最後の息子 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2002年8月2日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784167665012

みんなの感想まとめ

青春の複雑な心情を描いた短編集で、3つの物語が収められています。吉田修一のデビュー作を含むこの作品群は、特有の青臭さや危うさを持ちながらも、希望の光を見出すことができる内容です。特に「Water」では...

感想・レビュー・書評

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  • ゴールデンウィーク中、家の庭の草むしりをしながらオーディブルで読む。

    吉田修一さんのデビュー作である「最後の息子」含め3遍の短編が収録。
    少し屈折してなかなかスカッとしない、
    だからと言って希望がないわけではない、
    そんな青春小説だ。

    3遍の中では「Water」が好きかな。

    ♪(I’m)The End of the Family Line/Morrissey

  • 「最後の息子」
    ビデオ日記を撮るという設定がなんとなくピンと来ず。かなり自分で感情を考察しなければいけない部分が多いのが難しく、読むのは2回目だが、やっぱりあまりハマれなかった。
    ラストの閻魔ちゃんの電話中のメモの愛情にはグッとくる。あえて悪ぶるのとか、それでも閻魔ちゃんには優しく見えているのとか、人間失格に近い構図か?

    「破片」
    最後の息子に比べて格段に情景描写が増え、一気に物語の風景が浮かんで真に迫ってくる感じがあった。これぞ吉田修一という感じ。明らかに才能開花している。
    積み重ねられるエピソードで、母を不幸な事故で亡くした田舎の男世帯の雰囲気、九州に根強く横たわる男尊女卑思想、兄弟それぞれの歪んだ女性感が伝わってくる。突然去っていくかもしれない怖さでか女を手放したくなってしまう兄と、女を握りしめて絶対逃さないことが女の幸せだと信じ込む弟。

    「Water」
    恋も部活も、いろいろ悩みもありつつ全力&ストイックな青春坊主たちも素晴らしいけど、かなり苦味走った恋愛をしていそうな大人のエピソードが挟まるのが、アクセントとしてとてもいい。
    その効果で、より青春はキラキラして見え、大人の世界はほのぐらく見える。
    とにかく部活を頑張る青春って、無駄かもしれないけどかけがえないな。部活って、初めて気づく複雑な人間心理をいったんリセットして別のことに打ち込み、心の健康を守るのに必要なのかもな。

  • 読み込まないとわからない面白さ。酒屋、長崎、ゲイ

  • 芥川賞受賞以前、初期の作品集。三篇どれも好きだ。

  • 「国宝」があまりにも面白かったので他の作品も読んでみたくなって手に取った。

    10代から20代特有の青臭さや気怠さ、危うさ、瑞々しさが漂う3作品だった。
    高校の水泳部を舞台にした「Water」が1番好みでした。「破片」はそういう展開なんだとちょっとびっくりした。表題の「最後の息子」は正直よくわからなかった。けど、作者の描写がうまいので共感できなくてもその世界に入り込める。

  • Kindleのキャンペーンで半額分ポイントが付いたことと、図書館にこの本がなかったこともあり、珍しく購入した。
    図書館の本は期限があるので、期限のない購入した本を後回しにしてしまい、すごくダラダラ読んでしまった。
    父と息子の間のなんともいえない空気が面白かった。

  • 面白かった。

    3つの短編どれも読み終わるとスーッとした。
    どの主人公もとても順風満帆とは言えない生活の中で、周りを思いやり思いやられながら言葉を選び、周りと共存していく。

    ちょっと荒み気味のガサついた心が癒された気がする。

  • 同性愛者の閻魔ちゃんとの同棲を続けながら、同性愛者に向けられる偏見の眼差しを他者からも自己からも感じる「最後の息子」
    幼い頃土石流で母を亡くした弟が、女性は自分がいなければ死んでしまうものという強迫観念から彼女を執拗に束縛してしまう「破片」
    亡くなった兄の後を追うように高校の水泳部のキャプテンとなった凌雲が、仲間たちと大会に挑む青春小説「Water」
    前二作は社会派でもあり重いところもあるが、「Water」は比較的爽やかで読みやすかった。くじ引きで水泳部の顧問になった大人の女性な黒木先生が、ジンを飲みながら練習を眺めてる場面が好き。惨めに見える先生に、どうしてあげたら良いか尋ねる凌雲に、そのままプールを行ったり来たりしてればいいのよ、と答える先生が素敵だと思った。あと、憧れの少女藤森さんを送っていった時、バスの運転手が、振られたのか?と声をかけて、きっと今のこのバスに10年後に戻ってきたくなるからよく見ておけ、って言って、車庫に入る途中まで乗せてくれるシーンも良かった。

