デッドエンドの思い出 (文春文庫)

  • 文藝春秋
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本棚登録 : 6538
レビュー : 727
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167667023

感想・レビュー・書評

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  • すごく辛いことがあって、もう二度と立ち上がれないかもしれない。そう思っても、悲しみが永遠に思えても、生きている限りいつかは乗り越えていけるんだろう。未来の自分から「絶対大丈夫だから」って励ましてもらえるような、そんな優しい本。

    • hetarebooksさん
      ぴちほわさん

      はじめまして。コメント&フォロー&花丸ありがとうございます♪雑食な本棚ですが気に入っていただけたら嬉しいです☆

      す...
      ぴちほわさん

      はじめまして。コメント&フォロー&花丸ありがとうございます♪雑食な本棚ですが気に入っていただけたら嬉しいです☆

      すごく気分が沈んでいたときに談話室でこの本を紹介してもらったのがきっかけだったのですが、読み進めるうちにすーっと気持ちが軽くなっていくようで救われたのを憶えています。

      文庫版も同じジャケットで素敵ですよね。音楽や本にはそのときの自分にとって誰の言葉よりも届く瞬間がありますね。

      今後とも素敵な音楽や本を教えていただけたら嬉しいです♪
      2014/09/29
  • せかせかとまわっていく日常のなかに、ほっこりとした物語と、さらにはその物語の中に、せかせかとまわっていく日常では気づけない、大切な、細やかな瞬間を感じたくて、手に取った。

    大切な人を改めて大切だと思わせてくれる描写と、日常的に溢れている何気ない幸せへの気づき、そして、誰かと別れることの、哀しさ。心にぽっかりと穴が空いたような。

    この作品は、その穴に、すっと、優しく入ってきて、包み込んでくれるような温かさがあります。
    誰かを失って、誰かと出会って、誰かの大切さに気づいて、わたしたちは生きてゆく。

    やはり表題作の「デッドエンドの思い出」が一番よかったです。
    一度受けたダメージから回復することって、ものすごく時間がかかることで、目を逸らしていた部分、自分の心の奥深くを見つめる作業でもある。
    そうやって、心を無防備にした瞬間に、人の優しさが、ふわっと、ぐっと、入ってくる。その優しさの質量は、前と変わらないはずなのに、ダメージを受けた心には、その何倍もの質量で、入ってくる。
    だんだんと満たされてゆく心が、大丈夫と思えること、今を大切にできるということ、自分を大切にできるということ。
    ずっと大切にしまっていた、素直な気持ちが現れてくる。
    そんな素直な気持ちで人や物と向き合っていくと、なんだか、どうにかこうにか生きていける気がしてくる。

  • H31.4.21 読了。

     「幽霊の家」と「デッドエンドの思い出」が良かった。
     よしもとばななさんの他の作品も読んでみたい。

    ・「そういう素直な感覚はとにかく親から絶対的に大切な何かをもらっている人の特徴なのだ。」
    ・「そうやって人の人生の、本当の意味での背景になるってなんてすごいことだろう、と私は感動したのだ。」
    ・「ゆっくり、ちょっとずつ。いつもの動き、いつもの流れで、ていねいに。そしてそれはおばあさんのお母さんから、ずっと続いている暖かくて安心するやり方なのだろう。」
    ・「世の中には、人それぞれの数だけどん底の限界があるもん。俺や君の不幸なんて、比べ物にならないものがこの世にはたくさんあるし、そんなのを味わったら俺たちなんてぺしゃんこになって、すぐに死んでしまう。けっこう甘くて幸せなところにいるんだから。でもそれは恥ずかしいことじゃないから。」
    ・「自分がとらえたいものが、その人の世界なんだ、きっと。」
    ・「人の心の中にどれだけの宝が眠っているか、想像しようとすらしない人たちって、たくさんいるんだ。」

