ヒトのオスは飼わないの? (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2005年6月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784167671037

みんなの感想まとめ

多頭飼いの賑やかな生活を描いたこのエッセイは、著者が捨てられた犬や猫を引き取り、その愛情深い日常を臨場感たっぷりに綴っています。新入りが加わるたびに巻き起こる嫉妬や親愛の情は、動物たちの個性豊かな姿を...

感想・レビュー・書評

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  • ロシア語通訳者の米原万里さんが、捨てられたor迷子になった犬猫たちを引き取って、新入りが入る度に彼らの間で巻き起こる嫉妬から、親愛の情が育つまでの賑やかな生活ぶりが臨場感たっぷりに描かれている。

    出張先でも行き場のない仔猫や犬を見つけると連れ帰らずにはいられない著者の家の構成員は、時にその構成数を変えつつ、この本の執筆終了時には、ネコ5、ヒト2、イヌ2と思われる。そんな多頭飼いにもかかわらず、著者のネコちゃん、ワンちゃんへの愛が半端ない!
    そして、そういう人の周りには同様にネコ好き、イヌ好きが集まるもので、微笑ましい話、笑える話が盛りだくさん。
    飼育放棄される動物の多さに、心が痛む面もあるものの、読んでいるうちに、イヌ派の私も、かなりネコの魅力にやられそうになった。

  • 内容は90年代頃のことだろうか。世間のペットの扱いが良くないなという印象だ。
    それに比べて著者は犬猫愛に溢れている。人間の身勝手は許さないぞという思いも伝わってくる。
    だからといって、ペットを虐げた人間の末路を語るタクシー運転手の話は悪趣味だな。
    別のタクシー運転手が路肩を走行して飛行機の時間に間に合わせたエピソードも、昔なんだから色々とゆるかっただろうし人情味溢れる人柄が伝わってくるんだけど、人間相手なら身勝手でいいのかと感じてしまって…。うーん時代なのかしら。

    人間がらみの話は少し私の感覚と相容れないのだが、動物と真剣に向き合って愛情をそそいでいるところは一貫していて、とても心情が豊かだ。
    繁殖させるかさせないか、猫生について悩んだり、新入りを迎えた際の古株の様子に気を揉んだり。
    沢山の感情を味わえる賑やかなエッセイだった。

  • 私は犬も猫も飼いたいと思ったことがない。だからこの本にはあまり気乗りはしなかったのだが、米原万里さんのあふれんばかりの愛と情熱と筆力に負けた。

     米原さんとともに暮らした犬や猫たちとの馴れ初めや事件、喜びや悩みなど、波乱万丈と言いたくなるほどすごい。動物を変に擬人化しているわけではなく、米原さんが本当に彼らの気持ちを感じとっているのだと信じられる。動物は賢いでしょう、愛情深いでしょう、とよくあるお涙頂戴のような押し付けがましいところはない。

     ほんとに米原さんが素直に見たまま、感じたままを臨場感たっぷりに綴っているので、ついつい感情移入してしまう。犬や猫を飼ったことのある人なら、もっとのめり込むだろう。

     捨てられた子猫たちを拾ってきたときのこと、失った悲しみ。捨て犬を引き取ってきたときの先住猫たちの嫉妬と反抗。
     タクシー運転手さんの猫たちの悲しい話には胸が締め付けられた。

