死体は語る (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 119
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656027

作品紹介・あらすじ

偽装殺人、他殺を装った自殺…。どんなに誤魔化そうとしても、もの言わぬ死体は、背後に潜む人間の憎しみや苦悩を雄弁に語りだす。浅沼稲次郎刺殺事件、日航機羽田沖墜落事故等の現場に立会い、変死体を扱って三十余年の元監察医が綴る、ミステリアスな事件の数数。ドラマ化もされた法医学入門の大ベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 読み応えあり。

    海外ドラマの影響で法医学に興味がありいろんな本を探っている時に、この本にたどり着いた。
    監察医という仕事がどんなものなのか。
    読んでいて辛い事件もあったが、解剖されないとわからなかった死因もあったり、本当に大変な仕事だなと思う。尊い職業ですな。

  • 元東京都監察医の上野先生は、これまでに20000体以上もの検死体にかかわってきた。
    昔、未解決事件や行方不明者を捜査するスペシャル番組に、出演されていましたね。

    上野先生は初対面の人から、「死体を検死したり解剖して、気持ち悪くないですか?」と質問されるそうだ。
    即座に、「生きている人の方が恐ろしい。」と、応える。

    生きている人は平気で嘘をつくが、死体は監察医が問い掛ければ、真実を伝えてくれる。
    確かに、暴れず、おとなしく、素直ですからね。

    監察医制度が導入されている地域は5都市で、東京23区・大阪市・名古屋市・横浜市・神戸市のみ。
    全国的に制度を導入することは予算上、無理だが、このような態勢を確立できるよう願いを込めて、文筆活動を続けている。

    この制度のおかげで、生命保険の問題や交通事故、労災問題でのトラブルを正当に解決できる。

    死者の声を聞く監察医という仕事に興趣が尽きない。

  • 小説やドラマなどでは遺体の死因を特定する人の背景にはスポットライトがあまり当てられない印象だが、この本は実際に監察医としてキャリアを積んだ方のエッセイということで興味を持った。監察医制度というものをこの本を読んで初めて知ったので、監察医制度の知名度向上という点からも有意義であると感じた。
    実際の業務についても小説が一本書けそうなエピソードが数多く掲載され、読みやすい文体で書かれているので読んでいて感心することが多かった。
    著者にとっては内科は「重箱の外側を触って中身が赤飯か牡丹餅かを当てるようなもので、見方によってはかなりいいかげん」であり、外科は「もっと大雑把で、悪いところを切り取って捨ててしまう」ところが合わなかったと書いてあり、そういう見方もあるのかと驚いた。出版されてから時間がたっているので、現在の法医学がどうなっているのか知りたくなった。

  • タイトルはシュールだが、決してホラーではないし、小説でもない。著者は東京都の監察医を務める先生である。不自然な死体を検視し、時に行政解剖を行う監察医制度が、五大都市(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸)にしかないことにまず驚いた。著者は予算上、全国にあまねく本制度を導入することは困難だと語るが、それにしても犯罪かどうかを認定するために非常に重要な制度が、たった五つの大都市にしか施行されていないことに、釈然としないものが残った。

    著者は監察医の意義として、死者の人権擁護を語る。監察医制度が五大都市でしか機能していないのであれば、他の都市で死んだ者は、五大都市で死んだ者と比較して、死者の人権が守られていないということになる。某国の愚かな首相は「憲法で定める『基本的人権』は、生存するものにのみ適用される」という大した根拠もない法解釈を勝手に披露するかもしれないが、監察医の視点から死者の人権を擁護しようとする著者の見解のほうが、明らかに合理性がある。

    といっても、本書は決して固い内容ではない。否、書いてあることは非常に崇高であるが、著者の軽妙な語り口が固さを感じさせない。監察医か、少なくとも法医学を志しでもしなければ、一生現実には出会うことがないであろう不自然な死体とその裏に隠された真実は、著者の語り口の軽さに乗せられてすっと読み進んでしまう。タイトルの『死体は語る』にしても、一見シュールに思えて、著者の洒脱な文体の一部となっている。その結果、不自然な死を遂げた死体にまつわるエピソードを扱ってはいるが、堅苦しさのないエッセイとなっているのである。

    監察医ゆえ、時に専門的な用語も登場するけれども、検死の所見や行政解剖で得たわずかな手がかりから、ただ死体を眺めただけでは決して判ることのない真実が導き出されるプロセスは新鮮な驚きに満ちている。エッセイでありながら、ミステリーの趣をも備えているのだ。すなわち死者の専門家たる監察医が、目の前の死者に静かに耳を傾けるとき、「死体は語り」かけるのである。死者の言葉を聞くための条件はただ一つ……一流の法医学者であることだ。

