富士山 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (2006年3月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784167679774

感想・レビュー・書評

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  • 富士山の近くに住んでたことがあるから読んだ作品

    ジャミラがオススメ

  • 田口ランディの短編集。
    しかし感想文は長いです。

    収録は4編。
    元カルト教団の構成員で、現コンビニ店員の男の物語『青い峰』。
    中学の卒業記念に自殺の名所を探検する男の子たちの物語『樹海』。
    ゴミ屋敷に住む孤独な老女の物語『ジャミラ』。
    無反省な中絶手術を許すことができない産婦人科看護師の物語『ひかりの子』。

    『樹海』と『ひかりの子』は富士山そのものを舞台としており、『ジャミラ』は比較的遠景に富士山を望む。『青い峰』では、その両方を行き来する形で物語が進んでいく。
    すべての物語に富士山が登場する。

    だから、”この4編は、富士山にまつわる物語である。”それが表向きの共通点である。

    さて、富士山は霊峰と呼ばれることもある。
    人はとてつもなく大きなものに神聖さを見出す。しかし人間にとって神は、いつも味方とは限らない。人智を超えた存在は、時に人間を守るが、また時に人間を滅ぼす。それはあまりに大きな力であり、無慈悲で残酷であるように見える。

    ”この4編は、そんな無慈悲で残酷な力に対峙する物語だ。”
    それが僕の感想だ。

    『ひかりの子』に書かれているように、「この世の中はとてつもない悪意と暴力に満ちている」。それらの悪意や暴力は人為的なものではあるが、神の与えた試練や自然災害と同じように、「僕たち個人の手に負えない」形で、無慈悲に残酷に立ち現れる。
    幼少のころ僕らは、そんな悪意や暴力のことを知らずに生きている。そして、中学の頃か、高校の頃か、一人暮らしを始めてからか、とにかくどこかで、その事実を突きつけられ愕然とする。「そんなに僕が悪いことしたか?そりゃちょっとは悪いかもしれんけど、なんで僕だけ?」としか思えないような、因果論ではまったく釣り合わない、理不尽で圧倒的な力に対峙することになる。小説の主人公たちはそういう意味で、全ての僕たちに当てはまる。

    さて、そんなとき、僕たちはどうやって乗り越えれば良いのか。相手は圧倒的な力なので、これを避けることも跳ね返すこともできない。そんなとき、僕たちに何ができるのか。

    興味深いことは、富士はその悪意や暴力をもたらす存在であり、かつ、悪意や暴力にさらされた人間を救う存在でもある点だ。
    物語の中で主人公たちは、神なる富士の袂で苦しみ、死ぬ。しかし、神なる富士の袂で出会い、蘇り、そして、神なる富士を拝み、祈るのである。

    ぜひ4編とも通して読んでほしい。すると、見る角度を変えて立体を認識するように、大きな物語が立ち現れてくる気がする。

  • 表紙の絵が気になったので購入。

    ・富士の麓に鍛錬所を構える宗教団体に所属する青年の物語。
    ・中学校の卒業記念に、樹海を探検する少年3人の物語。
    ・富士の見える市にあるゴミ屋敷と市役所職員の物語。
    ・水子供養で出会った女性と富士登山をする女性の物語。

    それぞれ富士山を交えた、こんな内容の中篇が集まっています。

    不思議な話ばかりです。
    面白いとか、すごいとかは思わなかったけど、どれもなかなか印象に残る作品でした。

  • 内容紹介
    そうだ、僕らには富士山がある!せつなくて美しい魂の彷徨
    富士山の麓で十年以上も集め続けたゴミの要塞に住む、妖怪のような老女の話「ジャミラ」他、富士山にまつわる珠玉の連作短篇集

    背景に富士山を置いて、色々な人間模様を描いておりますが、1、2話目は理屈が先行していまいちでしたが、3話目のジャミラと4話目のひかりの子はかなりよろしかったです。ゴミ屋敷の描写力はなかなかのもので読んでいて臭気がしそうでした。でもなんだか郷愁を感じる老婆ジャミラは何だか憎めない存在です。でも知り合いにもすごい匂いのするおばあさんや、近所にごみを集めて家がゴミだらけの家族の家とか有ってすごく困ったので、実際に居たらすんごく嫌。あたりまえか。

  • すごくいい!と思ったことは憶えているけど…また読み返そう。

  • 結構どれも良かった。
    ゴミ屋敷の話が心に刺さった。
    全体的に生々しい暗い内容でありながら、最後に癒し効果があるような話ばかりだった。

  • 【本の内容】
    古代より日本人に信仰されている霊峰富士。

    いまを生きる青年や少女たちは、あの山を見上げたときに何を感じるのか?