  • 人の縁って、出会いって、いいなぁ。
    夫婦になれたとか、家族になれたとかじゃなくて、自分の心の中の宝箱にそっとしまってある温かいもの。

    温かさという目に見えないものを、うまーく表現して、ほろっとさせてくれる素敵な本でした。
    そういう想い出を、いつまでも大事にしたいです。

  •  すごく大変なことが起きて、毎日寝る暇も惜しんで仕事をして。本なんて読む時間がないよ、でも短編なら合間に読めるかな、と思って。ずっとアマゾンの欲しい物リストに入れておいたこの本を買った。結局、たまたま時間ができて、すぐに最後まで読んでしまった。
     どの短編の登場人物も、つらい思いをして、普通ならとても耐えきれないと思うほどなのに、逃げながら、流されながら、受け止めていく。「俺や君の、不幸なんて、比べ物にならないものがこの世にはたくさんあるし、そんなの味わったら俺たちなんてぺしゃんこになって、すぐに死んでしまう。けっこう甘くて幸せなところにいるんだから。それは恥ずかしいことじゃないから(デッドエンドの思い出)」
     私はよしもとばななさんの作品は数える程しか読んでいないし、代表作もまったく手つかずなので、こういう言い方はおこがましいのかもしれないけれど、このかたの作品は、悲しみの深層をえぐりながら、それをいつも柔らかく救ってくれる。淡々を悲しい事実を綴る小説はある、いくらでもある。私が読んだよしもとさんの作品は、悲しみ、つらさを心の奥底からすべて引っ張り出しているのに、それを入れた器は透明であたたかく愛に満ちている。そういう文章にいつも、私は穏やかな息を吐いて最後の頁を閉じる。こういう小説が世の中にあるというのは、ありがたいことだ、と思うのである。

  • <感想>
    ずっと気になっていた「よしもとばなな」さんの作品。
    作者の代表作とのことで購入、読了。

    うーん、何だろうこの読後感…
    切ないようで、でもちょっと何か心温まるものがあって…
    今までココまで感想がまとめにくかった小説も無いように思う。
    ただ、何となくもやもやするこの雰囲気がこの作品の良さでもあるように思う。
    よしもとばななさんの本って、こんな感じなのかな?

    個人的には「おかあさーん!」が一番印象に残った。
    自分のことだけに精一杯になる主人公の気持ち、痛い程良く分かる。
    辛い経験を乗り越え、ひと回り大きくなった笹原さんの気遣い。
    世知辛い世の中だけれど、こういう風に他人を救おうとしてくれる人もいるのかなと、希望を持たせてくれる。
    人生をもう少しのんびりと、楽しみながら進んでいって良いのだと思わせてくれる、そんな作品。

    もう少し色々な経験をした後で再読したら、また感じ方が変わるかもしれない。

    <印象に残った言葉>
    ・で、あると思うともう、したいという考えがどうにも止まらないんだけど、でも、もうすぐ日本からいなくなってしまうから、悲しくなりたくないという気持ちもあったりする。(P39、岩倉)

    ・思春期でまわりが恋愛一色の時も、勤めはじめてまわりが結婚一色になった時も、私はずっと自分の内面だけに没頭し、それを守ってきたような気がした。心のどこかでは、みんながうらやましかった。浮ついたことが好きな人たちは、きっと無駄にしてもいいような愛情に無頓着になってよかった人たちに違いない、と私は思っていた。(P88、松岡)

    ・私は子どもみたいに自分のことで頭がいっぱいで自分をまきちらしていただけだったが、会社にはいやな人がいるぶん、こうやってちゃんと人を見て、負担にならないように助けてくれようとする人もいる。あの、神経質でいつもいらいらしていた笹本さんが、死にかけて、生き返って、にこにこして優しい目で私を見ている。その私も死にかけて、運良くまだここにいて、こうしてその優しさに触れている。その全体が、何かすばらしい奇跡のように思えたのだ。(P107、松岡)

    ・ひさしぶりの自分の部屋はほこりっぽくて、少しのどが痛かったので、私は窓を開けて空気を入れ換えた。新鮮な空気がさあっと部屋をめぐり、暗い窓から見上げる空にはたくさんの星が輝いていた。わあ、きれいだ、と私は思った。肺の中にきれいな空気がいっぱいに入ってきて、体中が冷たく神聖な感じになった。不安な考えに満たされそうになったのは、きっと空気が悪かったせいだわ、と私は思った。(P124、松岡)

