空中庭園 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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レビュー : 769
  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167672034

感想・レビュー・書評

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  • 新興住宅地に住む幸せそうな家族。父、母、姉、弟、祖母、父の愛人のそれぞれの視点から話は綴られる。
    何でもオープンに話し、色んなイベント毎に近くの商業施設に行って祝ったり、家でささやかなパーティーをしたり。でも、隠しごとなしに生きているようで、実は隠しごとだらけ。器用そうに見えて、誰もが皆不器用なんだな。こういう家族の形もありか…。

  •  少し前に読んだ「母と娘はなぜこじれるのか」で紹介されていて気になったのでさっそく。あの本に書いてあったことがまんま物語に落とし込まれているような感じ。本当に秀逸だった。
     角田さん自身の母娘関係は、特に大きな問題は抱えていないと言っていたけど、想像で書いたとは思えない。卓越した感受性の上に努力を重ねていらっしゃるから、ヒリヒリするし目を背けたくなるほどリアル。すべての登場人物の言動が、良い意味で期待を裏切らない。生き生きとしている。

     何ごともつつみかくさず、タブーをつくらず、できるだけすべてのことを分かち合おう、というモットーのもとにいとなむ家族。連作短編なので視点人物が章ごとに変わるが、一枚一枚皮をめくるたび、グロテスクな部分が露見する。

     印象的だったのは、母とおばあちゃんのお互いに対する感情の違い。母の「こんなことをされた(殺意)」は、おばあちゃんにとって「こんなことをしてあげた」になり、それぞれの記憶は自分が嫌だったことばかりが強調されている。母から逃れるために半ば無理やり築いた自分の家庭を、「絶対に失敗させない!」とひとり肩に力が入って空回る母のむなしさよ。共感できてしまうからこそ、やっぱり子を持つことが怖くなった。

     また、ひとりだけ家族の外の人間の視点を入れたのもよかった。その女の子もまた、自分の経験から家族を嫌悪し恐怖している。彼女の目に映る京橋家の異様さ・珍妙さは、読者である私の目線とぴったり重なった。

     だいたい「何でも話せる相手」とか「私(あなた)のことなら何でも知ってる」なんて嘘に決まってる。自分の中に恥ずかしいことや黒い感情を山ほど抱えてるし、そんなものが露見したら誰とも付き合えない。家族という近すぎる存在だからこそ、お互いに踏み込まない領域があったほうがいいのかなと思った。

  • 作家さんてどうしてこういう文章が書けるのだろう。
    文字に、文章に圧倒される。

    数十年の母子密着の果てに、逃避の手段としての妊娠・結婚を選んだ絵里子。母と決別し、隠しごとのない自分の家庭をもったにもかかわらず、母の影は今でも絵里子を離さない。

    「私の家庭とまったく関係のない老婆の他愛ない一言で泣くことなんか何もないのだ。頭ではわかっているのに、この女と話していると、私はまるで十代の娘のようにあっさりと傷つく。自分でもあわてふためくくらいかんたんに」

    この箇所を なんどもなんども読み返してしまった。
    恐ろしいくらい威力のある文章。
    胸にグサグサと言葉が突き刺さる。なにこれ。

    絵里子とその母の関係は、私と母と関係そのものじゃないか。(救いは、うちの夫がタカぴょんみたいなコップ男じゃないってこと)

    角田光代さんの本は、油断して読んでいると、ところどころでこういう矢を放ってくるから気をつけないと。

  • 作中名言「 思いこんでると、本物が見えない 」

    本物が見えたという人は、思い込んでるため、本物が見えていない。なるほどなぁと思った。
    団地という身近な設定で、1つの家族にスポットを当てる。浮気する父。ラブホに行って感傷に浸る娘。冷めた息子。うっとうしい祖母。自分だけ不幸を背負いこんだと思い込む母。世の中の普遍的なものをテーマにしてるようだが、共感できるところはあまりなかった。
    それぞれバラバラの1人で、集まって家族。誰もが孤独。当たり前の姿だと思うし、何も今更ピックアップして書いたところで、普通やんとしか思わなかった。
    もう少し突っ込んだ普遍が欲しかった。直木賞だと思うと、直木賞がちゃっちく感じるような作品。

  • それぞれの視点から家族を観ている。すると、色々面倒なことが、自分も含めてわかってくるが、家族という、ひとくくりの絆がまるめてくれている。しかし、何の物語か、ようわからん。

