アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2011年11月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784167651794

みんなの感想まとめ

古代ギリシャの難破船から引き上げられた謎の機械を巡る、100年以上にわたる探求の歴史が描かれています。このドキュメンタリーは、機械の精巧さとその背後にある人々の情熱、葛藤をドラマティックに伝え、科学の...

感想・レビュー・書評

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  • 20世紀の初め、ギリシャの海底に沈んでいた、腐食して緑青に覆われたブロンズ製の「謎の機械」。その謎に取り憑かれた数多の学者・研究者たちの、100年以上にわたる探求のドキュメンタリーです。
    テクノロジーが進むにつれて、少しずつ謎が解けていく凄さ! 驚愕のその正体! 天文学や数学やコンピュータ・テクノロジーについての記述はちんぷんかんぷんな自分が残念…。でも、人々の情熱、こだわり、苦心、競り合いなどなどがドラマティックに語られていて、ワクワクします。
    謎が解けていくとともに、この凄い機械を創った学問・文化が、強い軍事大国の侵略によって衰退させられた歴史も明らかになっていきました。せっかくの高い技術が長い間忘れられ、活用されなかったのは確かに残念です。でも、「いまごろ人類は近くの星に到達していたはずだ(アーサー・C・クラークのコメント)」というよりも、軍事力が発達しすぎて、いまごろ人類は滅亡しちゃってたかも、なんてことを考えてしまう今日この頃です…。

  • 現代の時計に勝るとも劣らないアンティキティラの機械に魅了された多くの技術者、研究者が謎を解明するところもドラマですが、作成者の考察はさらに興味深かったです。天体の動きを手元にという古代ローマ時代の人間の思いが複雑な機械を作ってしまうとは。いつの時代にも天才はいるんですね~。

  • 面白かったです!

    1901年、地中海の小島アンティキテラの海底に沈む古代ギリシャの難破船から、奇妙なブロンズの塊が引き上げられました。表面を掃除した後に見えてきたのはたくさんの歯車と古代ギリシャの文字。その精巧な作りは、計算機に匹敵し、1千年以上前の機械とは到底信じられるものではありませんでした。
    アーサー・C・クラークは、この機械の知識が継承されていたなら産業革命は千年以上早まり、人類はいまごろ近くの星に到達していたはずだと語っています。

    本書は、この機械の謎を追う歴史科学読み物の傑作です。

    冒頭は20世紀初頭の海底探索。潜水病に悩まされながらも困難な海底探索に挑む人々の姿が描かれます。そして、本書は、機械の謎解きに移っていきます。

    この本の面白さはふたつに絞られると思います。

    1)謎解きに挑戦する人々の執念と葛藤。同じ難破船から発見されたコインを手掛かりに機械の製作年を特定するという地味な調査活動から、X線断層写真、三次元のCT断層写真やCGを駆使して、機械に隠された文字や歯車を探ってゆくというという最先端の研究活動までが描かれます。機械に魅了された人々は、科学史家、博物館学芸員、物理学者、映画製作者、企業家と、多岐に及びます。彼らは協力しあいながら活動するのではなく、時によっては妬みや裏切りも経験します。この辺りは、科学読み物であると同時に人間ドラマでもあります。

    2)天文学に基づいた機械の仕組みや用途の推理。X線断層写真やCT断層写真から発見された歯車の歯数がポイント。53枚の歯数や223枚の歯数の意味するものは何か?そして、それが分かったところで、この機械は誰が何のために使ったのか?サロス周期とか、差動歯車とか聞きなれない言葉も出てきますが、この辺りはミステリー小説の面白さがあります。

    個人的に気になったのは、これだけの機械技術がなぜ発展せず、イスラム文化開花まで断絶してしまうのかという点ですが、本書は一応の説明をしてくれています。

    海洋冒険、人間ドラマ、天文学、からくりの面白さが詰まった1冊。おすすめの★★★★。

  • [当時の最先端のその先へ]ギリシャの海底で発見された沈没船。多くの遺物が回収されたのだが,歯車を幾重にも有する複雑な構成の機械が発見される。そして、その機械を良く調べてみると,作成時期と目される紀元前1世紀には存在しなかったはずの進んだ技術の存在が次々に明るみになり......。著者は、「ネイチャー」等の記者を務めたジョー・マーチャント。訳者は、科学関係の翻訳を多く手がけている木村博江。原題は、『Decoding the Heavens: A 2,000-Year-Old Computer--and the Century-Long Search to Discover Its Secrets』。