  • 実家が酒屋さんだったり、同性愛が登場したり、三篇少しづつ重なるところがあって、かなりの部分は実話に基づいているんかなと思った。(作者の実家が酒屋さんなのはインタビューに載ってた。)

    三篇中、『Water』が一番読後感が良い。
    最後の方の、400メートルメドレーリレーのスタート直前のいざこざが、張り詰めた緊張感の一つの表現形として楽しい。(ずっと気遣いしてたのに「ホモはあっち行っとれ!」て、身も蓋もない。。圭一郎が、「凌雲!この前、藤森が別れようって言うてきた。お前のことが好きらしか。俺に隠れてこそこそ人の女にちょっかい出しやがって」と口火を切ったのがどう見ても間が悪いので、しょうがない。。) 言葉遣いが、自分の地元とほぼ同じなので、すごく懐かしい気がした。自分の高校生活とは全然違うけど。

  • 3編からなる短編小説。

    最後のWaterにはやられた。兄・雄一の日記がすべて持っていく。
    このとき書いた、5年後・10年後の未来は訪れなかったし、もしかしたら、最高記録を塗り替えられていないままだったかもしれない。
    当たり前だけど、このときの雄一はそんなこと予想もしていなくて、主人公と同じように、ただ一生懸命生きていた高校生だったのだと思うと、なんか涙が止まらなかった。

    最後の息子は少し不思議だけど世界感に引き込まれる。
    どうしてもわからなかったのが、続きのビデオレターを見た閻魔ちゃんが、悲しそうにしていたくだりのところ。
    酷い殺され方をされた大統領は、ある意味アクセントとして、物語が進んでいくところが良かった。

  • 最後の息子で掴まれ、破片で引き込まれ、Waterで号泣

  • 色々なことが見えていながらも見えてていないふりを続けながら生きていく青年像がよく伝わってきました。人に愛されかまわれるために多少のことは気にしななかったり許せないものに歯向かう意志など持ちつつも、色々なことを隠し隠しやりくりしたりどこか全力でやりきれない逃げがちな生き方にリアルさを感じました。

  • waterが好きでした。
    青春ものって、自分の高校時代を思い出してそのあまりの充実のしてなさに悲しみを抱くので好んでは読まないのですがこちらは短編集なので必然的に読むことに。
    登場人物から感じるエネルギーがとてもよかった。こんなに動きゃお腹すくよなっていうくらいに躍動を感じた。
    それを言うなら2こ目の破片からもそれを感じた。
    長崎の子供はよく動くなあ。私は文化部だったしここまで田舎ではなかったからもっと今風の遊びをしてたしもっと省エネで過ごしていたから、こんなによく遊びよく働きよく動く彼らを感じると爽快です。
    それにしても私の青春とは全然毛色が違う。
    生まれた環境で本当に価値観とかが変わるよなあ。
    仕事にも部活にも女にも手を抜かず、ザ肉食系男子をを感じ、周りにはいなかったなあとしみじみ。
    本当に都会の方は草食系が多いですね。よく言えば品のある感じ。
    私は割と都心ではないにしろ郊外で、都心に近いところに生まれたこと、恵まれてるんだなと思いました。

    表題作は一番解釈に悩まされます。だからこそ表題作なのかなと、吉田修一さんらしさが感じられます。
    主人公がシンプルにダメ人間過ぎる。早く何かになっていただきたい。閻魔ちゃんの有無以前の問題。がんばれ。

  • 「羊と鋼の森」の宮下奈都さんが選んだ
    「大切な人へ贈る本」
    と書店のポップにあったので衝動買い。

    あー吉田修一さん、やっぱり私は好きなんだなあ。

    同世代感があるのもそうなんだけど、
    思いっきり
    「ブルーカラーの青春小説」
    なんですよね。

    村上春樹さんもそうだし、朝井リョウさんや住野よるさんは、「ホワイトカラー世代の青春小説」。
    それが今までは斬新だったけど、こうやって振り返ってみると、
    ブルーカラーの現場に暮らす今の私としては、
    吉田修一さんのこの肉体的なヒリヒリする感じが胸にズシンときますね。

    「最後の息子」は吉田修一さんのデビュー作で、
    長崎を舞台とした、過去にいろいろな傷のある男の子たちが主人公の短編集。

    「長い階段を見上げると、白い日傘をさした若い女が、2人のために道を開けて待っている。ありがたいとは思うのだが、逆に急いでのぼらなければならないような気がして、岳志は気合を入れて一段とばしで坂をのぼった。後ろから「待て待て」と叫ぶ兄の声がした」
    (「破片」より)

