ドラママチ (文春文庫)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167672065

感想・レビュー・書評

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  • 30代~40代になると待つことに慣れてしまうのかもしれない。自分の中で何かおかしいと気づいていても、何年もそういう自分を続けることに異議を唱えるわけでもなく、自分を変えてくれる奇跡的な出来事をひたすら待つ。他力本願の姿勢に入ってしまえばそれを崩すのは至難の技だ。

    でも実際は...何もやってこないし何も起こらない。これはたぶん年とともに発達した強力な妄想力が起こす幻覚症状にほかならない。気が小さくて何かを起こす勇気がないだけでしょ?という正論は左耳から右耳へ突き抜けるだけ。何かを待つことしかできないほどの長年蓄積した疲労感を分かって欲しいという思いがふつふつとあるのだけれど。

    その思いを代弁してくれるように、疲労感に身をゆだねるしかなかった彼女達のせつなさやりきれなさは、正論をぶつけるなんて申し訳ないほどに圧倒的に描かれ、いたるところでピリピリヒリヒリとし、ついでにこの小説を勧めた友人の意図はなんなのかとモンモンとした。登場人物が憑依したのは久しぶり。

    でもピリピリヒリヒリは必ず癒される。彼女達はちゃんと変わっていくのだ。各章の1/5あたりに空気がざらっと変わる瞬間が訪れ、彼女達は新しい”自分”へと脱皮する。それは明日から新しい自分が始まるような気分、例えようがないくらいの清々しさをもたらす。

    身の程を知り、しがみついていたものを手放し、今までの自分から自由になる。それだけなんだけど、ちょっとした空気のざらつきからあっという間の自分への気づきが無理なくリアルに描かれて、ドラマへと引き上げる作者の手腕が奇跡かもと思う。

    「ツウカマチ」の主人公、彼氏いない暦14年で異性との距離のとり方がおかしくなっているし、”14年あったら人は漢字も書けるようになるし円周率を出せるようになるのに、好きという気持ちが分からない”という嘆き方も情けないし、ヘタレっぷりが面白すぎる。こういう可笑しさを理解してくれる人が現れればいいねえと、ついつい同情交じりの応援をするのだった。

  • 「待つ」という平凡な行為が生む、小さなドラマの短編集。

    吉祥寺、中野、荻窪……。東京・中央線沿線の街でくり広げられる、ヒロインたちのさまざまな「待ち」行為。

    子どもを待ち、本来の自分を待ち、ドラマチックななにかを待ち。

    待つ、というのは、何も起こらないから成立する。でもそれが小説になってしまうんだから、びっくり。
    待ちながら、少しずつ変わる。
    日常に植えられた小さな種を見つけられるような一冊でした。

  • 「待つ女」の短編集。なんともならないこの閉塞感。もどかしい。

  • 何かを待つことをテーマにした八つの物語。
    待つことをテーマにしていると分かっていても
    女性は人生の節目などにいつも待っているのだなと思ってしまいました。
    いくら行動的に活発に動いている人でも
    男性にまつまるものだと自然と待ってしまうものかと。

    中央線沿線の街を舞台にしているので、
    どの作品にも喫茶店が出てきて
    それがまた良い雰囲気を醸し出しているので
    人生の待つ場所には喫茶店は良い場所なのかなと思いました。
    そんな行きつけの喫茶店があるというのも
    少し大人のような気分で羨ましいです。

    印象に残った作品「ドラママチ」、「ワカレマチ」。
    「ドラママチ」の 彼女のようになんとなく毎日がマンネリ化していても、
    その中に何かドラマを待ってしまうそんな気持ちが共感できます。
    こうゆう気持ちになるというのは元来女性というのは
    お姫様になりたい願望があるのかと思ってしまいますが、
    きっとそうやって強く生きていく方法なのだなと思えました。

    「ワカレマチ」は冒頭から憎しみから始まり他の作品にはなかった
    母と子の関係がリアルに描かれていて、
    代表作でもある「対岸の彼女」、「八日間の蝉」、
    「森に眠る魚」を彷彿させるようなものがあります。
    実の母を知らず、義母は実の子達からも毛嫌いされているような
    環境の中にいる女性が母になるというのはやはり
    相当の決心が必要なのかと思わされました。
    けれどラストの言葉にはどこか哲学的だけれど
    人の流れをじっくりと見てきたからこその言葉であって、
    とても希望も持てる言葉だと思いました。
     子供を作るということは、
     不要な別れをひとつ作り出すようなことに思えた。
     それでもいいような気がした。
     その子どもが成長して大人になったいつか、
     ともに入った喫茶店の光景を一瞬でも思い出してくれるなら、
     それもいいような気がした。

    女性の大切な人生の節目に合わせてリアルに描かれているので、
    共感できるところが多く読みやすいかと思います。
    はっきりとした答えは出していないですが、
    誰もが同じような悩みを抱えても
    必ず希望の光が見えてくるという前触れが表れているので
    また少し前を向いて歩いてみようかという気にさせられました。

    待つことがテーマの作品ですが、
    女性が待つことが多いのは巡り合う男性によって変わるのかとも
    思わされます。
    やはり環境と男性によって女性の幸せは変わるのでしょうか?
    これは永遠のテーマなのかもしれないかとふと思いました。

  • 自分が今何も待っていないから、作品自体は面白いとは思うもののあまり共感が出来ず。

  • 短編集。
    「ゴールマチ」「ドラママチ」「ワカレマチ」が好きだな。

  • いろんな待ちの話

  • 「ほんの少しの変化を待ち望む女たちの姿を描いた、心揺さぶる八つの短篇」とあるとおり、それぞれに心揺さぶられました。女性だからか思わず共感して応援してしまう箇所も多かった。各章のタイトルもおもしろい。

  • 決して気持ちよく読み進められる物語じゃない。
    どれも、孤独で、ゆがんでいて、不幸せで、読み進めるのが、
    そのような悲しみと対峙するのが怖くなる。

    それでも読み終わった後に、記憶に残る物語がたぶん一つあるのだろう。
    私にとってそれは、やる気のなくなった女の人の物語。
    やる気、それはきちんと生活することだったり、自分をきれいにすることだったり、
    趣味でも仕事でも成長を求めることだったり。
    それらに対する興味もやる気も全部なくなった、めちゃくちゃに、どうでもいいように生きてゆくことができる。

    そのように生きている人が、この世の中に無数にいる。
    社会も、自分も、他者も、どうでもよくなって。

  • 中央線沿線の街が舞台になっている短編集で、主人公はみんな「待つ女」。
    全体的に視点が醒めていて、特に前半の3編くらいまで閉塞感や主人公の歪んでいる性格が苦手で、面白くないなあという印象を持ってしまったので、最後まであまり嵌れなかった。

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著者プロフィール

角田光代(かくた みつよ)
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。
1990年、「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。受賞歴として、1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞を皮切りに、2005年『対岸の彼女』で第132回直木三十五賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で第22回伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で第25回柴田錬三郎賞、同年『かなたの子』で第40回泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で第2回河合隼雄物語賞をそれぞれ受賞している。
現在、小説現代長編新人賞、すばる文学賞、山本周五郎賞、川端康成文学賞、松本清張賞の選考委員を務める。
代表作に『キッドナップ・ツアー』、『対岸の彼女』、『八日目の蝉』、『紙の月』がある。メディア化作も数多い。西原理恵子の自宅で生まれた猫、「トト」との日記ブログ、「トトほほ日記」が人気。

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