- Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167679200
感想・レビュー・書評
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大阪の街中にある藤田美術館の横を通って。
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明治に一代で財を築き上げた豪商・藤田傳三郎の生涯と、彼に影として寄り添った一人の男の人生を描いた一冊だ。
萩の一商人が、いかにして関西の財界の重鎮となったのか。明治の政治家たちとの関係はどんなものであったのか。
謎が多いとされる藤田の人生を厚みたっぷりに描いていて、藤田という人物にもともと興味があった自分には非常に面白い内容だった。
幕末から明治の権力の流れがあちらこちらへと揺れ動く様や、そこに生きた人たちの欲望がまざまざと伝わってくる。
藤田の影として描かれたもう一人の主人公「とんぼ」の存在も印象的だ。
怠け癖があり身勝手でものを考えることをしない、言ってみればイライラするような男でありながら、なんとも言い難い味があり、ラストの流れには引き込まれた。 -
明治十二年、政商・藤田伝三郎は贋札事件の容疑者として捕縛された。その十七年前、高杉晋作の元に集まる志士たちの中に伝三郎がいた。幼馴染みの“とんぼ"宇三郎が影のように寄り添う。奇兵隊結成、禁門の変…幕末から明治にかけての激動の世の中で「光」と「影」の宿命を負った二人の友情と別離、対決を描く傑作歴史長篇。
(2001年) -
明治期の政商・藤田傳三郎と、幼馴染みの“とんぼ”こと宇三郎。
光と影の如く交錯する、男たちの人生を描いた歴史小説。
幕末の動乱に翻弄され、傷心し、目まぐるしく変わりゆく時代を必死に生き抜く二人の、友情ともつかぬ絆と、別離。
激動する奔流を泳ぎ渡りながら、少しずつ変貌しつつも、変わらぬ心底を持つ彼らの、深い繋がりが痛ましい。
その関係を下地に、実在の人物も複数登場させ、世に言う「藤田組贋札事件」が解釈され、創作されている。
事件前後の、宇三郎から傳三郎に対する呼称の変化に胸を突かれ、さらに終盤の回復に涙した。
また、この時代の名立たる人物の、『陰勤め』となった男たちの生き様が、作品の側面を支える。
そうした陰をも背負い、あるいは踏み台として生きる、著名人らの強かさと怖ろしさ。
急激に発展し、故に歪んでしまった近代日本社会。
作中にて、明治とは新しい時代の名前ではなく、ただの化け物だと称される。
その怪物に食い荒らされる、人間たちの凄惨と悲哀を底流に、物語は静かに終息する。 -
序章の結末を引っ張った割には、間延び感が・・
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長州藩というものは、幕末期を描いた小説、ドラマなどで見聞きしているが、長州藩を主体としたものは一つもみた事がなかったので、ある意味新鮮でありました。
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藤田組贋札事件って・・・ヤクザの話かと思ってました~( ̄▽ ̄;) 歴史小説だったのか~・・・って、いやいや、これがまた、めっちゃ面白くてですね!一気読みでした!!んもう、こういう小説って、めっちゃ好き♪ 四の五の言わずに、さっさと手に取って、お読みになることをお勧めします!!
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明治維新、長州藩に興味のある方は、もっと面白く読めたと思います。
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作者としては珍しい本格時代長篇。やっぱり上手いじゃん。 藤田組贋札事件は「警視庁草紙」にも出てきたエピソードだが、 藤田伝三郎自身はそんな魅力的な人物ではない。 しかし、そこに宇三郎という魅力的な人物を 狂言回しとして配したことにとてもセンスを感じる(山本周五郎の「さぶ」を思い出した。そして「山風が好きなんだなぁ」というのを 存分に感じさせてくれる点で、なによりポイントが高い!
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正直言って、中盤までは読むのが辛かった…。ただ、「最後まで読まなきゃ面白さが分からない。」と言われて読み始めたので、意地になって読んでました。ある所でそれまでの話しが収束し、「ああ、やられた。。。」と思う事請け合い!
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北森鴻の中で一番好きな作品です。
題材になった藤田組の偽札偽造疑惑なんて歴史があることも知りませんでしたが、維新の有名人も裏で糸引いているしで、けっこう大きな疑獄事件みたいです。
北森さんは山口出身なので、この長州出身の財界の豪傑特別な思い入れがあったんじゃないしょうか。
偽札を偽造する場面の鬼気迫る描写が、とくに気に入ってます。
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藤田伝三郎のことは全然知らなかったけど、小説として面白かった。
愚直で一途だった宇三郎が何故?って冒頭に示される結末に向かう、傍から見ると狂気、本人の中では正当な論理に従う心の動きに引き込まれる。
それが実は影だけではなく光も…。価値観を他者に求める人は怖い。 -
ミステリーかと思ったら、歴史小説です。
政商、藤田傳三郎と幼馴染の物語り。時代は、幕末から明治にかけて。場所は、長州から大阪。
歴史小説、実は司馬遼太郎以外は、好きではない。なのだが、これは面白かった。おそるべし、北森鴻。こういう隠しだまをもっていたか。
にしても、長州人を主人公にしたあたりは、山口への偏愛っぷりがわかるってもんで。ホント、山口すきだよね。
これの面白さは、読めばわかる!ってもんなんだが、私としては、禁門の変から維新がなるあたりが、ものすごい駆け足だったのが残念。大村益次郎なんて名前出てきたなって思ったら、すぐに暗殺されちゃったよ(苦笑)
と、高杉晋作像が、他とちょっと変わってるようで面白かった。場面としてはあまり出てこないんだけど、しっかりインパクトがあった。
…と、書いてると、だんだん司馬遼太郎と比較したくなってきたので、ここらでやめときますww
うん「十一番目の志士」とかと比較したくなっちゃったよ。