素晴らしい一日 (文春文庫 た 57-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167679316

作品紹介・あらすじ

恋人に逃げられ、勤務先は倒産。ドツボにはまった三十歳の幸恵は、昔付き合った男に貸した金を取り立てるところから人生を立て直そうと考えたが…(「素晴らしい一日」)。卓抜なユーモア感覚が絶賛されたオール読物新人賞受賞作を含め、憂きことばかりの人の世を、もがきながら生きる人間像を軽やかに讃える傑作六編。

感想・レビュー・書評

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  • 人間を軽妙に深く鋭く描いている。どの話も、完全なるハッピーエンドというわけではないが、読んでいる人の心を新品にしてくれる清涼的効果がありました。(2015年4月15日読了)

  • この本が新刊で出た時に初めて読んだときは、正直あんまり印象に残らなかった。期待したのに面白くなかったな、と感じた気もする。ところが最近また急に読みたくなって手にとったら、なぜこれが面白くなかったな、と感じたんだ私は!と当時の自分をなじりたい。
    とにかくほとんど出てくるのは駄目な男ばかり。チャラチャラしてだらしない。よくいる、こんな駄目な男。だいたい小説なんかじゃ脇役。しかも痛い目みる。
    ところがこの作品だと、なぜか主人公の女たちを癒してくれたり救ってくれたりする。
    憎むべき要素をこれでもかと出して嫌な奴にしたてられているのに、ふとした信念のようなものが見えて、彼らが眩しく見える。
    駄目な奴に、だらしない奴。私のまわりにもいる。
    でも、そんな奴らも実は捨てたもんじゃないかも。
    自分のフィルターがちょっと変わる物語。

  • 後半になるに連れて面白くなってくる。構成がはっきりしているので途中で詰まる事が無い。

  • 駅でテレクラの相手と待ち合わせをしていた瑠美。そこへ「美代子、親父さんが危篤だから来てほしい」と車に連れ込まれる。すぐに人違いと判明するが…(『アドリブ・ナイト』)。

    男女のあれこれやすれ違いを描いた短編6作。どうやらこの作家のデビュー作らしい。

    会社が倒産し、貯金が300万円を割ったところで、過去に20万円貸していた男と再会し、20万円をなんとか工面する表題作は、まあ勢いが有ってよかった。しかし、その次の『アドリブ・ナイト』が本作の最も輝いている一作であるのは間違いない。それだけ☆4。

    美代子が出ていった経緯は陳腐だが、美代子に扮してなんとか乗り切ろうとする瑠美と周りの葛藤というほどでもない軽い騒動が、この作家の本領なのだろう。

    その後の4作は、キックボード?携帯電話?ということは2000年代?(2001年の作品だった)と、モヤモヤするにもかかわらず、出てくる人物像や人間関係が昭和50年代~バブル以前のもの。社内の女性に片っ端から手を出す男がいて当然みたいな話、おかしいだろ。

    また、文章を書くのが面倒になったのか、簡単な数行のはずが、全く頭に入ってこないような文が続く。男女の別が書かれておらず、女の前に座るんだから男だ、察しろというような甘えが感じられる。

    結局、内容の方もダメ男と気の強い女という同じようなストーリーでほとんどが終わってしまい、短編集を読み進めていく楽しみが感じられなかった。

  • 好きよー好きよーあなたー。って。ジャンル的にもう好みっていうのはあって、この系統のは、はっきりいって好きなのである。この系統って言うのは、ダメっぽい男女が織りなす人間模様、的な。これを男性作家が書くと、ダメ男と思いきやいざという時はやるやつだぜ、みたいな格好良い系になるけど、女性作家が書くと、実にだらしない。このだらしなさが、例えば普段は真面目に働いてるけど、休日はロハスーとか言いながらブルータスカーサでも読んでるみたいな、ある種の憧れをもって迫ってくる。この背徳感というか。
    世の中頑張らないやつもいれば、頑張らないやつもいて、頑張ってもダメな人もいれば、頑張らなくても大丈夫な人もいて、それが世の中ってやつなんだぜ?とか場末の飲み屋で語りたい。それが大人の嗜み。でもそもそも一人で飲み屋とか行けないから、そこからだわー。