    中学の卒業記念に自殺の名所「樹海」を探検する男の子三人の物語、ゴミの要塞のような家に住む孤独な老女の話「ジャミラ」など、せつなくも美しい光がこの世を照らし出す。

    魂の中篇小説集。

    [ 目次 ]


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    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • この著者の作品は初めて読みました。暗かったりイタかったりなのでオイオイ…と思いましたが、意外と読みやすく、癖になる感じでした。著者の他の作品も読んでみたいです。

  • やりどころのないものを鎮める。「鎮魂」が四つの短編に伏流していた。それが富士山の創造と見事に絡みあって物語が進む。

  • 関東に住むようになり 富士山を眺めることが出来ている私。静岡あたりに住む人は 富士に見られて守ってもらってる感がするんだろうか・・・
    富士を思う人達の短編集です。
    個人的には ランディさんの書く女の心情が好きなので 一番最後の話が私はお気に入りです。

  • 次元の違うなにかを探している
    そのひとつが富士山なんだ

  • 自分はどこから来てどこへ行くのか。存在している意味は?青い峰、樹海、ジャミラ、光の子など生きる苦しみが伝わってくる4作品。ランディさんの作品は何時もそうだけど、読んでいてつらい。

  • 富士山はさまざまな人を魅了する。登ってみたくなるなあ。

  • 富士山をバックに展開する4つの中編集。
    4つとも素晴らしい。

    生きることについて、死ぬことについて深く考えさせられる。
    田口ランディなんて変な名前の作家さんですが、大好きだね。

    いろいろあるけど生きてる間は
    人生をとことん楽しんでやろうじゃないの!
    って思わせてくれるお話でした。

    “この世界は、物質だけで成り立っているのではない。量子力学の最先端では観察者の思念が量子に影響を与える、という実験結果がもう定説になっている。精神はひとつのエネルギーなのかもしれない。光や熱がエネルギーであるように、精神も見えないエネルギーなんだと思う”

  • あっちに行きかけた話。

  • 富士山のイメージを精神に反映させたな人達の話。

    痛みとか異常さがリアルで好き。

  • 4編あるうちの最後の1編
    「ひかりのこ」、神々しくて慈悲深い気持ちに溢れる
    感動した
    この1編を読まなければ、私は田口ランディをいう作家を
    勘違いしていたかもしれない。

  • 田口ランディ作品は、「コンセント」「アンテナ」「モザイク」の三部作を読んでハマりました。
    オカルトやミステリ要素もあるし、けれど深い精神世界の要素もあるという、不思議な作品群だった。

    そしてこの「富士山」も、短編集ながらもその要素は受け継がれているな、という印象だった。
    4つの短編。当然だけど全て設定や登場人物はバラバラ。だけど一貫して出てくるのが、タイトルにもなっている富士山。
    遠くに見えているだけであったり、はたまた富士山を登っている設定のお話もある。おどろおどろしい樹海にて進んでいくお話もある。
    だけど変わらず富士山はそこに在る。大きな存在。

    4つの短編で好きなのを選ぶのが難しいぐらい全部面白かった。
    精神要素の強いのが好きな人は1つ目の「青い峰」、オカルト&ホラーが好きなら2つ目の「樹海」、生きることについて考えたい人は4つ目の「ひかりの子」。3つ目の「ジャミラ」だけは何とも分類し難い。でも面白い。

    こういう精神的要素が強い小説は個人的に大好きです。
    これは、お勧め。

  • 短編4作品。ランディ的な富士山のイメージを精神に反映させた病的な登場人物が多い。富士山は遠くから見ると綺麗だけど近くで見ると腰が引けてしまう。そんな畏怖を感じさせる内容の話も含まれていて楽しめた。

  • 久しぶりに田口ランディを読んだ。
    この人の作品は人間の壊れやすいさとか、ナイーブさとかをまざまざと見せつけられる。
    それが僕の心のなかに割って入ってきそうなくらい生々しく、力を持っているので、一時期敬遠していました。
    自分の心の弱い部分を剥き出しにされて、目の当たりにされるから。

    でもやっぱりこのひとの作品は人間の脆さを描きながらも、儚さをもたせているので、やっぱり身につまされて泣けるのだと思う。

    本作は富士山をモチーフにした短編集だ。
    富士山の近く遠く、それぞれの登場人物の人生が描かれる。
    それぞれの人物の立場は違う四作品だが、それぞれ人間の本質的な脆さを持っている。そしてどこか壊れている。

    僕の一番好きだったものは「樹海」だ。
    森の中、三人の中学生が、まだ誰にも喋ったことのない特別な秘密を打ち明けあう。
    このシチュエーションでもう僕はノックアウトされる。
    初期の恩田陸とかが好きなシチュエーションな気がする。
    それを別な角度から田口ランディはこんなにも鮮やかに描き出している。
    スティーブン・キングとかの色合いもちょっとあるのかな、なんて思う
    けど、そちらの方はあまり読んでいないのでわからない。

    ホラーとか、サイコとか、怖いのにも関わらず人の関心を集めるのは、やっぱりその裏にちゃんとした人間臭いストーリーがあるからだと思う。
    そういう意味でホラーとかサイコは人間を描くことにとても有意義なジャンルであると思う。

    誰だっていつか壊れる。
    誰だっていつか死ぬ。
    誰だって肉体は滅び去る。

    壊れることは恥ずかしいことではない。決して。
    それがないと超えられない大きな壁があるし、それがないと踏み出せない一歩もある。

    どの短編の人物(そのそれぞれが壊れているのだが)も魅力的だ。それは壊れた理由や、壊れ方がの共感を抱くから。
    そうだよ、そんなこと思ったことあるよ。という感情が蘇ってくる。

    それは田口ランディの力だと思うし、実は目を逸らしたくなるようなものでも、誰だって共感しているんだ。
    だから目を逸らしたくなるんだ。

    あと、たぶん、中高生のうちに壊れといた方がいいと思う。
    大人になるとほんま、狂人扱いされるから。

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著者プロフィール

作家。

「2015年 『講座スピリチュアル学 第4巻 スピリチュアリティと環境』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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