赤ちゃん取り違え事件の十七年 ねじれた絆 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2002年10月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (448ページ) / ISBN・EAN: 9784167656416

みんなの感想まとめ

人間の絆や親子の関係を深く掘り下げたノンフィクション作品で、昭和40年代に実際に起きた赤ちゃんの取り違え事件を描いています。物語は、取り違えが発覚した後の夫婦の葛藤や、裁判を通じての心理的な苦悩を中心...

感想・レビュー・書評

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  • また凄い本に出会った。

    昭和40年代には自宅出産ではなく、病院での分娩が増えたが、さらにベビーブームで助産師も看護足りず、赤ちゃんを識別するネームバンドも質が悪くて外しがち。結果として、沐浴時に取り違えるような事件が横行していたという。

    それが後々の血液型検査等で発覚する。先ず疑われるのは“浮気“による托卵だが、そんな生々しい夫婦の会話まで踏み込んだ所から本書はスタートする。ある赤ちゃん取り違え夫婦の発覚から是正、その後の経過まで人間ドラマに踏み込んで描かれたノンフィクション。取り違えに気付き、是正が図られようとした子供の年齢は6歳。可愛いさかり。その時まで我が子と思い育ててきたその子を手放せるだろうか。

    まさに、事実は小説よりも奇なり。病院側の平謝り。両夫婦の家庭環境の違いにより、生みの親と育ての親、その役割交換がスムーズには行えない痛烈な葛藤。子供の心理、親の心理。まるで純文学を読むような迫力だ。—— 両方育てたい。やはり最後はそこに辿り着くのが素直な感情だ。

    何が正解なのかは分からず、ただただ傍観者として事の成り行きを追う読者。親心、子心。親子とは何か、血の繋がりとは何かを深く考えさせられる内容だ。

  • 昭和40年代に起きた事件のノンフィクション作品。前半は取り違え発覚後から交換、裁判の行方がメイン。中盤は取り違えの起きる構造的な背景・状況の開示。後半は交換後の当事者心理状況を明らかにしていく。血か情か?親とは?子を育てるとは?昔ほどではないにしろ、日本はまだまだ血縁関係を重んじる社会であること、それが里親の委託率の低さにも影響しているように思う。正解は出ないだろうが、自分が当事者だったらどうしただろう...。

  • 「そして父になる」参考書籍という。
    映画はそんなに特別思い入れもないけど
    奥野さんという方の著作が興味深いラインナップなので、
    この本が真っ先に入手しやすかったので読んでみました。

    取り違え事件の家族がどうなっていったか、親と子の心や事情など貴重なドキュメンタリーだと思いました。

    さらに取り違えもさることながら・・
    片方の家族の母親が、母親じゃなかったことがしんどい。

    取り違えがあってもなくても、母親の役目を放棄してる家庭の子は元から厳しい環境。

    もしその母親が普通に家にいてくれる、一般的な母親だったらこんな結末にはなってない気が…と思えた。

    手間暇かけて、育ててくれる、家庭らしい家から、
    突然、崩壊家族の家につれてこられたら…
    比較対象があるだけに、厳しい。
    人生てどうしても比較対象で、幸不幸を感じてしまいがちなので。

    沖縄の歴史や暮らし、事件に直接は関係ない背景なども読みごたえがありました。

  • 映画の原案にもなったノンフィクション。
    取り違えられた子供とその家族の苦悩が描かれる。
    最も心を通わせるはずの親と子がそれを断たれ、再生しようともがく姿は切ない。
    ノンフィクションを読んで泣きそうになったのは、これが初めて。

  • 40年前の沖縄での嬰児取り違え事件をその後25年に渡って追いかけたノンフィクション。自分は親でもあるのでこの本を取り違えられた親子両方の視点で読んだ。血の濃さはは情を超えるけども、情の濃さは血の繋がりすらも凌駕する。一見パラドックスのようだけども、結局どこまで親が愛情を注いだかの一点に尽きるのだなというのが大まかな感想。両家の両親の姿があまりにも対称的なために、どちらの子も片方の母親を慕うといったくっきりとした実験結果のような結論になったのが皮肉だなと思う。実際自分の子が取り違えられていたら、と想像するとその葛藤は想像するに余る。久々に素晴らしいノンフィクションを読んだ。取材者の姿勢に脱帽。

  • ノンフィクションなのに小説を読んでるように細やかな心情が伝わってくる。自分にも同じくらいの子供がいるので、子供の気持ちを思うと苦しくなる。そしてそれ以上に親の状況▪葛藤に自分を重ねてしまう。