    <内容(「Amazon」より)>
    これまで書いた自分の作品の中で、いちばん好きです。これが書けたので、小説家になってよかったと思いました。――著者自らそう語る最高傑作!
    「幸せってどういう感じなの?」婚約者に手ひどく裏切られた私は、子供のころ虐待を受けたと騒がれ、今は「袋小路」という飲食店で雇われ店長をしている西山君に、ふと、尋ねた……(「デッドエンドの思い出」)。
    つらくて、どれほど切なくても、幸せはふいに訪れる。かけがえのない祝福の瞬間を鮮やかに描き、心の中の宝物を蘇らせてくれる珠玉の短篇集。
    ほかに「幽霊の家」「おかあさーん! 」「あったかくなんかない」「ともちゃんの幸せ」の4篇収録。つらく切ないラブストーリー集。

  • 心に傷を負った時、無理に治そうとするのではなく、見ないふりをするのではなく、ただ一緒に回復を待ってくれる人がいれば、どれだけ支えになるだろう。
    この本は、そういう本。

    とても透明で、すこぶる柔軟で、暖かい心を持った人がいる。
    育ちがいい、というか、育てられ方がいい、というか、極めて自然に人のために動くことができる人がいる。
    直接問題が解決するわけではなくても、その人がそばにいてくれたら、イケそうな気がしてくる自分がいる。

    この本が人気なのは、そういうことなのではないかと思う。

    作者は、出産を一か月後に控えて書いた表題作を「これが書けたので、小説家になってよかったと思いました。」とあとがきに書いているが、私は『「おかあさーん!」』を読んで、彼女が小説家になってくれてよかったと思った。
    朝、仕事を始める直前まで読んでいたら、目が真っ赤になってしまって大変困ったけれども。

    “おかげで私は、中途半端に体の具合が悪くなるということはどれほどたちの悪いことか、身をもって思い知った。ずっと微熱の続く風邪のようなもので、起きていられないわけでも、働けないわけでも、笑ったり泣いたりできないわけでもなかった。ただいつでも、だるくて、頭の中がしびれているような感じだった。だから、何をどうしたらいいなんて何にも考えられなかった。ただ、頭がはっきりするまでをしのいでいただけだったのだということもわかった。”(「おかあさーん!」)

    そう。ただだるいだけ。気力がわかないだけ。
    自分の心がどれほど小さく固く凝りかたまっているのか気がつかなかったころ、私もそう思っていた。
    すぐ治るはず。大したことない。
    でも、実は自分がものすごく我慢をしていたことに気づいたとき、少し息をすることが楽になった。
    そんなことを思い出した。

    “それは神と呼ぶにはあまりにもちっぽけな力しか持たないまなざしが、いつでもともちゃんを見ていた。熱い情も涙も応援もなかったが、ただ透明に、ともちゃんを見て、ともちゃんが何か大切なものをこつこつと貯金していくのをじっと見ていた。”(ともちゃんの幸せ)

    見ていてくれるなら、それだけでいいと思う。
    見ていてくれるなら。

    作者の考える幸せの情景って、部屋でマンガを読むのび太とドラえもんなんですって。
    なのでこの本は、藤子・F・不二雄先生に捧げられています。

  • タイトルと表紙が印象的でずっと気になっていて久しぶりによしもとばなな読むかって思ったので購入。
    失恋の話を中心に様々な物語が詰まった短編集。
    その内容はとても良かった。
    いつも通り淡々と進むこの作家の物語で期待していた雰囲気を味わうことができた。
    淡々と温度が低い状態で物語が進んでいくのである日急に風景描写が思い出されることがこの人の文章のすごいところだと思う。
    短編でもどの物語もゆっくりと心に突き刺さっていくようで本当に印象的だった。
    短編の中でも比較的長い『幽霊の家』『おかあさーん!』『デッドエンドの思い出』あたりはとても印象に残った。
    秋という季節は自分にとって本当に特別な季節でそんなときにこの本を読めてよかったと思う。
    作中何度かドラえもんのエピソードが出てきてなんだろと思っていたら藤子不二雄に捧ぐって冒頭に書いてあるね。
    幸せというのはのび太とドラえもんが部屋で漫画を読んでいる時間とか関係性のことを言うのだというエピソードと心がほかほかするという表現が好き。

