動物園にできること (文春文庫 か 28-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167662035

感想・レビュー・書評

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  • 中学の教科書で読んだ。
    面白かった。

  • 動物園が好きだけど、なんとなく感じていた違和感を、この本が見事に表現していて、はっとなった。人間主体、それも先進国の人間からの視点が大きく、環境保護・生息地保護を訴えるけど、自分たちの生活レベルは変えたくないとか、、、。なんて自分勝手!
    もはや地球全体が大きな1つの人間にとっての動物園だと思う。

  • 20年前の本ですが、今でも古びない内容です。動物愛護から一歩進んで種差別やヴィーガニズムがメディアでも取り上げられるようになった昨今、野生動物を捕らえ、飼い、展示する動物園という施設について改めて是非や意義を考えたくて読みました。平易な文章でとても読みやすいです。

  • 青木幸子さんのZoo Keeperの最終巻の謝辞に川端裕人の名前があったので.
    動物園とはなにか.考えたこともなかったので考えてる.
    何を見せるのか,動物を見せるのか,生態を見せるのか.
    生態を見るなら現地に行けばいい.現地では警戒心から見せてくれないから擬似的に見せるのか.現地では遭遇確率が低いから見せるのか.
    ただ,手元に一度置くと理解する,っていうのは何事にも共通するから,そこにルートがあるのかも.もう少し勉強を.

  • 動物園の最先端である(当時の)アメリカの動物園への膨大な取材を元に、動物園を取り巻く問題と動物園の取り組み、動物園がなすべき役割等を様々な角度からまとめている良書。以下、印象に残った話
    > 動物園の借り。ゴリラの子供を連れてくるには、家族の絆が強いゴリラの群れの成獣を全て殺さなければならない等、動物園には動物達に借りがある。その借りを返すという潜在意識があるために、アメリカではエンリッチメントや種の保存、環境保護活動が盛んに行われているのではないか。
    > 動物園の問題点。動物園は種の保存や環境保護に対するメッセージを送る事はおこなっており、それが動物園の存在意義の一つである。しかし、実際にどのような環境保護活動をするべきかという方向性の提案まではできていない。一方で来園者は必ずしもそのようなメッセージに興味がある訳ではない(動物園での会話のほとんどが動物の姿形などであり、その動物が絶滅危惧種である等の話までする人はほとんどいない)。
    > 日本の動物園の当時の現状。アメリカの寄付を背景にした動物園管理は、お役所的な遊園地的な日本の動物園には必ずしも全て当てはめる事は出来ない。しかし、限られた財源の中で日本的な発想の元生まれたチンパンジータワーは風景にはとけ込めないがエンリッチメントとしては高い効果があり(あるようにみえ)、それが海外でも逆輸入される等、動物園の分野では遅れている日本でも世界に貢献できる点があるというのは非常に素晴らしい。

  • 多角的な視点と絶妙なバランス感覚が素晴らしい。
    多くの日本人は動物園の動物も愛玩動物としての視点から(つまり「カワイイ!」というだけの感想で)見る、ということ、確かにそうなんだけど、改めて言葉にされると衝撃的だった。文庫のための後書きでも2006年付近の事情だから、2013年の今だったらもっと色々変わっているんだろうな。メディアや周りの来園者からは手放しでほめられている旭山動物園の抱えるジレンマなんかも書かれていて面白かった。行く前に読むと色んな視点で観られると思う。
    あと、2011年を経て2013年の今さんざん手垢のついた「~にできること」という言葉が久々にすんなり心に入ってきた。

    小説も面白いもの書く方だけど、こういったレポートのような本の方が個人的には読みやすかったな。

  • 動物園の複雑な現状を取材したノンフィクション。
    もとは単なる見世物だった動物園だが、多様な価値観のもと変容しつつある。動物の福祉、種の保存、生息地保護、環境教育…
    動物のために、自然のために、社会のために、動物園にできることは何か。

  • 幅広い問題意識が織り込まれていて、「動物園」に対して無条件に肯定的ではない自分でも違和感なく読めた。1999年の本(2006年の加筆あり)なんで、現在の動物園の状況が知りたいな。

  • 旭山動物園でいろいろ話題になった行動展示や、エンリッチメントに触れている先駆け的な動物園本です。自分はこの本がきっかけで川端裕人にはまりました。ついでに動物園にも。
    もっと話題になってもいい本だと思うけど、語り口がわりとあっさりしているのがいいと思うので、そこはしょうがないのかなあ。
    文庫版では旭山動物園の話も出てきて、色々お得。

  • アメリカの動物園は種の保存や環境教育の場としての役割を第一に担っていることがよく分かりましたが、日本の動物園はそれよりも市民の娯楽の場としての側面が強いように思えます。
    動物園に来た大半の人は動物の説明が書いてある看板を読まないで素通りします。また、身近な犬猫との原体験に引き寄せて「かわいい」で思考停止しています。しかしそれも、環境教育を受けたいと思って動物園に来る人はとても少ないでしょうから仕方ないことのように思えます。
    あと気になるのは、日本の動物園の展示手法は動物よりも来場者目線のものが多いことです。例えばホッキョクグマの展示は雪山を型どったハリボテを舞台にしています。来場者は自然で暮らすホッキョクグマを錯覚することができますが、実際にそこで暮らすホッキョクグマからしたらハリボテと雪山の住み心地は全くの別物ですので、自分の暮らしている場所を雪山と錯覚することはないと思います。動物園もビジネスですので、このように動物よりも来場者を楽しませるための展示が多くなってしまうのも当たり前なのかも知れませんが、見てるとどうしても悪いことをしているような気持ちになってしまいます。
    本物に近い環境下での展示には莫大なお金が必要でしょうし、とても難しい問題です。いずれにせよ、自然界から動物をお借りしている以上は、動物園が種の保存への取り組み等を通して人間だけでなく動物にも利益をもたらす存在になるといいなと思います。これから先動物園がどんどん進化していくのが楽しみです。
    とりあえずこの本で取り上げられてるアメリカのジャングルみたいな動物園に行ってみたいです。

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著者プロフィール

1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。文筆家。東京大学教養学部卒業。日本テレビ勤務中、1995年『クジラを捕って、考えた』でノンフィクション作家としてデビュー。退社後、1998年『夏のロケット』で小説家デビュー。小説に『せちやん 星を聴く人』『銀河のワールドカップ』『算数宇宙の冒険』『ギャングエイジ』『雲の王』『12月の夏休み』など。ノンフィクションに『PTA再活用論』『動物園にできること』『ペンギン、日本人と出会う』『イルカと泳ぎ、イルカを食べる』など、著書多数。現在、ナショナル ジオグラフィック日本版および日経ビジネスオンラインのウェブサイトで「・研究室・に行ってみた。」を連載中。

「2020年 『「色のふしぎ」と不思議な社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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