  • ペット(猫、犬)エッセイの傑作です。
    タイトルから、独身を貫いた米原万里の私生活エッセイかと思いきや、急にペットを飼い始めた筆者に悪友から「人のオスは飼わないの」と冷やかされたのがタイトルの由来。
    本来、可哀想な捨て犬や捨て猫を放っておけない性分から、拾ってきた彼らを育てる暮らしが始まる。通訳という仕事がら家を留守にしがちな筆者は、認知症気味の母親がいるので、ペット好きのお手伝いさんを雇い対処する。ご近所さんにもペット飼育の先輩たちがいて、行方不明など困ったときには力になってくれる。ペット病院の院長先生も専門知識が豊富で親身になってくれる心強い存在。
    つまり、環境的にはとても恵まれた状況で、筆者のペット飼育の奮闘記が開始される。
    愛情たっぷりに接する筆者とその愛情に応えるペットたちの健気な姿は、ペットを飼った経験のある人にはたまらない。また、ペットの生態も参考になる。
    捨て犬だったゲンは、前の飼い主の躾がよかったのか、社交的で庭でも滅多に吠えない。それが、ある時から急に番犬的役割に目覚め吠え始めた。ご近所の手前もあるので、獣医師先生に相談すると、「それはおめでとう。ゲンちゃんは今まで遠慮してたんですよ。また、前のように捨てられるかもしれないって。だから、どんな人にも愛想よくして犬なりに気遣ってたんですよ。それがやっと米原さんのところを終の棲家と見定めて、この家は、自分が守って行かねばという自覚が芽生えたんですよ」、なんか泣ける話です。
    通訳の仕事でロシアにいる時、町でブルーペルシャ2匹の赤ちゃん猫に一目惚れして衝動買い。しかし、共産圏から無事連れて帰れるのか不安。その時の気持ちがよくわかる文章。
    「パスポート審査を終え、搭乗者用待合室のベンチに腰掛けてから初めてじっくりと手荷物ケージの中を覗いた。この瞬間をどれだけ心待ちにしていたことか。2匹を一緒に連れ帰ることが確実になるまで、一目惚れを本格的な愛に熟成させるわけにはいかなかった。一目惚れのあいだは、まだ愛の感情を制御することが可能だからだ」
    しかし、家には既に猫が2匹いる。そして、この後悪い予感が的中する出来事が待っていた。
    ペット本には、《猫は人に懐かず、家に懐く》と書かれているが、本当だろうか?
    米原家に起こったことは、2匹の新参者が現れた途端、古参猫2匹は不貞腐れ、本当に家出してしまう。自分たちへの飼い主の愛情に疑問を持ったのだ。その後、紆余曲折があり、家に戻って来るのだが、今度は逆に新参猫に対して母性愛、父性愛に目覚めてしまう。2匹とも避妊手術と去勢手術をしているにもかかわらず。さらに、家の中で去勢されたオス猫は本来しないマーキングまでやり始める。先生曰く、「父性が目覚めたのです。自分が守ってあげなくてはならない家族が出来て、ここには強いオスがいるぞと周囲に誇示しなくてはならなくなったためです」
    群れの動物には、上下関係やリーダーが必要。狭い活動空間でさえ、失われたオス性を振り絞って頑張っているのです。
    その後も、嵐の夜、雷を怖がるゲンが居なくなり…
    解説は、翻訳者仲間の田丸公美子。普段から仲のいい関係性から下ネタと毒舌と愛情深い内容は味わい深い。
    ペット好きには、是非読んでほしい一冊です。巻頭の登場人物一覧(ペット含む)写真も嬉しい。

  • 抱腹絶倒のおもしろさ、でも最後は涙の秀逸エッセイ。米原万里ワールドを堪能できる一冊。

  • これは良いエッセイ。米原さんのエッセイはおもしろいのだけど、難解で読むのに疲れてしまう。今回もそのパターンに陥ってしまうかと思いましたが、テーマがイヌとネコ。難解さはなく、始終、米原さんがどれほどイヌとネコに愛情を注いでいるかがよーく分かりました。エッセイ中では見つからなかったゲンのことは、ノンフィクションならではというか、ハッピーエンドを望んでいた分、悲しい。その後の引っ越しを思うと、米原さんの心中慮ります。私も米原さんのようにたくさんの家族と共にありたい。そういうのもいいな、と思いました。

  • おもしれー。著者の夭逝が惜しまれる。才女のエッセイだ。

  • イヌとネコもいいけれど、そんなことよりヒトのオスを……恩師からそう言われたらしい。その答えがこの1冊に展開する。多い時にはイヌ3匹、ネコ5匹。なかなか真似のできないイヌネコ中心の生活。そして彼らとの悲喜こもごも。
    冒頭からいきなり引き込まれる。国際会議の通訳で出張した東海村、1頭の野良犬を見初め、保護する。さて、東京の自宅にどのようにして連れて帰ったか。次も出張先の御殿場、会議の休憩中に出会った捨てネコ2匹。ネコ好きのアメリカ、ロシア、ウクライナの代表も、2匹のことが心配でしょうがない。さて、どうする? 
    万里の家のイヌとネコ、先住者が新参者をどのように互いを認め一緒に生活するようになるかも描かれていて、おもしろい。
    蛇足。『作家の猫』と『作家の犬』(新潮社のとんぼの本)では、米原万里はどちらにも登場する。後者の裏表紙には、ピレネー犬クレと柴犬の雑種モモとスクラムをくんだ万里の写真が使われている。

