最後の息子 (文春文庫 よ 19-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167665012

作品紹介・あらすじ

新宿でオカマの「閻魔」ちゃんと同棲して、時々はガールフレンドとも会いながら、気楽なモラトリアムの日々を過ごす「ぼく」のビデオ日記に残された映像とは…。第84回文学界新人賞を受賞した表題作の他に、長崎の高校水泳部員たちを爽やかに描いた「Water」、「破片」も収録。爽快感200%、とってもキュートな青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • ゴールデンウィーク中、家の庭の草むしりをしながらオーディブルで読む。

    吉田修一さんのデビュー作である「最後の息子」含め3遍の短編が収録。
    少し屈折してなかなかスカッとしない、
    だからと言って希望がないわけではない、
    そんな青春小説だ。

    3遍の中では「Water」が好きかな。

    ♪(I’m)The End of the Family Line/Morrissey

  • 芥川賞受賞以前、初期の作品集。三篇どれも好きだ。

  • 面白かった。

    3つの短編どれも読み終わるとスーッとした。
    どの主人公もとても順風満帆とは言えない生活の中で、周りを思いやり思いやられながら言葉を選び、周りと共存していく。

    ちょっと荒み気味のガサついた心が癒された気がする。

  • 最後の息子で掴まれ、破片で引き込まれ、Waterで号泣

  • 同性愛者の閻魔ちゃんとの同棲を続けながら、同性愛者に向けられる偏見の眼差しを他者からも自己からも感じる「最後の息子」
    幼い頃土石流で母を亡くした弟が、女性は自分がいなければ死んでしまうものという強迫観念から彼女を執拗に束縛してしまう「破片」
    亡くなった兄の後を追うように高校の水泳部のキャプテンとなった凌雲が、仲間たちと大会に挑む青春小説「Water」
    前二作は社会派でもあり重いところもあるが、「Water」は比較的爽やかで読みやすかった。くじ引きで水泳部の顧問になった大人の女性な黒木先生が、ジンを飲みながら練習を眺めてる場面が好き。惨めに見える先生に、どうしてあげたら良いか尋ねる凌雲に、そのままプールを行ったり来たりしてればいいのよ、と答える先生が素敵だと思った。あと、憧れの少女藤森さんを送っていった時、バスの運転手が、振られたのか?と声をかけて、きっと今のこのバスに10年後に戻ってきたくなるからよく見ておけ、って言って、車庫に入る途中まで乗せてくれるシーンも良かった。

  • 実家が酒屋さんだったり、同性愛が登場したり、三篇少しづつ重なるところがあって、かなりの部分は実話に基づいているんかなと思った。(作者の実家が酒屋さんなのはインタビューに載ってた。)

    三篇中、『Water』が一番読後感が良い。
    最後の方の、400メートルメドレーリレーのスタート直前のいざこざが、張り詰めた緊張感の一つの表現形として楽しい。(ずっと気遣いしてたのに「ホモはあっち行っとれ!」て、身も蓋もない。。圭一郎が、「凌雲!この前、藤森が別れようって言うてきた。お前のことが好きらしか。俺に隠れてこそこそ人の女にちょっかい出しやがって」と口火を切ったのがどう見ても間が悪いので、しょうがない。。) 言葉遣いが、自分の地元とほぼ同じなので、すごく懐かしい気がした。自分の高校生活とは全然違うけど。

  • waterが好きでした。
    青春ものって、自分の高校時代を思い出してそのあまりの充実のしてなさに悲しみを抱くので好んでは読まないのですがこちらは短編集なので必然的に読むことに。
    登場人物から感じるエネルギーがとてもよかった。こんなに動きゃお腹すくよなっていうくらいに躍動を感じた。
    それを言うなら2こ目の破片からもそれを感じた。
    長崎の子供はよく動くなあ。私は文化部だったしここまで田舎ではなかったからもっと今風の遊びをしてたしもっと省エネで過ごしていたから、こんなによく遊びよく働きよく動く彼らを感じると爽快です。
    それにしても私の青春とは全然毛色が違う。
    生まれた環境で本当に価値観とかが変わるよなあ。
    仕事にも部活にも女にも手を抜かず、ザ肉食系男子をを感じ、周りにはいなかったなあとしみじみ。
    本当に都会の方は草食系が多いですね。よく言えば品のある感じ。
    私は割と都心ではないにしろ郊外で、都心に近いところに生まれたこと、恵まれてるんだなと思いました。

    表題作は一番解釈に悩まされます。だからこそ表題作なのかなと、吉田修一さんらしさが感じられます。
    主人公がシンプルにダメ人間過ぎる。早く何かになっていただきたい。閻魔ちゃんの有無以前の問題。がんばれ。

  • waterが吉田先生デビュー作とのこと、でこっから小説どんどん良くなってったんやなあと思うと、感慨深い。

  • 3編からなる短編小説。

    最後のWaterにはやられた。兄・雄一の日記がすべて持っていく。
    このとき書いた、5年後・10年後の未来は訪れなかったし、もしかしたら、最高記録を塗り替えられていないままだったかもしれない。
    当たり前だけど、このときの雄一はそんなこと予想もしていなくて、主人公と同じように、ただ一生懸命生きていた高校生だったのだと思うと、なんか涙が止まらなかった。

    最後の息子は少し不思議だけど世界感に引き込まれる。
    どうしてもわからなかったのが、続きのビデオレターを見た閻魔ちゃんが、悲しそうにしていたくだりのところ。
    酷い殺され方をされた大統領は、ある意味アクセントとして、物語が進んでいくところが良かった。

  • 色々なことが見えていながらも見えてていないふりを続けながら生きていく青年像がよく伝わってきました。人に愛されかまわれるために多少のことは気にしななかったり許せないものに歯向かう意志など持ちつつも、色々なことを隠し隠しやりくりしたりどこか全力でやりきれない逃げがちな生き方にリアルさを感じました。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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