くっすん大黒 (文春文庫 ま 15-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167653019

作品紹介・あらすじ

三年前、ふと働くのが嫌になって仕事を辞め、毎日酒を飲んでぶらぶらしていたら妻が家を出て行った。誰もいない部屋に転がる不愉快きわまりない金属の大黒、今日こそ捨ててこます-日本にパンクを実在させた町田康が文学の新世紀を切り拓き、作家としても熱狂的な支持を得た鮮烈のデビュー作、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 出てくる人出てくる人みんな狂人で、じつは全員ヤク中っていう設定でした、と言われても驚かない。
    支離滅裂と言ってもいいほどのシュールな展開がリズミカルに続き、個人的には結構ちょくちょくぞくりとした。笑いと恐怖は紙一重とはよく言ったもの。
    そして読み終わった後に街を歩いたら、すれ違う人がすべからく変人のように思えて困った。もしかしたら世界って、私が思うより狂っているのか。やほほ。

    『河原のアパラ』では特に、人間も動物も無造作に死にまくり、流血したりし、たいして悲しまれるでもない。 
    主人公達は最後には袋小路に近い状態に追い込まれる。
    けれども、ラストシーンで彼らは「全身腐った鮒まみれになって」爆笑している。
    グロテスクで残酷で意味不明な世界でも、笑えれば勝ち、ということなのかな、と思ったり。

  • ずっと気になっていた町田康さんの作品。
    処女作とのことで購入、読了。

    こりゃあ………おもしれーーーーーー( ̄∇ ̄)

    何か最近、純文学系大当たり祭だなー。
    立て続けに、ハマりそうな作家さんに巡り会えた予感。

    ぶっ飛んだ不思議な世界観、読んだことの無い特徴的でリズミカルな文章。
    圧倒的な「この人にしか書けない」感、唯一無二ですねー。

    2作品入ってますが…かたや「家にある木彫りの大黒像がイラつくから捨てに行ったんだけど、気付いたら蛸専門芸術家探しの旅に出てる話」だし、かたや「うどん屋で働いてたら濡れ衣で警察に追われるハメになり、気付いたらケンタッキーでおおブルネリを歌ってて、最終的には知らない人の遺骨が振りかけられたBBQを無理矢理食わされようとしている話(もはや自分でも何書いてるか分からない笑)」だし…もう設定が謎過ぎるwww

    あと「頭おかしい人」を書かせたら天下一品だなぁと(´∀`)
    チァアミイ、ディレクター桜井、天田はま子、津山(偽)…もうアク強過ぎて、思い出すだけで…くくくくくwwwww

    本作はストーリーに意味なんて求めてはいけません。
    というより、意味なんてもはや求める方が野暮かと…ただただ爆笑して、心地良く酔いしれるだけで良いじゃんと。

    それくらいに思わせてくれるくらいの破壊力がある作品だと思います。

    あと、本作は外で読まない方が良いです。
    確実に吹き出して変な目で見られますので…( ´ ▽ ` )

    <印象に残った言葉>
    ・医者へ行け、医者へ。(P50)

    ・『淫乱バスト店・秘密の大戦略』の主演女優は主演男優に大変な目に遭わされ、「ああ、いい、いっちゃう、いっちゃう、ああん、いま、いま現在、ちんぽが入っている」などと絶叫している。その絶叫をBGMに、いま現在、自分が考えているのは、ことここに至った発端と経過についてである。(P69)

    ・そして、この場合、誰が、どの役があるわけではなく、ある者が注文を聞けば、いまひとりはうどんをつけ、という具合に機に望み変に応じて行動するべきなのであり、その役割分担は変幻自在なのであって、自分と淀川五郎はそうやって、阿吽の呼吸、和の精神のうどんマンシップにのっとって、仕事をこなしてきたのであるが、これらの一連の仕事の流れの中で、やっていて一番おもしろいのは、チャッチャッチャッの役である。(P98)

    ・俺、高校のときとき、うどん部だったんだ〈中略〉あと、もちろん経済学的な側面もやるし、文化人類学的なアプローチもやるしね、うどんについて、とにかく考えるんだよ(P137)

