その日のまえに (文春文庫 し 38-7)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167669072

感想・レビュー・書評

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  • ものすごく久しぶりに重松作品を読んだ。
    登場人物の心情の描き方が少し抽象的で、読者に想像させる余地を与えてくれている感じがいい!
    文章で泣かせるプロだと思う。
    「here comes the sun」の最後、お母さんと主人公が駅から自宅に一緒に帰るシーンや、
    「その日」の、主人公が息子二人に奥さんの病状を知らせるシーン、
    想像するだけて泣けてしまった。

  • その日を前にした、人々を描いた作品。家族を残して、旅立たねばならない想いが丁寧に書かれた作品。優しく、しみました。

  • 【読み終わって感じたこと】
    悲しいけれど温かくて、とにかく泣いた。誰しもに訪れる「その日」のために、改めて大切な人たちと過ごす日々を大切に生きていこうと思った。

    【印象に残ったシーン】
    「忘れてもいいよ」という一言だけの手紙を開くシーン。そこに、和美のありったけの優しさと愛が詰まっているように感じた。私だったらどんなふうに書くだろうと考えさせられた。

    【好きなセリフ】
    「明日、ママに会いに行こう」と、健哉と大輔に伝えるセリフ。和美との約束を破ってでも、子どもたちに母親との最後と時間を過ごさせてやりたいと決めた場面。号泣してしまった。

    【こういう人におすすめ】
    ・幸せの意味について考えたい人
    ・生と死について考えたい人
    ・重松清の作品が好きな人

  • 重松清さんが恩師に捧げるという本。死に関する短編が最後収束されていく。最後、夫に渡す手紙の一言は完璧だった。その一言もしっかり次ページに入れるところがすごい

  • ある曲の歌詞に「大丈夫だ その痛みは 忘れたって消えやしない」というフレーズがあり、あまりピンと来ていなかったが、本書を読んだ後ははっきりと理解する事が出来た。

    悲しみや痛みは、早く何処かへ行ってくれればいいと、大したものを失ったことのない自分は考えていた。きっとそれは幸せなことで、忘れてしまう事が自分を責める事になるなんて事は、これからも知らない方が良いのかもしれない。
    しかし、自分の短い人生の中でも、大切なものはいくつか持っていて、それはつまり、いずれ必ずそれらを手放さなければいけない時がくるという事でもある。
    その日はきっと強い痛みや悲しみを感じ、その大きさが、どれほど相手を大切にしてきたかの証明になると考えるのだと思う。
    それ故に、その痛みを忘れていく自分を薄情だと責めてしまうのだろう。
    本書の中でちょうどそのような場面、複雑な感情を抱える主人公に対しての和美の手紙の一言は、とても印象深いものだった。
    遺された人たちは、答えを出せないまま、生きてきた意味、死んでいく意味をずっと考えていくのだろう。消えない悲しみを忘れながら、少しずつ前を向けるようになるのだろうか。

  • 短編集だが、それぞれの話が最後に集結している。
    悲しい話ではあるのだが、散りばめられたものがしっかり回収される形で、最終話でホっとできる。

    この感想を書く前に、皆さんの感想を読んでみたが、皆さんの感想に感動した。物語を素直に受け取り、純粋な気持ちで感動している。
    どの短編も子供に読ませたくなるような内容だった。

    私と同世代の主人公が多かったが、自分はうまく感情移入できず、よくできた国語の本だなぁという全く情けなく不甲斐ない感想(-"-;
    そういえば、去年子供と一緒に受験勉強をしていた時、国語の問題にこの短編の一作目が使われていたなぁ・・・・。

  • 亡くなる人と、それに向き合う人の連作短編集

    以下、公式のあらすじ
    ---------------------
    僕たちは「その日」に向かって生きてきた――。昨日までの、そして、明日からも続くはずの毎日を不意に断ち切る家族の死。消えゆく命を前にして、いったい何ができるのだろうか…。死にゆく妻を静かに見送る父と子らを中心に、それぞれのなかにある生と死、そして日常のなかにある幸せの意味を見つめる連作短編集。
    ---------------------


