新装版 夏草の賦 (上) (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167663193

感想・レビュー・書評

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  • 四国を切り取った長曾我部氏。その中でも元親は非常に有名である。
    元親視点から進んでいくのかと思いきや、まさかの嫁視点からとは驚いた。そもそも元親の嫁が菜々という織田家の家臣明智光秀に縁のある人物であるというのも初めて知った、、、

    元親の視点は意外と少なく菜々の視点から描かれていて、元親の主観ではなく菜々の客観的な視点から多く内容が進んでいるように感じられ当時の四国という状況をより分かりやすく理解できた。

  • 龍馬もだけど、この人、こういう人なのー!って驚きが面白い。
    元親の小心なのか大物なのか微妙な描き方。
    美濃から嫁いだ菜々の大らかというか豪胆というか。
    「いくさに勝つということは、さほどむずかしいことではない。勝つ準備が敵よりもまさっていればもうそれで勝てるのだ。」とあっさりいう元親。それを理解し実行できるのはまさに天賦の才。
    「武士の腹は真っ白でなければならぬが、しかし、大将はちがう。墨のような腹黒さこそ統一への最高の道徳だ」
    臆病だからこそ誰よりも準備を重ねる。
    土佐から阿波を切り取り、時には大きな犠牲を払い力で押し、いよいよ四国全てが目前となった時、信長が四国まで手を伸ばしてきた。
    「天の意思に善悪はない。それを善にするのが人である。」

    歴史ものは前途が見えていてそれが切ない。

  • 四国の戦国大名長宗我部一族の物語。

    長宗我部という不思議な名前は、鎌倉初期に土佐の曽我部に地頭としてやってきた能俊が、曽我部姓を名乗ったが、すでに曽我部という家があったので、区別するために長岡郡の曽我部ということで、長宗我部と呼ばれることになったらしい。(p65)

    この物語は美濃の斎藤利三の娘菜々が、長宗我部元親に嫁ぐところから始まる。

    そこから、元親の土佐統一、四国制覇の歩みが始まる。

    私は信長の野望というスーファミのゲームを初めてやった時に、長宗我部を選んだので、以来長宗我部を贔屓にしているが、彼らの物語を読めて良かった。

  • 司馬遼太郎さんの作品の中でで初めて購入した本。
    長宗我部はゲームで結構有名になりましたが彼が出るの本は中々ない。
    期待した通り上下で綺麗にまとめられており読みやすく面白かったです。
    明智光秀の家臣、斎藤利三の妹が妻ということでここで明智と知り合うことになったのかと納得しました。晩年の元親、長宗我部家を知っているだけに最後の方は切なくなりました。

  • 土佐の国から四国制覇を目指した戦国武将、長宗我部元親が主人公。若き彼は武将としての自信に乏しく、誰よりも臆病だった。が、その短所が戦への慎重さをもたらし工夫を欠かさず、戦前の外交を重視した。戦の勝敗はその前の準備で決まることを彼は十分に知っていた。

    しかも、元親が気にするのは目の前の対戦武将だけではない。四国から遠く離れた織田信長に目をつけ、その配下の明智光秀のそのまた配下武将から嫁を取り、それをきっかけにして織田家の威を武器にする。

    そんな元親の苦労が実り、長宗我部家は領土を拡大。元親は四国を統一し、その勢いで天下統一の候補者として台頭することを夢想する。が、織田信長もまた元親を利用していた。元親を応援し、四国を征服させた後にその元親を叩こうとする。

    似た者同士の二人だが、決定的に違ったのが出身地から京都までの距離。信長が天下を取れて、元親が取れなかった理由はそれだけだった。

    人生を左右するのは実力だけじゃない。世の中は不合理で不平等で納得できないことがよくあるのだ。というわけで、信長が長宗我部征伐に乗り出したところで下巻へ。

  •  土佐から興り、四国統一を果たした長宗我部元親の物語。
     国を興す元親の勇気と行動力、それをささえた南国土佐の風土と気質、そして美濃から嫁いだ奈々の朗らかで暖かなまなざしによって鮮やかに描かれている。
     実は元親は、幼少時には内気で「姫若子」と呼ばれただけあって、慎重で用心深く、なかなか陰湿な謀略家であり、決してさわやかな人物ではないんだが。それでも国の草創期の情熱とか、中央活躍する織田信長を目指す様子などは、表題のように若々しく気持ちがいい。
     しかし、夏草のごとく長宗我部家が廃れるのも早い。信長の死後、大きく変換する世の流れには逆らえず、元親の領土は土佐一国に収まる。そして、将来が期待された長男・信親の死。長宗我部家の翳りが見えてくる。
     長宗我部家は、元親の一代に興隆と滅亡とを語ることができてしまう。その一生の苛烈さ・鮮烈さが魅力なのではないだろうか。

  • 長宗我部元親の話。特に人物像的に魅力があるわけでもなく、むしろ途中で出てくる信長の方がよっぽどそれっぽい。「余談だが」の司馬節は健在。


  • 6/23
    読書開始。
    織田信長の字が開書一番に目に入り、ハマりそうな予感。

  • 若い頃に読んだ司馬遼太郎氏の作品を読み返しております。

    司馬遼太郎氏は現存の資料を徹底的に調べ、それを土台に書き上げるとともに、あくまで歴史小説であるので私観や想像を織り交ぜてもおられるので、どこからどこまでが史実か分からないほどの作品が多いと聞いております。
    シンプル、時には出来事をあっさりと流す書き方は、こちらに先に慣れ親しんでしまった私は心情を長々と書いてたり、主人公の行動をひたすらハードボイルドで書き上げている歴史、時代小説を読んでると飽きてしまう性格となってしまいました。

    本作品については、長宗我部元親の話で、知らない方も多い戦国大名の話です。
    小さい地方領主から四国統一の一歩手前までいったのち、豊臣秀吉に屈服した生涯でしたが、日本の中央に位置しない大名の不利さ等も視点として描かれ、織田信長との対比も面白い書き方でした。
    また長宗我部元親がとった一領具足の制度が、後に維新に関する土佐郷士の原動につながることも感じられる内容です。

    司馬遼太郎氏の特色である最後はさらっと流してしまう書き方でしたが、私はこの安心感??かつ、無駄に長くなく、歴史情報の溢れた司馬遼太郎作品が大好きだと改めて感じた内容でした。

  • 四国の長曽我部元親に対し、織田信長が討伐を命じるまでの上巻。まず、信長の腹心、明智光秀ゆかりの菜々が長曽我部家に嫁ぐ出だしも大いに興味をそそる。ほぼ作者の創作だろうが時に笑いを誘いつつ展開させ、長曽我部元親の人柄と考え方を織り交ぜ、読者を徹底的に元親主眼にさせる。内容もとても濃く、かと言って難しくもなくすらすら読めてしまう。結末は分かっていながらも下巻が楽しみです。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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