猫とみれんと 猫持秀歌集 (文春文庫PLUS)

  • 文藝春秋 (2003年8月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784167660574

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  • 「猫とみれんと」という大阪のけったいな歌人の歌集。
    著者の寒川猫持さんは、バツイチで中年の目医者、大阪のオッさんである。愛妻にバイバイされて女性にモテず、唯一相思相愛の猫と暮らしている。歌集は3冊も大手出版社から出ておりいちおう歌人(本人は「歌詠み」と称している)であるが、彼の短歌は他に比べるものがないほど阿呆らしくて情けなくて笑えるのである。

    たとえば、
    ・尻舐めた舌でわが口舐める猫好意謝するに余りあれど
    ・四十のやもめとなりて道をゆく犬なら棒に当たるとこだが
    ・おーいお茶、風呂に入るぞ飯食うぞぼちぼち寝るか谺(こだま)しており
    ・チョンガーの胸のうちなどわかるまい服着てひとり脱いでもひとり
    ・今日こそは下着替えむと思いつつまあよかろうと思いまた穿く
    ・わたくしのごとき阿保を頼みとしすり寄る猫も阿保であるか
    ・にゃん吉よおまえが死ねばボク独りなんでんかんでん死なでけろ
    ・お見合いも二回させたが飼い主にできないことは猫にもできぬ
                      等々、世界に比類なき阿呆らしい歌の数々。

    猫持さんは芯からの大阪人である。
    大阪生まれ大阪育ちの私にはどの歌もよくわかって笑え、涙がちょちょぎれるのである。大阪人の最強の武器は、自分の情けなさを笑える客観視の才能である。
    失恋、挫折、失敗、恥、劣等感。自分で自分を笑って元気づける。辛いことや情けないこと、何でも笑いに転化して楽しむ。若い時に辛いことがあると、友達と「お前、それマンガやなあ〜」とおたがいの情けなさをよく笑いあった。「阿保、阿保、阿保の坂田〜」「アホでんねん!パーでんねん!」という関西芸人の自虐笑いのギャグは大阪人の生き方をよく表している。

    猫持さんの歌人としての名誉のために追記すると、前記のような阿呆らし歌だけでなく、以下のような文学的叙情のある良い歌もある。

    ・あじさいの咲く道をゆく少年よ花青ければ青きかなしみ
    ・思い出は風に吹かるる曼珠沙華こころの隅に赤く揺れいる
    ・ふりむきもせずに小さくなってゆく君との距離を失恋という

  • 【本の内容】
    面白いのである。

    面白いだけでなくやがて哀しいのである、と山本夏彦氏が絶賛した異色歌集。

    「尻舐めた舌でわが口舐める猫好意謝するに余りあれども」「出前なし話し相手はさらになしもういくつ寝れば来るお正月」…。

    自称「目医者、うた詠み」、妻に逃げられ、猫と暮らす著者が、過ぎし日々と飼い猫にゃん吉への愛を諧謔に託して詠んだ全380首。

    [ 目次 ]
    にゃん吉くん
    バツイチのうた
    ダメの人
    映画百年
    猫じゃ猫じゃ
    ワーク・ソング
    恋に似たもの
    中年エレジー
    ドリフターズ・メドレー
    日本外史〔ほか〕

    [ POP ]
    好きだなあ、この歌集。文庫になる前からとても気に入っていて、ジャンルは違えど面白さから言えば「猫~」か「サラ川」かというくらいでは、と思っている。(比べていいのか?)

    寒川猫持という歌人については詳しいことは知らないが、略歴を見ても少々いわくありげで興味をひかれる。

    この人の歌は最高に笑えて、なおかつ、しんみりとさせられ、わびしさ切なさも存分に感じさせてくれる。

    飄々とした詠いぶりの中に、関西のお笑い精神に味付けされたユーモアと自虐がちょうど良いバランスでおさまっている。

    愛して止まない飼い猫にゃん吉の歌と別れた妻への歌がやっぱりよろしいですな!

    “目の中に入れても痛くない猫であるがさすがに目には入らぬ”

    “「女房の風邪が伝染ってしまってね」それをイヤミというのよあんた”

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 単行本は1996年9月文藝春秋刊
    歯科医でバツいちでネコ好きな著者の短歌集。

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