月ノ浦惣庄公事置書 (文春文庫 い 61-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167679828

感想・レビュー・書評

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  • 国宝指定された「菅浦文書」に基づく作品です。時代も場所も歴史小説としてはマイナー。
    時代は1440年頃。「籤引き将軍」と呼ばれた6代将軍・足利義教が恐怖政治の挙句に赤松一族に倒された年。
    場所は琵琶湖北端の半島部にある農村・月ノ浦(菅浦)と高浦(大浦)。
    その2つの村の境界にある領地を巡っての村人同士の訴訟と合戦が描かれています。

    徹底的に史実に基づいて描かれた史実物では無く、かといって物語的に「溌剌とした」とか「悲哀が有る」といった感情を強く揺さぶるような作品でもなく、やや中途半端な感じがします。

    岩井さんには珍しく、主人公・源左衛門は悪人です。幼い頃に父に捨てられたことで故郷月ノ浦に強い恨みを抱き、代官として赴いた隣村・高浦で村民たちににたいして苛政を引くとともに、月ノ浦にに領地争いを仕掛けます。僅かに傍に上がった娘に対してのみ優しさを見せるものの、一方的に薄い感じで感情移入できず。かといってこれに対抗する月ノ浦の農民たちもみんな小粒です。唯一、月ノ浦の農民に振り回される、不愛想だが誠実な延暦寺の雑役僧・長円が如何にも岩井さんらしい造形です。そのあたりが物語としての弱さのような気がします。

    一方、徹底的な史実物では無いにしても、元が中世の村の具体的な暮らしぶりや村の規則を村民自身の手で記した「菅浦文書」なので、室町中期の訴訟(公事)の様子や、都や農村の様子などが良く伝わって来ます。そういう意味で面白い作品でした。
    2003年度松本清張賞受賞作。

  • いきなり源左衛門が15年の歳月を飛び越してておおお?と混乱しました。
    切ない話だな。
    室町時代の小説は少ないので有難い。
    古文書を元に書かれたそうで、すごいなあと思います。
    絢爛豪華さはないけど、人の世の切なさが書かれています。

  • 室町時代の話でした
    そんな昔から「公事」が発生して
    支証(証拠の文書?)とかが問題になるんですね

    源太という人物がこの作品成功の鍵です

  • 舞台となった場所に土地勘もあり一気に読んだ。複雑な地形の話しなので地図をつけるともっとイメージしやすいのにね。室町時代の裁判制度に関する本は初めて読んだ。結構まともな裁判。目新しいので★5つ。その他作品も読むぞ。

  • まったく今まで読まなかったこと恥じ入るばかり。生き延びる為のあれこれ。サラリーマンでいることの幸せを感じるのは勘違いか。中世世界のあれやこれやを活写。

  • 時代は室町中期。琵琶湖北端の村である月ノ浦が隣村の暴悪代官によって田畑を取り上げられそうになるのを、村人が防衛するお話。特に有名な人物が出てくるわけでもなく、訴訟問題を中心にこれだけの作品にするのは流石です。

    2009.10.9読了

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著者プロフィール

1958年岐阜県生まれ。一橋大学卒業。1996年「一所懸命」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。98年『簒奪者』で歴史群像大賞、2003年『月ノ浦惣庄公事置書』で松本清張賞、04年『村を助くは誰ぞ』で歴史文学賞、08年『清佑、ただいま在庄』で中山義秀賞、14年『異国合戦 蒙古襲来異聞』で本屋が選ぶ時代小説大賞2014をそれぞれ受賞。『太閤の巨いなる遺命』『天下を計る』『情け深くあれ』など著書多数。

「2017年 『絢爛たる奔流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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