    収録は6編
    ・ひこうき雲
    ・朝日のあたる家
    ・潮騒
    ・ヒア・カムズ・ザ・サン
    ・その日のまえに
    ・その日
    ・その日のあとで


    ・ひこうき雲
    小学校の頃住んでいた、飛行機の滑走路のある街
    小学生の頃に同級生の女の子 渾名ガンリュウが病気で入院し、クラスで作成した寄せ書きと共にお見舞いにいったお話

    ・朝日のあたる家
    高校教師が朝の日課であるマラソン中に教え子に出会う
    カメラマンを目指す傍らのコンビニバイトの帰りだという
    また、たまにコンビニに来る他の教え子が結婚し今のマンションに住んでいるという
    しかし、その子は過去に万引きで捕まった事があり……

    ・潮騒
    シュンは癌で余命宣告を受け、小学生の頃に住んでいた海の街を訪れる
    当時、海に誘われたが断った後に行方不明になった同級生オカちゃん
    そんな事故の後、「ひとごろし」となじった石川との会話

    ・ヒア・カムズ・ザ・サン
    母子家庭の高校生男子
    母が最近路上ライブをしているアーティストにご執心
    また、母は健康診断の再検査の診断を受ける

    ・その日のまえに
    余命宣告を受けた妻と、結婚当時に住んでいた街を訪れる


    ・その日
    妻の亡くなる日

    ・その日のあとで
    「その日」から3ヶ月後



    前半の4編は「死」を迎えるという共通点はありそうだけど、「朝日のあたる家」は例外だなぁと思いながら読み進めていくと
    後半の3編でそれぞれの繋がりが明かされる

    「朝日のあたる家」の武口と入江、一緒に暮らしているのだなぁと何だかしんみりする
    「ひこうき雲」の委員長も、その経験だあったからこそ、その道を選んだのだなと感慨深い



    この歳になると、いつ何が起こってもおかしくはない
    毎年人間ドックは受けているけれども、それで絶対に病気が見つかるわけでもないしね
    なので、「もし自分が亡くなるとしたら?」を考えてしまった

    以前は、ピンピンコロリが周囲にも迷惑をかけないし、自分も苦しむことがないのでいいかと思っていた
    でも、人間生きていれば何かとあるわけで、前もって死ぬ準備ができる方がいいのでは?という考えにもなってきた

    もし私が明確な余命宣告を受けるような病気になったとしたら
    きっとSNSとかにも情報を公開して、会っておきたい人達には会うだろうし
    家の整理や、近しい人や親しい人に形見分けのような事もするだろう
    そして、幸いなのか不孝なのか両親は未だに健在なので、実家に帰る気がする

    残った家族はどうするかとかも考えたりもしたけど、結局はなるようになるし、なるようにしかならないと思って考えるのを辞めた


    やはり、重松清は過去を振り返る物語が上手いなぁ
    郷愁や感傷もあるけど、どうしようもないもどかしさもありつつ
    それでいて結局は未来に少し希望がある終わり方にするイメージがある

    もし私が亡くなっても周囲の人達がそれなりに前を向いて生きていってもらえたらなと思う

  • 「その日」がいつ来るのか。
    一寸先かも知れないし、10年後かも知れない。
    一生来ないと信じて疑わずに過ごす毎日が奇跡のように感じる。
    神様は優しくない。遺された側の心の重石の重さ、触れ方、避け方の葛藤が痛々しくて切なくて温かい。
    いつのタイミングに読んでも後悔しない作品。ライフステージが変わったタイミングで読み返す一冊になった。

  • 短編7編収録。ヘビーな内容もあり。読後、いろいろ考えさせられます。ラスト3編は、末期がんの妻がなくなる「その日の前に」、なくなった「その日」、「その日のあとで」という仕掛けの連作。
    こんなに読みやすい文章を書ける作家はそんなにいないと思うけど、ネーミングセンスがイマイチだと思う(この作品に限らず)。高校教師の「ぷくさん」とか、ちょっと笑ってしまった。

  • 誰もが抱えることとなる葛藤、懊悩。精緻な心理描写は多くが自身に重なり、台詞は刺さる。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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