世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)

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レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167651862

作品紹介・あらすじ

世界中が、アメリカ発の住宅好況に酔っていた2000年代半ば、そのまやかしを見抜き、世界経済が破綻する方に賭けた男達がいた。投資銀行、格付機関、米政府の裏をかき、彼らはいかに世紀の空売りと呼ばれる大相場をはったのか。『マネー・ボール』の著者マイケル・ルイスが世界同時金融危機の実相を描く痛快NF。

感想・レビュー・書評

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  • 世界中の景気に冷や水を浴びせかけたリーマンショック。それはアメリカの不動産を担保にしたサブプライムローンの破綻が発端でした。そのバブルがはじけるまで、サブプライムローンを売りまくっていた金融市場において、その破綻を予期した人たちが存在し、その人達がどのように考えて行動していたのかを詳しく追ったノンフィクションです。
    実は私自身も金融商品の仕組み、取引の仕組みがよく分からず、サブプライムローンと言われてもその仕組みもよくわからず、その辺の知識を得られることも期待して読んでみました。読後の印象としては、読んでも分からない部分も結構残りました。もう少し金融商品の知識を得てからこの本を読んだらもっとスリルや緊迫感を感じることが出来たのではないかと思います。
    ただ本書から当時の金融市場の大きな流れは掴めますし、取り上げられている人物の描写も丁寧で、読んでいて辛くなることはないと思います。文庫本ですからお値段以上の内容と言えるのでは。

  • 正直、CDSなどの仕組みについては、さっぱりわからないまま読み終えた。著者が巻末のエッセイで、自分の母親を念頭に、と書いているけど、ざんねんながら、お母さんも一度読んだだけではわからないだろう。でも、それでも読み続けると思う。それはやっぱりノンフィクション作家としてのマイケル・ルイスの腕、というか、あふれんばかりの才能というか。人物の描き方、時代の空気。仕組みがわからなくてもそのざわざわした……でも表面的には何一つ変わることのない、異様な景色が伝わってくる。
    東江一紀氏の翻訳も秀逸。
    「リップマンという人物をできるだけ当たり障りなく評するとすれば、“当たり障りだらけの男”ということになるだろう。……けっして無慈悲ではない。無礼ですらない。少なくとも、本人は無礼にふるまっているつもりはない。単に、他人(ひと)の悪感情を極度に刺激するところがあるというだけの話だ」
    「ジェイミー・マイは背が高く、はっとするような美男子で、天性の仕切り役というふうに映る。ただし、それも黙っていればの話で、口を開くと、日の出の方向から人類の未来に至るまで、すべてについて確信を持てずにいることが露呈してしまう」
    ――好きだ~(笑)

    最後、著者が『ライアーズ・ポーカー』で辞任に追い込んだかつての上司、ソロモン・ブラザーズの元CEOだったジョン・グッドフレンドと会食をともにする場面は、静かでさりげないけれどエピローグとしてはまたとないものだった。「デビルド・エッグ」の話で結ぶなんてね。名前もいいし。
    「素朴な卵がこれほど複雑な、それでいて魅惑的な商品になることに、誰が気づいたのだろう? わたしは手を伸ばし、ひとつ取った。空虚を装いで飾りたてたもの。その魅力はけっして色あせることがない」

    ――かっこいい。著者と訳者、才気の二重奏だ。

  • 難解?な経済の仕組みをわかりやすく説明するために工夫したり、テンポよく話を進めようとどりょくしているのは認めるけど、ちょっと空回りしている感じ。脚本を読んでから映画を観たけれど、話題性はあるものの映画としてはいまいち。残念。

  • 合資会社を上場することの一番の効用は、財務上のリスクを株主に転嫁できることだ。言うまでもなく、株主だけの問題にはならない。ウォール街の投資銀行が大失敗をしでかせば、そのリスクは合衆国政府の問題になる。「深みにはまるまでは、レッセフェールだ」と、元CEO は喉の奥で小さく笑った。

    マイケル・ルイスはこの壮大な物語を締めくくりとして、嘗て糾弾した旧ソロモンブラザーズのジョン・グッドフレンド元CEOとのランチのシーンを選んだ。彼がライアーズ・ポーカーで徹底的に糾弾した後も、金融資本主義は自己増殖を続け、遂に世界経済を破滅の淵に追いやることになった。

    この壮大な賭けの相手方は誰なのか、本書を通して流れる一つのテーマである。バーリやアイズナーがサブプライムローンで仕組まれたCDOが破綻する側に賭けた時、相手方の投資銀行はそのポジションを他の投資家に売却したかのように見えた。実際、それが証券会社のビジネスモデルであり、AIG-FPのような無謀な投資家がいたからこそ初期の賭けは成り立っていた。しかしここでも金融資本主義の自己増殖の原則が働き、いつの間にか自らポジションを抱え込んでいた。彼らは高度なリスク管理モデルを持っていたはずだった。しかしそれは極めてナイーブな前提の上に成り立つ砂上の楼閣に過ぎなかったことを、筆者はメリルリンチの例を通じて描き出している。

