横道世之介 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 4613
レビュー : 589
  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167665050

作品紹介・あらすじ

大学進学のため長崎から上京した横道世之介18歳。愛すべき押しの弱さと隠された芯の強さで、様々な出会いと笑いを引き寄せる。友の結婚に出産、学園祭のサンバ行進、お嬢様との恋愛、カメラとの出会い…。誰の人生にも温かな光を灯す、青春小説の金字塔。第7回本屋大賞第3位に選ばれた、柴田錬三郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ものすごく、ものすごく面白かった。
    面白かったけれど、物語が終わりに近づくにつれて、ページを捲るのが惜しくて、惜しくて。。。1ページ、1ページ、1行、1行を大事に大事に読んだ。

    主人公の世之介、ちょっと抜けてる、お人好し、押しにも弱いし、ちょっと頼りないし、肝心な所でドジ踏む。
    でも嫌味がないから憎めない。それはいつも明るく、笑顔だからだろう。(意外にも真面目な所もあるし)

    世之介と出会った人々が交わす会話のシーン、ちょっとずつズレてたり、噛み合ってない部分があるのだがそれが漫才してるみたいでおかしな場面があって吹き出したり、声に出して何度も笑った。
    物語の途中、途中に世之介と関わった人々のその後が書かれているのも良い。(恋人だったお嬢様育ちの祥子の現在には、驚かされたけれど。)

    読み終えた後、甘酸っぱい気持ちで胸の奥がギュッと苦しくなると同時に心が暖かくなる作品だった。

    余談で世之介くんが住んでいた花小金井、我が家から割と近場でわあー!ってなった(笑)

  • 長崎の田舎から大学に進むために上京してきた世之介。
    ふらふらと学生時代というモラトリアム期間を過ごす彼と、そんな彼になぜかひかれてしまう人たちの物語。

    好きなのは、物語の後半で、すこし東京に染まってきた世之介とご近所のお姉さんが話すシーン。

    ----
    「う〜んと……、上京したばっかりの頃より……」
    「頃より?」
    「……隙がなくなった?」
    「隙?」
    「そう、隙」
    「あの、自分で言うのもあれだけど、俺、みんなから『お前は隙だらけだ』って言われますよ」
    「いや、もちろんそうなのよ。世之介くんと言えば、隙だらけなんだけど。それでもだんだんそれが埋まってきたのかなぁ……」
    「なんか中途半端だなぁ」
    「これで中途半端じゃなくなったら、ほんとに世之介くんじゃなくなっちゃうって。そこはちゃんとキープしとかなきゃ」
    「どうやって中途半端って、キープするんすか?……あ、ちょっと待った。その前にそんなもんキープしたくないですって」
    慌てた世之介に京子が笑い出す。
    ----

    中途半端なのを肯定してくれる京子さん、ほんといい人。

    いつだって「だめだ」とは言わない。ネガティブシンキングでもなければポジティブシンキングでもなく、ただ「大丈夫」と考えられるのが世之介の良いところ。
    「隙」とも「中途半端」とも言えるその「余白」の持ち方が素敵な主人公でした。

    (世之介の名前の由来ってことで『好色一代男』の現代語訳も読んでみたけど、ほぼまったく関係ないように自分には思えた。まあ読む機会くれてありがたい。こちらは斜め読みなので今のところブクログには登録予定なし)

  • ずっと読みたいと思っていた。続編が出たので慌てて読んだ。
    すっごく良かった。
    田舎から東京に出てきた大学生の話。
    きっと、大学生1人1人にはいろんなストーリーがあって、
    この世之介も入学式に知り合う友人や、サークルの先輩、
    憧れる年上の女性、そしてお嬢様育ちでとってもマイペースな彼女。
    その関りが、どれもキラキラしてるな~

    登場人物たちのその後も書かれていて、あのお嬢様の祥子がね~って感じ。
    夏休みでの出来事がやっぱり影響してるんだろうな~
    最後の東京の章は、ジーンとした。
    世之介のこの先もわかっちゃうんだけど、早くそれまでの彼らの事読みたい!