  • 以前から『生まれか育ちか』『血か情か』といったテーマには興味があったが、自分自身が子どもを授かったことで改めて向き合ってみたいと思い、読んでみた。厳密に言うと『そして父になる』を見返そうかと思っていたところ、この本の存在を知って思わず購入したもの。

    このタイミングでこの本と出会えて本当によかった。
    と強く思うほどに感銘を受けた。

    実話であることに驚くほどの展開ですぐに読み切ってしまったが、とにかく智子さんの子どもを想う気持ちに圧倒されるし、親を冷静に見る子ども側の意見からは感じることが多かった。
    親の教育の一貫性と教養、さらには親が自分自身をコントロールして、子どもから尊敬に値する人間で居ることこそが何より大事なのだと感じた。

    ここに出てくる両家はあまりにも対照的だと感じるが、自分自身も親の言うことの矛盾は敏感に察知していたことを思い出した。
    親も人間である以上、完璧で居ることは難しいが、それでもこうしたことは常に心に留めて、子どもの幸せを願える親でありたいと思う。

    エピローグでそれぞれが今を力強く生きる姿には勇気をもらいました。
    過去は変えられないから、起きたことを踏まえてどうあるべきか、きちんと考えて、真摯に向き合っていける人間でありたい。

  • こちらはノンフィクションで、映画よりも凄絶だった。初めて実の娘に会った時の「似ている!」という衝撃、ふたりの娘達の育ての親への強烈な執着。

    やがて親としての資質の違いも明らかになっていく。
    「子どもは親を選べない」というけれど、この場合は完全に子どもが親を二択で選んでいる。親同士の子どもの取り合い、そして子ども同士のライバル意識もすごい。

  • そして父になる、の参考資料としてテロップが出ていたので読んでみました。
    こちらの方が深刻な感じでした。
    親の家庭環境と取り違えられた子どもの育て方、関わり方、複雑に絡み合ってます。
    取り違えようとそうでなかろうと親子の絆は愛情で左右される、というようなことを解説等でも書かれていましたが、その通りだと思いました。

    仮名にしてるけど、詳しく書かれてるから調べたら本人たちがわかるのではないか、と不安な気持ちではありますが、
    これを最後まで読んだなら本人たちを知っても傷つけようとは思わない、と信じたいです。

  • 血は血の濃さがあるのかもしれないけど、情は相対的に大きくも小さくもなるということなのだろう。ただまぁ、照光・夏子夫婦がよく取材に応じたものだと思わずにはいられない。それこそ「一族の恥」なのではないか。一方で重夫の存在感が薄いなぁ。

  • 親の愛って偉大やなあ、、沖縄の歴史・文化も色々知ることができて面白い作品だった!

  • ”そして父になる”を父親3年目であらためてみる機会があり、いろいろと考えさせられ、本書を手に取った。

    ”そして父になる”だけでも、生みの親か?育ての親か?子育てとは?家族とは?考えさせられるには十分すぎる内容だった。(こちらはもう一回どこかのタイミングでみよう。)

    書籍の話はさらに深い。各家族の父母の生まれまで遡り、取り違え後についても30歳までを知ることができる。


    生みの親か?育ての親か?
    今現在も進行しいてるこの話の中での最後の執筆が行われた時点の状況は示されている。完結はしていない。現在進行形の物語であり、そして彼らの物語の中での状況でもある。

    本書内の内容をそのまま借りてしまえば、誰もが懸命に生きている。親は親を懸命にやっている。子供は子供を懸命にやっている。それなりのやり方で。一生懸命に、真剣に、もがきながらやっている。結果はどうなるかはわからない。

    他人から見て、本当にそれってちゃんとやっているの?ということだって、やっている本人は真剣なんだ。みんな一生懸命に生きている。この本の中に登場する2組の父、母、家族のそれぞれの生き方だってそういうことだ。
    それぞれが望むこと、望むことに進んでいくやり方、それをできれば誰もが外したくない。でも外れてしまう。みんなそれぞれ違うから。誰だって、幸せな家庭を持ちたいし、幸せな人生を送りたい。でも外してしまう、外しているように見えたりもする、最後はどうなるかは、その時にならなけばわからない。家族の関係や、親子の関係なんて特にそういう感じだ。厳しくすれば関係は悪化するかもしれない、でも将来のためにはそうする必要があるのかもしれない。もっといいやり方はあるのかもしれない。でも今はこうするしかない。

