奸婦にあらず (文春文庫 も 18-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (627ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167677060

感想・レビュー・書評

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  • 若き日の井伊直弼は藩主の十四男で庶子という境遇ながら文武に秀で、孤独のなかでも鍛錬に勤しむ日々を送っていた。
    そんな直弼の前に現れた年上の女の子たか。実は多賀大社の坊人(忍び、密偵)で密命のために直弼に近づいたはずが、思わず恋の深みにはまってしまう。
    そして紀州和歌山藩の家老の密偵として諸国を巡っていた主馬。
    3人は幕末の世に翻弄されながらも自らの志を遂げようと必死に生き‥‥。
    実在する3人の人物を自由自在に操り、読み応えのある物語に仕上げた一作。
    恋か志か、使命か、功名心か、義か‥。時局を見据えながらその間で揺れる人々の危うさにハラハラしながら読んだ。

  • 幕末の裏面史で暗躍した村山たか女を主人公に、史実とフィクションを巧みに融合した歴史小説。
    ひたすら、井伊直弼を慕い、己のすべてを愛する人に賭け、幕末の風雲を駆け抜けた女主人公の活躍に、清々しさを感じながら、620頁も、たちまち読み終えた。
    とかく、勝者が正しく、敗れた者は悪となるのは、歴史の必然であり、井伊直弼などその筆頭といえる。
    しかし、この小説で井伊直弼は、主人公たか女がひたすら愛して、志を同じくする理想家として描かれる。
    同じ視点に立った作品に、船橋聖一の「花の生涯」がある。だいぶ以前に読んでいるが、再読してみたくなった。

  • 厚くて時間かかりましたが、読みやすく面白かった。
    休日つぶしちゃったけど笑
    井伊直弼ってひどいやつというイメージだったけど、違う見方ができた。

  • 箸が進まないならず、ページが進まない。
    題材はとても良いと思うのに、なぜか楽しくなかった。
    井伊直弼と恋仲にあった村山タカの話。

  • 新田次郎文学賞、解説:高橋千劔破

  • 2016.8.30
    ★3.1

    ===あらすじ===
    井伊直弼の密偵として、その美貌と才気で幕末の嵐を駆け抜けた女・村山たかの、一途な恋と数奇な一生を描いた長篇小説。彦根・多賀大社で坊人(忍び)として生まれ育ったたかは、内情を探るために近づいた井伊家の直弼と恋仲になる。しかしその後、苛酷な運命が二人を襲う…。

  • 井伊直弼といえば、安政の大獄。蒸気船に刺激されて巻き起こった尊皇攘夷の声を幕藩体制の危機と捉えた大老は、志士即ち活動家たちを断罪しつつ、水戸斉昭派の大名や公家を失脚に追い込む。安政の大獄は暫時、幕政の崩壊を食い止めた。しかし、弾圧に対する激しい反発からテロリズムが蔓延し、幕末は新たな産みの苦しみのフェーズへと進んでいく。

    その井伊直弼をどう描くか。頑迷な保守主義者、世間知らずのお殿様、血に飢えた独裁者・・・敵役としてはこのようなイメージが定着しているけれども、主人公のキャラクターの設定は歴史作家の力量が問われるところ。諸田さんは埋木舎の15年に着目し、そこから物語を展開していく。

    井伊直弼は多感な青年期を彦根城外の300坪の屋敷で過ごした。生活に困る訳ではない。しかし血のプールとして生かされる以外には何者にもなれない。眼を瞑れば飼い犬のように生きていけるのかもしれないが、彼の高いプライドがそれを許さない。学問を積み、和歌を吟じ、体を鍛えながら、来ないかもしれない日を待ち続ける。

    世の中を よそに見つつも うもれ木の 埋もれておらむ 心なき身は

    そんな直弼のいじましい日々に、美貌の女密偵を配す。そこからは諸田小説の真骨頂で、官能の喜び、会えないもどかしさ、別離のつらさを丹念に描きつつ、別れてからも想い合う二人の関係を「志」で昇華させつつ、物語は一気にクライマックスへと駆け上がっていく。

    仕事が忙しくなる中手に取った一冊だったが、諸田ワールドを堪能しつつ、これまで知らなかった井伊直弼の人物像にも触れることができた。間違いなく、諸田小説の代表作の一つと言えると思う。

  • 歴史小説で、女の坊人(忍び)ということで、なかなか興味深く読めました。
    ただ、江戸時代終わりの頃という苦手な時代だったのと、
    女の性のような部分が多かったので、あまり入り込めなかった。

  • 久しぶりに読んだ歴史小説。諸田玲子さんの書籍は好きで、何冊も読んだことがあるが、お正月三が日ブックオフ全品20%オフで、読んだことのないこの書籍を見つけて迷わず買った。
    篤姫も生きていたあの時代に、たくましく、しなやかに、繊細に生きた女性が他にもいたんだ。命には定めがある、受け入れて命ある限り生きていくしかないと改めて知れた一冊。こういう小説、好きです。解説によると、実在の人物に近づけて書いてあるようで、読み終わってから、さらにじわじわと染み入ってきました。「女を思う苦しさも、逢瀬の嬉しさも、別れの辛さも・・・」記憶に残る直弼の言葉です。全身全霊で愛する人に出会えた人は、いろいろあっても、やっぱり会えない人より幸せだと思う。

  • 読み終わってから実在した幕末の女性工作員だったと知りました。
    さらにNHK大河の第一作「花の生涯」のヒロインだとか、、、
    多賀、彦根、京都が舞台。

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著者プロフィール

諸田玲子
静岡県生まれ。上智大学文学部英文科卒。一九九六年『眩惑』でデビュー。二〇〇三年『其の一日』で吉川英治文学新人賞、〇七年『奸婦にあらず』で新田次郎文学賞、一八年『今ひとたびの、和泉式部』で親鸞賞を受賞。著書に『お鳥見女房』『あくじゃれ瓢六』『きりきり舞い』シリーズのほか、『四十八人目の忠臣』『波止場浪漫』『帰蝶』『女だてら』『尼子姫十勇士』『しのぶ恋』など多数。

「2023年 『其の一日 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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