  • “結局自分はこれまで誰も傷つけたことはないんだな、と早速結論づけようとした時、ふと横を歩く祥子が目に入った。
    ああ、そうか、と世之介は思う。誰かを傷つけたことがないんじゃなくて、傷つけるほど誰かに近づいたことがなかったんだと”

    上京した18歳の世之介の一年と、世之介が出会った人々のその後の人生とが織り交ぜて描かれる。その辺の映像の移り変わりが、描写として全く違和感無くてすごいやと思う。吉田修一作品がたくさん映像化されるのはそういう面もあるのかなあ。
    大抵、社会人の手前で、育った家庭の中で造られた価値観が一応は完成して、なんだか世の中を知ったような気になるんだけど、でも世界はまだまだ広くて、自分が知らない絶望も幸せも、もしかしたら、まだまだたくさんあるのかもしれない……みたいなことに気付きだす年頃っていうか、新たな船出っていうか、蛙が井戸から大海に漕ぎ出す感じっていうか、そんなのを世之介と追体験できる感じ。生きてることに良いも悪いもないよねって気分になれる。
    何か起きたらその都度、丸腰の自分をぶつけるしかない。コテコテに武装してしまうのはつまらないなと、世之介を見てると思う。
    吉田修一の文体の日常感みたいなのが大好きで、最近たくさん読む。

  • 世之介は愛すべきキャラクターです。彼といるととにかく楽しいです。本人は大変だぁーって思ってても、その頑張りとそれに付随する笑いで周りを(読者を)笑顔にしちゃいます。
    これって実はすごいことじゃないですか。
    誰もが彼を思い出すとクスッとなっちゃいます。だから彼がどうなったのか知ってしまったら、みんな悲しくて泣いてしまうはずです。そして泣きながら思い描くのは、やっぱり彼ののほほんとした顔と笑いに包まれた彼との日々で、悲しいはずなのに、きっとみんなをほんのりと温かい気持ちにさせてしまうと思います。あっちこっちで泣き笑いが起こりそうです。
    世之介と出会えたことが一番の幸せと言うお母さんの気持ち、彼と共に過ごした日々のある人はみんな分かるでしょう。いつまでも悲しんでちゃいけないとお母さんが思えるようになったのは、世之介の力です。やっぱり彼は呑気な顔で、すごいことをやっちゃう人なんですよ。

  • 世之介のあまりにも頼りなげな様子にピントのズレた祥子。
    バブル絶頂の東京。
    そして間に挟まれる数年後の彼ら。
    先が不安になる要素がありすぎて読み進めることが怖くなる。
    しばらく放置していたけれど、みなさんのレビューで「ほっこり」「あたたかい」という言葉に励まされて再開。

    「居ても立ってもいられない時、世之介はそのこと自体を忘れようとするタイプ」ってどんなタイプだよ・・。
    九州から東京の大学へ出てきた世之介。「いろんなことに『YES』って言ってるような人だった」という彼が、友人の結婚、彼女との夏の出来事、高級娼婦と噂の千春との出会い、なんとなく巻き込まれ、何時の間にか「隙がなくなって」東京に「帰る」人になっていく。
    「(YESばかり言ってる)そのせいでいっぱい失敗するんだけど、それでも『NO』じゃなくて『YES』って言ってるような」
    「中途半端じゃなくなったら、ほんとに世之介くんじゃなくなっちゃうって。」
    それでもやっぱり、そんな風に言われる世之介が最後にぼんやりと何かをつかんで、一歩踏み出していく。

    「世之介と出会った人生と出会わなかった人生で何かが変わるだろうかと、ふと思う。たぶん何も変わりはない。ただ青春時代に世之介と出会わなかった人がこの世の中には大勢いるのかと思うと、なぜか自分がとても得をしたような気持ちになってくる。」
    確かに、私もとても得した気持ちがしてる。

  • おもしろかった!
    まず、語り口調がとてもおもしろかったです。ところどころ噴き出しちゃうんです。

    世之介はめちゃくちゃ普通の人なのに、なんでこんなに愛しいんでしょう。
    織り混ぜて語られる現在と未来。切ない未来が見え隠れするから最後まで読みたいけど読み進めるのが辛い・・・

    上京してから変わっていないようで、変わっていく世之介の姿が丁寧に描かれていました。
    母親の最後の手紙、「世之介に出会えたことが自分にとって一番の幸せではなかったか」が全てだと思います。
    出会えてよかったとみんなに無意識に思わせる世之介。平凡でお人好しで抜けてて、おおらかで正直者。

    加藤と世之介とのやりとりが好きです。(綾野剛さんの加藤が楽しみ!)そして祥子ちゃんのお嬢様キャラったらないですよね!本気ですっとぼけていてかわいかったです。この子の行動力にびっくり!

