三面記事小説 (文春文庫 か 32-7)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167672072

感想・レビュー・書評

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  • 実際にあった事件を元にした短編集。
    濃かった。最初の、床したから25年前に殺した遺体が出てきた事件はよく覚えている。インタビューで犯人の男がしれっとした態度だったなぁ。
    この短編集は、事情を推理して行くような中途半端なものではなく、事件の渦中にいた人物たちの物語を作り出している。角田さんのすごいところは、絶対に上からの目線を入れないこと。その人物のアングルで思考も生活も編んでしまえること。故に露悪的な書き方ではなく、フラットな描写なのに自然と人物や物事の歪が浮かび上がってくる。ここまで徹底できる人はなかなか少ない。最後の「光の川」という介護疲れの殺人事件の物語はしんどすぎて泣いた。

  •  短編6作品。全て三面記事に触発された物語である。事件はいかにもありそうで怖い、狂気の本質は日常に隠されている。わたしたちが目にするトンデモ事件もごく普通からスタートするのである。今は普通の状況にいるわたし達も、ほんのちょっと歯車が狂えば三面記事の主役になるのかもしれない。危険は常に隣合わせなのだ。実に上手い。

  • 新聞の「三面記事」に載るような実際の事件から小説家がどこまで想像を膨らませられるかという企画で、この企画を角田光代に持ちかけた編集者は天才かもしれない。扱う事件はありがちなものから当時話題になったものまでさまざまだが(教師の給食のなかに抗鬱剤を混入した女子高生の事件など)、著者の手にかかるとどれもがまったく新しい様相を見せ、その予想もつかない変換のされ方にカタルシスさえ覚える。女性の視点から語られるケースが多く、これが強いて言えば著者の限界かと思っていると、最後の「光の川」(認知症の母親を自宅介護する中年の息子の話)で度肝を抜かれる。ラストの親と子の関係が反転する光景で思わず涙が出た。

  • 短編集で読みやすい!
    5話目の姉妹の話、つくづく卑屈って人生をダメにするなーって思った。

  • 当たり前のことなんだけれども…。
    TVや新聞で報道される事件の数々は、天災のように自然と起きているのではない。
    そこには何人もの人々や複雑な事情と感情が絡み合い、人為的に起きているのだ。
    それを我々は普段忘れがちだ。
    報道を目にしても、「へぇーこんなことあったんだぁ」「なんでこんなことするんだろうねぇ」「うわーこれは同情するなぁ」などと一瞬思うことはあっても、数秒後には忘れてしまうほどの無責任な感想。
    まぁ、いちいち気にしていたら生きていられないけど…。

    そんな、他人である私たちにはそれこそ「三面記事」程度の出来事でも、当事者にとってはそこに至るまでの壮絶な右往左往があるのだという当たり前のことに気付かされる作品。
    面白い試みだと思った。
    特に「光の川」は切ない。切な過ぎる。
    読んでいて苦しくなった。

  • 一見、何事も無く、平穏無事に過ごしているように見える人々も、何かしら大きな問題を抱えていて、ふとしたきっかけで大事件を起こしてしまう。
    姉が妹をナイフで刺してしまう話や、介護疲れから息子が母親の首を絞め殺すという話は、いつ身近なところで起きてもおかしくない気がした。
    つい先ごろ、44歳の無職の男がバレンタインデーのチョコレートを盗むという事件があったが、角田光代だったらこの三面記事からどんなストーリーを組み立てるだろう?

  • これでプロ?って作品はたくさんあるけれど、さすがプロ!ってうなったこの作品。この人、本当にストーリーテラーですね。おすすめ!

  • 角田さんの小説って、人の心の暗い部分がしっかりと写し出されている。すごいなあと思う。尊敬する。ほんとにリアルだ。人間って綺麗なことばっかりじゃないもんね。それが特に色濃く感じられる作品だった。闇の部分。読んでてすごく辛かった。重たくて、苦しい。

    実際にあった事件を元に書かれているのでリアリティが増す。人の命の重さがぐっとのしかかってくる。

  • 小さな新聞記事をもとに書かれた短篇集。家族間の犯罪は多いとききますが、ああ、そうだろうなと思う、たぶん、誰にでもひとつはキリキリくると思います。

  • 起こる出来事のその当事者たちは飛び抜けて変わり者だったり異常な性格だったわけではなく、だからこそ、いつ、なんどき、自分が三面記事に載る事件を起こす、または巻き込まれないとは限らない、そんな怖さがあった。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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