オウムと私 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2001年10月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (576ページ) / ISBN・EAN: 9784167656171

感想・レビュー・書評

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  • 読むのが辛かった。地下鉄サリン事件実行犯の内、唯一死刑でなくて無期懲役で服役している林郁夫。何と真面目で真面目過ぎるが故の犯行だったか。頭がオカシイ連中の犯行などではとても総括できない。
    以下に、被害者遺族である高橋シズヱさんの証言を紹介しておこう。

    林郁夫被告に対する論告求刑 http://www.mars.dti.ne.jp/~takizawa/boutyou98.html

    高橋シズエにおいては、98年1月23日に予定された第24回公判を前にして、同公判廷での証言に替えて、「私が被告人らに望むことは、まず第一に、オウム真理教が起こした事件であることを認めること、第二に、被害を与えた者に対して謝罪すること、第三に、二度とこのような悲惨な事件を起こさないように真実を明らかにすることです。私は林郁夫の公判のほとんどを傍聴して、これら私の望むことがすべて満たされていることが分かりました。少なくとも法廷における林郁夫被告人の態度は、私の怒りや悲しみを増大させるものではありませんでした」「私が証言する場合の私の立場は、遺族、高橋一正の妻としてですが、私の心は3人の子供の気持ち、主人の親の気持ち、(訴因を)取り下げられた他の被害者の気持ち、そして林郁夫被告人の気持ちと切り離すことはできません」「様々な思いに心を乱され、言葉で気持ちを表現できない状態で証言することは、私の意に反します」旨記述した上申書を提出し、菱沼美智子においては、同公判廷において、「事件発生後間もない時期に検察庁で被害感情を尋ねられた時には、犯人達に死刑を求めると言いました。その際考えていた犯人というのは、千代田線にサリンを撒いて主人を殺した林郁夫と麻原こと松本智津夫でした。しかし、その後、報道を見聞きしたり、被告人や松本の公判を傍聴して、事件の真相が分かると同時に被告人が反省していることが分かり、被告人よりも松本に対する憎しみが強くなり、被告人にも松本の命令に従わざるを得なかった弱さがあったことを知りました。そして真に謝っている被告人の姿を見ると、同情の気持ちがわいてきたり、また被告人から謝罪の手紙を受け取って、被告人の誠意を読みとることができました。主人のことを思うと被告人を許すことはできませんが、被告人に対する激しい憎しみの気持ちはありません。本当に罪を悔いているならば、一生刑務所に入って主人に謝罪してほしいというのが、現在の被告人に対する気持ちです」などと証言し、両名とも、悩み抜いた末の苦悩の胸中を語っている。

  • いろいろと考えさせられる本です。興味深い。
    文体にもブレはなく、読みやすいです。
    素直すぎて、謙虚すぎて、逆に、村上春樹と河合某が対談で言っていた、奇妙な平坦さがあるような気がする。

    仏教から入って、オウムへ行きついて、麻原への気持ちやいろんな逡巡と、それが変化していく様子がわかります。
    洗脳とかいう一言ですまされるものではない。
    では何か、といえば、教え導く人を信じて、真面目に教えを実践しようと努力している弟子、としかいいようがない。
    どうしようもない、本能的に嫌だと思える命令には、教義がうまいいいわけを用意してくれてるので(タントラ・ヴァジラヤーナ等。みんなかっこいい修行の名前がついてる)、どんなにいい人でも良心の呵責を感じずに済むシステム。
    はじめは小さなところから無理な要求をきかせ、こいつはどこまで麻原のいう事をきくか(オウム的には、帰依が進んでいるか)試しながら、少しずつ深いところに携わらせていく。そして、いったん犯罪に携わってしまったら、オウムから離れられない。
    踏み絵と口封じ、と著者は言っていますが、人を観察して、試して、ビビらせる、というのが麻原の能力だったようです。

    いちいち出てくる言葉が、非現実的。この世界にどっぷりはまっていれば、普通の言葉の世界には戻れないような気がする。
    それにしても、これだけの仕事をこなして夜0時から修行する40代。凄い体力です。いっそ、辺境地医療とかに携わればよかったのに。もったいないことです。

    著者に関していえば、ほかの人たちと違うと思ったのは、オウムの信者である、というのと同時に、最後まで「医者である」という矜持を持っていたこと。
    治療省の大臣というのは、つまるところ、オウム病院の医院長のようなものだったようです。
    目の前に患者がいる仕事だし、医師としての経験があるので、本や知識だけじゃないこともわかっている。
    妻は麻酔医だったようで、同じく出家しているので自由に話したりもできる立場だったようです。
    科学者たちよりも多少は柔軟な思考を保てたのは、そのせいかもしれないと思います。