  • 数あるばななさんの著書の中で、私が一番好きな本です。

    ばななさんの文章を読んでいると、種類の分からない涙がぼろぼろ落ちることがよくあって
    心置きなく泣いたらすっきりしています。浄化、だと思う。

    お守りみたいに思っている本です。

  • 本を読んだあと心に残るもの、とか言えば何とも小学生の感想文のようだけど、それこそが甘い甘い読書の「蜜」だと僕は思う。それは小説によって色も触感も匂いも温度も違うし、僕なんかはこうして何とか文章に残したいと思うけど、言葉で表現することが何よりもむずかしい抽象的なものであって、でもそのあいまいさこそが、読書の普遍的なよさでもある、というのは僕の勝手な思想であります。
    でもだからこそ(いつも)不思議に思うのは、ある小説を読むと言うこと、それはその小説の舞台、主人公の性格、状況はいつも決まっていて、読みはじめたら(というか作品が読まれる状態で存在する時点で)揺らぐことがない、どこまでも具体性に満ちた世界に飛びこんでいくことであるのに、その世界を突きぬけた僕の心には、あいまいで抽象的、かつ普遍的な「蜜」の味が残っているということだ(一つの小説を読み終わって、別のを読むとき、何となくそれを億劫に感じる理由の一つかもしれない)。
    そんなことを、この本を読んでまた強く感じた。
    ……短編集だからなおさらかなあ。
    それぞれ違う話で、それぞれ違う「蜜」なんだけど、ぜんぶが最後の「デッドエンドの思い出」のいちょう並木につながっていくような。不思議な感覚なんだけど、それがまたばななマジックっていうか。女性的というか、母性的?みたいな(もはや自分でも何言ってるかわからん)。とにもかくにも、最終的に短編集としてのこの作品の「蜜」に、物語の展開や、描写や、言葉選びに、読む人の心をまるごと包み込むような優しさを感じるのです。それで僕は、昼休みの社員食堂にも関わらず、目を赤くしちゃったんだろうなあと思います。

    「みんな、とりあえず形のとおりにふるまっているだけで、本当はそこの奥にあるすてきなものをお互いに交換しあっているのかもしれないと私は思った。……私はその日、……何ともならないおかしな道に沈んで行きそうだった自分が、不条理でいつ死んでもおかしくない、この不確かな世の中の仕組みの中でかろうじて働く、人間というもののよさに、大きく救い出されたような気がしたのだ。」(p.101)

    家族とか、恋とか、別れとか、幸せとか、絶望しても生きていくうえでとても大事な要素のこと(とくに人と人のつながりについて)をたくさん書いてくれていて、たぶんこれを書いたのがばなな氏にとってもそういうことを一生懸命考えた時期なんだろうなあと言うのはあとがきを読まなくてもわかる。こういう本に救われる人はけして少なくないはずだ。もちろん僕も、その一人なのですがね。

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著者プロフィール

吉本ばなな(本名:吉本 真秀子 よしもと まほこ、旧筆名:よしもと ばなな)
1964年、東京都生まれの作家。日本大学芸術学部文芸学科卒業。卒業制作の「ムーンライト・シャドウ」が日大芸術学部長賞を受賞。また「キッチン」で第6回海燕新人文学賞を受賞、デビュー作となる。
1989年『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞。1996年イタリアのフェンディッシメ文学賞(35歳以下部門)、1999年イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門を受賞。2000年『不倫と南米』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。その他代表作に、映画化された『アルゼンチンババア』などがある。
海外での評価が高く、著作が多くの国で翻訳されてきた。

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