- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167679590
作品紹介・あらすじ
西日を追うようにして辿り着いた北九州の町、若い母と十歳の「僕」が身を寄せ合うところへ、ふらりと「てこじい」が現れた。無頼の限りを尽くした祖父。六畳の端にうずくまって動かない。どっさり秘密を抱えて。秘密?てこじいばかりではない、母もまた…。よじれた心模様は、やがて最も美しいラストを迎える。
感想・レビュー・書評
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Macomi55さん、コメント連投でごめんなさいね。
この作品、大好きなのです。湯本さんは全部好み。
アカガイを食べるところが良かったで...Macomi55さん、コメント連投でごめんなさいね。
この作品、大好きなのです。湯本さんは全部好み。
アカガイを食べるところが良かったですね。
てこじいの思わぬ良さにふれることが出来て、生涯の宝物になっただろうと思います。
子どもの頃のそういう体験って、その子をずっと支えるものなんですよね。
「ポプラの秋」や「岸辺の旅」もおすすめです。
どれもみな、喪失と再生の物語です。興味がありましたらどうぞ♪
この話を思い出して、それだけでジーンとしているワタクシです。2021/01/15 -
nejidonさん、いつもコメントや「いいね」を有難うございます。
「西日を追いかけるように西へ西へと転々と」して辿り付いた所が斜陽の町で、...nejidonさん、いつもコメントや「いいね」を有難うございます。
「西日を追いかけるように西へ西へと転々と」して辿り付いた所が斜陽の町で、しかも西日の当たる部屋。沈んでゆくばかりの親子の生活でしたが、突如現れた「てこじい」が沈みゆく太陽の最後のパワーを二人に存分に与え、生まれ変わらせることが出来たのですね。芸術的で美しく、元気を貰える作品でした。
てこじいの皺の描き方や体の折り曲げ方の表現など、年老いた親族を見るときの痛々しさと愛情を同時に感じる視線も上手く表現されていたとおもいます。
湯本さんの小説をまた読みたいと思いました。「ポプラの秋」や「岸辺の旅」も読んでみようと思います。ご紹介有難うございました。2021/01/15
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無頼という言葉を聞かなくなって久しい。
この作品には、その無頼の限りを尽くした「てこじい」なる人物が現れる。
十歳の主人公「僕」が語る、母とその父「てこじい」の物語。
あとは、母の七つ下の弟にあたる叔父の、四人の登場人物だ。
西日を追うようにしてたどり着いた北九州のとある町。
若い母親と僕は、身を寄せ合うようにして生きている。
「いつか南の島でのんびり暮らそう」・・いつも親子でそんな頼りない夢を語っていたのだが、「てこじい」なる祖父が、ある日ふらりと現れてから変化が訪れる。
いつも壁にもたれたまま眠る祖父。どっさりと秘密を抱えた祖父。そして母もまた。
祖父の生涯と死。憎み、抗いながらも必死で「てこじい」と生きる母。
ふたりを見守る僕。それらの心模様が重なるとき・・
ひたひたとさざ波のような感動が押し寄せる。
読後思わず、初めからもう一度読み返してしまった。
連休で暇だから「小説でも読むか」と気まぐれで借りた本が、私の心を深く揺さぶる。
「夏の庭」以来の、実に二十年ぶりの湯本さんの作品だ。
しかもラストでは思いがけず涙ぐんでしまった。
いやまさか、こんなことになるとは予想だにしなかった。
抑制のきいた淡々とした文章ながら、無駄は何ひとつない。
人生への深い洞察力に溢れた心理描写が本当に巧みで、芥川賞の候補作だったというのも頷ける。
冒頭の爪を切る場面、母が好物の「アカガイ」を貪るように食べるところ。その前後。
特に「てこじい」の今わの際の表現がずば抜けて巧く、身内を何人も見送った私も「ああ、そう!この通りだ!」と胸を射抜かれるような描写だった。
やや頑なな娘の、親との因縁と不器用なまでの受容。僕が繋ぐかに見えた絆。そして喪失。
度し難い親を持ったが故の切なさ。それとどう対峙したか。
