モダンガール論 (文春文庫 さ 36-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656874

作品紹介・あらすじ

女の子には出世の道が二つある!社長になるか社長夫人になるか、キャリアウーマンか専業主婦か-。職業的な達成と家庭的な幸福の間で揺れ動いた明治・大正・昭和の「モダンガール」たちは、20世紀の百年をどう生きたのか。近代女性の生き方を欲望史観で読み解き、21世紀に向けた女の子の生き方を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 斎藤美奈子さんによる近現代日本女性史。歴史の見方は色々あるが、筆者は本書を「欲望史観」と名付けている。つまり、贅沢したい、評価されたい、出世したい…、こうした欲望を軸に、女性の専業主婦化や社会進出が様々な資料から描かれる。斎藤さんの定義するモダンガールは、狭い意味の職業婦人たちだけではなく、ズバリ「我慢しない女」。これは、「女性解放運動が地位を向上させた」(進歩史観)とも、「女性はずっと虐げられてきた」(抑圧史観)とも違った見方をしますよ、ということでもある。

    とり上げられる事例は、女子教育、女工、女中、風俗産業、女性雑誌、女性の戦争協力など幅広く、かつ随所にユーモアや毒舌があふれていて、楽しく勉強になる。あとがきによると、「人間が動かない歴史は歴史じゃない」と語った大学の恩師のゼミで近代史に興味を持ったとのことだが、本書はまさに「人間が動くテキスト」と言えるだろう。

    ちなみに、解説はその恩師によるもので、本書へのちょっとした批判も書いている。で、一方の斎藤さんも、『文庫解説ワンダーランド』でこの解説を取り上げて、ちょっとした皮肉を書いている。素敵な師弟関係だなぁ。

  • 女にも学問が必要だ、に変わったのが20世紀初頭。この百年間、職業人と家庭人の二つの出世の道で、女の子たちの奮闘努力の足跡を辿ってみよう。欲するままに万事を振る舞うモダンガールとしての。

    20世紀は、性別闘争ではなく、階級闘争だったと。

  • だいぶ前に読んだのを再読。時代は変化し続けているが、この本が出てから20年ぐらい経っているので、モダンガール近代史をまた書いて欲しい!

  • 「女の子には出世の道が二つある。」が最初の見出し。その二つとは、「立派な職業人になることと立派な家庭人になることだ。」と続く。20世紀の幕開けからその最後までの各時代の憧れの女性像と現実の女性像を解説している。私は以前から斎藤美奈子の書いた本が大好きだったがこの本のあとがきで彼女が経済学部の卒業だということを知り、なるほど、この時代の流れと女性の生き方を経済の切り口から分析のうまさはそこからきているのか、と腑に落ちた。久しぶりに読み直しても、おもしろかった。

  • はぇ〜

  • 明治末期から百年のあいだの「モダンガール」をお手本に、現代の女の子の生き方を考察した一冊。

    僕は本題に加え、消費者と生産者の関係の移り変わりを分析した章を興味深く読みました。
    第4章 高度成長の逆襲「あなたも私も専業主婦~恋愛結婚というオプション」

    僕には「手作り」をありがたがる人が謎だったのですが、
    それは、僕が「手作り」と「既製品」の価値観が逆転する時期を生きたからだ、とわかりました。

    案外、家庭も「生産者」であった時代から、「消費者」でしかなくなる移り変わりが昭和の後半にあった。と理解しました。

    サザエさんは、ミシンで自分が着る洋服を縫っていたけれど、今じゃ既製品を買う方が安い。
    僕の父親は秋葉原のジャンク部品屋を回ってテレビを組み立ててたけれど、今じゃ不可能。

    家庭が生産の場でもあった時代は、当たり前に手作りをしていて、それは他の家族から「ありがとう」といわれる類いではなく「お疲れ様。」か「ご苦労様」と言われるたぐい。
    家庭内の役割果たして「俺に感謝しないとは何事か」と怒る父親や「人にものをもらったらありがとうといいなさい。」と自分が作った食事に対して説教する母親では困ります。
    う、本の感想から逸脱しましたね(^_^;

  • 3 「大人になる」とはどういうことか[辻智子先生] 1

    【ブックガイドのコメント】
    「女性たちは20世紀をどう生きたのか現代的な視点から軽快な語り口でたどる。」
    (『ともに生きるための教育学へのレッスン40』182ページ)

    【北大ではここにあります(北海道大学蔵書目録へのリンク先)】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2001127477

    【関連資料(北海道大学蔵書目録へのリンク先)】
    ・[単行本]「モダンガール論 : 女の子には出世の道が二つある」2000年発行(マガジンハウス)
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2001333852

  • ノンノ、アンアンの登場で、趣味=フッションになり、裁縫、調理など女性が担わされていたものから解放され楽しみへと逆転させたところがスゴイ

  • 2003年(底本2000年)刊行。明治からバブル崩壊の頃までの女性社会史を、「欲望史観」という挑発的な切り口で読み解こうとする。欲望、というフレーム設定が、「キモチいいことしたい」というバブル期若年女性層の心性を現していて、こちらが苦笑してしまう。しかしながら、戦前期の女学校に進学可能な層という限定つきではあるが、内容は面白い。特に軍国婦人がモダンガールの帰着点だった、というあたりは、膝を打つ納得の説明。「女工哀史」とは異質の近代女性論が展開されている。

  • 2015年3月27日読了。
    いやー、おもしろかった!女の生き方を書いてるのに「女はこうすべき!」みたいな主張がほとんどないというのが素晴らしい。驚異の公平論理力。

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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