    古代×機械×謎解きという3点セットが揃った段階で面白くならないはずがない。1つの発見が今までの常識をがらっと変えてくれる衝撃,そして同時に新たな視界が開けてくる嬉しさが体験できる作品です。発見から謎解きまでが一直線で描かれるのではなく,間に関連する技術や歴史の解説も挿まれているので,読者もアンティキテラの機械に親しみを持ちながら本書を読み進めることができるかと思います。

    〜私の心に深く残るのは、私たちと古代人との距離の近さではなく、遠さだ。アンティキテラの機械がなぜ、誰によって作られたかを解明することは、古代のテクノロジーが「原始的」で、現代のテクノロジーは「先進的」という概念を、覆すことでもあった。〜

    ロマンと人間性が二人三脚になった見事なミステリー☆5つ

  • まず、アンテイキテラの機械の存在は知ってたけど、何かの間違いだと思っていた。
    しかし、それはヨーロッパを主とした歴史観によるもので、ヨーロッパが1000年も学問から遠ざかる、などということがなければ、歯車機械はもっと早く発明されていてしかるべきであった。
    いまより1000年進んだ世界は、果たしてどんな世界であったのか、想像することもできないが。。。科学は人類の叡智だが、科学を停滞させた宗教もまた、人類を進化させたひとつの要因、でもある。
    それにしても、この機械の素晴らしさときたら!これがたったひとつだけ遺された奇跡に、とてつもない幸運を感じた。

  • 古代のテクノロジーの発展に関しての理解が深まる一冊。天体や古代技術の考察がロマンに溢れていた。

  • お話としては面白い。文章だけだと機械の構造がわからない。

  • (借.新宿区立図書館)
    コンピュータという言い方は少々大げさだが(たぶんそれを狙っている)天文計算機という意味では近いのかもしれない。機会の仕組みの説明的な部分はちょっとわかりにくいが(たぶん私の頭がついていかないせい)、機器解明の人間ドラマとしての部分は大変面白く読める。ただし、原著者がイギリス人でありイギリスで出版されたもののようなので、かなりイギリスメイン(特にライト)の内容になっているところは割り引いてみなければならないだろう。

  • アンティキテラ、といえばオカルトのようなイメージがあって、この本を読む前はオカルトチックな本なのかなと思っていた。それは全くの間違いだった。古代ギリシャの偉人たちの天文学や数学などの水準の高さにただただ感服できる本であり、もっと詳しく知りたいと思わせる本であった。
    文系には読みづらい部分があるかと思うが、アンティキテラの謎を解き明かすストーリーも面白いし、その背景にある歴史も学ぶことができるのでそこそこおすすめできる。

  • #藤村シシン講座 at 札幌で参考文献に挙げられていて興味を持った一冊。ダイバーが発掘して、その後、科学史家、学芸員、映像ジャーナリストと多くのものが発掘されたアンティキテラの解明に挑み、徐々に正体が解き明かされていくノンフィクション。「プライスは機械をカレンダー・コンピュータとして発表し、ライトは天体運行儀と表現した。フリースは、食を予測する機械と捉えたのだ」/それにしても、学芸員ライトがあとがきからすると一番取材に協力的だったためか、後半は主に彼の視点によって描かれているのだろうか。そのためか、彼の関わった人々は、優れた手腕もある反面、人のアイデアをあたかも自分のものとして語ろうとするクソ野郎としても描かれている。そう言われた側としては、それぞれ言い分はあるのかもしれないが。/そして、科学技術というのは線的に発展しないのだなという不思議を抱いた。もし古代ギリシャの技術が継承、発展されていたなら、人類は千年も前にとっくに宇宙に行ってたのかもしれないという夢想。また古代が「原始的」で現代が「先進的」と言う見方に一石を投じることでもあったと。古代ギリシャの技術が翻訳されて、保存されたという、イスラム文献にも、解読されてないものが膨大にあり、それらが解き明かされていくと、また違った古代ギリシャ像が刻まれるかも、という期待もあるのだとか。/また、チョーサー「アストロラーベの話」は探して読んでみたい思い。

  • やっぱ難しかった。
    発見された土地の人々、学者の人生、などちょいちょい人々の物語が挟まれるので読み続けられた。
    モノを巡って、主人公が変わっていくんだなあ、と何となく思った。

