読者は踊る (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.45
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  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 301
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656201

作品紹介・あらすじ

なぜ、この本が売れるのだろう。流行りの本は気になるくせに、流行りすぎると文句をつける。そんな立派な「踊る読者」のあなたのために、「ごくごく一般的な、そんじょそこらの読者代表」の斎藤美奈子が、タレント本から聖書まで、売れた本・話題になった本253冊の読み方と読まれ方を、快刀乱麻で読み解いていく。

感想・レビュー・書評

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  • 「話題のタレント本を買うのはちょっと抵抗がある」「芥川賞・直木賞の受賞作くらいは読んでおいたほうがいいような気がする」「ブックガイドを読むのが好きだ」「「知の最前線」「時代を読むキーワード」といった言葉に弱い」「人の家に行くと、思わず本棚を見てしまう」など、20個の項目のうち、半分以上に当てはまるのが「踊る読者」と著者はいいます。本書は、そんな小市民的な「踊る読者」に向けて、「ごくごく一般的な、そんじょそこらの読者代表」を標榜する著者が、253冊にわたる本を切れ味の鋭いことばでばっさばっさとなで斬りにしていく本です。

    たとえば、田舎のひとは人情がある、地方都市は住みやすくて食べ物がおいしいといったことばが並ぶ県民性についての本にひそむ、コロニアリズム的な視線があざやかに暴露されます。また、死海文書や現代科学についての啓蒙書のいかがわしさが指摘されます。ひざを打って感心したり、声をあげて笑ったりしながら、それらの本をつい手にとってしまうような「踊る読者」になってしまっている自分に気づかされることになります。

    著者の批評の前には、タブーも聖域も存在しません。なかでも驚いたのは、吉田秀和のクラシック評に「読み物としての水準に呆れちゃったのだ」といいきってしまうところで、なかなかここまでいえる批評家もいないでしょう。

  • 正直であること、背伸びをしないこと。強みであり、同時に弱点でもある。解説で「歯に衣着せぬ」と形容されているが、実際はそうでもない。たとえば、「『政治的に正しいおとぎ話』がうまいのは、PC用語を過剰に使いPC派をからかっているようだが、反PC派に加担しているわけでもなくて、どちらの派閥もニヤッとできるような書き方をしてるとこだ」と彼女は言っているのだけれど、これはまんま彼女自身の文章にも当てはまる。そうした滅私の精神は、ずばりずばりと問題の核心をつく批評を生み出すが、と同時に「じゃああなたはその問題をどうしたいのだ(どう関わりたいのだ)」と彼女に尋ねてみたくもなる。まあ、踊る読者の皮を被った彼女にそんなことを尋ねるのはナンセンスなんだけどね。

  • (^O^)笑

  • 学まんから辞書、聖書まで、手当たり次第に斬りまくり( ´ ▽ ` )ノ。
    ミナコ様の書評はほんと楽しい( ´ ▽ ` )ノ。
    馬鹿だ馬鹿だと自嘲してるけど、叩かれてる著者たちより数段お利口( ´ ▽ ` )ノ。
    本当の馬鹿が真似すると、痛い目に合う(>_<)。
    20年近く前の本だから、さすがにエジキ本は古臭いものばかりだけど、兄弟にせよふたりにせよソフィーの世界にせよ、読んでなくても懐かしい( ´ ▽ ` )ノ。
    解説の米原万里さんの使ってる技は昭和50年代タッチ( ´ ▽ ` )ノ。読んでるこっちが赤面しちゃった( ´ ▽ ` )ノ。
    2014.9.1

  • ベストセラーとは何か。話題書とは何か。
    代読者こと斎藤美奈子さんがしっかりと教えてくれます。

  • 私も踊らされている読者の一人です。

  •  読書が趣味の人はベストセラー本を必ず読んで置きたい。その本の売れる理由を知り、または書かれている内容を疑ってかかることを至極の楽しみにする。揚げ足取りは世間では嫌われるのだがこの本は楽しく読める。

  • 話題書や売れた本の書評集。「踊る読者」の代わりに著者が踊ってくれている。文学や歴史、科学に哲学と幅広いテーマを縦横無尽に拾っては読み、拾っては読み…
    ふとわが身を振り返ると、話題になったからといって池上彰など著名人の本を買ったり、〇〇部突破という帯に惹かれ、書店に積まれている新書を買ったりしていることに思い至る。よろしくないなぁとも思うが、世間の話題についていくことにある種の満足感を覚えているため、おそらく本の買い方、読み方は変わらないだろう。

  • 皆んなが「良い」「好きだ」と言っている本について、そうは思えないという違和感があっても、別に構わないんだという気持ちにさせてくれる本。
    自分では言葉に出来なかったそれらのベストセラーに対するモヤモヤをしっかり解説してくれていて読むとスッキリ。