    病院の運営方針や機材について頭を悩ませたり、
    仮谷さんが運ばれてきたときに、必ず治してみせる、と決意したり、
    指紋を消す手術をするときに、医師免許を取り消されてしまうと悩んだり(それ以前にいろいろやってるだろ、第一、オウムで免許なんて関係ないだろ、と突っ込みたくなった)、
    そのあとで掌紋もとられてると知って、無駄な手術したと憤ったり。
    サリン事件のあと、テレビを見て「被害者の治療をしたい」と思ったり。

    この人が自供するきっかけになったのが、
    取り調べの刑事さんへの、職業人としての尊敬、
    そして、彼の路線の被害者が地下鉄職員の人で、彼らが、自分の職務をまっとうしようとして亡くなったのだ、ということに衝撃を受けたということ。
    このきっかけは、著者自身に、職業人としての矜持があったことと無関係ではないと思います。

    「私がサリンをまきました」と彼が言ったというところで、涙が出そうになりました。
    つい同情してしまう。無意識にしろ、全体的に天然で、どこかかわいげがあるのです。
    意識的ではないにしろ、この人たらしなところが、結果的に裁判で有効に働いたのだろうと思ってしまいました。

    しかし、どんなに人格者であろうと、罪があることはかわりないです。
    彼は、房の中で「ヨガを組んでいる」というのですが…それをきくと、「本当に無期でよかったのか」とも思われます。
    事件とは関係ないけど、出家するまえは妻を殴ったり、看護婦と不倫したりしてたようです。不倫相手も出家したらしい。たぶん、あとのほうに出てくる看護婦Mのことかもしれません。

    どっちにしろ、被害者のことを思うとやりきれません。

  • 心の動きが丹念に描かれる。
    分かりやすい

  • この手の犯罪者の手記というのを初めて読み、リアル感が押し寄せてきて気分が暗くなった。
    自己弁護ともとれる部分が多々あり、やはり物事の本質がわかりにくい印象。
    外部の人にはわからない異常な世界だったんだな、ということはわかる。

  •  著者、林郁夫はサリン事件の実行犯で無期懲役を求刑されている。本書は彼の獄中手記であり、犯行に至るまでの心理描写が克明に記載されている。犯罪を犯した自身の自己弁護とも取れる箇所が多々ある。被害者家族は報われることは無い。宗教と名を借りて、オウムがなぜ殺人集団と化するのか、この本を読んでも謎はますます深まるばかりである。

  • 麻原は、逮捕された林に、事件を風化させるために完全黙秘するよう指示したそうだ。我々の社会がこの事件を総括しきれてないいま、麻原の指示通りになってきた気がする。

  • 検察が関知していないうちから事件について自供したことが自首に相当すると判断され、著者は、地下鉄にサリンを散布した実行犯5人の中でただひとり死刑判決を免れた。
    何しろ、修行の名のもとに次々と人を殺した集団である。
    同じ理由で完全黙秘を貫く可能性は大いにあり、だから著者に対する異例の判決理由も理解はできた。
    本書を読むまで理解できなかったのは、著者を含めた多くの人がなぜオウム真理教という宗教に心酔し、どういう経緯で大量無差別殺人をするに至ったかである。

    文庫を買ってから、もう何度読み返したかわからない。
    著者の思いや言い分には矛盾やブレがなく、優しくて真面目な医師がなぜ大罪を犯すに至ったかも、ゆっくり読めば理解はできる。
    しかし、読めば読むほど、「いつ成就できるかもわからない修行に日々を費やし、苦労して苦労して漸く得られるものが"真理"だなんて…。それなら、間違ったり怒ったり泣いたり笑ったりする日常の中で考えて悩んで解決する普通の生き方でいいじゃん。そのほうがラクじゃん。っていうか、それが人生の真理じゃん」という考えが強くなり、つくづく、自分は俗人で良かったと思う。

    ただし。
    一連の事件に関わった人の中で唯一俗人な松本智津夫という稀代の詐欺師は、あたしのように不信心で不真面目な人間を騙すことも出来る気がする。
    おそらく、宗教とは全く別の方法で。

  • 04.11.13

  • 卒論の資料の本。

  • ¥105

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