    あれから6年、国際金融規制強化の流れは今なお続く。規制・監督側はことある毎に「too big to fail」と呪文のように唱える。バーリやアイズナーは壮大な賭けに勝った。しかしその賭け金は結局のところ、アメリカ政府が負担したのではないか。その限りにおいて、マイケル・ルイスの長い旅は終わらないのだろう。最新作「フラッシュ・ボーイズ」を読むのが楽しみ。

  • リーマンショック・コンフィデンシャルやライアーズ・ポーカー以降ちょこちょこ割合楽しく読んでいる経済ノンフィクション。さすがマイケル・ルイスという感じで超がつくほど綿密な取材とエキサイティングな描写。しかしながら、リーマンショックにおける勝ち組を主役にするという、扱うテーマが少し変化球なのと、深く専門的な話が深多いので素人には分からないところは多かった。ただ、リーマンショックの構図は割合シンプルに説明されていて分かりやすく、理解が少し深まった。リーマンショックについて語っている人のほとんどは、実際にはその怪物の正体は把握できてないだろう。

    要約すると、サブプライムローンを寄せ集めればMBS(住宅ローン担保証券)ができて、それを寄せ集めればCDO(債務担保証券)ができる。ハイリスクのCDOの売れ残りはさらに寄せ集めてCDOのCDOができる。ここまでくればサブプライムローンは完全に隠蔽化され、実態不明の債券が出来上がる。CDO内の実態である個々のサブプライム間の相関は「低い」ので「全体として」焦げ付きリスクは低い。だから本当はヤバイ商品であってもトリプルA格付けがバンバン付けられてしまう。その「超優良」商品であるCDOを空売りするために生み出されたデフォルトヘッジのためのデリバティブであるCDSが実際の市場規模以上にどんどんと出回っていき、あとは奈落へ一直線。面白いような摩訶不思議な超錬金術。

  • マイケル・ルイスはマネー・ボールでもご存じの方も多いだろうライターだけど、私が彼を初めて知ったのはデビュー作ライアーズ・ポーカーを読んで以来でそれはもう20年以上前のことだった。この作品ももちろん傑作だけど、ライアーズ・ポーカー以来のファンとしてはある意味後日談として読める部分もあって二重にお得な作品でした。

  • "The Big Short" by Michael Lewis

    Steve Eisman

    Michael Burry

    Grant's Interest Rate Observer

    Meredith Whitney

  • まだ記憶に新しい、2008年の金融危機 (日本でいうリーマンショック) を扱うノンフィクション。 好況に沸くウォール街で繰り広げられるマネーゲームを冷静に分析し、その先行きを正確に見通した男たちがいた。彼らはどのようにして、サブプライム・ローンのまやかしを見抜き、その破綻に賭け、そして巨額の利益を得ることができたのか。なぜ多くの人々が、破滅の瀬戸際までこのローンの危うさを見過ごしていたのか。 3組のグループの足跡を追いながら、金融危機に至るまでの顛末を描く。

    まさに小説より奇なる展開と、解説の分かりやすさで、一気に読んでしまった。 ローン発行会社、銀行、投資ファンド、格付け機関、それぞれがライバルを出し抜き、利益を生み出すためのトリックを駆使したあげく、作り上げた複雑なシステムは現実と乖離してしまう。 ウォール街からは、実際にローンを借りている人々の姿が見えていなかった。 渦中にいて外からの視点を忘れることの危険性。 それが忘れられた頃に、バブルは何度でも繰り返され、その度に破綻に至るのだろう。

  • 銀行員3、4年目の時に上司におすすめしてもらい読みました。この本を読んでいない先輩よりは「リーマン・ショック」「空売り」「CDS」「サブプライムローン」と言った用語についても自分の言葉で話せるようになったと思います。

    リーマン・ショックについてほとんど無知の状態で手に取りましたが、ストーリーが面白く、手に汗握りながら、ワクワクしながら一気に読み進めました。
    知ってるようで知らない「リーマン・ショック」についてキャッチアップ出来ます。

  • 2007年、米国のサブプライムローン破綻をきっかけに全世界に飛び火した金融恐慌。この金融大惨事を予見することで文字通りのマネーゲームに勝った3組のドキュメンタリ。

    恐ろしく面白い。複雑怪奇な債権業界の裏側に驚き、登場人物たちの奇矯な振る舞いに笑う。ただ共感できなかったのは、登場人物の1人が投資銀行や格付機関の倫理欠如を詰る部分。仕組み商品の破綻に賭け、その保険で巨利を得ることは倫理欠如とは違うのか?

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