「原注、訳注、雑記」を読んでから、本文を読むのが習慣になりましたね。


    強く印象に残ったのは「ゲルダ」を失った直後が描かれた『長い葬列』… 「キャパ」はのちに、「ゲルダが死んだときに自分の人生もある種の終焉を迎えてしまったのだ」と語ったそうです。

    「崩れ落ちる兵士」が、本人の意思や事実とは離れ、コントロールできない状態となり、その重荷(十字架?)を背負わざるを得なくなったことと、「ゲルダ」の死による絶望感によって、「キャパ」の人生は危険と隣り合わせとなることが決まってしまったんでしょうねぇ… 自分から、そうせざるを得なくなったんだと思います。


    そして、本書の中で、忘れられない「キャパ」の言葉… 「キャパ」がアマチュアカメラマンにアドヴァイスしたひと言、、、

    「人を好きになること、そしてそのことを相手に知らせること」

    この言葉が「キャパ」の性格を凝縮していると感じました。


    写真が撮られた背景がわかってくると、その時代の写真を再度、確認したくなって『フォトグラフス―ロバート・キャパ写真集』を時々見返しながら読んでいます… 写真を撮った際の情況がわかると写真の印象も変わってきますね。


    三分冊目の『キャパ その死』も機会があれば読んでみたいですね。

  • キャパの人好きのする性格、勇敢さ、写真家としてのプロ意識を、戦争という荒波の中で描いている。

    ただ、読み物としては、単調で、面白味のあるものではなかった。
    それぞれの戦争の予備知識があれば、場面を想像しながら、当時の状況におけるキャパに思いを馳せることが出来るのかも知れないが、背景が分からない私にとっては面白味に欠けるように思えた。

  •  横浜美術館のキャパ展を観てきた。 あんなに観に来ている人が多いとは思わなかった。若者も多く、思った以上にキャパは有名みたいだ。展示を観てから、この本を読むと、展示キャプションだけでは深くわからない写真の裏側がよくわかって、とても参考になる。

     ここからは本の内容。
     キャパの最愛の女性ゲルダはスペイン内戦を取材中に亡くなってしまう。戦闘に巻き込まれたわけではなく、共和国軍の戦車に轢かれての事故死だった。 キャパは悲しみに沈む。キャパとゲルダは実はうまくいっていなかった。キャパの想いとは裏腹にゲルダの心は冷めていた。亡くなったときもキャパとゲルダは遠く離れ別行動をしており、1か月以上も会ってもいなかった。 もう一度ゲルダを振り向かせたかったキャパにとって、その突然の死の知らせは、あまりの衝撃だった。取り乱して慟哭し、そして呆然とするキャパの様子が描かれている。写真ではいつも笑みをたたえているキャパからは想像できない。
     ゲルダは歴史上初めて戦死した女性カメラマンということで、反ファシストの殉教者に祭り上げられた。彼女が取引していた仕事先の出版社は彼女の追悼特集を組み、虚実入り乱れた記事はセンセーショナルとなり、彼女はフランスの少女たちのアイドルとなった。 一方で彼女の真実を知るキャパは酒におぼれ、悲しみの淵から這いあがれずにいた。
     しかしその後キャパは彼女の意思を継ぐように、戦火の中に今まで以上に飛び込んでいくことになる。彼女の死が真の戦場写真家キャパが誕生する転換点となった。
     本書には、この他に戦場写真家を都合よく使う『ライフ』などに対して不満を抱き続けたキャパが、仲間たちの権利を守るために設立する「マグナム」についても、経緯が詳しく書かれている。 横浜美術館の展示の最後に、キャパの死後『ライフ』が特集した記事の実物があったが、これを読むと、『ライフ』の追悼記事そのものに商業主義を感じてしまう。
     巻末には、前巻同様に沢木耕太郎の長い解説がついていて、これもまた面白い。  『崩れ落ちる兵士』の真贋論争も載っている。1996年当時、朝日新聞に、この被写体の男性の遺族が判明し、間違いなくこの男性は銃撃され、この時に亡くなった、という取材記事が載った。それに対する疑問点を沢木氏が考察している。
     この短い考察を読んでから、最新刊の『キャパの十字架』を読んでみたら、どのように疑問が解決していったのか、わかって面白いかもしれない。
     
      

  • ゲルダタローのところが良かった!

  • \105

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