横道世之介 (文春文庫)

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  • 文藝春秋
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レビュー : 579
  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167665050

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいて何かに似ている、と思ったら、映画『フォレスト・ガンプ』。
    世之助、というちょっと不器用だけど限りなくオープンで自然体なキャラクターと、バブル期、という少し昔の特異な時代。
    現在の友人達の近況を交えながら、振り返りつつ語られる構成は、スケールのごくごく小さな『フォレスト・ガンプ』です。
    でも、もっと身近で、愛おしい物語。

    ある登場人物に言わせると、世之介は、
    「いろんなことに『YES』って言ってるような人」「もちろん、そのせいでいっぱい失敗するんだけど、それでも『NO』じゃなくて、『YES』って言ってるような人」
    (p.413)
    そう、そうなんです。

    世之介たちの言動を楽しみつつ、切なくなったり、ほっこりしたり、最後は味わい深い余韻を残す秀作でした。

  • 青春モノは苦手だが、今まで読んではずれない作家なので読んでみた。

    上京きっかけが違うとはいえ、自分の現実と重なり
    とても生々しく、普通さに身につまされるような不思議な感覚。
    大学生活の描写も一気にタイムスリップ。

    夢を追っているわけでもないのに、恋も流されているようなのに、ごく普通な横道と周りのやりとりに引き込まれる。

    突然未来が入り、あんなやついたなぁと笑顔で思い出される主人公、それもまた普通。
    しかしそれらの未来と、衝撃の最期のニュース。

    暇だからとカメラにおさめるシーン、いいなぁ。

    押し付けがましくなく生きる意味を考えさせてくれるような、、なぜ引き込まれたのかとすぐ読み直したくなる。

  • 旅のお供に軽い気持ちで読んでいた。途中でクスクス笑えてきて近くに座っていた他の乗客からしたら変な人になっていたかもしれない。なのに最後にやられた。なんだかよくわからないまま泣けてきた。20年後にこんな風に思い出してもらえる人になりたいと思った。

  • たまにくつくつ笑いつつ、しみじみ読んだ。とてもいい味わいでした。

  • なにかずば抜けた才能やセンスがあるわけでもないし
    特に人と異なる人生を送ってきたわけでもない、
    どこにでもいるような大学生、世之介。

    今時の大学生の多くは共感できるんじゃないでしょうか。特にこれといった強大な目標があるわけでもなくただ漫然と、言ってしまえば高校の延長線上で大学に進学した大学生(何を隠そうその一人です、私)には「なんだ、ただの俺か」と親近感を覚えさせます。

    平凡な青年。だけれども何か愛らしい。
    周りの人を決して派手じゃない、地味で小さな小さな幸せで包んでくれる、そんな人間だと思いました。


    気付けば涙目になってました。
    ここまで主人公が大好きな小説というのも久しぶり。

  •  青春小説の金字塔という触れ込み。ぼくなんかが読んで大丈夫だろうか、という危惧は無用ですらすら読めておもしろかった。横道世之介なる主人公が長崎から上京して法政大学らしき私大に入学してからの1年間が1ヶ月ごと12章に綴られる。特に大事件が起こるわけでもなくいかにもありがちな普通の大学生活。周りの友人たち、サークル活動、アルバイト、恋愛、とまずは定番というべき日常の1年が一冊の本になるのだから考えてみるとすごい。そこかしこがユーモラスで微笑ましいのは憎めない世之介のキャラクターの賜物だろう。今さらどうにもならないけれど、ぼくも東京に出てこんな学生生活を送ってみたかったなとちらと羨ましく思ったりした。脇を固める友人たちもそれぞれが達者に描かれているが、おもしろいのはところどころに突然挿入される彼らの後日譚。あれこの場面転換はなんだと読んでいくとある友人の数年後の話になっていて、そこで彼らの大学時代すなわち世之介のことが回想されるという仕組みになっている。これはなかなかの工夫だ。本篇は世之介の1年間だけで終わってしまうけれど、これらの挿話の中から世之介と彼らのその後が立体的に立ち上ってくる。そしてクライマックスというべき社会に出てからの世之介の行く末。最後のいかにも世之介らしいなあと思わせる事件もが間接的に語られる。うまい。

  • 舞台は昭和60年代、主人公は長崎から上京してきた青年・横道世之介。どこにでもいそうな普通の青年、だけどとっても良い奴の彼が、周りの人々との交流を通して少しずつ成長していく、心暖まる物語。

    文章が秀逸。特に人物同士の会話は、小説にありがちな御洒落な文章ではなく、ごく自然な会話で貫かれています。そのせいか、登場人物たちがとても生き生きとしていて、「小説を読む」というより「世之介に会いに行く」感じでした。

    そして、この小説の素晴らしいところはただただほっこりするだけではないということです。
    物語の途中途中に、世之介の友人たちの現在が描写されています。彼らは大人になり、それなりにくたびれ、世之介との交流もなくなっています。
    でも、それぞれふとしたことから世之介のことを思い出し、そして皆ふっと笑顔になります。この時の流れの残酷さと、時を経ても変わらない世之介の持つ力のバランスがなんとも心地良いのです。

    最後に向けての展開には少し驚きました。
    (読んだ当時は実際の事故を基にしているとは知りませんでした。)
    ただ、全体を貫く暖かさの中に挿し込まれたその冷たさのお陰で、印象がひときわ残り忘れられない大切な小説になったのかな、とも思います。

  • 何かに秀でているわけでも突出したものをもつでもなく、どこにでもいるちょっと頼りない大学生が主人公。相手の言うがまま右へ左と流されながら物語は淡々と進む。どこにでもあるごくごくありふれたエピソードがどこまでも続くだけなのだが何故か不思議にひきつけられる。いつの間にかこの空気の如き無味乾燥な世之介にすっかり虜にされている。作中の人々もそれぞれに数十年後、ふと彼を思い出し一種独特の感慨に浸っている。とりわけ祥子さんの姿が印象的だ。学生時代とは打って変わり大きく成長している。世之介という人を深く心に残しながら自らの生きる縁(よすが)として昇華している。不幸な現実も綺麗に洗い流してくれるのが世之介という人の最大の魅力なのかも。

  • バブル後期に主人公と同じく大学生だった身としては懐かしいのと同時に当時の雰囲気や臨場感がそのまま伝わってきてそれに浸りながらなんともいえない気持ちでこの小説を読んだ。当時若かった登場人物たちが年を取り、厳しい現実に直面して必ずしもハッピーではないのだけど、まあ大人になるのってそういうことでもあるよね、と2013年現在そう思うのであります。

  • 最後の数ページ。失いたくなくて、大切に読んだ。

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著者プロフィール

吉田 修一(よしだ しゅういち)
1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業後、スイミングスクールのインストラクターのアルバイトなどを経験。
1997年「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞しデビュー。同作は第117回芥川龍之介賞候補にもなった。
2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞を同年「パーク・ライフ」で第127回芥川龍之介賞、2007年『悪人』で第61回毎日出版文化賞及び第34回大佛次郎賞、2010年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞。2016年には芥川龍之介賞選考委員に就任している。
その他の代表作に、2014年刊行、本屋大賞ノミネート作の『怒り』。2016年に映画化され、数々の映画賞を受賞。体当たりの演技を披露した広瀬すず出世作としても名を残すことになる。

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