素晴らしい一日 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 184
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167679316

作品紹介・あらすじ

恋人に逃げられ、勤務先は倒産。ドツボにはまった三十歳の幸恵は、昔付き合った男に貸した金を取り立てるところから人生を立て直そうと考えたが…(「素晴らしい一日」)。卓抜なユーモア感覚が絶賛されたオール読物新人賞受賞作を含め、憂きことばかりの人の世を、もがきながら生きる人間像を軽やかに讃える傑作六編。

感想・レビュー・書評

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  • 人間を軽妙に深く鋭く描いている。どの話も、完全なるハッピーエンドというわけではないが、読んでいる人の心を新品にしてくれる清涼的効果がありました。(2015年4月15日読了)

  • この本が新刊で出た時に初めて読んだときは、正直あんまり印象に残らなかった。期待したのに面白くなかったな、と感じた気もする。ところが最近また急に読みたくなって手にとったら、なぜこれが面白くなかったな、と感じたんだ私は!と当時の自分をなじりたい。
    とにかくほとんど出てくるのは駄目な男ばかり。チャラチャラしてだらしない。よくいる、こんな駄目な男。だいたい小説なんかじゃ脇役。しかも痛い目みる。
    ところがこの作品だと、なぜか主人公の女たちを癒してくれたり救ってくれたりする。
    憎むべき要素をこれでもかと出して嫌な奴にしたてられているのに、ふとした信念のようなものが見えて、彼らが眩しく見える。
    駄目な奴に、だらしない奴。私のまわりにもいる。
    でも、そんな奴らも実は捨てたもんじゃないかも。
    自分のフィルターがちょっと変わる物語。

  • オール讀物新人賞を受賞した表題作含めて6篇。

    ・素晴らしい一日
    恋破れ倒産で職を失い、踏んだり蹴ったりの主人公・30歳の幸恵は、昔貸したお金を取り戻そうと元カレのところを訪ねる。この元カレ、かなりの駄目男。女ったらしで頼りない。再開してもそれは変わらず、お金がないという。
    しかし他の人に刈りて返すから、今から一緒にその人たちのところを回ろうと提案される。
    元カレの駄目ぶりはもう徹底している。だけど女ったらしというか人たらしで、人の心にするりと入り込むタイプ。
    お金を借りに回る元カレについて行ったことで、何だか自分までちょっとみじめな気持ちになる主人公だが、元カレの知り合いの人に触れ合っていくうちにだんだん気持ちに変化が出てくる。最後に出会った女性とは仲間意識さえ芽生えている感じ。
    踏んだり蹴ったりだった主人公も、最後は自然に笑みがこぼれる。

    ・アドリブ・ナイト
    ちょっとした勘違いから、死に瀕した老人の娘になりすますことになった主人公。
    本当の娘は父親と仲違いしている。主進行は親戚や知人の男性たちに連れられて田舎町へいくことになる。今際のきわにいる老人に一言「お父さんごめん」と言ってほしいとのこと。
    主人公は実は追い詰められており、(多分出会い系)身体を売る寸前だった。
    田舎で「にわか娘」としていろいろな人と触れ合い、人の死に立ち会う主人公。
    結局謝ることは出来ないまま田舎町を離れることになるが、新しい一日が始まろうとしていた。

    ・オンリー・ユー
    由佳子という彼女がいながら、会社の高嶺の花的存在である史織との結婚を目論む男。
    上手くいきかけたものの、仕事で失敗し、由佳子の横やりも入ってすべてがなくなっていく。
    昔から落ち込んだ時慰めてくれるのは由佳子だけだった。主人公はまたもや由佳子に愚痴をこぼしてしまう。由佳子の「してやったり」という顔から目を背けながら。

    ・おいしい水の隠し場所
    「素晴らしい一日」にも登場したモデルのルイが主人公。
    ルイは店を経営しており、有力者の知り合いがいる。使い使われという関係ではなく、とても大切な相手である。
    昔純真だったころ、ほんのり憧れた相手・室田がある日ルイの前に現れる。室田はルイに、その有力者と縁を繋いでほしいと言い出す。
    結局ルイは有力者と室田の仲を取り持つことはなかった。ルイと室田はどこまで行っても交わることはなく、間にあるのは友情なんだろうな。
    「いちばんおいしいのは、身体をめい一杯動かした後に飲む学校の水道水」というくだりが心を打つ。

    ・誰かが誰かを愛してる
    仲人をやりたがっている妻にうんざりしている主人公。そこへ部下から相談を持ち掛けられる。もしかして「仲人になってくれ」という層段かと浮足立ったが、そうではなく、結子という女生徒の付き合いについてだった。
    部下は身籠った結子に、堕胎費用を出したという。
    実は主人公も結子と不倫関係になり、堕胎費用を渡していた。つまり結子は堕胎費用を二重取りしていたということになる(しかも本当に妊娠しているかは分からない)。
    やれやれと思っていると、何とほぼ身内と言ってもいい存在の健太までもが、結子と付き合っているという。
    主人公は健太に「あの女はやめとけ」と忠告するが無視される。
    結子のところに乗り込むと、意外にも彼女は本気っぽかった。
    結子の心意気をくみ取った主人公は、結子に「仲人をさせてほしい」と切り出した。

