飆風 (文春文庫 く 19-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167654061

感想・レビュー・書評

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  • 自己意識の文学、過剰に世間を気にし、俗物にも程があった自分への嫌悪、屈折した自己の超越、「世捨て」という過激さを伴わなければならなかったことが全てを示している。この人がまだ生きていたらと思う。

  • 書くことに苦しめられながらも書くことでしか生きられないような人の文章。とても好き。

  • 噛めば噛むほど、読めば読むほど、人が生きるは何のためでしょ、とても深い

  • 初読

    車谷氏の著書の中で盛んに世捨て願望に言及してるので
    初めはああ、そういう人もいるのか、確かに昔からインテリは
    そういう事するよなぁ…と自分と遠く離れた高みにいると思ってたのだけど
    この作品の密告と表題作を読み
    人並み外れた強大なエゴと欲望を感じ、ああー、だからなのか、と。

    私はエゴと欲に相応しい俗な魂で良かったよ。
    小説は書けないけど、車谷氏よりは生きやすいw
    それにしても、彼は欲も強いけど、与えられるものも相応で、
    それは
    飆風の女子高生に穢れを感じる下りとか単純に最低なんだけどw
    一カ月以上洗濯してない臭いパジャマを今日こそ捨てる、
    と奥さんに宣言されて穴の開いた脛を撫でての
    「貧乏好き。」のセンテンス。
    あれを読んだ時の、

    うっわーーーー………。あーーーーこりゃー、モテるわ

    という(軽い)衝撃。
    どこかで女がほっとけない可愛げみたいな。

    あとがきの昔の車谷氏を知る人のいかにも広告代理店の営業、
    といった元気で躁っぽい氏とか、わからないながら
    確かになるほどなぁ、と感じてしまう。

    それにしても、強迫神経症、しんどそうだから絶対かかりたくない。
    他者に穢れを感じるって前からその事自体に
    うーん…と思ってたけど、やっぱりな!

    深沢七郎の楢山節考、
    永井龍男一個
    は読もうと思う

  • 魂について書かれた言葉かと。
    そして、魂そのものだと。
    魂を救済する方法は人それぞれだろうが、
    それを見つけられるか否かが、
    罪深い人生において唯一の救いだと思う。

  • 表題作で著者は強迫神経症を発症したときの話を小説にしている。引用される奥さんの詩が状況にあっている。途中あまりに息が詰まって文章を読む気が失せていたが気をとりなして読んだ。相変わらずの怨念にこわごわと読みふけった。しかし、長嶋監督にそこまで怨みを持たなくてもと。こういう人がいるのは知っているんだが。

  • 胸のうちから絞り出される本物の言葉は、ここまで読者の心をえぐるものなのか。作者が血を吐く思いで、身を削りながら書いている様子が、文章からも痛々しいほど伝わってくる。疲労と同時に、『本物』の文章を読んでいる歓びを感じられる作品。車谷作品を読むとき、姿勢がよくなってしまうのは私だけでしょうか?

  • うーん、ダメだったなあ。どうも言い回しや考え方が鼻に付いて途中でギブアップ。「赤目」は面白く楽しめたんだけど。

  • 車谷さんは天才です。日本にも「こんなにけったいな」作家がおられたんですね、最近読んだ小説の中では(これまで読んできたものの中でも)、ベストに近いものです。生きること、死ぬことにここまで向かい合った作家がいたでしょうか?漱石以来ではないかと思うほどです〜。

  • 個人的には平成最後の破滅型私小説家と思っている車谷氏なんですが、齢48にしてご結婚なさってからどうもねぇ…。相手の方が同年輩(正確にはひとつ上かな?)なのは甚だ好感がもてるのですが、50目前の初婚同士でそんなラブラブになられてもなぁってのが正直なところですよ(T_T) いや、だからこそという意見もありますけど、私、基本的に幸せなひとたちキライなので^^;
    で、ふたりが互いにしか通用しない面妖な愛称で呼び合うようになる顛末(でも、これは大抵の人に心当たりがある話だよね…)とか、それを対外的にも使っちゃうとことか、自分の作品に女房(読売文学賞受賞詩人)の作品を織り込んじゃうとことか、私の感覚で言うともう最悪で許しがたいのですが、やはりそこまでの来歴に凄みがあるので、一概にこのバカップルとは言い放てないんですね。とは言え、結婚後に強迫神経症になった様なども読んでて若干苛々させられるのですが…。
    まぁ、奥様(高橋順子氏)の詩は世間的にいかに評価されていようとも私はどうにも感心しないのですが、車谷氏の作品はやはり素晴らしいと言わざるを得ないのですね。いかにバカップルぶりが描かれていようとも最後まで読めるのが何よりの証拠かな。あと、ひがみ根性で否定してますけど、実際は凄く羨ましい理想的なカップルだと思ってます^^;
    あと、著者の家も奥様の家も高齢独身者に寛容で、そこはほんとに心から物凄く羨ましい。一般には彼らより20歳くらい若くて、社会的に全然ちゃんとしててもいわれのない批難を受けるものなのですよ。

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著者プロフィール

車谷長吉

一九四五(昭和二〇)年、兵庫県飾磨市(現・姫路市飾磨区)生まれ。作家。慶應義塾大学文学部卒業。七二年、「なんまんだあ絵」でデビュー。以後、私小説を書き継ぐ。九三年、初の単行本『鹽壺の匙』を上梓し、芸術選奨文部大臣新人賞、三島由紀夫賞を受賞。九八年、『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞、二〇〇〇年、「武蔵丸」で川端康成文学賞を受賞。主な作品に『漂流物』(平林たい子文学賞)、『贋世捨人』『女塚』『妖談』などのほか、『車谷長吉全集』(全三巻)がある。二〇一五(平成二七)年、死去。

「2021年 『漂流物・武蔵丸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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