  • 家族だからこそ、言えない秘密も嘘もあるのかもしれない。開かれてると思いきや、みんながそれぞれにドアを閉めていて、中で汚い思いがドロドロしている。それにしても角田さんは、母娘のこじれる話が好きだなぁ。

  • 家族に隠し事は作らない。そんなポリシーがある一家ですが、それぞれいろいろな事情があります。家族であっても踏み込めない(あるいは踏み込んで欲しくない)領域ってあるんですよね。いろいろな人生が、ある小さな一点でかろうじて繋がっている、それが家族なのかもしれません。

  • 風邪を引いてる最中に読み始めたのですが、一旦ダウン。

    風邪が治ってから、続きを読み始めました。それくらい辛い話です。

    辛いと言っても、その内容の悲惨さではありません。何故、こんな物語を書く必要があったのか、何が言いたかったのか、何故ここまで露悪的なのか、何故ここまで貶めるのか。。。。

    皆が皆、情けないのです。そして、何とかしようという意図も無い。同じ辛さでも、たとえ抜け出せなくても、その中で何とかならないか、もがき苦しむのなら許せるのですが。

    一般的な評価は高いようです。でも私には合いませんでした。

  • 子どもが妊娠しないようにと心配する親は、これを子に渡したら

    とにかく、小泉今日子さん主演で映画化した、というイメージが強い本。
    秘密を持たないというルールの家族の話、になっているのですが
    母娘問題がインパクト強すぎて、その印象につきる本でした。

    秘密を持たないというルールを決めた母親からしてもう嘘だらけ。
    でもその背景にあるそのまた母親との関係が、当たる人には
    どんぴしゃ突き刺さる内容となっております。

    先日読んだ「母と娘はなぜこじれるのか」にて、
    なぜ角田さんと対談をしたのか、この本を読んで納得しました。

    章によって人称が変わっていくのですが、母親から祖母に移った時の
    認識の違いといったら。
    母親は一生苦しむけど、祖母はその苦しみを一生わからないのかな、
    という絶望的な本。

    えりこさんはその呪縛から今も抜けられないのが辛いだろうな。
    断ち切ることが出来ずに、「空中庭園」に逃げている。
    空中庭園も、タイトルになるほどの立派な庭園というわけではなく、
    象徴としての「空中庭園」という意味合いが強かったのが
    当初の想像を裏切られました。

    しかし父親が情けないですね。学生時代に子供が出来てしまったことで
    人生が変わり、変わったとしてもそれから17年経った今でも
    子どもがあの時出来なかった自分を想像して
    そんな空想に逃げている。逃げ続けている。
    自分から逃げて、女に逃げる、器の小さい色魔。
    マナちゃんに手ださないだけまし、でしょうか。

    この本を中高生女子に読ませたら、うかつに妊娠すると大変だ、
    と痛烈に伝わるんじゃないでしょうか。

  • 図書館で。確かこの本で何か賞を取られたような記憶があったので読んでみました。
    連載短編集のような形で章ごとに主人公が変わるのですが誰も自分は正しいと信じて行動しているのがちょっと恐ろしかったです。自分は正しい。間違っているのは、おかしいのは自分以外の人間であり自分ではない。その思い込みが怖いけれども普通の生活ってこんなものなのかなあ。

    一番最初の長女の話が一番比重的には軽かったのかなあと思いました。母と祖母の話が一番確執が深くて恐ろしかったです。愛憎入り乱れるというのか…。でも結局は簡単に割り切れないから家族なんだなあと思います。そして反面教師のように思っていて違う風に生活しているつもりでも所詮、親子は似ているという辺りが救いようがない。

    まあでもあの浮気男は色々な意味でダメダメですが…あれで良いんだろうか?というかなんでアレを相手にする女が居るのかなあ。そちらの方が不思議です。

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著者プロフィール

角田光代(かくた みつよ)
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。受賞歴として、1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を皮切りに、2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞をそれぞれ受賞している。
現在、小説現代長編新人賞、すばる文学賞、山本周五郎賞、川端康成文学賞、松本清張賞の選考委員を務める。
代表作に『キッドナップ・ツアー』、『対岸の彼女』、『八日目の蝉』、『紙の月』がある。メディア化作も数多い。西原理恵子の自宅で生まれた猫、「トト」との日記ブログ、「トトほほ日記」が人気。

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