ハル (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2005年10月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784167679583

みんなの感想まとめ

ヒトとロボットの共存をテーマにした短編集は、未来への期待と現実の停滞感を巧みに描いています。収録された物語は、SFというよりも現実味を帯びたヒューマノイドの研究や人間との関わりを探求しており、科学技術...

感想・レビュー・書評

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  • 「ハル」
    スタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』で出てくる宇宙船AIの名前。

    短編集『ハル』は21世紀突入直後の中編連作集

    21世紀も20年たって、20世紀のころ抱いていた未来に対し、なんだか停滞感を感じてしまう。
    ここに収録された物語たちは、SFというよりは妙に現実感のあるお話ばかりで、ヒューマノイド(人型ロボット)のテーマとは別の何かを感じさせてくれる。

    人型ロボットの最大の利点は、操作される機器類を大きく変更する必要がないこと。ボタンやハンドルから握り手の形状まで、人間の手や足に合わせて作られているものを、各々のロボットごとに変更していたのでは、いつまでたっても一般の生活には入ってこれないということ。

    では、不要な研究なのか……。

    人型ロボットの研究の根底は人間の研究にほかならないと思う。その先にあるものは医療のさらなる発展であり、ペットや人間の代わりではない。

    そうか、
    ひょっとしたら、
    私たちこそが誰かがタンパク質で作った“ロボット”だったかもしれない……。

  • 2024/5/19読了(再読)
    ヒトとロボット(ヒューマノイド)との関わりをテーマにした短編×5。舞台は2001年~'30年。初読('05年)当時は、ほとんどの物語が“近未来”だったが、今や大半が“過去”の話になってしまった。そして、現実世界でのヒューマノイドの浸透はそれ程進んでいない。AIの方は格段に進歩したようだが、それにしたってデータを元にそれらしい受け答えをしているのであって、“考えて”いる訳ではないのだろう……まだ。自身の“心”を持ったAIロボットがヒトと共存する社会は、果たして実現するのか、するならどれくらい先のことか、とか改めて考えてしまった。

  • 2001年に書きおえられた本であるけど、今読んでも古さを感じない。ロボットが人類が滅亡後にアトムを探しに旅をしながら、人間がロボットと共存し、そしてロボットの感情があるのか、自分がロボットに対してどう感じているのか、短編で綴られていく。
    魂が宿るのか?ロボット同士の会話、難しく書いてあって消化に時間がかかるし、うまくまとめることも難しい。
    ロボットが悪用されることなく助けとなるような善のロボットにするには知能は必要で曖昧さも求められるロボットはまだまだ難しいんだろうなぁ。

  • 一言で言えば、この小説はズルい。借景の作品である。1970年前後の世代のバイブルである作品たちへのオマージュである。特に手塚治虫の。
    技術者として思うのは、機械工学、材料工学は空想科学が望んだ未来よりもかなり遅く進んでおり、それがロボットを残念な存在にしていると考える。そんなことを改めて考えさせられる。
    そもそも空想科学は、我々技術者に目標を与え続けてきた。空想科学に憧れるからこそ、その技術が進歩したのだと考える。当時で言えばロボット。今で言えば魔法であろうか。
    ジャスト世代の自分にとっては、当時の衝撃や感動を思い出せた。そういう意味ではありがたい小説である。気になるのは世代ではない若者はどう考えるのかといいこと。この小説の面白みはけっこうそこにあるのて気になるところだ。
    筆者は小説を書く前に精緻に調査をすることで定評があると記憶しているが、今回も細かいディテールまで、それもかなり広い範囲で提示している。その点については流石だなぁと感心した。

  • 近未来、ロボットと人が共存する世界はくるのか?
    人が挑む科学の最終目標とも言える、機会と人との共存を、あの鉄腕アトムと関連させつつ見事に描ききってあります。
    この作者の作品の多くは、専門用語が多様されており、難しい印象を受けますが、それを補うだけの卓越した表現力と世界観が光ります。
    人類とロボットが共存するとはどういうことなのか。そのような利点があり、どのような弊害があるのか。
    そういった点も、とても興味深いと思います。
    この作品は、全ての人に一度は読んで欲しいと思います。

  • 2001年に書かれた物語。
    ここ2年くらいのAIの進化に一部陳腐化してしまった感あり。
    文体?がしっかりしているせいかノンフィクションっぽくて色褪せた印象はない。十分読める。

  • 手塚治虫作品を軸として、ロボット工学に徹する人々の情熱と苦悩。
    古典SFの要素を含んだ短編集だが、それぞれの作品には繋がりがある。
    「夏への扉」をオマージュした「亜希への扉」が印象的だった。