    生きている者たちは、程度の差こそあれ偽善者であり、嘘をつく。中には犯罪に手を染める者もいるだろう。一たび法を犯した生者は、おのが罪の隠ぺいに躍起になる。そうしたときにありのままを語ってくれるのは、もはや死者しかいないのかもしれない。そうであるならば、五大都市でしか施行されていない監察医制度は、本来的に制度としての欠陥を内包しているように思う。死者が検死や解剖を通して語り掛ける言葉こそ、何よりも真実に近い、大事なダイイングメッセージだからである。

  • 上野先生にはお会いした事が無いが、仕事柄監察医の先生によくお会いする。保険金殺人とまではいかないケースでも、ご遺体から判明する事はとても多い。報道されない事実が監察医によって日々明らかになり、私はその死の背景にあるドラマに時折涙しながら報告書を書くのである。

  • 法医学者の著者の経験を通じて、人生観なりモノの考え方を綴った本。インパクトのあるタイトルだけど、グロい描写などはない(個人差があるかもしれない)
    「死者の人権と尊厳を守る」のが法医学。

    犯罪だと調査したらすぐ分かりそうなものが、調査という舞台に上がらずに処理されてしまうケースで隠れていることが多いのかなと感じた。
    警察・医者・役所などの現場の人の感じた違和感を、法医学者がデータドリブンで裏付けするって感じ。
    割と前の本なので、法医学を取り巻く状況や法律はもう少しアップデートされているのかもしれない。

    俗っぽい読み方をしているので、著者の意図した捉え方ではないと思うが、前半に割合多かったの実際の事例ベースの章が、ミステリや犯罪モノのような出来事が実際にあったのか… という読み物として興味深かった。
    文庫版あとがきにも書いてあるが、当時は痴情のもつれケースが多いのも時代を表していそう。

    生活反応という、生物が生きている間のみ起こる反応がある、というのも初めて知った。例えば、死後に刺されても血が出ないなど。

  • 監察医制度という言葉を聞いたことがあるだろうか?
    死体解剖保存法第8条に基づき、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸の5大都市において施行されている制度。検視のみでは死因がわからない場合、行政解剖というものを行う。病死か犯罪死か、自殺か災害死かを明らかにするために。
    (少し昔の本なので、現在も同様か調べないとわからない。)
    本書は、監察医であった著者の経験と人生観を綴ったエッセイだ。
    とても、面白い話のオンパレード。一本の髪の毛で個人を特定できる場合があること。それも1821年に亡くなったナポレオンの髪の毛でその死因を推察できたりするようなお話や、遠洋漁業をしているマグロ漁船が漁獲したヨシキリザメの腹を裂いたら、胃の中から人間の右腕が出てきた話とか、監察医に調査依頼が来るものは、想像を絶する場合もあるのだ。死亡時刻判定で遺産相続人が、変わってしまう出来事も興味深い。
    外国テレビドラマのCSI科学捜査班のように、死因がわからないものは必ず解剖してしんが究明されるかと思っていたが、そんなことができるのは、日本では5大都市だけ。本当は語り掛けたいと思っている死体が、語ることなく火葬されているケースも多々あるのでしょう。
    著者も、この制度を全国に広めるべきとの見解を語っている。死者の人権を守るために。

  • とても勉強になった。検死の件ももちろんだが、それを通して人生観や思いが伝わり、何度も読み返したいと思った。だがたまに話がずれることもあり、なんの話かわかりにくい時もあった。他の著書も読みたい。

  • 死体はそれだけでミステリなんだな、と。
    監察医というものの重要さは理解していたつもりだが、考えていたよりも、それは生活に影響を及ぼすものなんだ、と実感できた。
    要は、保険金や労災…現実だな。

  • 「法医学は未来のための学問」某ドラマの台詞をきっかけに興味を持ち、読み始めた。
    死者の人権について、今まで一度も考えたことがなかった。けれどこの本の中で繰り返し使われていたこの言葉を、今後も忘れないでいたいと思う。死んだ人は戻ってこない。死んだ理由が解明されたところで。と、本書を読む前の私なら思っていた。けれどそうではなく、戻ってこないからこそ解明する必要がある。解き明かした事実の積み重ねが、生きている人たちに還元される。死を無駄にしないことに繋がるのだと、理解した。

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著者プロフィール

1929年生まれ。医学博士。元東京都監察医務院院長。59年、東京都監察医務院監察医となり、84年に同院長に就任。89年に退官後は法医学評論家として執筆、テレビ出演など幅広く活躍。

「2018年 『死体が教えてくれたこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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