    こういう何気ない描写が、ブルーカラーで暮らす若者の焦燥感として、肌感覚で伝わります。


    ただ、「誰に贈りたい本」か、というと、まったくわからない(笑)
    九州出身の親に贈ったら、「嫌味?」といわれそう。
    これからこの田舎で、多感な時期を迎える息子の気持ちを理解するために、
    自分に贈りたい本、かもしれませんね。

  • 「最後の息子」「破片」「Water」からなる短編集。
    吉田修一の処女作ということで買ってみた。

    「Water」は比較的読みやすかったが、他2篇は結構読み疲れた。
    吉田修一は当初からこんなにきつい作品を書いていたんですね。

    「悪人」「パレード」なんかが好きな人は結構ハマるんじゃないかな。
    このざらざらして心に残る感じは好きじゃないけど、癖になる。

    人間の業のようなもの。狡くてどうしようもない生き物であること。
    それでも生きていかなければならないことを気づかせてくれる。

    自分に正直に生きていくことがどんなにたくさんの人を傷つけるか。
    吉田さんの書く登場人物の不器用さにはなぜか惹かれてしまう。

  • waterが吉田先生デビュー作とのこと、でこっから小説どんどん良くなってったんやなあと思うと、感慨深い。

  • 私とオカマの閻魔ちゃんと一緒に住んでいた「大統領」と呼ぶ男は、K公園のオカマ狩りで殴り殺された。大統領の亡くなるまでの痕跡を、いつも持ち歩いていたビデオカメラで撮り、それを見ることで思い出そうとするが…。

    吉田修一の作品は、少しずつ積み上げていくタイプの砂山のような作品で、途中で大きくストーリーが展開したりするわけでもないので、あらすじが極めて書きにくい。

    初期作品ということで、短編3つ。オカマの家に住み込む主人公、父がなくなって九州に里帰りし、酒屋の手伝いをする主人公、高校の水泳で強豪校に勝ちたい主人公。

    ストーリー的には3本目の『water』が一番とっつきやすいので、1本目を読みかけてピンとこない人は3→1→2と読むといい。

    個人的には、最近の興味と自分で書いている創作の方向性からも、1本めの表題作が一番印象に残った。同性愛という匂いのしないオカマとの同棲、一方で女性とも関係を続け、ある一点からその関係が崩れていく。

    2本目に関しては、適度に事件は起こるし、大河ドラマ的に読めばよいのだろうけど、荒すぎて印象が薄かった。

    なにかあるに違いない、と思って読んではいけない作品群。かと言ってつまらないわけでもない。比喩表現はあまりなく、作者のその時思っていることやちょっとした周囲の出来事を、文章にちょくちょく挟み込んでいくのは、同じようなスタイルで文を書いている身にとって親近感を持った。

    若い人に読みやすい作品というわけでもない。誰に薦めるべきなのかは難しい。ただ、なにかしら良いものはある作品群だ。

  • 特にwaterが好き。大人と同じくらいの重い悩みを抱えながらも、それでも目の前にある勝負や恋愛に向かって全力にならずにはいられない主人公たちはエネルギーのかたまりです。パワーをもらえました。
    若い故の危うさ美しさってよく言うけど、こういうことなのかな。

  • 「water」「破片」がよかった。表題作はよくわからない。
    この作者の共通点は、必ずゲイが出てくること。
    ちょっと食傷気味。必ず出てくる。
    あと、なぜか女にもてる。簡単にすることまでする。

    そろそろ、この作者の本はもういいかなっと。

  • 同じ長崎出身の吉田さん。
    不器用な人間を書くのが上手い。

    Waterはバスの中で夢中になって読んだ。
    最後のレースシーンは自分も一部始終を見届ける観客のような、もはや部員の一人のような気持ちで読んでいた。
    気がついたら涙が出ていて、読後放心。

    決して綺麗ではないし、青さ痛さが垣間見えるけど、それが自分にはないものと思うとみんながキラキラしていると思えた。

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著者プロフィール

一九六八年、長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。一九九七年『最後の息子』で文學界新人賞を受賞し、デビュー。二〇〇二年『パーク・ライフ』で芥
川賞を受賞。二〇〇七年『悪人』で毎日出版文化賞。ほか、『パレード』『横道世之介』『さよなら渓谷』『平成猿蟹合戦図』『路』『怒り』『森は知っている』『犯罪小説集』など著書多数。ANAグループ機内誌『翼の王国』での短編小説とエッセイをまとめた書籍に『あの空の下で』『空の冒険』『作家と一日』(木楽舎)がある

「2017年 『最後に手にしたいもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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