  • なかなかトライする時間がなかったものの、
    時間を作って読んでみました。

    ジョーという名前ですが、
    実際はとてもキュートな女性だったりします。
    ちょっと時間なくて雑な感想になりますが、
    これ今まで読まなかったことを後悔しているとだけ伝えたいです。

  • アンティキテラ島の海底で発見された謎の古代のコンピュータとも言える歯車式機械は一体何のためのモノなのか?という科学的探求の物語である。まるでミステリーの謎解きのように本機械に取り憑かれた男たちの物語が展開される。
    なにせ、100年も前に海底から引き上げられて以降、ほぼ確実と思われる見解がなされたのはこの10年のことなのである。
    それだけ、海底からの引き上げ後に辿ったこの歯車式機械の運命は時代に翻弄されるとともに、時代時代の科学の進歩がなければ解明が困難だったと言うことである。

    2000年も前の現代の機械式腕時計に通じるような精密機械。
    それは天文学的知識と数学的理解力、そして精密な技術力が結合されたモノであり、現代に繋がる技術史観としてはルネサンス以降にしか実現し得ないはずのものであるという。

    だとしたら、紀元後早々にギリシア・ローマ文明が崩壊して以降、ルネサンスまでの技術的大空白はどういうことなのであろう。
    やはりムー的なオーパーツなのか?
    科学的な探究心よりも、ムー的な下世話な話の方に興味があるボクとしてはこの大空白時代の穴埋めの方に興味がそそられる。

    たしかに、西洋文明の軸で捉える限りギリシア・ローマ文明以降、教会が支配する中世の闇が晴れるまで、ヨーロッパでは科学的な進歩はとどまっていたかもしれない。
    しかし、科学的な進歩はその時代イスラム文明により引き継がれていたはずである。
    古代ギリシア・ローマ文明のアーカイブはイスラム帝国により引き継がれ、その後の激しい栄枯盛衰により進歩らしい進歩は見られなかったかもしれないが、やがてイスラムに埋もれていた種はルネサンスで華開く。
    イスラム帝国全盛時の文献の解読は様々な要因により困難な部分があるかもしれないが、この古代のコンピュータが製作されていた当時の状況等、ギリシア・ヘレニズムの文化・文明に関する文献が多くイスラム圏に埋もれていると思われる。

    この古代のコンピュータについて、ほぼ『なんのために作られたのか?』は解明されたと思われる。
    次は『誰が作ったのか?』を解明できないものだろうか?

  • [ 内容 ]
    海底から引き揚げられた2000年前の謎の機械。いったい誰が何のために創ったのか? 研究者の名誉をかけた100年に渡る熱いドラマ。

    [ 目次 ]
    発見された2000年前の沈没船、引き揚げられた奇妙な謎の機械、その機械の内部には、複雑な歯車の構造があった。
    歯車による入力と出力の自在な変換は、中世の時計の発明を待たねばならぬはずだった。
    それが蒸気機関と結びついた時、「産業革命」が興り、数字と結びついた時、コンピュータは生まれた。
    二〇〇〇年前のギリシア人がつくりあげたその機械―アンティキテラ。
    いったい誰が何のために創った機械だったのか?大興奮必至の科学ノンフィクション。

    [ 問題提起 ]
    1 海底より現れしもの
    2 ありえない
    3 「戦利品」
    4 科学史は塗りかえられた
    5 大胆な推理
    6 十九世紀のコンピュータがふたりを結びつけた
    7 すべては解読の名誉のために
    8 最強の布陣
    9 みごとな設計
    10 アルキメデスの影

    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 古代ギリシア人は紀元前300年頃から簡単な歯車を使った機械を作り出していた。紀元前330年頃のアリストテレスが書いたといわれる論文では二つの歯車が反対方向に回転する車の機械の記述があり、アルキメデスはスクリューと歯車を組み合わせた無限ねじという道具で力を増幅して陸上で船を引きずり、彼に次ぐ技術者のクテシデビスは水に浮いた浮きがのこぎり上の歯を持つ台が上下し連動する歯車が回る水時計を作ったと言われている。中国の伝説では紀元前2500年に黄帝が指南車を用いたというが実際にこれを再現したのは三国志の時代230年頃のことだった。記録に残っている歴史上最も古い天球儀は紀元前255年の同じく古代ギリシアのもの。中国では水力渾天儀が117年に作られている。

