新装版 翔ぶが如く (9) (文春文庫) (文春文庫 し 1-102)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167663032

作品紹介・あらすじ

熊本をめざして進軍する政府軍を薩軍は田原坂で迎えた。ここで十数日間の激しい攻防戦が続くのである。薩軍は強かった。すさまじい士気に圧倒される政府軍は惨敗を続けた。しかし陸続と大軍を繰り出す政府軍に対し、篠原国幹以下多数の兵を失った薩軍は、銃弾の不足にも悩まされる。薩軍はついに田原坂から後退した…。

感想・レビュー・書評

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  • まさか会津人まで出てくるとは。
    しかもすごく魅力的な人物>佐川官兵衛、山川浩

    現代から振り返れば、薩軍はその在りかたも訴えかたもすべてが時代遅れで時代錯誤。
    彼らが歴史から退場するのはまったく自然なこととしかいえない。
    でも変わり目にいるときが一番辛く苦しいのはわかるから、彼らには激しく同情もするし、共感もするし、その行いを善悪で単純に片づけたくはない。


    しかし主役不在の西南戦争史。
    我ながら、よくここまで読んだ。
    いま無性に一巻を読み返したくてたまらない。

  • 薩軍と政府軍の死闘。薩摩ほどの手練でも大きく戦局を覆せない。政府の弾薬、装備の差は大きかった。加えて、補給といったものが政府軍は潤沢であった。火力、兵力で常に上回るという近代兵法の勝利ともいえる。そんな激闘に次ぐ激闘の巻であった。

  • 最後に纏めて記載。

  • ※2008.3.21購入@Book Off調布
     2008.11.3読書開始
     2008.11.16読了
     2017.5.6売却@Book Off

  • 引き続き西南戦争。後方から大量の武器弾薬、兵士を投入してくる政府軍に対して薩軍は必死の抵抗を試みるものの、後退を余儀なくされる。また戦術面での拙劣さも手伝って、結局は政府軍に包囲されてしまう。

  • 物語は西南戦争のまっただ中。
    激戦の末に田原坂を失い、物資と人員を欠いた薩軍は、それらを潤沢に補給できる政府軍に押され始めました。

    この間、西郷隆盛さんは「神輿」であって、薩軍を指揮した様子は全くありません。
    西郷さんが指揮をしないでも、優秀な参謀らが何とかしているってならまだしも、基本的にノープランなうえに、全体を見渡せない人が上に立っている。
    これはやっぱり、兎狩りで森で転んで、頭を強打してからの西郷さんはおかしかった…って説が正しいのかな?
    みんなの命がかかっているのに。

    政府では、西郷さんが征韓論で下野した直後と西南戦争の際に大量の警察官を雇用したとは聞いていたけれど、当時の警察は士族採用が基本で、このときは特に旧会津藩士をたくさん採用したらしい。
    幕末に統制が取れた武勇でならした藩は薩摩と会津が双璧だったから、西の横綱には東の横綱をってことだけじゃなくて、討幕にあたって薩摩を中心とした「官軍」に苛め抜かれた会津の恨みを利用しようとした感じ。

    大久保利通さんて、人間の機微に通じていたんだね。
    それって通じ過ぎているのがバレると、お友達がいなくなるどころか、ヘタするとめっちゃ恨まれるよね。

    前巻では政府側の乃木希典さんの使えなさっぷりが描かれていたけれど、今回はお金に汚いくせに細かいことにまであれこれと口を出す実は小心者の山県有朋さんが猿回しのサルみたいでした。

    西南戦争ってかなり早い段階で薩軍の負けが見えてたんだな~。

  • 西郷は桐野利秋や篠原国幹の政治的狂騒に乗せられ、だまされたに近い苦い思いを持ったのだろうが、西郷自身は島津久光から同じようにだまされたと思われ続けたのである。正に因果は廻るである。西郷のどこに人を惹きつけてやまない魅力があったのだろう。この小説からはそこがよく分からない。

  • 全巻通読後のレビュー。

    全10巻という超大作であるが、もともと毎日新聞に連載された小説であるから、多々同じ記述が見られる。

    しかしながら、明治維新後の日本の姿を鳥瞰的手法で世界史と関連付けて論じられている点で、日本近現代の始まりを理解する際の基礎理解には最適の入門書であると考える。

    島津久光という超保守派の考え方から、維新を支えた革新派の面々の考え方が手に取るように分かる小説である。重要なのは士族の不満、百姓の不満がどのようなものであったか、であるが、それもこの小説では網羅されている。


    物語は維新開始直後から、西南戦争(明治10年)を経て翌年の紀尾井坂の変(大久保の死)、さらに川路利良の病没までを描く。

    明治維新は天皇の威を借りた王政復古という形でスタートした。それが後に軍の独走いうものを招くが、この時点ではそうせざるを得なかったということも、小説中で書かれている。

    後の日本を支えていく山県有朋、伊藤博文、板垣退助、軍人で乃木希典、川村純義などが登場する。

    西南戦争は8巻の半ばくらいから始まる。桐野、篠原ら薩摩隼人に担がれた西郷、悲劇のような最後の激闘である。西郷が桐野や篠原といった兵児(へこ)を最も愛し、彼らと生死をともにしたことは、西郷をうかがい知る上で、見逃せない点である。

    西南戦争の中身についての描写は一流である。

    時間がない方にも、8~10巻は読むことをお勧めしたい。

  • 薩摩軍には上代の「隼人」のDNAが受け継がれているかもしれない。隼人も勇猛な戦士だったが、逃げるのも早く、そして逃げることに罪悪感はなかった。高瀬や吉次越の戦いで、薩摩軍があっけらかんと退却したのも、この隼人の血がそうしたのかもしれない63

    西郷は私欲の無い立派な人だった。ただ「人望欲」とでも言うべきものがあり、それがために担がれて身を誤らせたby大山巌122

    田原坂で銃をもたず、その場で買った太刀で薩摩の堡塁に奇襲をかけた抜刀隊。その多くは元会津藩士で、「戊辰の復讐、戊辰の復讐!」と叫んで斬り込んだ156

    薩摩藩は百姓への搾取が他藩に比べ非常に多く、その差別も強い。それによって武士を多く抱え、したがって維新の中心部隊になれ、独立独裁も保てた。それは明治になってからも変わらず、木戸はそれを見抜き、熊本を引き払って人吉で未だに群居する薩摩軍と「休戦せよ」と政府に申し入れた久光(藩兵を維持し独立国の君主の座を守りたい)を批判した。300

  • 「尊王攘夷」のスローガンで始まった筈の倒幕運動から、明治維新が為ってみたら、幕末からの開国方針が何も変わっていないという、この歴史の流れが、長らく釈然としなかったのだが、これを読んで、漸く腑に落ちたというか――当時の士族達も釈然としなくて、だからあちこちで士族の反乱が起きて、最終的に西南戦争に至ったのね、と。しかし、旧支配層の武士は既得権益を取り上げられ、庶民は税金やら兵役やら負担が激増した、この明治維新という大改革が、よく破綻・瓦解しなかったものだという、新たな疑問が湧いてきた。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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