  • 平安寿子さん「素晴らしい一日」、2005.2発行(文庫)。短編6話が収録されています。タイトルの素晴らしい一日と商店街のかぐや姫が印象深かったです!だらしない男の生き方を見事に描いてる感じがしました。私は大嫌いですが~(^-^)

  • 作者デビュー作の短編集。キャラクターの描き方が独特でダメ男でさえ憎めない。脇役のキャラクターも想像ができる。

  • ・素晴らしい一日
    ・アドリブ・ナイト
    ・オンリー・ユー
    ・おいしい水の隠し場所
    ・誰かが誰かを愛してる
    ・商店街のかぐや姫

    中学校のとき、クラスの男子が読み上げた作文を思い出しました。
    「ぼくは、最初の1ページを読んで面白くない小説は読みません」
    この本は「ぜひ読め」とお勧めできる。

    “日曜日の朝っぱらから不精髭をはやし、ボサボサ頭にくたびれたジャージの上下という格好でパチンコをしている三十七歳の男に相応しい呼び名は一つしかない。
    甲斐性なし。”

    この出だしだけで引きこまれるでしょう?

    その甲斐性なしに「貸した金返せよ」と言いに行った一日の話なんだけど、その男がもう本当にダメなやつで、頼りないしいい加減だし、でも最高にハッピーな笑顔の持主。
    はたして幸恵は彼から貸した二十万円を返してもらうことができるのか。

    6つの短編は、どれもこれも頼りない男が出てきて、ちょっと情けない面を見せたりするけれど、それは決して不快ではない。
    それどころか、読み終わったあとは元気が湧いてくるくらい。

    例えば「オンリー・ユー」の主人公は、三十三歳独身イケメンの中原という男で、まあモテる。
    「有能なのは十分わかってるからさ。もう少し、肩の力を抜いていいんだよ」なんてことを平気で言えるやつなのである。
    そんなこと言われたら、男社会で日々悔しい思いをしている女ならコロッといくよね。
    さて、一体誰が誰に手玉に取られていたのでしょう。

    全てを言葉にするわけではない。
    言わない言葉が伝わるのは、そこに至る行動が、今までの付き合いが、彼や彼女という人間を教えてくれているから。
    その書き方が上手いんだよね。
    「素晴らしい一日」がデビュー作ということだけど、クオリティの高さはなかなか見ないほどだと思う。

    「おいしい水の隠し場所」の主人公ルイみたいな女の人が、私はたいてい好きなんだけど、今回は「商店街のかぐや姫」の努にやられました。
    家業のスーパーの経営もろくに出来ず、ふらふらしては時々浮気する。
    財布も持たずに家を出たからと、妻の月恵にホテルまでお金を持ってきてもらうようなやつ。
    だけど、ちゃんと人のことを見ているの。
    手のさしのべ方が上手いのよ。
    そういうの、いいなあ。

    幸せというよりも、どちらかというとちょっと不幸寄りの人たちばかりが出てくるのに、読んだ後は「すべて世はこともなし」って思えてくるから不思議。
    明日も生きていけそうです。

  • 作者ご自身によれば「クスッと笑えてちょっぴり身につまされるビタースィートな大人のコメディー。」ということですが確かにそのとおりでした。えー何でこうなるの?と思わず嫌になってしまいそうな重い出来事の中にも吹いてしまいそうな笑いが隠されている、そんなお話を集めた短編集でした。
    『おいしい水の隠し場所』で学校の体育や部活が終わったあとの水道の水が一番美味しいというエピソードはそうかも、と思えました。その時その場所でしか味わえないものってありますよね。

  • 何度読んでも内容を忘れてしまう。。。

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