- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167651749
作品紹介・あらすじ
対日空爆戦略を指揮した男たちが作り上げた軍事シンクタンク-「ランド研究所」。政治から経済まで様々な分野でアメリカ戦後史を陰に陽にリードし続けた天才たちの遺産は、ゲーム理論、システム分析、インターネット、合理的選択理論と、今なお私たちのマインドを支配し続けている。初の本格ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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誕生間もないアメリカ空軍の外部シンクタンクとして生まれ、国防総省、さらには軍事以外の分野にも進出したランド研究所の通史を書いた本。
「容赦ない定理のように、ランダイトは人間の存在について独自の見方をしていた。人間の存在で重要なものはすべて数字で表すことが可能であり、数字で表すことによって人類はその原動力、つまり自己利益を把握できるというのだ。」
これがランダイト(=ランド研究所の面々)の性格を端的に表しているのだが、なんか『ベスト&ブライテスト』みたいな話だな、と思ってしまう。それもそのはず、彼らはケネディ時代にはマクナマラに接近しているし、後年には「ネオコン」の母体ともなった。
ランド研究所の性格を確立したのがアルバート・ウォルステッターで、この本は、半ばウォルステッターについての本だともいえる。
数理論理学者であり、ランドにおいて核戦略家となり「フェイルセーフ」の概念を生み出したウォルステッターは、「数十年にわたってランドというシンクタンクを定義づけることになる数値的、合理的、実証的手法」の教祖的存在であり、その門徒たちが「ネオコン」の中核となった(ドナルド・ラムズフェルドやら)わけだが、普遍的な完全無欠な存在などではない。もちろん。
ソ連共産党の機関紙プラウダがランドのことを「科学と死のアカデミー」と呼んだのは伊達ではなく、ウォルステッターは新型兵器の開発を訴えてロビイングを繰り広げ、その中には「戦場にいる兵士の精神状態を混乱させる物質についての研究」も含まれていたという。
もう一つの「ベスト&ブライテスト」という直観的な理解はたぶん正しいのだ。
アフガニスタンのゲリラたちに武器を供与してソ連に抵抗させた結果がめぐりめぐって反米テロリストを生み出したのを見ると、ベトナム戦争から何も学んでいないのだろうな、と思ってしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
情報経営学のOR(オペレーションリサーチ)やゲーム理論から本書にたどり着いたのだが、このランド研究所がもともとはアメリカ空軍のシンクタンクだったとは…。それが研究者達の尽力により、ソ連封じ込め政策を代表するアメリカのシンクタンクに、さらには上述理論の他にシステム理論やインターネットなど世界へ貢献する理論・ツールを生み出す世界的なシンクタンクへと巨大化していく様が綴られております。
このランド発の考えやモノの恩恵を受けている全世界の人々が、ぜひ知るべき内容でもあると感じます。 -
かなりおモチロイ、昔仕事でルメイやUSSBR資料を調べたけどただのやばいやつじゃなくてランドのドンだったの知らんかった。
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アメリカ空軍のシンクタンクとして出発し発展したランドの通史.詳細な記述でよほどアメリカの政治史にでも興味がないと通読はたいへんだろう.わたしは飛ばしながら読んだ.
さて,わたしは映画「ペンタゴン・ペーパー」からこの本に辿り着いたが,このランドの恥部ともいうべき事件の記述はごくつつまましい.
一方でアローの定理やインターネットにつながるパケットの発明など目先の利益を追うだけでななく,大きな視点からの研究の揺籃となった研究所でもある.しかしずっと読んでいくと,アメリカ的正義に全く疑いを抱かない人たちの傲慢さがかなり鼻につく.それはアメリカ的傲慢さではなくて知的な傲慢さなのかもしれない. -
AA2a
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ランド研究所が現在までに世界に与えた影響の大きさに戦慄する。
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836円購入2011-11-18
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【由来】
もともとはGoogleの「第五の権力」をamazonで検索したら、アメリカのシンクタンク系のことを描いた同名の本が出てきて、そこからの関連本。 -
対日空爆戦略を指揮した男たちが作り上げた軍事シンクタンク、「ランド研究所」。Research and Developmentの名の通り、同研究所は政治から経済まで様々な分野でアメリカ戦後史を陰に陽にリードし続けた。天才たちの遺産は、ゲーム理論、システム分析、インターネット、合理的選択理論と、今なお私たちのマインドを支配し続けている -- 。
第1部 ランド誕生―1946‐
第2部 軍産複合体に成長―1950‐
第3部 ケネディとともに―1960‐
第4部 ペンタゴンペーパーの波紋―1970‐
第5部 アメリカ帝国―1980‐
第6部 そしてこれから―2000‐