    ・五郎と自分は、親指から鮮血をほとばしらせめ、わあわあ泣きながら六畳に駆け込んでいった津山に、「じゃあ、すみませんでした。お邪魔しました」と言って表へ出た。(P159)

    <内容(「BOOK」データベースより)>
    三年前、ふと働くのが嫌になって仕事を辞め、毎日酒を飲んでぶらぶらしていたら妻が家を出て行った。誰もいない部屋に転がる不愉快きわまりない金属の大黒、今日こそ捨ててこます―日本にパンクを実在させた町田康が文学の新世紀を切り拓き、作家としても熱狂的な支持を得た鮮烈のデビュー作、待望の文庫化。賞賛と悪罵を浴びた戦慄のデビュー作
    大黒様を捨てようとして始まる日常の中の異次元世界。ユーモラスな語り口と奇妙な形で噴出する鬱勃たる感情が話題を呼び、日本文学史に衝撃的に登場した芥川賞作家の処女小説。「河原のアパラ」を併載している。第19回(1997年) 野間文芸新人賞受賞とともに第7回(1997年) Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。 

  • 町田康の文壇デビュー作。ミュージシャン・俳優時代(町田町蔵)と比べて、ブレが一切ないのが頼もしい。殺伐としているのに愛くるしいのだ、この人は。

  • 衝撃的な文章と展開だった。よく分からないまま、あれよあれよと言う間に物語が進んでゆく。関西圏の親戚のおばちゃんの話を只々聞かされているような感覚で、あっという間に読了。
    タイトルの「くっすん大黒」の他に「河原のアパラ」て言うのが収録されていたのだけれど、おばちゃんのダラダラした話をまた聞くのかと多少萎えつつ、せっかくだから読んでみた。これも、衝撃的な展開であれよあれよと言う間に読了。こんな作家もいるんだなぁ。才能あるからこその文章。凄い。やほほ。

  • 最初のさわりだけ読もうとページをめくったが最後、あれよあれよと奇妙で出口のない変な人ばっかり出てくる世界に迷い込んでしまう。ゴミがいっぱい捨てられてる花壇に大黒をいい感じで置いてみようとしたら警官に捕まりそうになる。自分の人生にはおおよそ起こりそうがないけどでもどっかわかるな、その置かれ具合にこだわる感じ。

  • 町田康さんのデビュー作。34歳のときに書いたものらしい。ダメ男文学らしいけど、主人公をダメ男だとはあまり感じなかった。むしろ他のキャラのほうが一癖も二癖もある感じだ。

    部屋に転がっていた大黒様の置物をどこかに捨てようと家を出て、方々をうろつきまわる主人公。そのうちとあるドキュメンタリー撮影に参加することになるが…。

    文体がどことなく西村賢太に似ていて好きだった。
    どちらも無頼派だからだろうか。

    表題の『くっすん大黒』と併録されている『河原のアパラ』のどちらも、主人公が次第に奇妙な話に巻き込まれる点で似ていた。その奇妙な話の中心人物とでもいうべき奇人の描写がとても上手く、話が奇天烈になるにしたがって小説も面白くなった。言い方があれだけど、頭のおかしな人を書かせたらピカイチだと思った。

  • ずっと読みたい読みたいと思ってて、なかなか一歩が踏み出せなかった町田康氏。本棚で長い間眠らせていた。
    「読みたい!気になる!」という思いが強すぎて、期待はずれだったらどうしよう!ああ、怖い!でも早く読みたい!という葛藤を経て、ようやく。

    いや、私は何を躊躇していたんだ。
    なんでもっとはやく読まなかったのか。

    リズミカルで独特な文体。
    描かれているのは「ダメ男」なのに、どうして共感したり、応援したりしたくなるのだろう。ああ、清々しい!


