終生ヒトのオスは飼わず (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 236
感想 : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167671051

作品紹介・あらすじ

2006年に世を去った著者が愛した毛深い家族たち(猫4、犬3)はいかなる運命をたどったのか。好評エッセイ「ヒトのオスは飼わないの?」の続編と、父母の思い出やプラハで住んだ家、自分で書いた死亡記事などを収録した「終生ヒトのオスは飼わず」を一冊に。

感想・レビュー・書評

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  • 故米原万里さんの毛深い家族(犬、猫)について書かれたエッセイ。
    鋭い批判も毒舌も影を潜め、愛情深く、泣いたり笑ったり、可愛がったり悩んだり、犬猫に振り回されながら生き生きとする、素の万里さんの姿。犬猫を飼っておられることはこれまでのエッセイにもあって知っていたけれど、子猫が生まれたときは猫は8匹、犬と猫がいつも6〜9匹?はいたというからすごい。猫のお産のあとは、娘に孫が生まれたといって通訳を代わってもらったという。

    読み終わって、この子たちを「ペット」とは言わないな、たしかに毛深い家族だなと思った。万里さんは、どの犬、猫も、ひとつの尊い「生」として尊重し、決して人間より下の存在としては見ていないからだろう。

    賢くて優しい雄犬のゲンとのエピソードが心に残っている。
    凄まじい雷のある夕方、万里さんは原稿に没頭して、雷が苦手なゲンを家に入れ忘れてしまう。恐怖のあまりゲンは家の柵を飛び越して姿を消してしまい、その日以降、必死の捜索を続けるも見つからない。万里さんの自責の念、哀惜の念がひしひしと伝わる。4日ごとに殺処分されてしまうため、4日に一度は外国に出張中でも必ず動物管理事務所に電話をかける。似たのがいたと聞いて喜び、違うとわかって落胆する。その繰り返し。
    1年後、動物管理事務所から電話があり、特徴からゲンだと喜び勇んで赴く。あー、ようやく見つかったのかと一読者としても安心していたのに、とても似ているけれどゲンとは違うという。結局、その犬も引き取り、モモと名付けて飼うことになる。

    万里さんはその後もずっとゲンを探し続けるのだけど、ついに生きて再会することは叶わなかったという。天国ではゲンと会えただろうか…。

    それから、町内一の強者で、万里さん宅の猫達の代表だった無理(という名前の猫)の話。
    病におかされ、痩せていく無理に心を痛める万里さん。何度も発作を起こし、呼吸がどんどん苦しくなり、海老反りになって、そしてついに動かなくなる。
    看取った万里さんの悲しみの深さは言うまでもないけれど、猫たち全員が無理の亡骸を囲み、夜を過ごしたという。

    "通夜という儀式は、人間だけの専売特許ではなかったのだ。いや、もしかして、人間の通夜は、このように自然発生的に形作られてきたのかもしれない。"

    愛してやまなかったこの家族達を遺して逝かなければならなかった万里さんの気持ちを考えると切なく苦しい。
    万里さんの秘書さんの書かれた後書きで毛深い家族たちのその後を知ることができる。万里さんが亡くなった後、遺児達の里親探しに奔走されたとのこと。
    万里さんと愛犬、愛猫との関わりは解説でも書かれているのだけれど、万里さんのむける眼差しはとても温かく優しい。

    ちなみにこのエッセイは、「終生ヒトのオスは飼わず」というタイトルから、フェミニスト的な、結婚や男性に否定的な内容なのかなという印象も受けるけれど、そもそもヒトのオスには全く触れられていない。

    解説にもこうある。
    "万里さんの愛と関心は、もっぱら生類と人類に注ぎ込まれ、「ヒトのオス」は割り込む隙がなかったのだ。それは確かだ。"

    まさに!もう手一杯なのでヒトのオスまでは面倒見れません、という感じだろうか(笑) 

  • ご自身のペット共生の、あるいみ壮絶なエッセイ。
    気持ちはとってもよく分かりました。
    ペットは飼っていないということもありますが、よそのお宅のペットは、あくまで別家族。人も一緒ですよね。そこまでは共感できなかったです。

  • 万里さんの犬や猫への愛情ったらすごい。自分はどちらも飼ったことないのでピンとこないが猫にも精神的ケアが必要なんですね。ゲンちゃんは今どこにいるのだろう?天国で著者と再会できただろうか。

  • ロシア語通訳米原万里氏の晩年をともに過ごした「毛深い家族たち」(犬・猫たち)に関するエッセイ。ちょっと感情過多でのめりこみがちな米原氏が毛深い家族たちにかける愛情はやはり並々ならぬところがあり、まるでジェットコースターのような日々が愛おしい。そして、後半部分の子供時代を振り返るエッセイの集成も発見が多かった。そうか、お父様は共産党員で、それでチェコにいたのだな、とか、お父様やお母様の人柄とか。

  • "米原さんの四足家族を語ったエッセイ。
    動物たちへの愛情あふれる日常が垣間見れる。
    あとがきには、米原さんが逝ってしまった後の顛末も秘書の方が書いてくれている。"

  • 犬や猫に対する著者の深い深い愛情に溢れたエッセー。「ヒトのオスは飼わないの」の続編。

  • 2016年4月30日購入。

  • 2010年(底本2007年)刊行。

     動物(著者の飼い犬・飼い猫など)をテーマにしたエッセイ。私の家族は動物を飼っておらず、本書に関しては、個人的な興味や嗜好とはかなり離れた内容である。ただし、本書にある著者の父・祖父評は別儀だ。

     ところで、本筋とは関係ないが、本書を含む著者の文体、なかでも一文毎の繋がりや文の連鎖が、文脈や意味を掴まえる上で、上手いなぁという印象。接続詞を使わなくとも、いや使わないことで読みやすくなっている不思議さに感銘を受けた。

  •  著者が一緒に暮らした猫たち犬たち、ご近所の人や友人、仕事について書かれた前半部と趣を異にする自身の生い立ちや両親、言語についての後半部から成る本書は目のつけ所のニクい映画の二本立てのよう。
     ほんわかした装丁デザインを気持ちよく裏切ってくれる著者の骨太な筆致、生き方はひれ伏したくなるほど熱い。仕事にも動物にもなぜこんなあふれんばかりのエネルギーで向い合うのか合えるのか、後半の生い立ちが種明かしのようになっている。後半部は「文藝春秋」「諸君!」への寄稿の再録でテーマは憲法第九条からロシアの叙事詩と多岐にわたるが掲載後十年以上たった今も深く刺しこんで来る。憲法第九条を「貞操帯」に喩える彼女の重くも軽やかなセンスは外国語や他の文化に半分以上足を突っ込んでることにも無縁じゃないのだろう。猫好き、犬好き、言語好きな人は全員読むとよい。

  • しぬまで独身だった著者が飼っていた猫や犬について書かれたエッセイです。ペットは家族という意味を履き違えていない著者の”家族”へのやさしさに心がほっこりしました。

    九州大学
    ニックネーム:山本五朗

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。作家。在プラハ・ソビエト学校で学ぶ。東京外国語大学卒、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。ロシア語会議通訳、ロシア語通訳協会会長として活躍。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)ほか著書多数。2006年5月、逝去。

「2016年 『米原万里ベストエッセイII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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