    ・商店街のかぐや姫
    主人公の女性、月恵は、オダサクの「夫婦善哉」の蝶子を下町仕様にして強くした感じ。
    浮気相手と滞在しているホテルから「カネ持ってきて」と電話を寄越す駄目夫・努を突き放すことなく、努の実家であるスーパーを姑と切り盛りしている月恵。
    実は月恵が「惚れこんで」いるのは努ではなく、姑の登美子。
    あまり親に大事にされてこなかった月恵は、登美子と家族に慣れたならそれでいいと思っているフシがある。
    そんな中、実家の妹の結納に呼ばれた月恵たち。
    努は得意のおちゃらけを発揮して、厳かな式で場違いなことをしてしまう。月恵の妹は姉のせいで台無しだとなじり、月恵はそれを聞いてむっとする。父に反抗した月恵と、言うことを聞いてきた妹。長年のわだかまりが噴出する。
    頭を下げて場を収めたのは夫の努。努は月恵に、あの場にいた父の気持ちや、自分の本心を優しく解く。
    月恵は改めて、自分が新しい「家族」を得たことを実感する。

  • 好きよー好きよーあなたー。って。ジャンル的にもう好みっていうのはあって、この系統のは、はっきりいって好きなのである。この系統って言うのは、ダメっぽい男女が織りなす人間模様、的な。これを男性作家が書くと、ダメ男と思いきやいざという時はやるやつだぜ、みたいな格好良い系になるけど、女性作家が書くと、実にだらしない。このだらしなさが、例えば普段は真面目に働いてるけど、休日はロハスーとか言いながらブルータスカーサでも読んでるみたいな、ある種の憧れをもって迫ってくる。この背徳感というか。
    世の中頑張らないやつもいれば、頑張らないやつもいて、頑張ってもダメな人もいれば、頑張らなくても大丈夫な人もいて、それが世の中ってやつなんだぜ?とか場末の飲み屋で語りたい。それが大人の嗜み。でもそもそも一人で飲み屋とか行けないから、そこからだわー。

  • 平安寿子さん「素晴らしい一日」、2005.2発行(文庫)。短編6話が収録されています。タイトルの素晴らしい一日と商店街のかぐや姫が印象深かったです!だらしない男の生き方を見事に描いてる感じがしました。私は大嫌いですが~(^-^)

  • 作者デビュー作の短編集。キャラクターの描き方が独特でダメ男でさえ憎めない。脇役のキャラクターも想像ができる。

  • ・素晴らしい一日
    ・アドリブ・ナイト
    ・オンリー・ユー
    ・おいしい水の隠し場所
    ・誰かが誰かを愛してる
    ・商店街のかぐや姫

    中学校のとき、クラスの男子が読み上げた作文を思い出しました。
    「ぼくは、最初の1ページを読んで面白くない小説は読みません」
    この本は「ぜひ読め」とお勧めできる。

    “日曜日の朝っぱらから不精髭をはやし、ボサボサ頭にくたびれたジャージの上下という格好でパチンコをしている三十七歳の男に相応しい呼び名は一つしかない。
    甲斐性なし。”

    この出だしだけで引きこまれるでしょう?

    その甲斐性なしに「貸した金返せよ」と言いに行った一日の話なんだけど、その男がもう本当にダメなやつで、頼りないしいい加減だし、でも最高にハッピーな笑顔の持主。
    はたして幸恵は彼から貸した二十万円を返してもらうことができるのか。

    6つの短編は、どれもこれも頼りない男が出てきて、ちょっと情けない面を見せたりするけれど、それは決して不快ではない。
    それどころか、読み終わったあとは元気が湧いてくるくらい。

    例えば「オンリー・ユー」の主人公は、三十三歳独身イケメンの中原という男で、まあモテる。
    「有能なのは十分わかってるからさ。もう少し、肩の力を抜いていいんだよ」なんてことを平気で言えるやつなのである。
    そんなこと言われたら、男社会で日々悔しい思いをしている女ならコロッといくよね。
    さて、一体誰が誰に手玉に取られていたのでしょう。

    全てを言葉にするわけではない。
    言わない言葉が伝わるのは、そこに至る行動が、今までの付き合いが、彼や彼女という人間を教えてくれているから。
    その書き方が上手いんだよね。
    「素晴らしい一日」がデビュー作ということだけど、クオリティの高さはなかなか見ないほどだと思う。

    「おいしい水の隠し場所」の主人公ルイみたいな女の人が、私はたいてい好きなんだけど、今回は「商店街のかぐや姫」の努にやられました。
    家業のスーパーの経営もろくに出来ず、ふらふらしては時々浮気する。
    財布も持たずに家を出たからと、妻の月恵にホテルまでお金を持ってきてもらうようなやつ。
    だけど、ちゃんと人のことを見ているの。
    手のさしのべ方が上手いのよ。
    そういうの、いいなあ。

    幸せというよりも、どちらかというとちょっと不幸寄りの人たちばかりが出てくるのに、読んだ後は「すべて世はこともなし」って思えてくるから不思議。
    明日も生きていけそうです。

  • 作者ご自身によれば「クスッと笑えてちょっぴり身につまされるビタースィートな大人のコメディー。」ということですが確かにそのとおりでした。えー何でこうなるの?と思わず嫌になってしまいそうな重い出来事の中にも吹いてしまいそうな笑いが隠されている、そんなお話を集めた短編集でした。
    『おいしい水の隠し場所』で学校の体育や部活が終わったあとの水道の水が一番美味しいというエピソードはそうかも、と思えました。その時その場所でしか味わえないものってありますよね。

  • 何度読んでも内容を忘れてしまう。。。

  • ム、ム、ムー。

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