    馬鹿な事でうだうだ悩んでいた自分が馬鹿らしいなあ!あはは。
    なーんて思ってしまう作品。

  • 町田康デビュー作
    『くっすん大黒』
    毎日酒ばかり飲んでいて妻に家出された男。むかむかとする怒りの矛先に、部屋に転がっていた不愉快な金属製の大黒。捨てよう、大黒を。自分は、大黒を捨ててこます。
    しかし男はごみの分別や近所の視線を気にし始め、ゴミ捨て場に捨てる方法は却下。不法投棄しようと大黒を入れた紙袋抱えて町をぶらつき捨て場所を探していれば職務質問され、あきらめて友人の菊池に大黒を引き渡すことにする。
    菊池の紹介で古着屋で働くことになった男。次の日から菊池と1日交代で働くことになるが、そこで待ち受けていたのが、まったく働く気のないおばはん店員吉田と、客としてやってきたユオロップ狂いのおばはんチャアミイ。奇妙な2人のおばはんから逃げるように、仕事をやめてしまう。
    そこへ、男が十余年前に出演した映画のツテから、行方不明の芸術家上田京一なる人物の軌跡をたどるビデオ作品のリポーター役というインチキくさい仕事の依頼が来て、わけの分からぬまま撮影に参加していく。

    古着屋での吉田とチャアミイというおばはん2人のやり取りと呆然と眺める主人公の場面(p.49)が面白かった。
    チャアミイの絶叫と冷静にツッコむ筆者(主人公)の目線の落差に笑った。文章に漫才や落語みたいなリズムがある。

    『河原のアバラ』
    天田はま子という狂った同僚のせいで働いていたうどん屋を追いやられ、隠れた生活を余儀なくされた男。
    そこに知り合いのツテで遺骨運搬の仕事を頼まれ、そこから遺骨をめぐる小さな旅が始まる。
    主人公がうどん屋をやめる原因となった天田はま子という女がまためちゃくちゃ。チャアミイにしろこんなキャラよく考えると思う。

    どちらも冒頭の主人公の独り言(p.9 / p.91)がぶっ飛んでいて秀逸。
    のっけからどうしようもない駄目人間だなこいつは、と思うのだが、後から続くもっと狂った周囲の人間や、巻き起こるドタバタに中和されていくうち、主人公は彼なりにまともに生きていて、どうしようもなくこんな状況に立っているのではないかと思わされる。

  • 少し時間がかかってしまったけれど、町田康当然レロレロ楽しく読めた。
    町田康の文章はなんだかレロレロしている。眠くなるときもある。謎めいてもいる。だんだん、万年床で康さんと懇ろになっているようなそんな気持ちで読み進む。

    まるでミステリかのように、謎が散りばめられていて、主人公たちの道中で次第にそれが紐解かれていくのかと思いきやそんなことはなく、レロレロと事態は二転三転反転横転…していくのである。
    主人公たちは、本人なりにはよく考えてもいるし、一丁前に危機回避センサーもついているくせに、今ひとつ軸のぶれた人間なので、
    気付くと「事態にのまれている」…
    その感じがまるで人生という迷宮そのもの。

    でも初めて読んだ「告白」が素晴らしすぎたので、こちらは星3で恐縮ですー

    ちなみに表題作の「くっすん大黒」よりも同時収録の「河原のアパラ」という作品が気に入りました。

  • 推理小説かと思ったら文芸書でした。それでも惹きつける力は本物で、すぐに読めました。
    結局、大黒様はどうなったか知りたい。


    三年前、ふと働くのが嫌になって仕事を辞め、毎日酒を飲んでぶらぶらしていたら妻が家を出て行った。誰もいない部屋に転がる不愉快きわまりない金属の大黒、今日こそ捨ててこます―日本にパンクを実在させた町田康が文学の新世紀を切り拓き、作家としても熱狂的な支持を得た鮮烈のデビュー作、待望の文庫化。賞賛と悪罵を浴びた戦慄のデビュー作
    大黒様を捨てようとして始まる日常の中の異次元世界。ユーモラスな語り口と奇妙な形で噴出する鬱勃たる感情が話題を呼び、日本文学史に衝撃的に登場した芥川賞作家の処女小説。「河原のアパラ」を併載している。第19回(1997年) 野間文芸新人賞受賞とともに第7回(1997年) Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。

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著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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