  • そんなに素直な性質(たち)ではないので、どんな本を読むときにも基本は、アタマまっさら状態でいることが多い。作者が好きでもこの一冊からダメになることだってあるし、ベストセラーが必ずしも自分の琴線に触れるって訳でもないので、「きっとこうに違いない」という期待感はあまりなかったりするのだ。

    でも、唯一の例外と言っていいのかもしれない。今のところ斎藤美奈子さんの本は見事なまでに、あたしにしっかり刺さってくれる。最初に目にしたのはそれってどうなの主義だったか、麗しき男性誌だったか。ちなみにちょっと残念なのは、当然ちゃ当然なのだが、雑誌を相手にした書評はどうしても賞味期限があることだろうか。今読むとちょっと~という部分もあるし、逆にこの雑誌についてはどうなのねぇねぇ!!!って悶絶するくらい、アップデート情報欲しいです。もう、ハラワタ寸寸状態よ。ただその苦悶は斎藤美奈子さんのせいでもなんでもなく、雑誌の特性そのものであるわけで、書評が正しく(表現へんだけど)古くなる、つまり書評が時代に迎合するほど汎用化されていないとしたならば、あたしはそれを、正しいと断じます。

    古い、けれど古臭くはない。そこが絶妙にしてゲイジュツです。


    今回の読者は踊る、は、のっけから唐沢寿明の「ふたり」と、石原都知事の「弟」という、今のゼロワン世代にはまったく響かないのだろう内容のピックアップからだったのだけれど、その根幹に流れる論理「カラオケ化する文学」が強く鋭いので、おそらくはその論理と論述を楽しめばよろしいんじゃないでしょうか。もしかしたらすでに、「え、石原都知事ってちょっと口の悪いヤクザなじーちゃんじゃなかったの?文章かけるんだ?へ?弟?イシハラユウジロウ?誰ですかそれ?」の声が多数かもしれないけどね。

    文庫版にあたって新しく追記された部分もとても、面白い。「あのときはあーいったけど実際今はこうなっているから今書くならこうね」なんて訂正含みのときもあれば、事の顛末なんかが書かれていると、もはやそっちが読みたくて本文を読んでいるような気さえする。


    あたしは人様のブログなんかを読んでいて、コメントなどで読者が意見を書いたときに、ブログのオーナーさんが返信する内容をかなり真剣に読んでいたりもする。一般人がブログを書く場合、内容に関する本人の評価だとかはあまり表にでてこないのが通常だから、コメントへの返信はそのブログのライターさんが、自分の記事について、他者の文章を経由して自分自身の記事を語っている、ものすごく貴重な機会だと思っているのでね。

    その人の素、なのか機転、なのかがほの見えるのもとても嬉しい。ブログ本文がいわば、調整をしたり推敲の済んだ、麗しいレディ・メイドの完成品だとしたら、コメントは予期しなかった生の意見に向き合ったブロガーさんがその場で生み出す、クイックでホットな勢いだと思っているから。スタジオで丁寧に仕上げたCD作品とライブ、あるいは加工食品と生鮮食品。ブロガーさんが放った作品に、いろいろな人が化学反応をして、作品にヒレがはえてぐぐぐん、って作品が、いきいきと鯉みたいにゼロワンの滝を登ってゆく。


    あたしの頭でなぜかブログの世界は、水のイメージ。ときに静かで、ときに渦をまいて、アップダウンがありときに濁流がある。そんな中でひときわ輝くうろこが見えて、その躍動感とか生命力を、外から与えられる愛される作品ってのは確かにある。

    あたしは水辺からずっと黙って、それを見つめる。水面をみているのかその鯉をみているのか、あたしが鯉から見られているのかそれともあたし自身が実は水で、鯉を抱きしめているのかときにわからなくなることもあるけど。あきずにずっとずっと、眺めていたいと思ってる。そのうち根っこが生えて、水辺の木になってしまうと、ふと気付くと周りの木立はみんな、あたしみたいに魅入られた元・ニンゲンの成れの果てなのかもしれない。

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著者プロフィール

【著者】斎藤美奈子 (さいとう・みなこ) │ 文芸評論家。1994年に文芸評論『妊娠小説』でデビュー。2002年『文章読本さん江』で、第1回小林秀雄賞受賞。軽妙な筆致で綴られるパンチの効いた書評や文芸評論は、幅広いファンをもつ。他の著書に、『文壇アイドル論』『紅一点論』『本の本』『日本の同時代小説』『文庫解説ワンダーランド』『名作うしろ読み』などがある。

「2020年 『中古典のすすめ(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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