どなたか同じ悩みを持ついらしたら、たぶん答えをくれることだろう。読後は爽やかなので、どうかご安心を。 -
2015.4/24 『夏の庭』と同様、老人と少年が織りなす物語。でもそれが突然転がり込んできた今はやつれた放蕩者の祖父っていうのが...言葉は多くないのにリアルで読み進めてまう。祖父の関係にハラハラする少年や、恨みつらみを抱えながら放り出せない母親の気持ちが手に取るように分かる。静かに涙した。
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僕と母の暮らすアパートに、ある日、転がり込んできた祖父の「てこじい」。それ以来、部屋のすみでじっとうずくまったままのてこじいは、夜になっても決して横になることもない。てこじいを邪険に扱う一方で、食卓に好物を並べたりと、戸惑いを見せる母。かつて、北海道で馬喰(ばくろう)として働き、朝鮮戦争時は米兵の遺体を繕う仕事をしていたなどと語るてこじいに、10歳の僕は次第にひかれていく…。
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ゼミの先生の研究室の本棚を見ていたら、場違いののようにポツンとあったので、先生に借りて読んでみた。
たんたんと読んでいたのだけど、最後ちょっと泣きそうになった。
で、久しぶりにお父さんに電話してみた。
家族って、いいなって、改めて思わしてくれた本。 -
穏やかなようでいて、父娘あるいは母子の複雑な葛藤というか単純ならざる心情が結構リアル。
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親子の関係もいろいろだよな。
てこじいの不器用で、分かりにくい優しさが愛おしく感じた。 -
思い掛けず良かった。
この著者について何も知らずに古本屋でなんとなく手に取ったのだけど。
簡潔で無駄が無いのにやわらかい、頭だか心だかにすっと入ってくる文章で、いつまでも読んでいたいと思えた。
情報ではなく空気そのものを読ませるような。
難しい言葉や表現を使っているわけでもなく淡々としているのにかっこいい。よごれた老人の話なのに。
こういうのを文体というのかな。
こんな文章を書けたらいいのに。
話し手の僕、僕の母、てこじい。
ほとんどこの三人だけのお話。
母とてこじいとの間の屈折した感情と、それを観察しながらゆっくりと何かを受け入れていく僕。
家族の間にある複雑な感情とかって、むりやり名前をつけて分析して定義してしまったらその瞬間につまらなく思えてしまうものだから、省略された言葉で行間に漂わせるくらいが一番心地良いのかもしれない。
最近、人生とか生き方とか、そういった事を考える出来事がおおかったから、余計におもしろかったのかな。
他の作品も読んでみたい。 -
他人には言えない事柄を人は抱えて生きているということが実感される作品。それは決して家族であっても、友人で会っても打ち明けられないものがある。
しかし、家族の場合はいざという時にはそうした微妙な関係性が瓦解して寄り添うことができるようになることもある。本作はそうした家族の心の揺れを捉えている。
不可解な「てこじい」が理解できていくにつれ、別れが近くなっていくんですよね。
私は「アカ...
不可解な「てこじい」が理解できていくにつれ、別れが近くなっていくんですよね。
私は「アカガイ」を食べる場面がとても好きです。
そして最後はやっぱり泣けてしまって。
湯本さん、いいですよね。心に沁みてきます。
実は他のレビュアーさんにもお勧めしているところなんですよ・(笑)
初めは てこじい の行動が不可解だったんですけど、そこに至るまでには、 てこじい なりの人生があって、徐...
初めは てこじい の行動が不可解だったんですけど、そこに至るまでには、 てこじい なりの人生があって、徐々に打ち解けていく様子が良かったですね。
そして てこじい との別れ…(ToT)
私も3人がアカガイを食べる場面好きです。
てこじい の不器用さがよく表れていましたね。
湯本さんの描く 死 はほんと切ない。。
他の方にオススメされる気持ち、分かります(*^^*)
コメントをありがとうございました!