  • 書きたいテーマにこだわって書いたんだろうけれど、わたしはそこまでついていけなかった。亜希への扉はすきだった。

  • 最初と最後の話しは4つ

  • あしたのロボット(単行本)の文庫化

  • これまでの瀬名作品に比べ面白くなかった。しかし、ロボットの可能性について一つの現実的答えが描かれている。一度ちゃんと鉄腕アトムをみてみたいと思った。

  • ロボットとそれに関わる人たちに関するお話集。

    SFと現実が折り混ざったようなお話で、切なく温かく、少し怖くて不思議な気持ちになりました。

    瀬名さんの作品は久し振りに拝読したのですが、丁寧に描かれたその世界観に惹き込まれて一気に読みました。

  • ロボの話、ドラえもんとか思い出す

  • ロボット短編SF。
    当時、瀬名氏には『パラサイト・イヴ』のホラーのイメージしかなかったので、強烈なインパクトでした。この作品で、自分がSFやロボットものに興味があることを再認識。

  • ロボットを中心にした短篇集。人とロボットのかかわり合い方は近い将来考えなければならないことだと思う。
    彼だからこそ、人間とロボットの境界を非常に近いところまで寄せて書くことができる。

  • ロボットの「あした」の物語。6編からなる連作集。
    一般的なロボットものとは異なり、現実の世界と地続きという観点から描かれている。それ故のもどかしさもあるし、また、夢も描かれている。
    収録されている作品の中では、「亜希への扉」が一番気に入っている。冒頭に次のように書かれている。
    「・・・この物語にタイムマシンは登場しない。残念ながら二〇一五年のいま、冷凍睡眠の技術もまだ確立されていない。・・・」
    このタイトルと、この記述から、気がつく人もいるだろう。
    『夏への扉』

  •  ほんとうに、手塚治虫は神だったのかもしれない……。
     これを読んでそう思った。これは「アトム」をモチーフとした「人とロボット」の未来への物語。

    「ブラックジャック創作秘話」を読んだあとだからこそそう感じるのかも。手塚治虫氏が命を削って作り上げたものを引き継ぐ人がいるんだなと嬉しくなる。

     最近、落ち込むこともあったけれど、未来っていうのは輝かしくすばらしいもの。そういう希望を持たせてくれる本だった。
     短編連作なのに、1つ1つの短編が重くきらきらしている。

     好きだな。

  • 一度、図書館でハードカバーで読んだが文庫で出たので再読。
    人とロボットがふつーに暮らすようになる近未来のお話。
    ロボットに知性を、心をもたせることはできるのか?という主題を突き詰めて考えていくと、
    じゃ人の心ってナンナン?という問題にぶち当たる。
    結局、一番わからんのは人間自身なんだろうと思う。

  • 友人に薦められて出会った本。
    この本を読んで一番驚いたのは、物語が非常に強い現実味を帯びて展開されるところだ。これは作者が実際に専門家達(これは様々なロボットが登場する)に取材をしていることに因っていると思う。さらに主に扱っているのはロボットと人間の心だ。私は人間ドラマを描いた作品が好きなのだが、この本を楽しめたのは心について考えさせられる場面が多々あったからだろう。

    ロボットに興味がある方もそうでない方もぜひ読んでみて欲しいです。:D

    Roy 6161

  • 静かな感動を与えてくれる素敵な作品でした。

    第一の話「ハル」の中でも書かれているように、
    かつてのSFのように自由に未来を語ることが難しくなっている現代のSF作品として、
    きちんと現実を見据えて、誠実に「あした」を書いた作品です。

    一つ一つの作品それぞれが違った、いい味を出してる。
    でも特に私は「亜希への扉」がやっぱり秀逸だなぁと思いました。
    ちょうど少し前に『夏への扉』を読んだところだったので、
    にやりとさせられながら読みました。
    今まですごいリアルな書き方をしていたのに、
    いきなりこんなフィクションっぽくしちゃうの?
    と思うんですが、そんなところも、
    まぁたしかに『夏への扉』の時代のSFだったら
    このぐらいのことを平気で書くよな、と思うと全然許せてしまう。

    それにしても、瀬名秀明さんは本当に物語と言うものを愛している人なんだなぁとまたも感心させられました。
    他作品もぜひ読んでみたい。

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著者プロフィール

1968年、静岡県生まれ。東北大学大学院薬学研究科(博士課程)在学中の95年『パラサイト・イヴ』で日本ホラー小説大賞を受賞し、作家デビュー。
小説の著作に、第19回日本SF大賞受賞作『BRAIN VALLEY』、『八月の博物館』『デカルトの密室』などがある。
他の著書に『大空の夢と大地の旅』、『パンデミックとたたかう』(押谷仁との共著)、『インフルエンザ21世紀』(鈴木康夫監修)など多数ある。

「2010年 『未来への周遊券』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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