    私のなかで今年一番の小説な予感です!

  • 長崎から東京に出てきた大学生、横道世之介の一年。バブルの時代に大学生だった人には共感できる表現が多かったのではないか。私は彼らより少し年下だけれど、自分の大学生の頃を思い出しニンマリしてしまった。(特にフォルクスでステーキの所とか…)
    ごく普通のちょっとぼんやりしたような世之介と、それを取り巻く様々な人達。どの登場人物もどこか憎めなくて、世之介が引き寄せたその人達から世之介の人柄が窺える。ふと昔を思い出した時に、誰からも「あーいう奴いたなぁ」と懐かしく微笑んでもらえる、そんな世之介が羨ましいし愛しかった。
    これは映画も是非見に行きたい!

    • 九月猫さん
      taaa('∀'●)さん、こんにちは。

      映画、よかったですよ~!
      少し上映時間が長く、一人の青年の一年間の物語としては
      長く感じる...
      taaa('∀'●)さん、こんにちは。

      映画、よかったですよ~!
      少し上映時間が長く、一人の青年の一年間の物語としては
      長く感じるかなぁと思ったのですが、ぜんぜんそんなことなかったです。
      お時間があればぜひぜひ♪

      吉田修一さんの本って読んだことないのですが、原作に興味津々です。
      taaa('∀'●)さんのレビューで、ますます読んでみたくなりました(^-^)
      2013/03/22
    • taaaさん
      九月猫さん☆

      コメントありがとうございます(^-^)
      映画良かったですか~(*´∇`*)
      もう今月末くらいで終わっちゃいますよね…
      早く見...
      九月猫さん☆

      コメントありがとうございます(^-^)
      映画良かったですか~(*´∇`*)
      もう今月末くらいで終わっちゃいますよね…
      早く見に行かなくては~~~

      私も吉田修一さんはこの本が初めてです。
      結構読みやすい文章だったし、
      これを機に色々読んでみようかと思ってます(^-^)
      2013/03/23
  • ナレーションが独特だなぁと。ちょっとちびまる子ちゃんを連想する感じ。

    上京するとき、心細くなって、土台が大理石の置き時計(重いよね笑)も鞄に詰めたって時点で好感持っちゃった。

    常に自然体というか、押しが弱いというか、気取らないというか、読んでてクスクス笑ってしまうことが多い。

    サンバサークルに関するエピソードも面白い。最終的にハマってしまい、コインランドリーで踊ってしまったり、構内でノリノリで踊ったり。

    決して目立つ存在じゃないけど、みんなにある意味で認められてて、こんな友達がいたら楽しいだろうなと思った。なのにどうしてみんな年数が経つと忘れちゃうのかな。

    続編も借りてる。楽しみ。

  • 映画が大好きで大好きすぎて小説も購入。
    かなーり前に買ってたけど、インフルエンザで寝込んでいたので優しい気持ちになりたくて読む。

    映画がめちゃくちゃ小説のまんまで、原作に忠実な創りだったんだとビックリした!
    とても作品を大切に想い作ったんだろうなぁーと、この本を読みながら逆に映画に想いを馳せた。

    横道世之介が大好き❤
    本当に大好き❤
    何度でも読みたい作品です。

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著者プロフィール

吉田 修一(よしだ しゅういち)
1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業後、スイミングスクールのインストラクターのアルバイトなどを経験。1997年「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞しデビュー。同作は第117回芥川龍之介賞候補にもなった。2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞を同年「パーク・ライフ」で第127回芥川龍之介賞、2007年『悪人』で第61回毎日出版文化賞及び第34回大佛次郎賞、2010年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞、2019年『国宝』で第14回中央公論文芸賞をそれぞれ受賞。2016年には芥川龍之介賞選考委員に就任している。その他の代表作に、2014年刊行、本屋大賞ノミネート作の『怒り』。2016年に映画化され、数々の映画賞を受賞。

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