    19世紀にヘルメット式の潜水服が発明されるとギリシアでは海綿取りが産業化し、古代のブロンズ像が見つかったことから沈没船の考古学調査が始まった。1901年に回収されたときにはアンティキティラの機械はただの木の箱と腐食したブロンズの塊にしか見えずそのまま放っておかれた。乾燥した塊が割れ中の歯車が姿を現したのはそれから数ヶ月経った後のことだった。確かに記録には古代ギリシアに機械があったと書かれているが見つかった機械の精巧さはルネサンス期にエスケープメントを使った機械式の時計が発明されるまで似たものがない。本当に古代ギリシアの物なのか、またそうだとしたらこれは何のための機械なのか。

    同時に回収されたアンフォラからおよその年代が判明した。紀元前86年古代ローマの将軍スッラがアテネに侵攻したこれはスッラがローマに送った略奪品なのか。さらにコインが見つかりより正確な年代が推定された。紀元前60年から70年の間の間でスッラは既に死んでいる。だとすれば紀元前65年にオリエントを征服したポンペイヌス・マグヌスが61年におこなった史上最大の凱旋パレードがこれに合致する。計算ができる機械、これほどの贈り物はそうそうないだろう。

    科学史家のデレク・デ・ソーラ・プライスは一般の常識とは異なり水力を使った精巧な機械式の時計塔が11世紀の中国で既に作られたことを発表した。プライスはアンティキティラの機械にあらゆる技術の期限へ通じる秘密が隠されていると確信した。しかし、この機械が現代の時計に直結することを照明できるのか、ギリシア人がこれほど高度なテクノロジーを開発しながら、歴史資料になにも記録が残っていないのは、なぜか。プライスがプリンストン高等研究所〜現代コンピューター発祥の地〜で行ったアンティキティラの機械に関する講演はニュースとなりアーサー・C・クラークの元へも届いた。しかし、クラークを含めてだれもこの機械と比べられる物を知らなかった。アテネまで実際にこの機械を調べにいったクラークは失われた物の大きさを感じこう語っている。「産業革命は千年以上早く起きていただろう。そしていまごろ私たちは、月のあたりで足踏みしたりせずに、近くの星へとうたつしていたでしょう」。2001年宇宙の旅も発表されていなかったということだ。

    プライスに続きシドニー大学のアラン・ブロムリー、ロンドンの科学博物館院のマイケル・ライトがこの古代機械の秘密に迫る。なかでもライトは友人と信じていたブロムリーに何度も出し抜かれ、助手としてX線撮影を続けたのにその写真は全てブロムリーに持ち去られ、最後にアンティキティラの謎を解いたと発表した際には後から追いかけてきたフリースの研究チームが新たな証拠を発表してスポットライトを攫われたりと散々な目に遭いながら研究を続けていた。最後はカリフォルニアのCGクリエイターのトニー・フリースのチームがこの新たな証拠に加えコンピューターを駆使した表面撮影技術で肉眼では読めない文字を読み取り、後にジェットエンジンのタービンブレードの非破壊検査に仕えるようになるマイクロフォーカスのX線技術を駆使して古代機械の構成をほぼ突き止めたのだが、その論文の発表会にゲストとして招かれたライトはフリースチームだけが古代機械に取り組んだわけではないことを聴衆に思い出させ、プライスの研究にふれ、自分が彼と同じくらいこの機械のために年月をかけて調べ、裏切りにも合い・・・それでも・・・」彼は言葉を切った。「私はいま、ここに立っています」

    アンティキティラの古代機械は複雑な天体の運行を示す天体運行儀だったと推測されている。ディファレンシャルギヤや遊星歯車といった高度な技術を備え、カエサル歴より早くうるう年を含み、後戻りするように見える惑星の進行を示し、ハンドルを回せば自分の見たい天空の動き、例えば自分の生まれた日の天空を見ることができる。月の満ち欠けを数え、食を予測することも。

    古代ギリシアの技術が伝わった先はどうやらイスラム世界らしい。ローマ帝国が滅びルネサンスが始まるまでの間の西方世界の中心地はビザンチン帝国を経由してイスラム世界に移っていたが、イスラムの古い文献の解釈はまだまだ進んでいない。

    原題はDECODING THE HEAVENS、天地明察ですねこれは。

  • 現存する最古のからくり、アンティキテラのコンピュータの発見と解明にかかるドラマ。
    愛・地球博に田中久重の万年時計が展示されたそうですが、その古代ギリシア版、みたいな。