  • 嘘つきアーニャがよかったので読んでみました。
    なんと行き当たりばったりな人生よ(^^;)
    すでに亡くなってることを知って、このままの勢いで人生を駆け抜けたんだろうなぁと感心しました。

  • 現在の感覚からするとズレているところもあるけれど、90年代の大らかさが感じられて良かった。
    著者の描写力は相変わらずすごい。

  • Amazonより


    ネコ4+イヌ2+ヒト2=8頭この総数は流動的だが、いつもニギヤカな米原家の日常。ロシア語通訳の仕事先で恋に落ちたり、拾ったり。ヒトのオスにはチトきびしいが、ネコとイヌには惜しみなく愛情をふりそそぐ名エッセイストの波乱万丈、傑作ペット・エッセイ集。

  • 筆者は多くの猫犬たちと暮らしたようですが、本書では保護猫の無理と道理、後半からは保護犬のゲン、終盤にはロシアで譲ってもらったターニャとソーニャ、そして保護犬のノラについて書いてあります。

    筆者の猫愛、犬愛は相当なものですが、引退した盲導犬のことなど、紹介されているエピソードにも参考になるものもあります。

    この本の続編もあるようですので、読んでみようかと思います。

  • 米原万里と犬猫の波瀾万丈な物語。激務をこなしながらも愛猫愛犬に愛情いっぱい振る舞う米原万里の姿はあまりにも健気である。
    田丸公美子の解説が米原万里の魅力をより引き立たせている。

  • こんな感じで犬猫を軽く飼えたら楽しいだろうなと思いつつ。まあ、東京でそういう家に住める人は少数だろうなと。
    古き良き時代だなあって感想。

  • 2020.1.18. 大山鹿古本市にて購入。

    タイトルと言い、南伸坊さんの表紙イラストと言い、軽妙でユーモラスなエッセイ集を連想する。確かにそうなのだが、稀代の名文筆家はそれで終わらない。深い感情移入と洞察力、思考力、表現力で読む者の手を止めさせない。

    ペットとして飼われる犬や猫は、どのようにして飼い主や人間に馴染むのか。自分の居場所だと確信したらどういう風に態度が変わるのか。他の犬猫から教わる事でどのように成長していくのか。新しいペットが登場したらどのような思いを抱き、行動するのか。

    時に可愛らしく、時に哀感をにじませ、時に感心させる。愛情がしかと通じたり、逆に動物たちの思惑に沿えなかったり、硬い言い方をすれば動物行動学のテキストとも言える。

    ハラハラドキドキの展開、悲しい展開、ちょっとミステリアスな展開もあり、またしても米原節に時を忘れた。彼女の作品に親しめば親しむほど、彼女がこの世に居ない淋しさが募る。

  • 「心臓に毛が生えている理由」と同じ流れで通訳稼業の話だと期待したが、初っ端から書かれている通り、見事飼い犬飼い猫の話で埋まっている本だった。それはそれで面白いし、何しろ神経を使うであろう仕事とその準備は見事に脇に置かれ(でもちゃんと時間通りに約束通りに果たされているのがすごいが)、犬猫まっしぐら。こういう真っ直ぐな女性だったんだろうなあ。最近になって2006年に亡くなったことを知り、残念でならない。

  • 解説:田丸公美子

  • ロシア語会議通訳で作家。犬猫大好きで、モスクワで人目見て気に入った猫を買ってしまうぐらい。犬猫好きにはたまらない本です。

  • ひたすら待つワンちゃん猫ちゃんについて語られる一冊。しかし、随所によりユーモアが盛り込まれており隙がない、引き込まれてしまう

  • 著者が愛猫、愛犬に注ぐ有り余る愛情が伝わってくる、秀逸なエッセー。動物同士の警戒や嫉妬、母性愛や父性愛、恋愛感情を、鋭い観察眼できめ細かく描写している。グイグイ引き込まれて一気に読んだ。星五つ。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。作家。在プラハ・ソビエト学校で学ぶ。東京外国語大学卒、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。ロシア語会議通訳、ロシア語通訳協会会長として活躍。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)ほか著書多数。2006年5月、逝去。

「2016年 『米原万里ベストエッセイII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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