彼女について (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2011年6月10日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167667061

作品紹介・あらすじ

由美子は久しぶりに会ったいとこの昇一と旅に出る。魔女だった母からかけられた呪いを解くために。両親の過去にまつわる忌まわしい記憶と、自分の存在を揺るがす真実と向き合うために。著者が自らの死生観を注ぎ込み、たとえ救いがなくてもきれいな感情を失わずに生きる一人の女の子を描く。暗い世界に小さな光をともす物語。

彼女について (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 自分が親から貰った愛情を
    きちんと受け取りなおすこと
    自分を客観視すること
    そんな通過儀礼を、
    この一冊通じて体験したような気がした

    自分が決めた愛のイデアみたいな像があって
    それに当てはまらないものは
    見て見ぬ振りをしてきていた
    ほんとうはこの世の中は
    愛でいっぱい溢れているのに

    悲しい思い出がなければ、幸せになれる訳じゃない
    受ける歯車と渡す歯車がかみ合わないだけで
    人ってこんなに孤独になってしまうものなんだなぁ

    未来に心奪われるのは過去に捕らわれるのと一緒
    ただ、今ここの、特別でも何でもない
    一つ一つの手の動き、話す言葉、噛み締める味わいが
    人生を形作って乗り越えさせてくれる
    毎日をしっかり生きる、っていうのはつまり、今の自分の動きにどっしりと集中することなんだなと最近になってよく思う

    よしもとばななと同じ時代に生きられて良かった
    長生きしてほしいなと身勝手に願う
    職業として小説家の体を取っているけど、彼女こそ現代のよい魔女なのかもなぁと思う

  • 彼女の魂の物語

    終盤幸せな空気が漂い始めてこのまま終わると思ったら予想外の展開だった。

  • 魔女、母、呪い、というキーワードに惹かれてこの本を借りました。『王国』に出てくるような、生命力の強い善い魔女を期待して読むと、今回は少し違いました。終始暗い過去の話であるはずなのに、涙を流して浄化されるような、心が上昇気流にのって軽くなるようなお話でした。話が順調に進みそうだというところにくると、突然足場がなくなるみたいに不安にとりつかれる。常にぐらぐら揺れていて怖いのに、何度でも立ち上がろうとする。そういうところが私にとってリアルで生々しかった。最後の、イメージの話もそう。私が心の底では確信しつつも、客観的に説明するのが難しく、否定されるのが怖いことを、はっきり肯定してくれた。母に会いに行き帰る電車の中でぼろぼろ泣いた。

  • 半分死んでいる女の子が優しい男の子の手を取って清潔な部屋に招かれる。一言でまとめるとこう。優しいファンタジー。

  • これは大変な話。こころに訴えるパワーが大きすぎて太刀打ちできない。
    いまの私にとても必要な本だった。
    救われたのか救われないのか分からない結末だけれど、癒されてゆく過程を感じられた。
    「自分が綺麗なものを見た時の感情はいつまでも自分のもので、それは変わらない」と決心する幼児の頃の話も美しくて悲しい。
    親からかけられた呪い、というのは最後にわかるのだけれど、どんなものでもその人が呪いだと思えば全てそうなんだだと思う。自分にかけられていると信じる限りにおいては。
    身体感覚で良い悪いを感じるところも好きだ。頭で考えすぎるとおかしなところまで彷徨って帰ってこられないことがあるんだもの。
    自分だけが知っている自分の悪さ、汚さ、惨めさなんかを”制御”する、これはとても苦しそうだけれどきっとおばさんは良い感情でやっていたのだと思う、それは誰でもやってるかもしれないけれどだれも教えてくれないことで、はぐれると戻りづらい。
    芯がある、とか、落ち着いていられる、というのもここに繋がるんだろう。
    主人公は、志半ばで迷子になって、適当でいいのです、という感じだけれど、「私にしかできない考え方と感じ方を持っていて、それだけでよいのだ。」と自分で言えるところがやっぱり芯がある人だったのだと思う。
    でも、それが頑なであることや盲目であることとは繋がっていなくて、一貫していなくてもべつにかまわないのが面白い。

    ママを愛するが故に、ママがどうであっても全て受け入れてしまった主人公は、まさに愛を求める子供だ。あきらめて受け入れることが自分にとって何をもたらすかを考えまいとしていた。親の悲しみを受け取ることは子供がする仕事じゃないのだと思う。
    食べること、痛むこと、皮膚の違和感なんかに敏感なことはとても生きづらいけれど、それによって、手遅れにならずにすんでいるのは感謝しなくちゃいけないのかも。

    幸せの記憶が人間の土台になる、というのは本当に感動した。
    私も素直に誰かに助けを求めて、そして助けたりしながら幸せに暮らしたい。なにかおかしなことも起きるだろうけれど、なんとか上塗りしたりして、笑っていたい。
    主人公は最後に、「ママはもう素直にだれか子供なんかに席をゆずってもいいと思うことができなかったのだ」、と気がついて、そこで許し、というか哀れみをもつことで本当に幸福になれたと思えた。
    私は、なにか目の前で起きている事件にとらわれたりしがちだけど、身体が言うことや、幸せの記憶があれば生きていけるかもしれない、と思えた。

  • だれが見ても不幸でつらい人生だって
    ほんとうはあたたかいものが散りばめられていて
    そのことを自分と自分にとってたいせつなひとがわかっていれば
    いいのかなあと思いました。

    ひとつひとつのことばが
    じんわりと染みてきて
    なんとなく自分の一部になったような気がします。

    • kuroayameさん
      よしもとばななさんの本は、わたしにとって当たり外れが極端にあり、本を選ぶ時には、みわさんのレビューを参考にさせていただいています。
      シロネコさんのレビューを参考にさせていただき、早速読んでみたい本に登録させていただきましたd(^_^o)。
      2012/10/26
  • 不思議な話だった。
    言葉がすーっと入ってくるけど、そこに染み込むことはなくて、気付いたら読み終えてしまっていた。
    でも何だかわたしの好きな映画と同じ匂いがして、読んでいて心地好かった。

    自然に囲まれたロケ地に、セリフが少ない脚本で、出演者の表情をじっと撮影してその人の感情を観客に読ませようとする、静かな映画。


    「実は幽霊だった」いう設定はあまりに非現実的だけれど、それを感じさせないようなどこかリアルで儚い作品でした。
    個人的には由美子と昇一の食事の場面が好きです。

  • 110714

  • 凄惨な過去を持つ由美子.突然訪ねてきたいとこの昇一は,母の遺言により由美子のためになにかしたいと言い出した.
    物語が進むにつれて明らかになる由美子の暗い過去と,常に明るく幼い文体のギャップが奇妙.
    著者の本は初めて読んだが,この文体が物語の結末を計算して意図的に書かれたものだとしたらすごい.

  • 途中から、

    あれ、もしかして、いや待てよ、そんなのイヤだよ、うん違うはず、でもな、

    なんて一人でハラハラしながら読み進めてしまったので、主人公のいまが明らかになった時、ああ信じたくなかったのに、という残念な気持ちと、これで一息つけるんだ、という安心感がないまぜになりながら、ぐすぐすと涙が溢れてしまった。

    沁み込む力のある、文章だったなあと思う。死は遠い存在では決してないのだと。

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