    手作りで万能万年暦を作り上げる能力と技術を考えると、地球が丸いとか太陽はヘリウムのかたまだりだとか知っているだけでは、たとえ2000年前の人にも全く知性でかなわないのだということを思い知らされます。

    コンピュータ史に興味のない私にもとても面白い一冊でした。
    「誰かの興味」とか「それに感銘を受けて綴られた文章」のおかげで少しずつ世の中の面白いことを知っていくことができるのが、好奇心の薄い私にはほんとにありがたい。

  • この手の科学系(理工系?)ノンフィクションで、一般文系読者向けに書かれたものの一つの典型として、難しい話は抜きに「ヒューマンドキュメント」として読ませる、という手法がある。本書もその例に漏れない。題材自体の新奇性は大きいのだが、どうも謎に奥行きがないというか、二転三転するコンピュータの「機能」が概ね最初に設定された枠の中をはみ出さないので、個人的にはあっというほどの驚きがなく少し物足りなかった。

  • 1901年、ギリシアの海底から奇妙な機械の破片が引き上げられた。小さな箱に多くの歯車を組み込む洗練された設計と技術。その機械の内部には、複雑な歯車の構造があった。歯車による入力と出力の自在な変換は、中世の時計の発明を待たねばならぬはずだった。はじめは紀元前1世紀のものとは誰も信じなかった。いったいこれはなんのために創られたのか? 百年にわたった謎解きを研究者たちのドラマとともに描く、興奮の科学ノンフィクション。

    アンティキテラ島の沿岸で沈没船から発見された機械の破片を巡る100年にわたる物語、面白いです! 考古学と天文学、歯車の技術、潜水技術、放射性炭素同位体測定法やX線撮影・X線CTなどの測定技術などさまざまな分野にわたる知識や技術を駆使した研究者たちの100年以上の戦いに惹きこまれてしまいました。紀元前1世紀にあるはずのなかった高度な技術を用いて作られた「アンティキテラの機械」に惹かれ憑りつかれた研究者たちは、時に協力し、時に欺きあい、挫折し、歓喜しながら少しずつ真実に迫っていきます。機械は太陽と月、惑星の運行を予測し、古代社会で重要であった日食と月食を正確に計算するものであったことが2006年に明らかにされましたが、機械に残された謎や「誰が作ったのか」をめぐる研究はまだ続いています。古代の天空に思いをはせたギリシア人たちのロマンと科学技術が明らかになることを楽しみに待ちたいと思います。

  • 2013/12/17読了。
    「超古代文明」とか「オーパーツ」などの言葉に激しく反応する人々にはおなじみの「アンティキテラの機械」。この機械はそうした怪しげなものではなく、古代ギリシャの驚くべき知識と技術で作られた、歯車の歯数の組み合わせで複雑な計算を行うアナログ天体コンピュータであることが明らかになっているが、そこへ至るまでの百年に渡る解明の歴史をまとめたドキュメンタリーが本書である。
    ちょっと一言では表しきれない、幅広い読みどころが満載の本だった。歴史、考古学、天文学、数学、工学、エレクトロニクスなどの様々な分野が絡み合う百年間の物語だ。
    僕はこれらの学問にはまったく明るくないが、古いカメラの蓋を開けて中を見るという趣味にはまったことがあるので、「歯車」が人を惹き付けてやまない存在であるというのはよく分かる。
    この機械が作られた後、ローマがギリシャを征服して学問が軽視され、さらにローマ帝国も滅びてテクノロジーが失われ、イスラムで細々と継承されていたテクノロジーの残滓を十字軍が奪い返し、そこから再び進歩を始めて同じようなものがヨーロッパで再発明されるまでに、なんと千年もの間が空いたという。「文明は後退することがある」という事実の何よりの証拠だ。後退の原因となったのは人の営みである。昔より今の方が進んでいる、放っておいても未来は今より進歩する、昔の世の中に戻ることなんてあり得ない、などと無邪気に考えることの傲慢さを教えてくれる。進歩も後退も人次第だ。

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著者プロフィール

木村 博江(きむら・ひろえ)
1941年生まれ。国際基督教大学卒業。翻訳家。訳書に『なぜ美人ばかりが得をするのか』『女の子はいつも秘密語でしゃべってる』など多数。

「2012年 『文庫 良心をもたない人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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