    どうすればちゃんとできる?
    どうやればちゃんとできるか、知ろうとすること、それをやめないこと、それは結果として人への共感を生み出し、そういった人間関係の緊張を緩め、ひとつの解決方法にはなりうる気はしている。
    それには時間がかかることもある。時間は何かを変えてくれる可能性もある。お互いの距離感、価値観、興味嗜好とかとか。孫ができれば、子への執着はあったとしても表面上は薄らぐかもしれないし、お互いに一緒に生活していない関係になれば甘えのないやりとりができるかもしれない。時間が何かを変えることもあれば、変えないこともある。

  • 『そして父になる』感じるところがあったので読んでみたら、打ちのめされた。

  • 映画 『そして父になる』が参考にしたという、赤ちゃん取り違え事件を17年追ったノンフィクション。作者は『心にナイフをしのばせて』 『密貿易の女王ナツコ』など面白い本を沢山書いてる奥野修司さん。

    映画がかなり面白かったので読んでみたのだが、そしたら映画の10倍くらいこっちの方が面白かった。映画は子供を交換して上手くいかず、元に戻すのかどうなのか・・・というところで終わっていたが、この本では子供が30歳になるまでを書いているので、様々なドラマがある。

    取り違えられた二人の女の子の葛藤はもちろん、その二組の親のなれ初めから浮気、酒浸りでネグレクトな母親、そんな嫁の姉とくっついちゃう夫など、取り違えがなくても十二分に問題あるだろうってところがやはりノンフィクション。

    片方のお母さんが誠実な人格者で、それによって取り違えられた2人の女の子がどちらも救われたような展開。ホントにいいお母さんです。娘に「お母さんみたいな子育てして温かい家庭を作りたい」って言われるって、至福じゃないでしょうか。

    人生について色々大切な事を教えてくれる、素晴らしい本でした。

  • やはり、産みの親も育ての親も、正しく愛情をもって育てなくてはいけない。そうすればいつからでも、母親、になれる。

  • 映画「そして父になる」の原作。

    「生まれ(遺伝)か、育ち(環境)か」論争を考える際に読んでおくべき1冊。

    子供の取り違えが、小学校入学直前の血液検査により6年目に判明した2組の家族のノンフィクション。

    取り違え発覚、交換から、二人の少女が成人するまでを描く。

  • 2018年2月1日(木)に紀伊國屋書店梅田本店で購入。

  • 昭和40年代に沖縄で起きた赤ちゃん取り違え事件(子どもが6歳のときに発覚)の顛末を描いたノンフィクション。たしかに奇妙な親子関係を通して、親子とは何かという問いを考えさせる興味深い話。ぱらぱらと最後まで読んだ。以下は書評。http://book.asahi.com/ebook/master/2013102900002.html?ref=comtop_list

  • これぞノンフィクション言いたくなる作品。いったいどれほどの取材を行ったのか、時間も手間も相当にかけていることは想像に難くない。「ライターの仕事は調べること」と言った人がいたが、自称「ライター志望者」はぜひ本書を読んで、「調べること」とはどういうことかを知るべきだろう。

  • なんとも数奇な運命に見舞われた二家族、筆舌に尽くし難い苦労があったことでしょう。正解が無いだけに赤の他人が意見することは憚られますが、病院の対応だけは憤りを覚えます。二度と繰り返されることが無いよう願うばかりです。

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著者プロフィール

奥野 修司(おくの しゅうじ)
大阪府出身。立命館大学経済学部卒業。
1978年より移民史研究者で評論家の藤崎康夫に師事して南米で日系移民調査を行う。
帰国後、フリージャーナリストとして女性誌などに執筆。
1998年「28年前の『酒鬼薔薇』は今」(文藝春秋1997年12月号)で、第4回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞受賞。
2006年『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で、第27回講談社ノンフィクション賞・第37回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
同年発行の『心にナイフをしのばせて』は高校生首切り殺人事件を取り上げ、8万部を超えるベストセラーとなった。
「ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年」は25年、「ナツコ 沖縄密貿易の女王」は12年と、長期間取材を行った作品が多い。
2011年3月11日の東北太平洋沖地震の取材過程で、被災児童のメンタルケアの必要性を感じ取り、支援金を募って、児童達の学期休みに
沖縄のホームステイへ招くティーダキッズプロジェクトを推進している。
2014年度より大宅壮一ノンフィクション賞選考委員(雑誌部門)。

「2023年 『102歳の医師が教えてくれた満足な生と死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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